第6話
誤解されるといけないのでハッキリ書いておきますが、ちゃんと勉強もしてたんですよ。
絶望に満ちたお気楽浪人生活の中で、さすがに自分の適性の変化に気づき、1浪中に進路を文系に変更しますが時すでに遅く、めでたく2浪が決定。もう目の前が真っ暗になりました。
絶望の中で唯一の救いは、2浪目の代ゼミで佐藤忠志の英語と武井正明の地理を受講できたことです。この両先生の講義は絶品で、後々までその思考法は役立ちました。
例えば、武井正明先生の場合、「国際情勢は北極を中心とする地図を見ないと理解できない」「北極海は地中海、日本海も地中海、インドネシア周辺も豪亜地中海」「ソビエト封じ込めの西側の同盟関係国と、それを突破しようとするソビエトの同盟関係国」「欧州石炭鉄鋼共同体から始まるECの最終目標はヨーロッパの統一」とか、物凄くためになりました。今でも世界地図が空で描けるくらいです。
佐藤忠志先生の場合、「君たち、眉間にしわ寄せて脇目も振らず頑張って合格するのも、仲間や恋人と楽しく勉強して合格するのも、結果は一緒だったらラクして勝つ方がいいだろ。ラクするための努力ならいいんだよ。努力は手段で目標ではない」という、発想の転換が新鮮でした。
一例ですが、講義中に「君たちの中に、何か武道をやってる者はいるかな?」と生徒たちに質問してきました。1人学生が挙手します。
「君、何をやってるのかね」
「剣道です」
「ほう! 段はどのくらいだ?」
「三段です」
「それは凄い! 私が刀を構えてまともにやっても、到底彼には勝てません。ところで君、もし、私が、槍を構えていたら、君勝てるかね?」
「……無理だと思います」
「そうだろう! いいかい君たち、目的は勝つことだ。勝つためにはルールを変えてしまうんだよ!」
なかなか刺激的な講義であります。
佐藤忠志先生は、この年の講義が代ゼミ最後の講義でもありました。
さて、文系に切り替えたので、活字読むのも勉強のうちになります。
といっても、そうそう毎日同じアダルトウルフガイや幻魔大戦ばかり読んでいても点数はあがりません(当たり前だ) 。
高校時代の友人が勧めてきた本を試しに読んでみました。こいつは同じ化学部の部長をやっていて、特撮趣味のクセにストレートで国立大学に入学、その後すんなり高校教師となり、なぜか未だに不祥事も起こさず先生やってます。なお、当時私は副部長、部員は2名。
それはともかく本ですが、これは当時読んでいたSFアドベンチャーの書評読んで興味あったし、書店でもよく見かけるので読んでみようとは思っていたんです、
荒俣宏の「帝都物語」を。
正直言いまして、1巻目は読みにくかった(個人の感想です)。
2巻目からは思いっきり嵌りましたね。どのくらい嵌ったかと言えば、白い手袋買ってきて五芒星の刺繍をして神田明神へ行ってしまうくらいです。バカですね。
とかく人間やらなきゃならない事がある時ほど、別の事をやってしまうものです。浪人中の2年間、「月刊OUT」の投稿コーナーには、毎号どこかしらにハガキが採用されてしまうほど逃避行動をとってました。不思議なもので合格したら採用されなくなってしまうのですから、逃避行動も切羽詰った真剣なものだったのかもしれません。そうだ、この時期は「アニメック」にも「SFアドベンチャー」にもハガキが載りましたよ。いかに現実から逃避したかったか判ります。
自分はやるべきことから逃げてるクセに、やれ「一度の試験でその後の人生が決まるなんておかしい」とか「卒業した大学などで人物を判断するようではいけない」とか考えたりするんですよこの時期。ふざけてますね。思い出して腹立ってきた。自分のことなんですが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます