一冊目 あざいと

もののかたりべ

「語り部、ではありません。花足部です」




「ねえ、貸本屋って知ってる?」

「知らない。なにそれ」

「都市伝説なんだって!あのさ、あるじゃん?ここら辺で有名な三つの都市伝説」

「はぁ?知らねっつってんだろ」

「貸本屋と、縁切り寺と、将校!」

「ガキが言いふらしただけだろ」

「まーまー、それでさぁ、いまアタシやばいとこに来てんだけどぉ」

「はぁ?」

「チョー雨降っててやっばいとこ。なんか昭和っぽい。ちょーうけるー」

「雨ぇ?降ってねえよ」

「えー?マジ?めっちゃ降ってんだけどぉ」

「お前どこにいんだよ馬鹿だな」

「あっそんでさぁ、なんかやっばいのよ。その貸本屋っていうのが、いつも雨が降ってる路地に迷い込んだ時に見つかるらしいんだけどさ、マジこれじゃね?これじゃねえ??」

「はぁ?なおさら知らねぇよ。どうせそういうのは噂なだけだからさっさと帰れ」

「やーだー。どーせならみつけて帰るもーん」

「はっ。勝手にしろ」

「勝手にしますぅー!じゃあまた明日ねぇ!」

「はいはいまた明日」




その二日後、佐奈の遺体が見つかった。

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