酒井七馬と手塚治虫

作者 須崎 正太郎

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★★★ Excellent!!!

酒井七馬という、手塚治虫という天才を見出し、彼をスター作家に成長させた名伯楽を主人公にした物語です。

手塚治虫の物語を描く上でスルーされがちな人物ですが、初期の業績を語る上では避けて通れない重要人物です。しかし、彼を主体にした物語は類例がなく、題材選びが非常に素晴らしいと思いました。

物語も非常に面白く、酒井七馬や手塚治虫のキャラクター造形も最高です。とてもお薦めです!

★★★ Excellent!!!

少なくともタイトルに出ている一方の方はなにかと神格化されることが多い方だからどんな扱いになるのかと思っていたが、割と嫉妬もすれば癇癪も起こす、割とリアルな人物造形になっていて安心して読了することができました。
読むこちら側にあまり素養がなくて、酒井七馬氏周辺の描写などはどこまでリアルなものなのかは判断できませんでしたが、戦後の風俗とかの扱いから判断して、かなり入念な取材を行っているのではないかと推察します。
世代が違う二人のクリエイターの確執という主題も興味深いものだったし、いい読書体験を得ることができました。


ありがとうございます。

★★★ Excellent!!!

自分は漫画に疎いため、酒井七馬という方を存じあげてはおりませんでした。

しかしながら須崎先生の手により、戦後大阪の空気が、酒井七馬氏が、手塚治虫氏が、いきいきと躍動しております!
プロ作家の手によるだけあって、丁寧な下調べ、巧みな物語構成と高い文章力には唸らされます!

これは出会えて良かったです。
カクヨムに来て、この作品に出会えて、本当に良かったです。

★★★ Excellent!!!

諸行無常、勝者と敗者。それすら移ろう世の流れ。

その中で自分の想いに生きた人々。

そういう意味で、このお話はキッチリと歴史物です。

それと同時に、すっと読み易く、キャラの想いや気持ちが入って来る感じもあるのが好いです。

今作は、戦後の漫画に関わった人々の内、漫画の神さまとも呼ばれる手塚治虫、ではなく、ある意味、勝者から敗者へと転げ落ちた酒井七馬にスポットライトが当てられています。

ですので、あくまでも主役は彼、酒井七馬です。

単純に、能力が劣ったから、ではなく、無情に過ぎる時代の流れこそが、それをもたらしています。

その流れは、昔も今も変わらず、常に流れる物です。

だからこそ、歴史物は人の心を捉えるのでしょう。

そういった物だけでなく、生きたキャラクター達が楽しめ、そして、読む事で知り得た新しい知識や、そこから浮かんでくる自分なりの考え。

そういった諸々が合わさり、面白いと感じました。

物語が完結してからレビューを書くかどうか悩みましたが、酒井七馬の転機となる、第八回目で書いています。

物語の中で生きている、これらのキャラ達が、どう終わりを迎えるのか?

それが更に楽しみです。

そして第12回にて完結されましたので、追記で書いています。

終盤である第9話から第11話に掛けては、栄枯盛衰、そしてどうしようもなく流れる時代の中で生きていった酒井七馬の結末が書かれます。

その終わりがどうであったのかは、ネタバレになりますので書けませんが、キッチリと書かれ読んでいてガッツリ楽しめました。

そして後日談ともいえる第12話は、読み終わった後に余韻を残してくれるような締め括りの回で、読書の楽しみを味わわせて貰いました。

歴史物ですと、ある種の無情さ、そして変化していく時代、それと同時に、その中にあって『生きていった』者達の物語を楽しみたいのですが、そう… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

ブラックジャック創作秘話やまんが道など、手塚治虫という漫画の神様を語る際は、どうしても有名になってから、神様になってからのエピソードが多いと思います。
この作品は若干18歳の医学部生が、いかにして神様になり得たのか。まんが道で絶賛されていた新宝島はどのように生まれたのかを、当時の赤本事情などを交えつつ丁寧に描いております。とても読みやすく分かりやすい。今後も楽しみな作品です。

★★★ Excellent!!!

戦後日本のサブカルチャーの全ての始まりと呼んでも過言ではない傑作「新宝島」。それに携わった二人の漫画家の物語。

戦争を潜り抜け新しい時代に再び活躍せんとするベテラン漫画家と、それを受けたかのように現れた新進気鋭の若手漫画家。
二人がどのようにして伝説を創り上げたか…今後が楽しみな伝記です。

★★★ Excellent!!!

漫画界の黎明期を語るにおいて欠かせない「赤本」。関西で販売され、一世を風靡した粗製乱造の漫画群の混沌から生まれた天才 手塚治虫。

彼を発掘し、育てた存在とされる酒井七馬。「新宝島」といえば、手塚治虫の出世作として漫画好きなら知っている、知っているべき作品だが、それが彼 酒井七馬との共作であったとは知らない人の方が多いだろう。事実、私もこの小説を切っ掛けに初めて知った。戦後の焼け跡から、「娯楽を、漫画を、世に送り出していこう」という彼のバイタリティを描く本作品は、力作の予感がする。

NHKの朝の連ドラ"ゲゲゲの女房"で、亡くなった水木先生が苦労していた時代、貸本漫画時代を面白く見た人には是非読んでもらいたい。歴史好き、サブカル好きな方も是非!

★★★ Excellent!!!


 「人間は笑うのが仕事なんや」

冒頭、こう言ってのける本作の主役・酒井七馬は、天才である「漫画の神様」手塚治虫に比すれば、凡才として描かれる人物であり、手塚が主役の物語であれば、序盤に出てくる脇役の一人に過ぎない人物ですが、では、彼にドラマがないのか、彼の人生は物語に成り得ないのか、という問いに対し、敢然と「否」と言ってのけたのが本作であります。

本作における、酒井七馬という男は、天才ではなく、また成功を収めたとも言いがたいですが、そんなものに関わりなく、彼の人生の物語は、読み手の心を打つことでしょう。