誰が犯人で、誰が次の被害者なのか?

 私はこの作者のファンでして、こちらの作品も非常に面白かったのでレビューさせていただきます。

 まずはこの物語のキーになっているところから。
 ミックスベリーというチャット仲間でのオフ会が開かれ、早々に第一の殺人事件が発生します。同時に次の殺害が予告されます。
 このスタートから王道のミステリーを予感させますが、事件の性質上、それぞれ自分のハンドルネームを明かしてはならないという制約が発生します。
 陸の孤島となった別荘に閉じ込められた13人。それぞれ殺人におびえつつ、腹の探り合いが始まります。
 主役として活躍するのは千鶴さんという女性。探偵業でも警察関係者でもないのですが、記憶力と注意力に優れた女性、そして論理的思考で事件の謎に迫っていきます。

 この物語のすごいところは、この混乱した状況、錯綜するそれぞれの思惑、そして容赦なく続いていく犯行を克明に描いていくところにあります。
 医学的な知識を織り交ぜながら、事件の異常な状況、さまざまなキャラクターの特徴をあぶりだし、事件全体を追いかけていきます。
 この複雑な事件をよく書ききったな、と思わせる筆力は圧巻です。
 
 やがて明らかになる事件の真相には、現在の世相が反映され、犯人とならざるを得なかった出来事が語られていきます。
 この推理パートがまた面白いのですが、それ以上にドラマパートがまた深みがあって読み応えのあるものになっていました。

 ミステリーを書ける人はすごいな、といつも思うのですが、作者様はいつもこの感嘆をもたらしてくれます。
 ぜひ読んでみてください! 

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