なんだこのファンタジックな世界は。リアリティ星人な自分には不可能なこの発想。うわぁ、なんなんだ、言葉にならん!
土からモグラが出てきて星を読む。その描写が美しくて印象的。どういうわけか日本酒が飲みたくなりました。
前々から気になっていたてんつく、読んだら予想以上にほっこりしました。これはいいものだ。我々ネット住民は皆土竜みたいなものじゃないか。各々自分の活動時間にもぞもぞとやって来ては誰かの想いが流れる星空を見上げる。それすらよく見えない。隣で言葉を交わしても、喧嘩をしても恋をしても、相手の姿はよくわからない。自慢の髭が頼りで。よく見誤る。隣の可愛娘ちゃんも男の子かもわからない。もぐら、可愛いですよね。実物は見たことがありませんが。こんなに舗装だらけになってしまっても、どこかの地中で案外傍にいるんですかね。
モグラってカッコイイんすよ。土の竜。もぐら。ヒュー!そんなニヒルなモグラたちの心情を描いた、ちょっと珍しい真夜中の掌編。着眼点と着想が素晴らしいです。風景描写が特に良いですね。モグラたちの気持ちを反映した、美麗な夜景がありありと広がっています。このモグラになら、抱かれてもいい。
童話というと、ウサギやクマ、ライオン、キリンといった動物園でも人気のキャラクターが中心人あることが多いなか、この作品の中心はモグラ。「土竜」と書いてモグラ。物語中でも語っていましたが、土に竜で、モグラとは大層な。土の中を掘り続けて掘り続けてようやく空が見えた瞬間。その時の縦に長い穴が、まさに竜なのではと読んでいて思いまいした。モグラが実際に何を思っているか分かりませんが、この物語のモグラさんは妙にモグラっぽいというか、本当にそんなこと思っているんじゃないかという感じになりました。
もぐらが夜空を見上げているというイメージが印象的です。刺さって抜けない棘のように長く記憶に残りそうな作品。音の感触も面白かったです。そしてここにも一匹のもぐらがいます。彼は語る。満月はまるで空にあいた穴だ、と。
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