明らかに異常な世界ではあっても、平易で淡々とした一人称、そして過去形で語られることにより、「そういうことだ」と思わせられてしまう。読み終えたあとぞくぞくするのは、爪、にフォーカスした一連の描写に、正しく恐怖したからなのか、それとも語り手のように、なにかに呑まれてしまったゆえか。それは分かりません。なにか、向こう側みたいなものがいとも簡単に覗けてしまうような、そんな短編でした。いやしかし語りがうまい。音読してみたらすごく楽しかったです。