武江成緒

条理のもとに下手にまとまっていないがゆえにこそ、良質な恐怖譚は背筋に染みとおるような恐怖の薫りを帯びるのだと思います。 それがこうもするすると飲めてしまうのは、不条理の飲みこみにく…続きを読む

忘れ去られた地にわだかまる、“今の”世の中ができる以前の因縁と、凝り固まった魂たち。 幾多の怪異に立ち向かってきた卜部とかなめは、その暗黒に足を踏みいれ、隠された深淵に蟠踞する恐怖…続きを読む

その愛しき面影は泡立つ水の中へとはかなくも消えて、あとには爽快さゼロの生ぬるい味がべったりと残る。
一気飲みするも、じっくり味わうも良しです。

いつの間にか溶け合っているような、兄妹のそっくりな内面。 それは、空をもこえる壮大で素敵な世界と、互いにむける優しい想いをも共有しているのです。 ペットボトルのむすぶそんな絆を、ぜ…続きを読む

どこにでもいそうな二人の小学生の間に、唐突に走る罅。 その亀裂を加速させる古い因縁と業、それによって現出する脅威。 じっくりと読み直すことで、その危うさ、哀しさ、そしてそれを乗り越…続きを読む

大人になった、かつての同級生たちが、小学校のころに体験した「学校の七不思議」を振り返る。 それは、今に至るまで血を流し続ける、己の疵と向き合う冒険の始まりでもあった。 他の七不思議…続きを読む

実在する踊りの様を、美しく、しかし妖しく描き出しているさまは、その暗がりに恐ろしい影を浮かび上がらせてゆきます。 神界の脅威と人心の狂気の入り混じった虚実さだかならぬ恐怖をご堪能あ…続きを読む

沼で見たソレは、記憶にのこる少女のものだった。 それだけでも謎めいた話ではありますが、本作は語り尽くされない要素がいくつもうっすらとその姿を浮かべていて、単純な怪異譚では収まらない…続きを読む

還暦のプロレスラーという、一見して存在自体が妙ではないかと思ってしまう主人公。 「八百長」と謗られかねない要素すらも飲み下し、真摯に向き合うその姿。 臨場感にあふれる文章とあいまっ…続きを読む

なにげない善行の裏に満ちる思惑。
これは邪道なのか、正道に通じる意味があるのだろうか。「善」とはなんなのだろうか。
そんな葛藤を味わわせてくれます。

本筋そのものの不気味さもさることながら、夢で暗示される“何か”がさらに恐ろしい。
冒頭に“夢”というテーマを掲げていることが実に効果的な作品です。