無駄のない筆致で、淡々と紡がれる恐怖。それは、音楽を愛すれば愛するだけ、その深さにもまして襲いくる。語られない世界の恐ろしさ。語られた世界の無惨さ。静かなる迫力。無音の響きは、心を貫く。目を逸らそうとしても、そうできず、瞼を閉じようとしても、瞠目してしまう。ひとの手による音楽の壮絶さは、はかりしれないほど美しい。それは終わりなく、果てもなく……。
冒頭からぐいぐい引きこまれました。とても読みやすい文章で、少ない描写で十分にその場の情景が伝わってきます。人物造形も見事です。音楽の描写も元の曲さえ知っていれば、自然と頭の中に再現されていきました。物語の最後で、もう少し主人公の葛藤を読みたかったなあと思うくらい、どれも面白かったです。
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