記号化の功罪

 武器といえば剣、旅をしながら戦うのは冒険者、冒険者をまとめるのはギルド……そんな「当たり前」に切り込んだエッセイです。

 定番のイベントやアイテムは、ネット小説としては便利なものです。定番になるだけの理由がありますし、そこで作品の個性を出せればそれだけで強みになります。
 しかし、それだけではあまりにも浅い。昨今では、ギルドで中堅の冒険者に絡まれる、魔力計測機で主人公が特殊な結果を出す、などの展開は忌み嫌われる風潮があります(個人の感想)が、本質的には「ギルド」「イベント」「武器屋」「冒険者」などの要素自体もそれらと同じではないでしょうか。
 このエッセイでは、そういう「当たり前になってしまって誰も深く考えなくなった安易な記号化」をまとめて「ゲームファンタジー」と表現しているように思います。
 ゲームファンタジーは、わかりやすさ、面白さ、という圧倒的な強みがありますが、そこに歴史や背景はありません。あるのは、これはそういうものなのだ、という暗黙の了解と開き直りだけです。

 このエッセイを古典ファンタジーに毒された世代の言葉だと切り捨てるのはあまりにも愚かしい。
 少なくとも、この程度の「当たり前」に「なぜ」と問いかけられない人に、読者の胸を打つ物語を書けるはずがないのですから。

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