思い出なんて、都合よく薄れてしまうもの。

淡く切ない初恋の記憶。

それは時間とともに美化されて、美談になって、どんなに心の中で脚色されても、結局は過去のことであり、徐々に忘れて行くものです。

主人公は年上の男性に憧れるも、次第に記憶が薄れ、大人になった頃にはおぼろげな思い出として、形骸化してしまう…。
この恋は墓まで持って行く、なんていう誓いも、そのときの感情論でしかなく、大人になって振り返ると、何とも滑稽に写ってしまう。

花火はどこへ消えるのか。
思い出は、記憶は、あのとき感じた真剣な気持ちは、どこへ霧散してしまったのか。

恋愛なんて所詮そんなもんさ、とシニカルに笑うのは簡単ですが、心の在り処について考えさせられる、素敵な掌編だと思います。

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