還暦のプロレスラーという、一見して存在自体が妙ではないかと思ってしまう主人公。「八百長」と謗られかねない要素すらも飲み下し、真摯に向き合うその姿。臨場感にあふれる文章とあいまって、冒頭からぐいぐいと引き込まれ、引き揚げてゆくその背中に拍手を送ってしまうでしょう。
人生も半分過ぎると、地道で堅実な生き方に惚れてくるものです。昔気質の職人がたまに見せる笑顔とか。そして、本作の主人公もその一人。決して、わかりやすく万人に受け入れられるようなヒーローではなく、影の主役に徹してエンターテイメントを成立させる。そんな生き方に惚れます。とりあえず、おっさんには無条件でオススメ。そして、若い人も読んで欲しい。