武江成緒

やさしさとは、他者のために思い切れる強さ。
このちいさな事件でそれを体現したこの二匹は、まさしく名探偵と、その助手ですよね。

未来世界においてもめがねは不滅だった！
800字あまりの掌編ながら「めがね」に的を絞ることで、人の歴史をまざまざと示した奇作。

かつての盛時も過ぎ去って、今やさびれた商店街。 そこに残してきた約束は、亡霊となって悪夢にさそう。 けれど、恐れをふり払うやさしい心を輝かせて、忘れかけていた手をとる時。 亡霊も、…続きを読む

夢があり、悪夢があり、絶望があり、かすかながらも希望がある。
その重みを知ったとき、言わざるをえなくなるでしょう。「話さないで」と……。

目にうつるものは真実なのか。 最初に真実を見通した彼女。その示すところに続いて“めがね”を外した彼。 残された彼女は如何にするのか、如何にかすることはあるのか。 虚ろな世界が、ずし…続きを読む

風味豊かなアルコール、芳醇な味と香り、そして、危険な薬を一たらしして茹で上げられた作品。 ハードながらその妖しい芳香は、気がつくと主人公とともに、酔わされそうな、抗おうとするような…続きを読む

ショートケーキに例えられた局面が実にあざやか。
作者様の造詣の深さが伺えます。

美観地区で知られる岡山県倉敷市につたわる、陰惨な戦のエピソードを下敷きにした作品。
親友の“変わり”ようが、肌にせまる恐怖としてありありと描き出されています。

「バッファローの群れ」というシュールなお題に歴史物として取り組んだ掌編。
燻ぶった荒野の香りを味わいたい方、ぜひどうぞ。

三分から始まって、紡がれ、つながってゆく人々とその想い。 それらがすべてこの大団円へと収束する。 KAC2024を追って読んできたあなたの“めがね”にも、それはきっと映っていること…続きを読む

祖父の遺品が映し出すもの。
レンズには、祖父母の家にまつわる見通し得ない深淵が……。
得体の知れない恐れをみじかくまとめた掌編です。

恐怖とは未知なるものへの感情。 未知なるものに挑み、克服し、同化することで、また新たな可能性が開けることも事実。 二律背反のうむ恐怖が、じわじわと迫り来るなか、筋肉は語り掛ける「…続きを読む

指にささくれができれば、そこに灯るはかすかな「痛み」。 その「痛み」をテーマにして、どこか虚ろな心理を描くさまが巧みで。 こんなアプローチもあるのだな、と思わされながら、痛みの向こ…続きを読む

文字を追えば不思議や不思議。口の中へとあふれ出す。うまみ、酸味、薫り、歯ごたえ、コク……。
これが一皿なんと無料！　これは熱いうちに読まないと、いえ、いただかないと損ですよ。

他者の提案に乗り、他者に評価をゆだねる。
自身と他者とのあいだに齟齬がうまれれば、ちょっと悲しいこともある。
お互いに、どうか報われますように……。

さらに季節が移り変わって春が来れば、それも融けて、あたらしいステージへと歩いてゆく。
そんなささやかな、青春と成長のものがたり。

人間視点で見てみればほのぼのとした光景も、彼らにとってはまさに死闘と運命。
そんな顛末がキリよく描かれています。

お題『色』から導き出されたテーマ『カウンターシェーディング』。 詳しい知識に気を取られていると、いきなりのどんでん返し。 しかして、黒が白に裏返るがごとく、話はまたまた……。 テン…続きを読む

人魚の姿に魅入られた姉。
その狂った目にうつるものを周囲に、主人公に垣間見させて、ついに……。
重く狂おしい夢を思わせる怪異譚。

なにも考えず「とりあえず」を、知らず知らずに選んでしまった主人公に課される報いとは……！
味がないのはさすがにキツいです。

その有り様を垣間見せてくれる、まさに大いなる命の叙事詩。
どこからともなく「はなさないで」と呼びかける声が聞こえてくるかもしれません。

KAC2024参加作品をシリーズにした、ささやかで温かくなるロマンス連作。
繋がりあって、その想いはどこまでゆくのか。
まだまだ追いかけてゆきましょう。

シュールな導入とハッピーエンド。 さらには、妄想ぎみ暴走ぎみで、しかし根が素直で前向きな主人公の一人称がえがきだす、勢いと少しやさしさある物語展開も必見です。 ただし決して真似はし…続きを読む

短いながら、しっとりとした雰囲気のよい幻想の世界。 そんな世界でも争いは起こり、争いを憂う少年のために、旅をする主人公は歌と知恵とで人びとの心を動かし、奇跡を起こす。 その果てに明…続きを読む