矢口 水晶

早朝のNY。警官のモーリスは通報を受けて地下鉄の通路に駆けつける。 そこで見つかった男の死体は全身を刺青で覆われた奇妙な姿をしていた。 男が背中に負う炎の刺青に、忘れたはずの記憶…

僕の祖父、神田直次郎は不思議な人物だった。 幼少期、自身の体験をいくつも聞かせてくれた僕の祖父。 彼の語る昔話は、狐の嫁入りや戦地で見た人魂の群れなど、摩訶不思議な物ばかりだっ…

雪国を貫く北陸鉄道。 その駅の待合室で、今は亡き祖父を待ち続ける祖母と、彼女を見守る孫娘。 祖母は語る。雪国の女は、待ち続けるものなのだと……。 ※ちなみに、実在の北陸鉄道とは…

大食らいで楽天的な豚の妖仙、猪八戒。 彼がその陽気な顔に隠した、幻滅と絶望とは―― 中島敦が描けなかった、『悟浄歎異』における八戒の視点を勝手に再現。 参考図書 『山月記・…

万能薬の原料となる植物を求め、未開の島を訪れた製薬会社の研究員、ナイトウ。 そこで彼が出会ったのは、島で神の娘と呼ばれる美しい少女だった。

とある夜の山中にて、修験者は人喰いの鬼を討ち取った。 長年麓の人々に恐れられていた鬼は、それはそれは美しい娘だった。 涙する鬼女が修験者に託した、最期の願いは――

死者の肉体が資源や食糧として利用される未来世界。 私は生命活動を止めた父を、工場にて『埋葬』した。

飼っていた猫が死んだ。 それは灰色に染まった十二月のことだった。 愛猫を亡くし、体調を崩して寝込む『僕』 そこへ親友の清水涼太郎が見舞いに訪れた―― これは夏のひと時へ続く、少…

廃部が確定した生物部に所属する、主人公と親友の川島修二。 二人は飼育していた生物たちを裏山へ放しにいくのだが……。 繊細な二人の少年が織りなす、美しい夏のひと時。 『猫の夢』…

来月、僕は猫と結婚する。 海の見える丘に建つ、角砂糖のように真っ白で美しい教会で式を挙げる。 宝石商の僕が出会った、言葉を話す美しい猫。 青い不思議な瞳を持つ彼女は、前世の記憶…

月の綺麗な夜は、夜陰の虫がよく見える。 美しい幻想の夜、私は真夜中の蝶を追って、森の中をさまよっていた。 孤独な放浪の果てに、私は一人の少女と出会った。

そこは市民が書物を読むことが許されない世界。 貧民街に暮らす少年のトムは、禁書を処分する仕事に従事していながら、盗み出した書物を親友のセシルに贈っていた。 トムは美しく、聡明なセ…

紫陽花は惨めな花だ。あの花は枯れた姿がいけない。 花を憎む、死にぞこないの小説家。彼が見たものは―― 連作短編の一作目です。 全三作で完結です。『雨』、『落ちて朽ちる、花』も読…

小説家の夫に先立たれた「私」 母もいない。夫もいない。自由になった彼女だが―― 連作短編の三作目。 『紫陽花』『雨』の続きです。

とある青年が雨宿りで入った喫茶店。 そこで相席になったのは、小説家の妻だった。 連作短編の二作目。 話は独立していますが、一作目の『紫陽花』から読んでいただくと分りやすいと思い…

妻が魚を産んだ。小魚の名前はジョージ。 これは僕と妻と、魚の子の物語。