自分だけの一品を欲しいと思った方なら必ず楽しめる

 この物語のストーリーの面白さは他の方がレビューで書いているようですので、私は違う視点で。

 自分だけの一品を持ちたいと思ったことはないだろうか?

 スーツや靴に腕時計、若いときならバイクやテニスラケット。
 今はPCのカスタマイズ。
 私はこういったモノに、自分だけの、自分らしい、一品を欲しがった。
 ほんの少しだけでもいいから他人と差別化された良いモノ、使いやすいモノが欲しいと思った。

 だから、「ドール」への関心や知識などなくても、この作品内で触れられているドールの製作、ドールの購入、ドールの飾り付けに携わる方々の気持ちが判る。
 可愛いから欲しい。
 でも自分の好みにカスタマイズしたドールへの愛着はひとしおだろう。

 製作側も、自分なりの拘りをドールに反映し、そしてそのドールを喜んで買って下さるお客様がいる幸せを味わえる。

 この作品には、モノに関わる欲求を満たす描写がところ狭しと描かれている。

 作者さんが丁寧に選んだ柔らかい語彙で作られた世界。
 時には茶目っ気のある描写で、読者を笑いを誘う。
 こうした描写に作者さんの人柄を感じられて、読んでる私も微笑ましい気持ちになる。
 この作品は冬村さんだから描ける世界を持っていると感じた。

 現在、第一章をほぼ読み終えたところだが、最後まで楽しめそうで嬉しい。

 ドールに関心がなくてもモノに拘りを持ったことがある方には是非読んで欲しい作品です。

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