僕はピーマンが食べられない 13
「でそれはどこに?」
「カバンの中よ!」
でしょうね。想像はしていたけれど最大の疑問があった。
「どうやって取るの?」
「あっ……」
あっ、じゃないだろ。考えてなかったのか。
「むー」
僕に指摘されると金雀枝槐は頬を膨らませ、太平洋にかつてあったとされる大陸の名前をぼやいた。まあ唸っただけだけど。
「そうだ! 竜胆侘助、他に何か超能力が使えないの? 使えるならなんかすげぇので私の縄を断ち切りなさい!」
「そんな無理難題は無理なんだい! 僕はぴ~マンに変身するのが能力だからね。それ以外にはないよ」
「本当にないの?」
「まあ観念動力が使えるには使えるけど、それは変身能力を初めて使った日から使えるようになった副作用みたいなもので、すごいショボいんだ」
「何それ? 観念動力ってなに?」
「念じるだけで動かせるって能力だよ」
「バッカ、じゃ、ない、の!」
何かに気づいた金雀枝槐が「、」と「!」マークごとに僕の体を蹴った。ってか、いくらチョップできないからって蹴るなよ。
「それ使って私の縄解きなさいよ」
「いや縄は無理だね。縛り方が複雑すぎる」
「どんな、もの、なら、いいのよ!」
もう説明するのも面倒だけれど、金雀枝槐は「、」と「!」ごとに僕を蹴っている。どうでもいいけど「!」ってなんか叩いたらキノコ出てきそうな感じがするね。大きくなったら縄も解けてくれるのか。
そんな想像で痛みを紛らわして、金雀枝槐に僕の能力を説明する。
「ものなら五百グラム以下、操作するならカバンのファスナー開けるとかかな」
「じゃあ無理ね」
「な、無理だろ」
「って、バッカ、じゃ、ないの!」
三度目の正直ならぬ三度目の連続蹴りが僕へと炸裂。
同じ場所ばかり蹴られて嫌になってきた。
「カバンのファスナーを開けることができるなら、私のカバンからピーマンを取り出すぐらい簡単なことじゃあないの!!」
「ああ!」
指摘されてようやく気づいた。考えてみればそれもそうだ。
金雀枝槐のギャバンのファフナー、もといカバンのファスナーを開ける。ピーマンを取り出し口元へ移動させ食べる。一連の動作を観念動力で行えばこの状況はいとも簡単に打破できた。
普段、観念動力を遊びにしか使わないから役に立たないものだと思っていたが、よもやこういうときに効果を発揮するとは。侮りがたし観念動力。
では早速。
前述した一連の動作を行い、僕はぴ~マンへと変身した。ただ今回選んだのは緑ピーマンではない。
なぜか色とりどりの種類のピーマンが入っていた金雀枝槐のカバンから選んだのは赤ピーマンだ。
赤ぴ~マンは緑ぴ~マンよりも三倍速く動くことが可能だった。
トウガラシを彷彿させる真っ赤なフォルムのまま、縄を引きちぎる。続けて金雀枝槐を縛る縄も。
「そういやあのおっさん、どうしたの?」
「買い物に行くとか言っていたわね、そういえば」
「のん気すぎるね、それは」
そうやって話していると、玄関の扉が開く音が聞こえた。声を潜める。
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