世界観とテーマの親和性が最高

恋愛ものは好きだけど、重かったりダークな設定があるのは取っつきづらい、と躊躇っている方にこそ声を大にして主張したいです。
「この小説はこの世界観だからこそいいんだよ!」と。

本作は読み応えたっぷりの素敵な恋愛小説です。
ヒーローのコウに恋をした主人公・ミキが彼を想う姿は可愛らしく、ずっと貴方の傍にいたいと切実に願う姿は胸にぐっときて。そして想像も超えた悲惨な人生を送る中でも優しさを失わなかったコウが、ミキを心の底から慈しみ愛おしむ様子は時に切なく時に悶えます。

ですが二人の恋は強大な法と制度に阻まれており一筋縄ではいきません。次々と課される苛酷な試練の数々に「もうやめて! 二人を幸せにしてあげて!(泣)」と叫びたくなりますが、その分彼女達が結ぶ強い絆と信頼感が心に染み入り、頑張れー負けるなー!と全力で応援したくなります。
盲目的に溺愛し考え無しに突っ走るのでなく、障害に対して二人が理性的に着実に対処していく点も好感が持てます。

そして外せないのがサブキャラです。コウとはある関係を持つ男性係長と女性リーダー、元上司であるコウを慕う新人三人組、ミキの婚約者や彼女の近所に住む親子等々……彼ら一人一人にもしっかりと個性があり、生き生きとした描写で書き分けされているところが凄いです。
あと設定はダークですが、ミキの一人称で語られるのもあって結構くすっと笑える描写があるのもポイントですね。

ディストピアな世界の中に織り込まれる丁寧な感情描写、そして純粋な想いと運命の愛の物語。是非読んでみてください!

その他のおすすめレビュー

實鈴和美さんの他のおすすめレビュー26