この物語は、暗い。痛い。そして、とても悲しい。何より感じるのは、何気なく描かれている現実に妙なリアリティがあるという薄気味悪さだと思う。
創作の中の出来事だと頭ではわかっているのに、なんだか読み進めるうちに取り憑かれたように重たい気持ちが胸をじわじわと侵食していくのだ。
この作品そのものが中毒性のある薬物のように、私を捕らえて離さない。
薬物、というテーマを中心に据えながらも、その実この作品が本当に描こうとしたのは「人の弱さ」であり、またそこから逆説的に導かれる「人の強さ」なのではないかと勘ぐってしまうくらい、強く何かを考えさせられる作品だと思う。
登場するキャラクターたちが抱える闇も非常にバラエティに富んでいて、作品としての短さからは想像できないほど濃密な展開を見せる。
万人受けする作品ではないかもしれない。しかし、個人的にはこのカクヨムで「読まれるべき」作品であると思った。