必ず泣けます! 思い出は色褪せない。

切なすぎる叙情的な文章が涙せずに居られない、非常に技術力の高い小説です。

卒業式の夜にみんなで行なった、遠足という名の肝試し。
そこで遭遇した生首の怪異を、論理的に解き明かすのですが、これがまた甘酸っぱい青春の思い出とあいまって、胸に来るものがありました。

1話に2万文字ありますが、すんなり読めてしまいます。当時の出来事と現在を交互に書くことで緩急を付け、何より肝試しの様子がスリルに満ちており、あっという間でした。

京都の地理にも長けていて、酒呑童子の首塚など衒学面もバッチリ。
確かな知識に基づいて執筆されているため破綻がなく、真相に至るヒントも無駄がありませんでした。

何よりも、最後に。
幽霊なんて居るわけないじゃない、と彼女は呟いたけれど。

確かにあなたはそこに居て、微笑みかけていたのですね。

誰もが老いて行く、その坂で。

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