僕はピーマンが食べられない 2
昼食だけでも栄養のバランスを取ろうと私立
だから昼休憩の前に給食時間ってものがきちんと設けられていて全生徒及び全職員が入れるほどの食堂が完備されていた。
当然、そこで給食を食べるわけである。
だけどもだけど好き嫌いはある。人間だもの。
わけあって僕は給食でピーマンが出ればいつも残していた。一年生のときはクラスメイトの誰にも注意はされなかったけれど、二年生に進級し、金雀枝槐と同じクラスになったのが運の尽き。
たまたま食堂で隣席に座った金雀枝槐は僕がピーマンだけを残すと、なぜピーマンを残すのかと疑問を呈し、許せないと怒鳴り散らした。
もちろん、給食として出てくるあらゆる野菜は農家の人が一生懸命作ってくれたものだ。お残しが許されないのも分かる。だから金雀枝槐が僕を糾弾する理由も理解できなくもない。
しかしだ、同じクラスの
同性だから、友達だから。弱みを握られているから? 理由は分からない。
でもそう考えると、とても理不尽だ。
食堂から逃げ出した僕を、「こぉらー!」と炭酸飲料の名前を叫んだみたく怒鳴りながら追いかけてくる金雀枝槐だが、僕の俊足には追いつけない。
いつも通り僕はピーマンを食べなくて済んだ。抓んでいるピーマンはスタッフがもとい金雀枝槐が後で美味しく頂くのだろう。人の食べ残しを食べるとかそれはそれで気持ち悪いけれど。
「やれやれ……」
ヒロインに振り回され気苦労を重ねるラノベの主人公のようにため息が出た。金雀枝槐がヒロインだと思いたくないけれど。
給食時間からそのまま昼休憩に入るため、早く食べ終わった生徒は残給食時間が休み時間に加算される。
もっとも僕の場合、ピーマンが含まれている給食が出ると金雀枝槐の邪魔(さっきのアレ)によって給食時間がオーバーし、昼休みに突入しているのだが、まあそれもいつも通りだ。
逃げ出した僕は屋上にいた。
都会の高校の屋上がどうなっているか知らないが、田舎の高校の屋上なんてものはフェンスなんぞなく大抵が立ち入り禁止。だけれど八手高校は違った。
辺りを見渡せば、四方八方ネギ畑で他には線路ぐらいしかない、そんな田舎ながら屋上は生徒のために解放されているのでフェンスがきちんとついていた。
自殺防止のためか、天井にも。言うなれば監獄学園。檻の中にいるように思えて大半の生徒には不評だ。
でも僕は好きだった。誰も寄りつかない屋上だと金雀枝槐にも会わなくて済むから。
ガタンゴトンと近くの線路で電車が走る音がした。なんとなく見てみる。その電車は二両編成で、一両目がゲゲゲの鬼太郎に出てくるねずみ男が彩られている。対して二両目はオレンジ一色だ。一両目と二両目のギャップがなんだかおかしくていつも通り笑った。
走り去る妖怪電車を見届けて僕は空を仰ぐように寝そべった。
そのままの状態で、ポケットに入れていたスーパーボールを取り出し、床へとたたきつけた。
勢いよく跳ね上がったスーパーボールは当然、天井のフェンスへとぶつかる。
……はずだった。
だけどもだけどスーパーボールは空中で停止していた。
僕がそうしたのだ。フェンスへとぶつかる前に腕を上げ、手を広げ、念じていた。
僕は超能力者だった。
ただの人間には興味がない少女が僕を見つけたら、国際遭難信号的な団体に勧誘されること間違いないだろう。でもまあそんな非存在青少女はいないので僕も当然勧誘はされない。
何かを動かすとなるとバッグのファスナーを動かせる程度。それなら手のほうが早い。ライター程度の火しか出せない発火能力みたいなものだ。
それでも昼休憩の暇つぶしには持ってこい。
視線で追うように念じてスーパーボールをゆっくりと動かしたり、めちゃくちゃに動かしたりしていく。鍛錬のように毎日使っているけれど性能は変わらない。
でもまあ、実を言えばこの観念動力は副作用みたいなもので、本来はもっとすごい力が隠されている、とかなんとか適当なことをほざいてみる。真相は闇の中。
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