2人でお勉強
7月25日。夏休みの昼下がり。私は昨日のことを思い出してリビングで悶々としていた。あのことがずっと頭から離れない……!
『私……優香のことが好きかもしれない……恋人として 』
「ひゃあああああっ! うわああああああっ!」
「優香! うるさい!」
「ごめんお母さん、つい」
つい奇声をあげてしまった。しかし仕方ない……あの時の沙良の顔が忘れられない。顔が真っ赤だったのは気分が悪かったからか、それとも……
「あああああああっ!」
「うるさいって!」
「ご、ごめん」
またついうっかり。しかし、ずっと沙良のことが頭から離れなくて、なんだか疲れてきた……それに、なんだか沙良に会いたい気がする。昨日会ったのに。
そうだ、沙良の家に行って、一緒に夏休みの宿題をしよう。名案だ。早速電話をかけてみる。
「もしもし、沙良?」
「ゆ、ゆゆ優香? どどどうしたの?」
「そんな慌てなくても。今日さ、沙良んちに行っていい?」
「えっええっ!? なんで!?」
「いや、夏休みの宿題一緒にしないかなーって思って。嫌ならいいよ……」
「嫌じゃないよ! 待ってるね」
沙良のやつ、緊張してたのかな? 私ももちろん緊張したけど、それを表に出さないようにできた。実は、そこまで宿題がやりたいわけじゃない。ただ沙良に会いたいだけだけど……「特に用はないけど会いたい!」と言えるほど勇気はない!
「お邪魔しまーす」
「私の部屋に入っといて。飲み物とか持ってくるから」
「おっけー」
沙良の家に入るのは初めてではない。以前からよく遊びに来ていたが、今は二人の関係が違う! なんとなく緊張してしまう……
「さて、では数学をやろう。優香くん、私に教えてくれたまえ」
「尊大だなぁ」
「教えてよぉーっ! 数学得意じゃん!」
「しょうがないなぁ」
宿題を一緒にやろうと言ったが、実際のところは私が教えることになりそうだ。でも、悪い気はしない。人の役に立てることは嬉しいし、相手が沙良であれば――自分の大切な人であればなおさらだ。
「ここ分かんないんだけど……どうしてこうなるの?」
「それはねぇ……」
「うーん? あー、なるほどね!さすが優香ー」
「それほどでもー、あるかな」
「あれー、なんかおかしくなっちゃった……どこがおかしいのかな」
「……ここで計算ミスしてるよ」
「おっと、うっかり。ありがと」
数分おきに沙良が聞いてくる。そんなことを1時間ぐらい続けた頃……
「つかれたーっ!疲れたよ優香!」
「ちょっ……」
いきなり沙良が抱きついてきた! ふわっと沙良の香りが舞い上がって私に纏わりついてくる……あぁ、落ち着く……じゃなくて!
「あ、あ、さ、沙良?」
いきなりのことにパニックになる。何をしようとしてるの!? 何をしてるのか聞こうとしても、口が上手く動かなくて喋れない。だめだ、いきなりこんなことをされると対応できない!
「ねぇ、優香は私の事好き、なんだよね? 友達としてじゃなくて、その……」
抱きついて、私に顔を押し付けたまま沙良が私に聞いてくる。
「そうだよ。当たり前じゃん。昨日言った通りだよ。好きじゃなくなったりしないから、心配しなくていいよ」
優しく語りかける。私が沙良のことを嫌いになったりするわけ無いのに……沙良は心配してたのかな。そんなことを考えると、沙良を愛おしく思う気持ちがこみ上げてきた。私の左手が自然に沙良の体を抱き返し、右手は沙良の頭を撫で始めた。
「昨日からずっと心配だったんだよ。いきなりあんな事言って、嫌われてないかって……信じていいんだよね?」
「もちろんだよ。ねぇ沙良……」
「うん?」
沙良の顔を上げる。顔は紅潮していて、目は涙目で今にも泣き出しそうだった。なんて可愛いんだ……! そんな沙良を見ていると、なんだか……
「キスしていい?」
「いいよ。私は優香のものなんだから、いつでもいいんだから……」
「私のものって……私も沙良のものだよ。んっ……」
「……………………っ! 長いよ!はぁ、はぁ……」
「ごめん、あまりに沙良が可愛かったから……」
「そんなことを真剣に言わないで! 恥ずかしいよ!」
「照れてる沙良も可愛いねぇ~」
「ん~~~っ、もう! 私は絶対あんたのこと可愛いって言ってあげないんだからな!」
「えー、言ってよー」
「言わないよ、私おこだから」
「ごめんよ、沙良ーっ! おこんないで! ほら、勉強の続きしよ?」
「教えてくれたら許してあげる」
「いくらでも教えてあげるよーっ!」
そこからは二人で一緒に夕方まで勉強した。その間ずっと真面目にやっていたとは言えない……一度もキスしてないとも言えない。どちらからともなく……
「もうこんな時間かー、お疲れ、沙良」
「お疲れ、教えてくれてありがと」
「いいよいいよ。教えるのも楽しいしね」
「ねぇ……」
「うん、また一緒に勉強しようね」
「もう、私の言いたいこと先に言わないでよ」
「ごめんごめん、じゃあね」
「ちょっと待って」
そう言うと、沙良が私に顔を近づけてきた。
「うん……」
「じゃあね、優香。またね」
「またねー」
幸せな一日だった。こんな日が永遠に続けばいいな……そんなことを考えながら帰路についた。
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