陳舜臣先生の「小説十八史略」の如き面白さ! 読むべし。

五胡十六国時代。確かに歴史の教科書を読んでも理解できなかったほろ苦い記憶がある。それを非常に分かり易く解説してくれるのが本作品である。
でも、非常に分かり易いのだが、理解できた最大のポイントは「やっぱり理解できねえや」と言う事。これは良い意味である。正直、ここまで五胡十六国時代が人間味に溢れた面白味の有る時代だなんて思いもしなかった。大変感謝してます。
この作品は、崔浩なる歴史上の人物の口を借りて紡がれている。彼の決め台詞が良い。正確には枕詞だか、「御機嫌よう」「では参る」。私は非常に気に入った。作風の雰囲気を感じて頂けただろうか?
構成は、五胡十六国時代の大きな流れを敷衍した上で、数多の歴史上の人物の紹介を連ねている。この人物評が秀逸。パロディっぽい説明が分かり易い。
それだけではない。第二席第6部の時代分析なんぞ、読者を唸らせるだろう。
それ以外にも、五胡十六国時代に通じた人的ネットワークの紹介も公正に紹介し、独善に陥っていないスタイルは賞賛に値すると思う。第一部余談で、私も尊敬する田中芳樹先生が出て来るが、確かにそんな発言をしていたな、と改めて思い出した。
作者の歴史小説をこれから読んでみます。また、五胡十六国時代を舞台とした新作にも期待しています。

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