人々が真に求める『楽園』の在り方とは。

少子高齢化が進行し、政府が崩壊した近未来の日本ーー。地方自治体の自警組織『治安警察局』に勤める二十代の女性・一ノ瀬千幸は、同僚の佐伯とともに、貴重な若手の一人だ。ある日、二人は記憶のない少女を保護した。彼女の身元の調査を始めた矢先、佐伯は失踪してしまう。

一方、場所も時代も判然としないある『村』では、家族や結婚という概念のない暮らしを、村人たちは送っていた。子ども達を含む集団は、『協会』に決められた『単家』で暮らす。『教師』達に指導された穏やかな村の暮らしは、掟に縛られたものでもあった。村の少年ユウマは、大好きなチィ姉ちゃんと一緒に、子どもには禁じられた村の『夜の祭』を覗き見てしまう。その時から、穏やかな村の暮らしは変わってしまった。


ユウマ達サイドの『全の章』、一ノ瀬サイドの『一の章』。二つのストーリーラインがクロスカットする構成の物語です。物語が進むに従い、謎がひとつひとつ解け、人間関係が明らかになっていくさまが楽しく、読むのを止められなくなります。ストーリーが収束し、彼等が新しい希望に向かって歩み出す結末は、素敵でした。
ミステリー要素を含むSF、ディストピアものがお好きな方に、お薦めします。

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