2人でメイド・ご主人様
「お邪魔します」
沙良に言われたとおり、朝9時に沙良の家に来た。なんでこんな朝早くに……夏休みはいつも昼まで寝てるから、起きるのがつらかった……
「優香、ようこそ。早速これに着替えて」
「これって……本気か」
沙良が私に手渡してきたのは、メイド服だった。ここまで本格的にやるのか……私はてっきり、ちょっとメイドごっこみたいなことをするだけだと思ってた。自分から喜んで着たいとは思わないが、仕方ない。
「おまたせ……」
「お、優香似合ってんじゃん。じゃあ何してもらおうかなぁ……」
「ねぇ、沙良、1日っていつまで?」
「夜まで、かな。あ、そうだ。ご主人様って呼んでみて」
「ご主人様!!!」
「そんなに叫ばなくても。うーん……何してもらうか考えとけばよかったなぁ」
特に私にしてもらいたいことは無いらしい。じゃああんなお願いするなよ、という話だ……沙良は結構無計画に行動するからなぁ。
「ねぇー何かしてほしいこと無いのー? 暇だよーご主人様ー」
「ええ、じゃあ肩もみ……?」
「適当すぎ! いいけど」
沙良の肩をもんでやる。沙良は「あぁ~気持ちい~」とか呑気なことを言っていた……
「肩もみ以外になにか無い? 沙……ご主人様」
「う~ん……あー気持ちいい……そうだなぁ……」
「……寝ていい? 今朝起きるの早かったせいで眠いんだけど」
「えー、せっかく今日は私の専属メイドさんになってくれたのに寝るの?」
「だって沙良……じゃなくてご主人様何も言わないじゃん……ふあぁぁ……」
ついあくびが……私が眠気の波に飲まれそうになっている時、沙良が口を開いた。
「そうだ! 私を甘やかして!」
「甘やかす?」
「うん」
「……具体的には何をすればよろしいのでしょうか」
「それは……自分で考えてよ」
難しい問題を出されてしまった。甘やかす……? よし、膝枕をして撫でてみよう。
正座をし、自分の膝をポンポンと叩く。
「ほーら、おいでー」
「え、何?」
「何って、膝枕だよ」
「……優香の『甘やかす』は、そういうのか……悪くないね」
そういいながら、沙良が私の膝に頭をのせる。沙良の頭は向こう側を向いている。恥ずかしいんだろうな。
「よーしよし」
沙良の頭を撫でてみる。身体を緊張させていた沙良だったが、撫で始めると体の力を抜いてくれた。それにしても本当に撫でやすい頭だ……
「……すぅ……すぅ……」
「あれ? 沙良? 寝ちゃったの?」
「………………」
数分後、沙良が眠ってしまった。撫でられて眠ってしまうなんて……可愛いなぁ。
「沙良、寝ちゃったんだったら私も寝ちゃおうかな……」
私も眠くなってきた。このまま眠ってしまいたい……そう思った私は、沙良に覆いかぶさるようにして眠ろうとして……顔が私の目の前に来た。
とっさにキスしたい衝動に駆られる……しかし、寝ている時に勝手にするのはいかがなものか。欲求と理性がしばらく戦った後、ほっぺたにキスをするということになった。
私は身体を起こし、沙良の頬にキスをする。
「沙良……寝顔、可愛いよ。チュッ」
「うーん……? あれ、私寝てた……?」
沙良が起きた――! 勝手に頬にキスをしたことに気づいただろうか。
「ごめん、起こしちゃった?」
「いいよ。寝るつもりなかったし……撫でられて寝るとは、まるで赤ちゃんじゃないか……!」
「まぁまぁ。よしよし」
「やっぱなし! だいたい、ご主人様がメイドに甘やかされるなんておかしいよ」
「自分で言ったんじゃん……」
自分で言ったことを自分で否定している。沙良は直感で生きてるような人だなぁ……
「そうだ、お昼ご飯作ろう。メイドさん、作ってー」
「料理……? 私料理は家庭科でしかやったこと無いよ」
「えぇ~っ! なんか優香って完璧人間みたいなイメージあったから料理もできるものかと」
「残念」
お昼作ろうって、今日は両親はいないのかな。聞いてみよう。
「沙良、今日お母さん家にいないの?」
「うーん、なんか今日は帰ってくるの夜遅くになるみたい。だから昼食代と夕飯代もらってるの」
「もらってるのに私に作らせようとしたの!?」
「いやぁ、最近金欠で……」
「もう……そうだ、一緒にどこか食べに行かない? 私は自分の分は自分で出せるから」
「お、いいね」
「じゃあ私着替えるから」
「うん」
沙良と一緒に外食をすることになった。こんなことはめったにない。どこに行くのかな……楽しみだ。
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