児童文学と侮ることなかれ。大人の中世史ファンも満足するだろう。

小学館ジュニア文庫小説賞と聞いて、もっと幼児向けの作品かと想像していた。
これまで「時間の浪費か」と思って食指を伸ばさなかったが、名月明さんの作品は軒並み面白いので、「まぁ、時間潰しに読んでみるか」とスクロールし始めた次第。

脇道にそれるが、所詮、趣味とは暇潰しである。読書が金稼ぎになるとは寡聞にして聞かない。

さて、読み始めての感想は
「これって小学生相手の作品なの?」
「ジュニアって、ジュニアハイスクールの略?」
と言うもの。結構な知的レベルである。

応援コメントへの返答で作者が語っているが、「歴史には悲劇も喜劇もある」。本作品は喜劇の方だ。特に、後半のネズミ編はシュール。皮肉すら感じる。
ジョージ・オーウェルの名作「動物農場」には確か人間は出ないが、史実に基づいた本作品は動物と人間の併存を前提としている。それだけに人間社会の非合理性や滑稽さを鋭く抉り出している。

それにしても、よく小学館コンテストの二次選考を突破したもんだ。一体、募集要項の対象年齢は幾つだったのだろう?

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