老朽化
ぎいぎい。
僕は脱衣所で天井を見上げた。
「母さん、まただ。軋んでるよ」
ここの所、我が家は老朽化が超急速に進んでいる。
特に脱衣所あたりがよく軋む。ぎしぎしぎいぎい、うるさい事この上ない。
「母さんってば。天井軋んでるんだよ。どうにかなんないの?」
「軋んでるくらいどうってことないから安心しなさい。もう10年住んでいるんだから、脆くもなるわよ」
特に意識して足音を立てているわけでも、飛んだり跳ねたりしている訳でもないのに我が家は何故か軋んでいる。シロアリにでも食われているのだろうか?
「それより、学校から帰ってきたんでしょ?ちゃんと手を洗いなさいよ」
「へーい」
ぱしゃぱしゃと手を洗い、しっかりうがいもして、脱衣所のある一階から二階へと上がる。
と、その時。
「っうわっ!」
ぐにゃっとした何かに躓いて階段を踏み外しかけた。がたんがたん。
「なにー?何かあったー?」
「いや!なんでもねえよ!」
僕は足元を見る。そこには何もない。階段にものを置く習慣は我が家にはない。
「……気のせいか」
僕はまた歩き出した。
「ぎいぎい、きゅいい、きぃ………」
泣き声のような軋む音がする。
僕は何となく、躓いたところへ声をかけた。
「ごめんな」
その次の日から僕の周りだけ、どんな建物でも軋む音がするようになった。
三冊め 家×
《編纂済み》
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