人の命の、価値の物語。

人間というのはかくも醜悪で、身勝手で、救い難いものなのでしょうか。
作中で描かれるそれぞれの人物の、それぞれの事情。

本当にどうしようもなく身勝手で、そしてそうであるが故に、ストレートに心に刺さります。
それは、誰もが自分でわかっていながらにして、目を背けてなかったことにしている身勝手さだからでしょう。

それは個人の事情だろうと、戦争だろうと、同じことです。同じだからこそ、重い。


大体、こんなところで知ったような顔をしてこの作品のレビューを書いている私もあなたも、この作品の読後、コンビニで弁当を買って何事も変わらず過ごしていくんです。


作中で語られる、先進国の人間と戦争下の国の民の、命の価値の違い。
命の不平等性については語るまでもありませんが、もしそれが、世界的な大スターの命であったら?

一人の男が文字通り命懸けで作り出したもの。
それは、命の価値の重さ、軽さ、どちらをも示唆するものです。


重い話であるにも関わらず、爽やかな読後感に希望が持てる。
これを読んでみんなも平和について考えよう、というのもなにか違う気がする。

その一瞬に、ぜひ耳を傾けて欲しいと思います。
果たして、自分の耳に聞こえるものは、なんなのでしょうか?

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