小石原淳

『ノックの音（達）がした。』と同様、「ノックの音がした」で始まる掌編を並べています。ごく短い作品は短編賞に応募しづらい気がしたため、とりあえずまとめてみることにしたものです。

内心、密かに自信のあった作品が、とある賞の最終選考に残るも、入賞にはあと一歩届かず、落選の憂き目を見た大学生の井藤悦子。幼馴染みで“ほぼ彼氏”の優に手荒く慰められ、さらには優の妹…

部屋の荷物を片付けていると、高校時代の部活について記した原稿が出て来た。整理の手を止め、懐かしさから読みふける内に、当時のことが脳裏にまざまざと蘇る。部の名称は“謎研究会”。確か…

星新一のひそみにならい、「ノックの音がした」で始まる掌編を並べています。ごく短い作品は短編賞に応募しづらい気がしたもので、とりあえずまとめてみました。

　僕、岡本大地は関東生まれの関西育ち。高校一年の二学期途中から関東に戻り、学校も東京の高校に通うことになった。自己紹介のときから気になっていた女子がいて、幸運にも隣の席をゲット。…

嫉妬深くて気が弱い、でもいざとなったらとんでもない力を発揮することもある恋人。そんな彼を試そうと、“僕”は人型ロボットのルン太にある頼み事をした。

名探偵の活躍と記述者、「私」にまつわる物語を連作短編形式でお届けします。アリバイ工作や交換殺人、人体“消失”に密室トリックに犯人特定ロジック、そして「このトリックを使っていると紹…

※筋書きをこしらえたあとになって、現実世界での問題（燃料や稀少金属が豊富に埋蔵されているからといって住民が採掘に諸手を挙げて賛成するとは限らない）を知り、元のままの構想では書きづ…

　密室殺人――人が出入り不可能な状況下で、人が殺されている。確か、推理小説家の有栖川有栖が『有栖川有栖の密室大図鑑』（新潮文庫、創元推理文庫）でコメントしていたように、密室殺人と…

　物語の舞台は、浩蕩たる大陸の五分の一弱を占め、その豊かさ故に諸外国の人々が行き交い集う強国アイラッティ。その首都及び周辺ではある連続殺人の話題で持ちきりであった。くだんの殺人者…

須美子のいる６年１組に六月になって転校生がやって来た。彼、早川和泉君は見目がよくて優しげで、須美子の友達である寺沢直美も一目惚れした模様。須美子自身、早川の長所は認めつつも転校初…

カクヨム公式自主企画向けに、『泣いた赤鬼』をモチーフとした掌編を書いていたのですが、『泣いた赤鬼』の著作権関連が継続中だと知り、断念した顛末と補遺になります。 ※近況ノートにほ…

※柏原須美子＆早川和泉シリーズ（仮） 須美子のいる６年１組に六月になって転校生がやって来た。彼、早川和泉君は見目がよくて優しげで、須美子の友達である寺沢直美も一目惚れした模様。須…

高校生のとき、父親とともに雪山で迷い、小屋に避難するも雪女に父親に殺された“僕”。雪女は何故か“僕”を殺さぬ代わりに、「この出来事を誰にも言うな、言えば命をもらうから」と約束させ…

　仲良しの若い男女二人が部屋でだらーっと過ごしているとき、不意に男の方が言い出した。どうやら幽霊話でも聞かせて、彼女を怖がらせようという腹づもりらしい。男はまず、オートレースの幕…

“私”には妙な記憶がある。夢のような現実のような、はっきりしない不思議な出来事。確か小学二年生の夏、地震を感じて夜中に飛び起きた“私”は、隣で寝ている母がぴくりとも動かないことに…

プロドライバーとして日々の糧を得ている別所育蔵は、この二ヶ月ほどの間、あることに悩まされていた。安全運転を心掛けているのに、車の前に人が飛び出してくるヒヤリハットな事案が、やたら…

貝塚正太郎は幼馴染みからの義理チョコを、軽い気持ちで受け取ってしまい、軽い気持ちでお返しをした。それらのことが嫉妬深い恋人にばれて、釈明をさせられる羽目に。彼女の指示で、真夜中近…

高校生の重森正彦は、小中高と同じ学校に通う如月佳那子からの電話を、心臓をバクバクさせながら待っていた。約束の時間まであと少し。――如月とは中学校時代、一時的に付き合っていたのだが…

クリスマスイブに彼氏・相羽を自宅に招き、家族とともに過ごした高校生の純子。相羽が帰ってしばらくすると、電話を掛けてきた。暇つぶしとして話の聞き手になってもらいたいらしい。そうして…

２０２×年春、小学六年生の須美子は、不満が溜まっていた。流行り病のせいで、学校行事は何だかんだと変更されるし、友達ともなかなか遊べないからだ。特に、仲のいい男子の早川君に会えない…

“僕”藤木は中三の十一月に転校が決まった。残念だけど、文化祭当日にはもういない。それでもできる限り関わることにして、クラスの出し物であるおばけ屋敷のチェックの日を迎えた。暗闇と化…

硬派でならした往年の走り屋達も寄る年波と世間の流れには逆らえず、今や、なるべく交通違反をしでかさない範囲でたまに集まって走るのがせいぜい。羽志狼矢《はしろうや》なるグループも、普…

時刻は午前０時、新月の日の真夜中だった。男は復讐のために自宅を出た。目立ってはいけない。だから懐中電灯など灯りは以ての外。注意深く足を運んだ男は、計画通りに現場に辿り着く――その…

女子高生の折藤は転校して来てからこっち、故あってできる限り目立たないように心掛けていた。同級生の男子・松田と浜本の自由奔放な活動に内心、ちょっと憧れを抱かないでもなかったけれども…

かなり深酔いした女性が夜の街を歩いていて、服を引っ掛けられたことから始まる、ちょっとした物語。

来日七年目の外国人の若者が、初めて一人で定食屋に入り、“ＯＳＨＩ－ＫＡＴＳＵ”のことを考えながら料理を注文する話。“ＯＳＨＩ－ＫＡＴＳＵ”のヒントがそこにはあった。

中学から高校に掛けて勝ち組だった＜私＞には、取り巻きの女子が大勢いた。ある日、クラスの一人の男子のフケが飛んできて、＜私＞の鼻の頭に付いたことで、取り巻きの子が怒りにかられ、くだ…

　ときは一九九〇年代。まだ携帯電話の類はほとんど普及していなかった頃のこと。 　中学生のアキは誕生日を迎えて、十三歳になった。アキの父親は再婚で、だからアキと母との間に血のつなが…

立田悟郎は中学一年生のときから、死の予告状に苛まれ続けて来た。何もしなくても七年後に死を迎え、他人に助けを求める等、口外すれば死期が早まるという予告状の差出人は、ウツビァク。 高…

中学生になって初めて好きな人ができた“僕”は、バレンタインデーに合わせた学校行事で、相手の鈴木さんも自分のことを好きなんじゃないかと自信を持つ。ホワイトデーに自分の方から告白しよ…

　本作は“「赤いきつね」「緑のたぬき」幸せしみるショートストーリーコンテスト”に投じようと書いてきたものですが、ふと気になってあることを確認した結果、仮に応募して完結済みにしたと…

小学六年生のとき、好きな女子から思わせぶりな呼び出しをされた“僕”。しかし、週明けの早朝、待ち合わせ場所に彼女は現れなかった。からかわれたのか……落胆した“僕”は教室に戻り、彼女…

退職して探偵を始めたかつての先輩・安藤に呼ばれ、刑事の高本は忙しい合間を縫ってやって来た。安藤によれば、調査対象者の加納朱美が生田という人物に殺されたかもしれないと疑っているとい…

“僕”は十歳ぐらいの頃から殺人のあるテレビドラマを見て、すぐに犯人が分かるようになった。それどころか、実際に起きた事件でさえ、未解決の時点で、犯人が分かることさえある。こういう超…

“その能力を使えるようになれたら、きっとスキップしたくなる。” キーワードを唱えながら足下に放ると、思い浮かべた時間・場所に移動できるＳカード。制限回数は六回（往復三回）。そんな…

　宍戸は自分を脅してきた女を始末するため、簡単な計画を立てる。後輩の堀田に理由は告げずにアリバイ工作をさせて、その間に女を自殺に見せ掛けて葬るのだ。現場は女の家とし、遺書を用意し…

古尾は片桐の度重なる小さないたずらに危機感を覚え、殺した。現場に残してはまずい痕跡を処置してから、ふと遺体の方を見やると、片桐は自身の血を使って何かを書き遺していた。まさか現実に…

足の骨折で休んでいた“僕”が戻って来ると、登校班の一番後ろに知らない男子が一人、増えていた。同じ六年生らしい、転校して来たんだろう。でも自己紹介し合うタイミングを何となく逃してい…

　明日４月２７日からゴールデンウィーク！　いつもなら親が忙しくてバカンスの予定なんてないのに、今年は豪華客船に乗ってクルーズ旅！ 　楽しみにして早めに床に就いたのはいいんだけれど…

岸上東は嫌な奴だ。“俺”とは親しい仲だが、あいつにはどうしても勝てない。ほんのちょっとの差なんだが越えられないのだ。プライドを傷付けられようが、女をとられようが、利用価値があるの…

ベテラン女優の塩崎澪吏が、夏の休暇を過ごしていた別荘の自室で死亡する。自殺かとも思われたが、匿名の投書により状況が一変。夫でものまねを売りにしていた元タレントの旧姓・神田達彦に疑…

※2020/08/27　第８話と第１８話に暗号解読に関わる書き足しをしました。 ：小学五年生の瑠音は夏休みを迎えて、およそ二年ぶりに東海Ａ県で診療所を開いている親戚の家に泊まり掛…

公式企画「読書で考える新型コロナウイルスとの共存」に参加しようと思い、何かないかとテーマに沿って考えていたら、ふと芦ヶ原伸之の著書が浮かびました。真っ先に思い付いた本は電子書籍化…

ミステリー研究会の仲間だった五人を葬るべく、“私”は彼らを送るのにふさわしい舞台として、館を用意した。それは犯人である“私”にとっても大変都合がよい舞台だった。なのに……。

２０２０年の夏になってもいまいち徹底されない感染症対策。政府は非三密を世の中に浸透させる目的で、大々的にＣＭを打つことにした。その内容を決める会議において、誰を起用するかに議題が…

２０２０年、夏。例の流行病のおかげで飲み会までオンラインになってしまった。そんなおじさん三人が愚痴をこぼしつつ、酌み交わしていると、一人の携帯端末が音を立てた。見ると高３の息子か…

部の先輩が死んだ件で事情を聞かれることになった。アリバイを聞かれたけれどもこの時期、証明のしようがない。っていうか刑事さんとの距離が二メートルも開いてるんですが！

　二〇二〇年の夏休み、高校三年生の神辺憂人は帰郷どころか男子寮から出ることすらなく、自分の個室にこもり、机に向かっていた。 　受験勉強？　確かにそれもしなければならないことだけれ…

　眠りから起きてみると、そこは何とベッドの上だった！　当たり前じゃないかって？　いやいや、僕はベッド派じゃなく布団派だし、ベッド自体持っていない。だったら泥酔した果てに知人の家に…