胸に焼き付く、Mが遺した「最後の言葉」の真意

 それぞれの国、それぞれ個人の視点で、Mの死に対する意識や戦争への想いが、とてもリアルに描かれた作品です。

 上辺だけならば誰でも願うことができる世界平和。でもそれは本当の意味では世界平和ではない。世界とは何を指すのか。平和とは何を言うのか。その曖昧な概念で語られるぼんやりとした部分をも指摘した、衝撃的な物語だと感じました。
 話の中で登場するMの口遊む旋律が、リアルな描写の中で優しくも強力な印象を与え、人々に再考の機会を与えているようでした。
 この作品を通して、日常では抱かないような考えに触れることが出来るのではないでしょうか。最後までしっかりと読んでみてください。然すれば、これからの世界平和や、戦争に対して抱く概念すらも大きく変化するかもしれません。

 最終章のまとめ具合が圧巻です。Mの「最後の言葉」の真意に、鳥肌が立つほどでした。少ない文字数で、これだけの意味を込めた文章を書くことが出来る筆力に惚れ惚れです。

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