五胡十六国は食べられるしおいしいよ!

「五胡十六国時代」。
確かに他のキラキラした王朝、例えば漢や唐といった派手な統一王朝からすると、地味でスルーされがちな時代である。
「大漢帝国」「大唐帝国」と麗々しく称される漢や唐にひきかえ、大方の人にとっては「あったっけそんな時代?」「何だかごちゃごちゃしているって感じ?」、挙句の果てに「知っているよ、五代十国でしょう☆」とよく間違えられている不憫な子、それが「五胡十六国」といえる。
まあ、ワラワラ侵入してきた異民族の名は覚えにくいし、国はコロコロ変わるし、ねえ…。
だがしかし、この不憫ちゃんは、南北朝と合わせのちの隋・唐の揺籃ともなる重要な時代でもある。

この作品はそんな「五胡十六国」を崔浩先生がわっかりやすく、楽しく解説してくれる。先生の漢文調と現代語朝が絶妙にブレンドされた語り口と上手い譬えに乗っかって、ぜひこの時代を探検していただきたい。私は読んでいてその当を得た比喩に、何度かパソコンの前でフイた。
読了すれば、「漢から隋に華麗にスルー☆」なんて二度とできなくなることウケアイである。

また、末尾に付された「良質な歴史もので入り口を広げる必要性」について、私はヘッドバンギングよろしく頷いた。
「歴史ものってこんなに楽しくて醍醐味溢れているよ!」と人々に伝えたい気持ちは私も同じである。それは、私自身もかつて歴史への入口を指し示してくれた人々や良作に出会ったからこそ、いま歴史ものを読み書きしているわけで、何とか少しでも良い入り口を用意したいと試行錯誤中だからである。

ともかくも、
「五胡十六国はたべられるし美味しいよ♪」
そして
「五胡十六国、恐ろしい子…!」なのです、諸兄諸姉。

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