花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
あまりに有名な小野小町の作品を下敷きにした名作です。
ながめせしまに……
長雨せしまに
眺めせしまに
二重の意味があるようですね。
そのどちらの意味もしかと踏襲し、、お見事です。
心にぐさりと刺さるものがありました。
憎しみというより、諦観、達観すら感じさせます。
そんな哀切の時が、春の雨の中で切なく静かに流れてゆく……
『夫と腕を組んで、怖いものなどないかのように笑っていた、女の子。』
もしかしたら、主人公もかつては同じような、無敵の気持ちだったかもしれません。
だからこそただ、時間の残酷さを想うしかない。そんな感じが伝わってきます。
さりげなさの中に色々な思いのつまった名作です!