五胡十六国時代って、実は「ザ・中国史」なんじゃないか

「おお、見事な“東洋史話法”だ! 楽しい!」と思った。
崔浩先生の語り口、いかにも東洋史、この上なく東洋史。
絶妙に軽快な皮肉交じりの毒舌風味、断言して容赦なし。
それでいて実に骨太な歴史観・政治観を滔々と語るのだ。

語られる内容もまた、いかにも東洋史、この上なく東洋史。
作中の言葉を借りれば「バカ kills バカ」「内ゲバ」の連発、
バカ殿スパイラルによってぶっ壊れゆく短命国家の様相が、
後世的なツッコミを交えつつ非常に「香ばしく」描かれる。

三國志でお馴染みの時代の後に訪れた五胡十六国時代は、
安定やら安寧といった言葉が「何それ?」なくらいに、
漢族も異民族もごちゃごちゃの大乱闘が繰り広げられた。
無論、キャラが立ちまくった人物が大量に輩出された。

私は今まで結構いい加減な勉強しかしてこなかったので、
今になってカクヨムで五胡十六国&南北朝時代を勉強中。
本作に示された「胡漢融合」は大好きなテーマの1つで、
宋代元代の異民族の漢化と対比するとまた興味深かった。

とにかくすごく楽しい。崔浩先生の毒舌がお茶目で素敵。
やっぱり中国史はよい。同姓だらけで紛らわしいけどよい。
英雄(かもしれない人々)が立派じゃないところがよい。
「バカな子ほどカワイイ」から、無関心ではいられない。

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