転がってるのね

きっと本当はここには書ききれないご苦労もなさったことでしょう。
だいたい人をお風呂に入れるというだけで普通はものすごく大変。
でもそれがこの作品では当たり前のように淡々とつづられていきます。
けいちゃんがオムツをはくようになる。けいちゃんは23歳。これは家族にとってきっと衝撃的だったはずです。でも、この作品ではさらりと流されていく――ようでいてラストでは普通のパンツになっている。
この物語は闘病生活という激しく熱い物語ではありません。病が日常生活の延長線上にある。そのことを気づかせてくれます。

非常に読みやすく淡々と書いている裏での、心の動きや時間軸の長さも感じられます。
言葉の使い方が大変上手で、必要なものをビシッと必要な所にはめ込む点がいいと思います。

ネタバレを含みますので、読んでいない方は読まれてからをお勧めします。

作者である妹さんのご苦労は相当なものであったでしょう。余裕のない人と毎日多くの時間を過ごすのは、こちらの余裕がなくなるのも当然だと思いました（途中完全にこちらの余裕がなくなって注意する場面があったかと思います。）。また、省いている部分が多い、というのはその通りだと思いました。少しずつしか進歩せず、そして、本当に様々な感情が巡るものの、それを小説に書くのは、まとめるという点でも難しい作業でしょう。最後は安定して良かった、という気持ちは確かに大きいですが、作者さんが疲弊して体調を崩しはしないかというところが心配になりました。…続きを読む