手順01「地図を描く」

 異世界に限らず架空の都市や国を考える時、私がまず作るのはその世界の地図です。神々や魔法、宗教などなどその世界のルールを設定していくと何週間、あるいは数か月もかかるのだから、どうせなら2~3作品分の使用に耐えるようにしたい。


 また国の設定だろうと何だろうと、周囲との交易や敵対などの関係性が見えないと作りにくい。気候区分がわからないと作物も決められない。


 作者はすべてを自由に決められる立場ではありますが、毎回0から「ここは何を作っているところにしようかな~」と指針もなく考えるよりは、気候や周囲との位置関係から割り出した方が決めやすく、ブレにくい設定作りが可能になると思います。


 そんなわけで世界の地図、世界地図です。


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 【手順】さぁペンを持って紙を見て。

 01:適当に大陸と島を描く。

 02:赤道の設定。

 03:海流。

 04:大気循環。

 こんな流れで見ていきます。


 言ってしまえばこれは惑星の設定です。

 惑星の設定といっても自転速度や傾き具合、太陽からの距離、衛星の有無などはSFでもない限り捻る必要はありません。

 それらをコントロールするだけの知識と自信があれば、それは一風変わったSFや異世界観として機能するとは思いますが、私自身そこまで造形が深くない分野なので弄りません。

 では順を追ってみてみましょう。


【01:適当に大陸と島を描く】

 〇とか多少歪でも大丈夫。思うままに陸地を描いてみましょう。

 いくつかの大陸と、島々を適当に。海岸線をでこぼこにしたり半島をつけたりするとそれっぽくできます。


【02:赤道の設定】

 何も難しくはありません。地図の真ん中に横線を引きましょう。


【03:海流】


・海の分布をまず見て、大きいところに海流の渦を設定します。

・北半球に時計回りの渦を3つ。南半球にも反時計回りの渦を3つ。

 赤道部分は「赤道海流」として流れの向きが切り替わるため渦にはならず横並びに西側への流れになります。

(*赤道反流というのもあるが、大陸の配置を見て、赤道海流が行き場を失うようなら設定してみる)

 これはコリオリの力などいくつもの要因で生まれますが、だいたいこう覚えておけばOKです。


・大きな海流の流れを決めたら、それが大陸とぶつかる部分や、複雑な入り江に入る部分などの流れを矢印で描いてみる。

 流れがぶつかる場所はお互いに影響しあってそれる流れにする。正面からぶつかったままには基本ならない。


・熱量の移動を考える。

 赤道付近は暖かく、北極や南極は寒い。これは海流にも関係があって、両極に近づいた海流は冷たくなって深層へと沈みます。

 深層は深層で、表層と別の流れで惑星を巡りますが、正直お話とは無関係過ぎて設定しませんので無視。


・大事なのは「暖流」(と寒流)です。

 低緯度から高緯度へ向かう赤道からの流れは「暖流」となり、周辺地域に影響します。西ヨーロッパ諸国がそれほど寒くならないのはこれのおかげです。重要。

 ですので、海流のうち赤道側から流れるものや、それがぶつかったり通ったりする部分は要チェック。印か何かをつけておきましょう。

(*寒流にもチェックをしますが、私自身は設定段階でそこまで重要視をしませんので割愛)


【04:大気循環】


・まず大気は赤道で生まれます。太陽熱で海水が蒸発して密度を増し、どんどん生産されるため風として移動します。

 これは上昇してから北上(南半球では南下)し、ある程度冷めて高度が維持できなくなると落ちてきます。

 細かく言えば収束によって気圧が高くなり下降気流を生むとのことですが、気象予報士でもないので「冷めたから落ちて来た」程度に認識しています。


 とまぁ、この落ちて来るのが緯度30度ほど。緯度とかわからんって場合は赤道から極までを3分割してみて、赤道から一区分目と考えてみてください。


・この位置を基準に、海流と同じく大気の流れである「渦」を設定してください。

・地図に対して北半球に3つ。南半球に3つ。等間隔くらいに設置し、ゆるいカーブで「北半球なら時計回り」「南半球なら反時計回り」に流れを設定。赤道付近も海流と同じく西向きのひとつの流れとなります。

 海流と違って邪魔する大陸がないので「赤道反流」はなく、海流の渦よりは大きな渦になりますし、季節や大陸の分布(陸地と海面の温度差による)によって移動するため、厳密に考える必要はありません。


・大気循環としては赤道で生産され上昇、極方向へ向かいながら30度あたりで地表に吹き付け、地表付近を風として全方位へ。

 コリオリの力(自転の影響)で風向きが一定方向になりつつ、赤道に向かったものは再び合流上昇。

 極へ向かった風は極付近の冷たい大気に押し上げられる形で登っていき、極付近で冷めすぎて落ちる。極付近でぶつかるところは寒帯前線帯として、東向きの暖かい偏西風と、西向きの冷たい極偏東風がすれ違う場所でもあります。


・大気の流れは基本的に邪魔するものがないため細かい矢印は不要。

・ここで作るのはおおまかな国などを考えるうえで必要な、世界規模の風向き設定であって、登場人物たちが常にこのレベルの風を感じることはない。

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 少々長くなってしまいましたが、ここまでくればおおまかな海流と風の流れが把握できる世界地図が出来たと思います。ポイントとしては、海流も大気も熱の移動を念頭に考えるとイメージが掴みやすく、物語に関係ある設定に絡ませやすいです。

 そして別に異世界気象予報士になりたいわけではないので、細かい部分や検証は要りません。


 必要なのは「この地域のお話を描こう」とピンポイントでピックアップしたとき、0から考える手間なしに「ここはこういう位置だから気候はこんな感じで」と手早く導き出せることです。


 では次はこの地図を使った、細かい周辺地図の作り方を見て行こうと思います。

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