第8話
それまで毎月1回は病院で検査をしていたのですが、ここにきて急速に悪化。入院が決定です。
受験終わってからじゃダメ? と担当医に訊きましたが、そんな事言ってる場合じゃないらしい。
帰宅して親に報告。その夜のうちに家族会議です。
妹が「お兄ちゃん死んじゃうの?」と目をキラキラさせながら口にしたのをハッキリ覚えてます。悪かったな期待にそえなくて。
とりあえず、医師と交渉の結果、次の佐藤忠志先生の講義を受けてから入院することになりました。
佐藤忠志先生の講義は、他の英語講師たちの嫉妬にまみれたネガティブキャンペーンにも負けず(実際講義中にクソミソに言うんだこれが)、講義開始2時間前から列ができます。その待機中の列の中で、自分が来週から入院して受講できないことと、誰か講義をテープに録音してくれないかと、大声でお願いしました。いや、親切な人はいるものです。申し訳ありません、お名前は失念してしまいましたが、本当に助かりました。ありがとうございます。
この時期、親には減らず口たたいて看護婦さんたちにも軽口たたいていたけど、実のところ内心哀しくて心細くて悔しくて、入院中の消灯後のベッドの上では、いつも独り泣いてました。自分の病弱さが足をひっぱる、いつまでそんな状況が続くのだろう。今後何かやりたい事、やるべき事が出てきても、また病弱さ故に挫折してしまうのか。こんなことがずっと続くのか。
そんな中、一つの希望としてあったのが、「帝都物語」で登場した大蔵省官僚
大学に受かろう。そして、この弱い身体をなんとかしよう、そうベッドの上で思いながら、1987年のクリスマスまで入院を続けます。
この年、世界はゆっくりと動いていきます。
岡田斗司夫たちを最初に取り上げた雑誌「アニメック」が休刊し、DAICONフィルムはガイナックスへと進化し、「オネアミスの翼」が公開されます。
「うる星やつら」と「めぞん一刻」の連載が終了し、「らんま1/2」の連載が始まります。
「帝都物語」が日本SF大賞を受賞し、翌年には映画が公開されます。
そしてこの年の末、本格的に中国拳法を扱うマンガ「拳児」の連載が始まるのです。
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