仇 ― Adauti ― ⑩

「ここはどこだ?」


 再び、俺は緑のコロシアムで倒れていた。


 黒い戦国武者の格好をして、『Adautiあだうち』の手先である仇討人あだうちにんになっていた。

 起き上がろうとするが身体がやたらと重い。この鎧甲冑は犯した罪の重さか? 日本刀は振り上げるだけで力がいる。

 手に写真が握られていた、こいつが俺と闘う敵なのか? 

 裏に、連続幼女誘拐殺人犯と書いてある。四歳から六歳の三人の女の子に性的イタズラをして殺害した犯人だ。の俺からみても反吐へどがでるような糞野郎だった。 

 今から敵を探して、この深い森を72時間彷徨さまよわなくてはいけない。が闘って殺し合うために……。Gショックを手に巻かれて、逃げることも、逆らうこともできない。

 俺たち、凶悪犯を『Adauti』の奴らが簡単には死なせてはくれまい――。死の恐怖を存分に味わってからでしか、楽にはなれないのだ。


 ――最後の優しさ、この手榴弾は自分のために取っておこう。



               仇 ― Adauti ―  完結

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仇 ― Adauti ― 泡沫恋歌 @utakatarennka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ