生まれつき邪悪で、誰より純真な少年の生きる道


──そうしたら……神さまは、お喜びになる?

蜂蜜色の瞳をした少年がそっと、敬虔に、そう尋ねます。

控えめで心優しく、純真な少年ユーリイ。兎を抱き、花を愛でる子供。けれど彼は人の生き血を欲する〈異形〉として生まれました。

彼は果たして罪の子なのか?

「こんな美しい心根をもつ子を、神が赦さぬはずはない!」

読みながら私はそう確信します。
けれどそう考えるのは、少年を匿い育てるアルセン神父も同じです。そして彼はそのように考えた上で、成長するにつれ強くなってゆくユーリイの「本能」に苦悩します。

日を増すごと邪悪に、うつくしく育つ。けれど変わらず清らかで優しい存在は、果たして罰せられるべきなのだろうか? 罪とは、善良さとは何なのだろうか?

そんな問いと向かい合った読者は、慟哭するように祈る彼らといつしか一緒になって、何を求めれば良いかもわからぬまま祈りながら、続きを読むことになるでしょう。

そんな美しくも血の味がする記憶の物語を、それを脳裏へ鮮やかに描く見事な文章を、ぜひお楽しみください。

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