雰囲気重視の作品でした。一組の男と女のストーリーで、男性の方から見た相手の女性の印象が綴られていく形なのですが、若く経験不足な男が女性の心に触れられそうで触れられないもどかしさが、じんわりきましたね。
一作目の「紫陽花」からこの話を読みました。知っている物語を違う角度から読めることに、まるで家の中に招かれたような気がします。一作目が軒先なら二作目は客間。雨宿りと一冊の本をきっかけに、交わることの無かった運命が、あらかじめ用意されていたかのような当に采配によって、物語が加速しておきます。信念としていた母の死で、自らを造り、維持していた自分自身。良妻賢母の姿勢が、これからどのようにして可哀想な夫から解放されていくのか、とても楽しみです。
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