ちょっと宇宙まで、恋をしに行くの。すれ違うあなたへの書き置き。

この惑星を構成する元素の数を、種類を、私は知らない。
およそ70億超の人が住む地球という惑星で、平均80年ほどしかない一生の中で、私たちが知ることの出来るものはとても少ないし、出会うことの出来る人はもっと少ないだろう。

宇宙の果ては遠く、とても近い位置にいるはずの月でさえ38万km以上の距離がある。
時速270kmの新幹線に乗っても2ヶ月近い時間がかかる計算だ。
隣の惑星に至っては、金星が4200万kmで火星が7800万kmだという。

そんな遠い遠い場所に、彼女はちょっとそこまでと言うようにふらりと出かけてしまう。
だから留守にすると思う、なんてあっけらかんと笑う彼女は、まさに恋する惑星。いや恋るす惑星。

彼女の想いは、ウインクは、言葉になって光になって姿を変えながらぐんぐんと惑星の彼方を目指していく。
光の尾を引く彗星のようだ、と私は思った。気がつけばその光に恋をしていた。

どのくらいの距離があるのだろう。そんなこと全然わからないけれど、その光の欠片は私が握りしめた小さな窓に降ってきた。この広い銀河系で、天文学的な確率で。

会いたかった。そんな言葉が、どちらからともなく生まれる。

夜の暗闇で、液晶ディスプレイの光がぼうっと輝いた。
あぁ、私は今。恋をしている。

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