第11話

 今度の入院は、入試が終わって大学生としてですし、前期試験も終わってからだったので、気持ちとしては楽でした。(親の懐とか一切考えてません)

 入院そのものを「クーラーの効いた部屋で数週間の休暇」くらいに考えてました。


 有り余る時間を過ごすため、本を大量に持って行きたかったのですが、さすがに邪魔になるので厳選します。

 当時読み始めていたC.W.ニコルさんのエッセイの文庫本を数冊、劇場版第1作が上映され(この時点では未見)、原作も面白いと評判の「銀河英雄伝説」1巻目、そして聖書です。


 聖書読んで何したかというと、創世記から読み進めながら、アダムとイブから始まる血筋の系図を書いていたんですね。これが結構面白かった。出エジプト記までは読んでしまいました。時間たっぷりあるから出来た作業です。

 あと、すっ飛ばして新約聖書全部読みました。ここら辺、平井和正の影響どっぷりですね。でも聖書の基本知識を得たのは良かった。後にかなり役立ちました。


 また、C.W.ニコルさんのエッセイ、これもまた視野と世界を広げてくれました。目の前にあるのが病院の壁でも、見ているものはアラスカの氷原であり、革命前のエチオピアの自然公園であり、鯨を追う南氷洋であり、熊も出てくる黒姫でありました。最初に買った本は、たしか「冒険家の食卓」だったはず。この本、地震に見舞われた後に泥棒に入られた古本屋倉庫のような私の部屋の中のどこかにあるはずなんですが、未だ発掘できずにいます。ニコルさんのエッセイにも、結構影響受けました。砂糖をたっぷり入れた濃い紅茶とか、ウイスキーを振りかけた豚肉とか、そんなところもマネします。

 で、C.W.ニコルと平井和正の両方に影響受けるとどうなるか。

 大学が夏季休暇に入った途端、秩父線を熊谷駅から三峰口まで全て踏破して、そのまま三峰山を麓から山頂まで登りきるという事をやってしまうわけですよ。山頂には(ウルフガイゆかりの)三峰神社がありますからね。

 どうもこれが、再入院の原因にもなったような気もするのですが、まあ仕方ないです。

 あと、松田隆智の中国拳法の入門書も持っていきましたっけ。なんだ、結構持っていってたな。


 そうだ、中国拳法へのあこがれも、平井和正が大きかったんだ。

 平井作品に何度も登場する中共工作員の林石隆リンスールン、特に「死霊狩りゾンビー・ハンター」の林石隆がかっこよくて好きでしたね。

 私の場合、ブルース・リーでもジャッキー・チェンでも、ましてやケンシロウでもなく、平井和正作品の林石隆が中国拳法そのものでした。

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