舞台は長野県の山の中にあるペンション。SNSを通じて親睦を深めたベリー好き達の、初めての『ミックスベリー』オフ会が開催された。
だが、メンバーの自己紹介すら始まらぬうちに、第一の殺人が!
そのうえ唯一の通行ルートである吊り橋が落とされ、山道は土砂崩れで通れず警察も来られないという。
閉鎖された空間で猜疑心と恐怖を抱える参加者たちは、自身の安全のためにハンドルネームを伏せたまま過ごすことを決めた。が、そんな彼らを嘲笑うかのように、次なる犯行が……
この、ハンドルネームがわからないという状況が、物語を複雑にしている。もう誰も彼もが怪しく見えるし、何もかもが伏線に思える。チャットルームでの会話や各ベリーの独白にもヒントがありそうだし、ペンションでの言動にも小さな違和感が見え隠れして、あれこれ推理しながら読み進められる。また、十数人もの登場人物の個性や背景もしっかり書き込まれ、読み応え満点。
そして、最後に明かされる真相は………もう、脱帽もの。
作者様天才か! と唸りました。とても悲しく陰惨な事件で様々に感情が揺さぶられましたが、ラストは前向きで読後感も良かった。
謎解きが苦手な人でも、要所要所でいい感じにまとめが入るので問題なく読めるはず。
そして推理好きな方は、ぜひメモのご準備を。
私もメモとペンを用意しましたが、物語に引き込まれすぎてメモを取る間もなく読み終えました。本当に面白いです!
私はこの作者のファンでして、こちらの作品も非常に面白かったのでレビューさせていただきます。
まずはこの物語のキーになっているところから。
ミックスベリーというチャット仲間でのオフ会が開かれ、早々に第一の殺人事件が発生します。同時に次の殺害が予告されます。
このスタートから王道のミステリーを予感させますが、事件の性質上、それぞれ自分のハンドルネームを明かしてはならないという制約が発生します。
陸の孤島となった別荘に閉じ込められた13人。それぞれ殺人におびえつつ、腹の探り合いが始まります。
主役として活躍するのは千鶴さんという女性。探偵業でも警察関係者でもないのですが、記憶力と注意力に優れた女性、そして論理的思考で事件の謎に迫っていきます。
この物語のすごいところは、この混乱した状況、錯綜するそれぞれの思惑、そして容赦なく続いていく犯行を克明に描いていくところにあります。
医学的な知識を織り交ぜながら、事件の異常な状況、さまざまなキャラクターの特徴をあぶりだし、事件全体を追いかけていきます。
この複雑な事件をよく書ききったな、と思わせる筆力は圧巻です。
やがて明らかになる事件の真相には、現在の世相が反映され、犯人とならざるを得なかった出来事が語られていきます。
この推理パートがまた面白いのですが、それ以上にドラマパートがまた深みがあって読み応えのあるものになっていました。
ミステリーを書ける人はすごいな、といつも思うのですが、作者様はいつもこの感嘆をもたらしてくれます。
ぜひ読んでみてください!
ベリー好きが集まるグループチャットのオフ会。
楽しいオフ会になるはずが、そこで殺人事件が起こってしまう。
犯人が次に狙う相手を示す手ががりを残していても、次に狙われるのが誰なのか確実には分からない、そんな状況が作り出されている、謎多きミステリー!
一体、犯人は誰で、動機は何なのか?
メッセージ性も兼ね備えた、読み応えある本格的なミステリーだと思います。読みながらちゃんと推理を楽しめました!(˶ᐢᗜᐢ˶)
そして、本作品は登場人物が多いですが、作品の中でそれぞれが混同することなく役割をこなしている…作者の素晴らしい表現力にも注目です!
是非是非、読んで作者の作り出すミステリーを堪能して下さい(^^♪
面白い作品でした!
とても特徴あるクローズド・サークル系ミステリーです。
まず、登場するキャラクターが「ミックスベリー」というグループチャットのメンバーであること。
互いの本名などの素性はもちろん、誰がどのハンドルネームなのかもわからない。
ハンドルネームは自由につけられるわけではなく、本名に由来があるベリー系の名称でなければならないというルール。(たとえばブルーベリーなら本名に「あお」が入っている、など)
わけあってオフ会会場に閉じ込められた彼らが、次々に起こる殺人事件に翻弄されながら、互いが誰なのか、動機は、トリックは…などを探り合っていくストーリーです。
互いの正体がわからないながらも上記のような縛りがちゃんとあって、さらに事件の状況にいたるまでの経緯が無理なく自然に進行していきます。
殺人そのもののトリックだけではなく、互いの人間関係の相関図を探っていく面白さがあります。
背景にある人間ドラマもとても深いものです。
想像もつかないような、メンバー同士のある因縁とは…?
とても読み応えある作品です。
これは、書籍化されても全くおかしくないです。
ミステリー好きな方はもちろん、そうでない方にも十分に楽しめる作品です。
自信を持ってお薦めいたします!
SNSで知り合った男女がオフ会を開き、舞台のペンションで殺人事件が発生するというクローズドサークルです。
偶然発生した事故になるのかと思えば、それがやがて殺人事件に発展する……その経緯に至るまでの流れが良かったです。適度な間隔の中でお話が進むため、あっという間に作品の世界観へ引き込まれます。登場人物たちも個性的な人ばかりで、事件が起きた時の仕草や言動なども細かく描かれています。
また推理編となるラストで犯行動機を知った時、「犯人は悪くない、悪いのは被害者だ」と感情移入してします場面がありました。殺人を擁護することはあってはならないのですが、私も犯人のような立場だったら同じことをしたかもしれない……そう思ってしまうほど、作者さまの作品に対する情熱や熱意に脱帽してしまいました。
そして『ミックスベリー殺人事件』を読んで、本当の「悪」とは一体何なのかと改めて考えてしまう場面もあります。まさに表裏一体とも呼べる「正義」と「悪」の本当の意味について、作者さまが読者へ問いかけているような気持ちになりました。
人間心理・膨大な知識量・テンポよく流れるストーリーなどの魅力が凝縮されている、私が自信を持っておすすめ出来るクローズドサークル小説です!
ストロベリーやラズベリーといった、ベリーにちなんだハンドルネームを持つ男女が集まったSNSグループ『ミックスベリー』。
その内の12人のメンバーがペンションに集まり初のオフ会を開くことになったのだが、しかし、そこで幹事役であったストロベリーが何者かに殺されてしまう。
さらにペンションと外界をつなぐ橋が落とされて外部からの助けを呼ぶこともできなくなってしまい……。
つまり、本作はミステリーの有名な形式・クローズド・サークルを扱ったもの。
事件は12人の参加者の思惑がそれぞれ絡み合うことで思いもよらない形に事件が進んでいくのはまさに王道の展開だが、それに加えて、本作が面白いのはハンドルネームの扱い方。
この事件では犯人が特定のハンドルネームの持ち主をターゲットにしているため、参加者たちは皆自分のハンドルネームを隠すことになります。
この仕掛けによって「いったいこの中の誰が犯人なのか?」だけではなく、「この人物の本当のハンドルネームは何なのか?」という点を推理して楽しむことができるのがこの作品の大きな特徴。
また全ての解決後に、グループチャットのシーンなどを読み返すと、思わぬ伏線に気付かされるでしょう。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)
クローズドサークルでの連続殺人事件と、ミステリ好きなら一度は夢中になったであろう古典的な舞台設定の本格ミステリです。
ただ、舞台は古典的ですが、クローズドサークルに人々が集まる経緯や動機は非常に現代的です。
あるチャットグループのオフ会のメンバーが惨劇に見舞われる、ということで、ハンドルネームと本名が結びつかず、そこがまた一つの仕掛けになっていたりと奥深いです。
登場人物を整理するのにメモが必要というご意見もありますが、個人的には少しずつ毎日読み、メモなしでも楽しめました。
さすがに序盤は多少混ざりましたが(笑)、謎解き部分に至る頃には、自然と頭に入るくらいの丁寧な情報開示は作者さんがしてくれているので、未読の方は身構えず、本格ミステリの世界を覗いてみてはいかがでしょうか?
Web小説では珍しい、非常に完成度の高い本格派ミステリ。
様々なベリーのハンドルネームを持つチャットのメンバー12人が、オフ会のため集ったペンションで殺人が起き、帰る手段も絶たれてしまう。
急遽本名の公開を取り止めたメンバーだったが、現場に残されたベリーの見立て通りに、次々と事件が起こっていく。
作中ではメンバーのニックネーム(ハンドルネームに非ず)しか明かされず、誰がどのベリーなのか分からないまま話が進む、というのが本作の肝です。
読み手は誰が誰なのかに想像を巡らせつつ、立て続けに起こる事件に直面していくことになります。
一見何の繋がりも見えないメンバーたちを繋ぐミッシング・リンクが、少しずつ解かれていく様には鳥肌が立ちました。
そして、謎が明かされた際には、その背景の理不尽さに思わず涙が滾り落ちてしまいました。
また、日本社会への問題提起という側面もこの作品には込められていると感じます。
タイトルに織り込まれた作者さんの想い・祈り・願いに、誰しも自らを顧みずにはいられないでしょう。
ミステリ好きも必ず満足できる出来映えで、読後感もよく一押しの作品です。 とても面白かったです。
紙とペンを用意し、メモを取りながら読み進めるのがおすすめです。
本作はクローズドサークルでの見立て殺人を主題としたミステリーです。
ベリーにちなんだ名前を持つメンバーだけで構成されるチャットグループが二泊三日のオフ会を開催したところ、参加者が次々殺されて……という筋立てのド直球の本格ミステリーですね。
さて、本作の白眉はやはり「見立て殺人」でしょう。
犯人はオフ会の参加者たちを殺害するとともに、二種類のベリーを残していきます。
ひとつは被害者の見立てとおぼしき潰されたベリー。もうひとつは、次の被害者の見立てとおぼしき他のベリー。
もちろんこれらは犯人がある目的のために残していったものなのですが、この見立てによって本名と紐付いたハンドルネームを知られるのは危険だという認識が早々に共有され、生存者たちが互いにハンドルネームと本名の一部を隠すようになるというのがまず面白い。
小出しにされるベリーたちの独白もあって「誰が何ベリーなのか」は本作においてかかすことのできない魅力的な謎であったように思います。
また、生存者たちがハンドルネームと本名の一部を隠し合うことによってより孤立感が深まっている点もうまいなと思いました(よく推理小説の登場人物が「こんなところで犯人と一緒に夜を明かすなんてごめんだ! 俺は部屋に戻る!」と言い出すことについて冗談のネタにされることがありますが、本作で初日に各々が自分の部屋で寝るのはさほど不自然な行動ではないでしょう)。
そして先ほどさらりと流してしまいましたが、犯人がベリーの見立てをした理由も良い。わたしはたまたま近いパターンのトリックを知っていたためそれで犯人を特定できたのですが、既存のトリックをうまく組み合わせて魅力的でユニークなトリックにまで磨き上げているように思います。
これだけでもおなか一杯ですが、まだあります。とある人物が、ベリーの見立てを利用し、一種の逆トリックを仕掛けるという展開があるのです。見立て殺人という素材をここまで掘り下げることができるとは、と感服することしきりでした。
警察関係の記述と、第二の事件について若干気になったこともありますが、ネタバレになるのでここでは触れないこととします(あ、でもひとつだけ。第二の事件のトリックそれ自体には驚愕しました。すごいです)。
まず間違いなく傑作と言って良いと思います。
骨太の本格ミステリーが読みたい方は是非どうぞ。
外部と連絡の絶たれた陸の孤島。
お互いが初対面のなか起きる殺人事件。
殺人に際して見立てが使われる。
これらのキーワードにピンときたそこのあなた、良い小説ありますよ!
それがこの「ミックスベリー殺人事件」です。
主人公たちは果実のベリー類の名前をハンドルネームを使うチャットのメンバー。そんな彼ら・彼女らがはじめてオフ会を行うことになる。奇しくも、これもまたベリー農園を併設するペンション・カシスで……。そして彼らは実物のベリーを予告のように置かれることで次の犠牲者を知るのです。
古き良きクローズドサークルものと言ってしまえばもはや説明はいらないでしょう。
興奮はここまでにしておいて、中身のほうに入らせていただきます。筋書きもさることながら、ストーリーのなかに一人ひとりの思惑がきちんと組みこまれている点が素晴らしい。心理状況などもちゃんと配慮されているのもかなりの好印象。
十人を超える登場人物は完全にバラバラな個性の持ち主で、それほど混乱することもありません。さらに挿入される独白は、「このHNは誰なのか」と読者に想像・推理させることもできています。また、最後の種明かしに関しても、無理のないところから少しずつ読者を説得し、納得させていく手法もちゃんとできているのがすごい。
まさに「クローズドサークル物の王道」ともいえる本作。
とはいえ、読む人にとっては王道である分物足りなさを感じるかもしれません。ある程度予測がつくことも……しかし、それがどうした! はじめてクローズドサークル物を読んだあの懐かしい空気がここにはあります。
いやむしろ、はじめてミステリーを読むという方には、ここからその道へと転がり落ちてくることを期待しています。
ミステリーとはこんなに面白いのだ!
それにしても、これを一つ書き終えるのにどれほどのものを調べ上げたんでしょうか……。それぞれの登場人物にあてはめられたベリーの知識ひとつとっても、上等な伏線のような気すらしてしまいます。
読了後、「美しい」という言葉が浮かぶ。そんな、謎の絡み合いもそこに込められたメッセージもこの上なく秀逸な、磨き抜かれたミステリーです。
SNSで知り合った、実名も顔も知らないメンバーが初めて会うオフ会で起こる殺人事件。メンバーたちの心の動きと、それぞれの行動。登場人物たちの動きがもつれることなく、読む者の頭にすっきりと流れが入り込んでくる文章運びは見事です。
そして、この事件の裏側に隠された、残酷な現実。それが明らかになる時、社会の深い闇をも見せつけられる思いがします。
細部まで行き届いた緻密な設定は見事としか言いようがありません。そして、登場人物達の心の変化など情緒的な部分についても深い味わいを楽しめる点も、この作品の大きな魅力です。
読んだ後、様々な思いと大きな満足感が心に残る。多くの方にぜひ楽しんでいただきたい作品です。
とにかく最初に思ったのが、この人数の実名とハンドル名が入り乱れるのか……という気持ち。これはハードルが高そうだぞ、と思ってしまった。いくらクローズドサークルの話と言っても、やはりWeb小説で十人以上が一度に出てくるのは多いだろう、と。
しかしこれが読みすすむうちに次々に起きる事件と過去の出来事、真相への謎ときにつながっていき、全く飽きない。個性のあるキャラクターや様々なベリーに関するTIPSを取り入れる遊び心がありつつ、メインのストーリーは要所要所で「これは!」と思える展開が待ち受けていて、ラストまで楽しむことができた。
この大作を論理的な整合性を意識しつつエンターテイメント性や社会派的メッセージも存分に取り入れた作者の意欲には感服するしかない。
見事なミステリです。
私には書けない。