2人でお寿司

「ねぇ、沙良。食べに行くって言ったってどこ行くの?」

「今私寿司食べたい気分なんだよね。回転寿司行こ」

「いいね。ここらへん結構店多いから良いよね」


 沙良と私は回転寿司を食べに行くことになった。沙良の家の周りにはたくさん飲食店がある。ファミレス、寿司、焼き肉、ラーメン……少しうらやましい。


「うーん、何食べようかなぁ……とりあえず茶碗蒸しと、いくらと……沙良は何食べるの?」

「じゃあねぇ、マグロとサーモン」

「おっけー」


 私と沙良の分を注文する。人があまりいないせいか、流れている皿はあまりなかった。それでも注文したのが来るまで待ちきれないのか、沙良はちょくちょく取っては食べていた。


「あ、沙良、来たよ。……『沙良』の『皿』が来た!」

「……」

「なんでもないです」


 沙良が真顔になった……


「あっ!」

「優香!? どうしたのいきなり」

「いや、なんでもない」


 しまった……寿司屋でどうやってイチャイチャすればいいんだ……? あーんもできないじゃないか……!

 沙良の意見を聞いてみよう。


「ねぇ沙良。私になにかやってほしいことない?」

「うん?」

「なんでもいいよ!」

「えーと……じゃあいくらちょうだい?」

「うっ……それは」

「なんでもいいって言ったじゃん!」

「わかったよ。口移しね」

「何いってんの?」

「冗談だよ……じゃあ一粒あげる」

「やったー、流石優香だね」

「はい、あーん」

「あーん」


 寿司屋じゃあーんできないと思ってたけど、できた! それにしても沙良が素直にあーんしてくれるとは。進展した、と言って良いかもしれない。

 しかし……


「あーんだけじゃ物足りないよぉ! もっとイチャイチャしたい!」

「ちょっ、優香!? いきなり何!?」

「沙良ぁーっ!」

「駄々っ子かよ!」


 あーんだけじゃ物足りないのだ。私と沙良の仲なのに、それだけなんて……!


「うーーん……どうすれば……」

「優香が何考えてるか、わかりたくないけど分かるよ……」

「もう口移ししかないのか……!」

「場所考えてよ……」

「たしかに、ごめんね」

「いいよ」


 そうだった。場所が場所だ。沙良は人の目がある場所でイチャイチャしたがらない……覚えておかなければ。流石にこんなことをやっていて嫌われていたら元も子もない……





「ふぅ、久しぶりに寿司食べたよー。てか沙良結構食べるね……私が小食なだけかもしれないけど」

「優香が小食なだけだって! 4皿だけ食べてお腹いっぱいって言われたとき超びっくりしたよ」

「そっかー、やっぱ少ないか」

「てかゆっくりしすぎたね。もう2時だよ。どうする? 1日メイドとか言ったけど私別にやってほしいこと無かったし……」

「じゃあメイド服着て沙良の家でゆっくりする」

「おっけー、気に入ったの? メイド服」

「まぁ着る機会無いしね。あれ買ったの?」

「うん。意外と安かった」

「へぇ」




 沙良の家に着いてメイド服を着ると、眠くなってきた。そういえば、午前中寝ようとして結局寝てない。

「沙良、眠い……」

「私も眠いよ……膝枕して」

「私も眠いんだから腕枕でいい……?」

「いいよ……おやすみ……」


 腕に沙良の体重を感じながら、眠りに落ちた。

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