第14話

 なんてタイミングだ。

 年号が替わる前後の事を書く準備してたら、陛下が退位のご意思を発表なされたり、それを宮内庁が否定したり、現行憲法では生前退位が難しいとかなんとか、いろいろ騒がしくなってきた。


 当時のことを記憶に頼って書いてみます。


 1988年、大学に入ってからコンビニのバイトを始めました。

 でも1年しか続きません。理由は、すぐ入院するから。

 8月末に退院して、またバイトに復帰しましたが、すぐ冬にまた入院してしまうのだから困ってしまう。

 まぁ入院話はとりあえず置いといて、今はバイトの話をします。


 消費税導入は1989年4月1日からです。

 それを見越してか、商品にバーコードが急速に普及してきました。

 たしか「マスターキートン」の1巻は1988年末の発売で、裏表紙にバーコードはありませんでした。「沈黙の艦隊」の1巻は消費税導入後の1989年末発行ですが、巻末のバーコードはしばらくの間つかなかったです。ですがマンガ雑誌は早い時期にバーコードが付けられました。30円のアイスにまで付くようになります。レジを打つ側からしたらかなりラクになりました。

 コンビニバイトは、お客さんが少ない時もやる事が多いので、狭い店内をクルクル動き回ります。到着したお弁当のチェックと陳列、棚に少なくなった商品の補充、コピー機のメンテ、ぐちゃぐちゃにされた商品の整列、古い食品の除外、おでんやアイスなどの準備、などなど。

 バイトの時間が終了すれば、こちらもお客さんです。

 この時期に、家で飲むコーヒーがインスタントからペーパードリップに変わります。店で買って挽いてきたコーヒーを飲むようになったからです。これは家族にも好評で、うちの実家は以来今に至るまでコーヒーはペーパードリップです。あと紅茶もいろいろ買いました。これらは銀河英雄伝説の影響、ではなく、新井素子の影響ですね。新井素子の「星へ行く船」シリーズ、水沢所長の奥さんがお茶に異様に詳しい人で、例によって例のごとく影響受けていろいろたしなんでみました。

 あと、マンガ本も買いましたね、当然ですが。

 バイト先で買ったのをはっきり覚えているのは、星野之宣の「2001夜物語」全3巻と、手塚治虫の「アドルフに告ぐ」全5巻です。特に「2001夜物語」は繰り返し読みましたね。回数は覚えてませんが、後に「まんがの森」池袋店で輸入物の英語版を、はじめて海外旅行した台北の本屋で、中国語版(繁体字版)を買ってしまうくらいに読み込みました。星野之宣はその後単行本をドンドン買い揃えます。


 1988年は陛下のご病状が逐一報じられ、これまでの年末とは違った雰囲気でした。野球チームが優勝してもビールかけを自粛したのは有名かも。「芸人殺すに刃物は要らぬ」と題した、傘貼り内職をする染之助染太郎のイラストが載ったのは朝日ジャーナルだったかな?


 いろいろ大丈夫かなあと思いながら、年末年始を迎えます。

 コンビニは年中無休ですから大変です。

 正月三が日は夜間だけじゃなく日中も応援に行きました。コンビニしか店が開いてないから朝から大盛況。レジ打ちがパニック寸前です。お弁当も正月仕様となってました。お赤飯は通常より多く仕入れてます。


 そして、昭和64年1月7日を迎えます。この日をもって昭和が終わります。昭和64年はたったの7日間しかありません。

 小渕恵三内閣官房長官が新元号「平成」を発表します。翌日1月8日が平成元年の初日です。

 テレビは特番だけとなりCMが流れなくなりました。

 そのためレンタルビデオ屋はどこも大盛況。まー、そんなもんです。


 その日の夜、バイトに行って最初にやったのは、夜の便で届いたお弁当などの数量チェックと、その中からお赤飯を取り除くことでした。店内のBGMはすべて停止。いつも何かしら音楽とか商品案内のテープが回っていたので、静かだと逆に落ち着きません。


 今回更新が遅れたのは、昭和と平成の切り替わる時期のことを思い出していたから、だけではありません。

 この時期、実は結構充実していました。

 学外のサークル、いや、ある作家のファンクラブの活動に力を入れてました。この記憶を引き出すのが、実は苦痛でした。

 自分が本気で取り組んでいた活動を、自分の不始末で潰してしまったのです。

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オタクの異常な熱情 または私は如何にして心配するのを止めて空手を愛するようになったか 皆中きつね @kit_tsune

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