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【先着30名】じっくり読みこんだ本音感想を書く企画【21】〜【25】

質問・返信は以下のノートにお願いします。
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330647889422158

参加作品:
【21】先頭で駆け抜ける(赤伊 正広)
https://kakuyomu.jp/works/16816452219402393481
【22】接吻 ―祖国ハンガリーから―(小鹿)
https://kakuyomu.jp/works/16816700427950836883
【23】短編の多い作品集。(ゆげ)
https://kakuyomu.jp/works/16817139555685334945
【24】燦(南雲 燦)
https://kakuyomu.jp/works/16816700428953294666
【25】玉藻前さん、迷惑です!(野原せいあ)
https://kakuyomu.jp/works/16817139557478563793

【01】〜【05】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139558448303881
【06】〜【10】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139558641572246
【11】~【15】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139558827416647
【16】~【20】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139559021075559
【21】~【25】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330647559848000
【26】~【30】+【31】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330647793336857

⬜️企画説明。

参加条件:
・先着30名。一日一感想で九月内に終了(予定)です。
・一万字以内の短編。短い方が熟読できます。
・ジャンル不問。作者の好みの傾向はプロフ参考。
 よく知らないジャンルは、前置きの上で、わからないなりの感想を書きます。
・辛口でも泣かない。
 反論は近況ノートにて受け付けます。誤解があれば訂正します。
 それでも納得できない場合は「所詮一個人の感想」と割り切ってください。
・梶野の趣味や傾向が気になる方は、プロフや作品をご確認ください。
 いわゆるラノベより、やや一般小説よりかと思います。

ご注意:
・正直な感想を書くので、辛口の場合もあります。
 梶野の近況ノートを遡れば、どういう感じかある程度わかるかと思います。
・可能な限り、「自分ならこう書く」を提案するスタイルです。
 作品の改善を求めるというわけではなく、単なる作者の練習です。
 もちろん、提案通りに直していただいても構いません。
・テンプレ的な異世界転生やなろう系は、ほとんど読んでいません。
 それでも読んでもらいたいという野心作なら歓迎です。覚悟してください。
・星やレビューはお約束しません。内容次第です。
・その他、質問などがあれば、以下の近況ノートまで。
・初の企画で何かと不手際がありそうですが、よろしくお願いします。

8件のコメント

  • 【21】先頭で駆け抜ける(赤伊 正広)
    https://kakuyomu.jp/works/16816452219402393481

    一般小説。競馬もの。

    競馬小説って初めて読むかもしれません。
    そういうジャンルがあるとも寡聞にして聞きませんし、
    オリジナリティ高いですね。それだけで個人的に評価したくなります。

    梶野は競馬はやりません。ギャンブル全般苦手です。
    経験と思い、どれも一度か二度はやりましたが、ビギナーズラックすらなく、それっきりです。
    ある意味、幸運だったとも言えますw

    競馬ものの漫画はわりとありますが、ほとんど読んでいません。
    ただ、ゲームの「ソリティ馬」にはかなりはまっていた時期があるので、専門用語は多少わかるかと思います。
    まあかなり昔なので、忘れてるかもですが。

    「ソリティ馬」も独創的なゲームで面白かったですね。
    今だと「ウマ娘」ですかね。やっておけばよかったかもしれません。
    ソシャゲ全般もギャンブル扱いでやっていないので。

    おっと、自分語りが過ぎました。
    それでは作品感想、始めます。


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。

    > ガッシャン――!!
    この文章レベルで、冒頭が擬音というのはもったいないです。
    大事なレースの開始を伝えるには、音そのままでしかない表現より、想いを乗せた文章の方が効果的です。
    (あえて擬音を選ぶ手法もありますが)

    私でしたら、ん-。
    競馬経験がないので難しいですが、
    「重い扉が一斉に開き、火蓋は切って落とされた。」
    とかですかね。あまり練っていませんが。

    この一文のためにゲートを調べたら、競馬放送のゲート音って、アフレコだそうで。へーへーへー。
    まあでも、実際重い音はしていますので、小説的には問題ないかと。
    演出的にも必要ですし、「音がしてる」体で書いていいと思います。

    >俺の騎乗馬、デンカノホウトウは後方集団。
    秀逸なネーミング。これは忘れません。

    >末脚自慢の直線勝負に賭けるタイプだから、これでいい。
    わかりやすく簡潔な説明ですね。

    >快足が売りのハートメテオ。
    名は体を表す。短編だと大事ですよね。
    彗星は最後は落ちるわけで、これはアリなネーミング。

    >いわゆる、TV馬ってやつだが
    そういう言葉があるんですね。
    私なら「TV馬」にも傍点を振ります。

    >1番人気の本命馬、ミリオンワールドだな。
    これもわかりやすくてよい名前。
    強そう。

    >馬体を併せる
    専門用語ぽいですが、まあ伝わるかな?

    >2番人気の対抗馬、ウインドシルエット
    >3番人気のスカイエデン

    説明がなかったせいか、全然名前を覚えられませんでした。
    むしろ名前をつけない方がよかったかも。

    >俺がいるのは後方集団。
    カメラが先頭から下がってくる感じで描いてるのが伝わります。
    「後方集団」は二度目ですし、「後方」か「最後方」かで意味合いが変わるので、私なら、

    「俺がいるのはさらに後ろの最後方(・・・)」にします。

    >〝見せ鞭〟で、ちょっとだけ、急せかせる。
    そういうテクニックがあるんですね。
    かっこいい。

    >こいつはのんびり屋だからな。こうでもしないと、その気にならないんだ。

    こことか、馬と騎手が馴染んでる感じが出ていて、とてもよいです。

    デンカノホウトウとの過去や思い出に軽く触れてくれれば、
    さらに感情移入できてよかったかも。

    >残り4ハロン――800メートル
    メートル換算。
    読み手を考えての配慮がされてますね。

    >逃げのハートメテオは
    逃げの、と書いてあるおかげで思い出せましたw

    >2番手追走のフリーハイウェイと
    いましたっけ、そんな馬?

    これは名前を書かず、「二番手の馬」で十分な気がします。
    無駄に名前出しても、覚えるのが面倒になるだけなので。

    >ミリオンワールドが2番手から、先頭のフリーハイウェイに競り掛ける。対抗馬のウインドシルエット、3番人気のスカイエデンが、その後ろを追走

    「競り掛ける」も専門用語ですが、雰囲気のあるいい言葉ですね。

    ただ、ここは印象にない名前が一気に出てきて、うまくイメージできません。
    それぞれに個性を用意するか、いっそ名前を省いた方がレースに集中できそう。

    私ならどちらにするかというと、うーん。
    それぞれに見せ場を設けて、もう1000字増やすなら個性追加。
    簡潔にレース模様を描くなら、省く方を選びますかね。
    ここは作品の方向性しだいかと。

    >もちろん、相手はあの3頭のみ。
    四頭では?
    それとも、一頭は眼中にないとか?
    そこは書いておいた方が。

    >第4コーナーを曲がり、残り500メートルを切ったあたりで、ミリオンワールドが先頭。ウインドシルエット、スカイエデンも並んでいる。

    名前も出されず沈んでいったフリーハイウェイに合掌。
    やっぱり、この馬は名前いらなかった気がします。

    >3頭の叩き合い。俺もその外に持ち出して、必死に追う。
    「叩き合い」はちょっとイメージしづらいです。
    「外に持ち出す」はわかるとして、こちらは説明あってもよかったかも。

    >悔しいが、馬体を併せての叩き合いの勝負になっちまった。
    ここはなぜ悔しいのか、ちょっとわかりません。
    馬体を併せるのも得意だったはず。

    >その間、ずっと首の上げ下げ。
    「上げ下げ」がわかりません。
    疲労して馬首が上下してるという意味かと思いました。
    差しつ差されつ、という意味かも。
    ここはレースのクライマックスなので、伝わりやすい表現にすべきです。

    >ここでゴール。
    あまりにあっさり過ぎる。

    >乗ってる俺たちでも、誰が勝ったか、分からなかったからだ。
    僅差ならそうなりそうですよね。

    >検量所に戻ってきても、誰も1着のところに馬を入れない。入れられなかった。

    そういうシステムなんですね。

    >馬装を解いた馬たちを、それぞれの厩務員が引いて、ぐるぐると回り続ける。ジョッキーたちも顔を洗ったりした後、モニター画面を見上げるばかりだった。

    ここは馬はともかく、ジョッキーには「顔を洗いもせず」、結果を待ってほしかった。

    >俺は晴れて、念願だったG1ジョッキーの仲間入りを果たした。
    うーーん。
    正直、ラストの盛り上がりはイマイチですね。
    もっと大興奮!みたいな展開を期待していただけに残念。


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    レース小説らしい、いいタイトルだと思います。

    私なら「先頭で駆け抜けろ」か「先頭で駆け抜けろ!」にします。
    でも、わりと淡々と描かれた今作には「駆け抜ける」の方が合ってるかな。

    ・文章について

    書き慣れた、よい文章だと思います。
    とくに序盤のレースの描き方は、初心者でも読める配慮が感じられ、独りよがりでない上手さが感じ取れました。好みの方向です。

    競馬の専門用語を織り交ぜて、雰囲気を作るのも上手かったです。

    半面、後半に入ると、ちょっと雑というか息切れの面も。
    専門用語が過ぎたり、「ここは説明欲しいな」という部分が感じられ始めたのは残念でした。

    そしてもっとも問題なのは、ラストスパート。
    熱い文章が、まったく書けていません。

    内容について、に譲りますが、競馬はゴール前で盛り上がってなんぼです。
    作者は乗馬の経験がおありだそうで、ゴール前の興奮や全力疾走する馬の描写には、体験から描ける強みがあると思うのですが、それが見当たらない。
    そこはやはり熱を帯びた、作者渾身の文章が見たかったな、と思います。

    筆力は十分に感じられます。
    次は文章の温度差、緩急の使い分けを意識されてはどうでしょう。

    ・内容について

    レース序盤の説明と展開、特にハートメテオが落ちるまでは理想的でした。
    「これは期待できるぞ」とわくわくしたのを覚えています。

    ちょっと不安になったのは、名前だけついてる三頭がごちゃごちゃした辺り。
    イメージが想像しづらく、興奮が下がってきました。

    そして迎えたラスト。
    あまりにあっさりゴールしたので、逆に驚きました。
    最後にこそ全力を注ぐと思っていたので、拍子抜けです。

    読後の感想は「えっ、これで終わり?」でした。
    序盤の期待が高かっただけに、残念至極としか。
    まさに作中の「ハートメテオ」のような作品でした。

    以下、問題点と改善案を。

    1.馬の名前について
    複数の個体の描写が必要になる場面で、名前をどう表記するかは重要です。私も乱闘とか書く際には毎度、悩んでいるところです。

    原則としては、「不必要な名前は省く」こと。
    名前を覚えるのは結構ストレスなので、重要でないものはモブと割り切るのが、特に短編では不可欠です。


    今回はデンカノホウトウ、ハートメテオ、ミリオンワールドは必要。他のフリーハイウェイ、ウインドシルエット、スカイエデンは不必要かと。

    後者は対抗馬、三番人気程度の説明しかなく、イメージがまるで湧きません。これではモブ同然なので、名前がない方がレース展開をシンプルに見せられます。

    ただ、これはあくまで現時点でのシナリオを前提にした場合です。
    「もっと盛り上げる」方に舵を切るのであれば、名前を削るのではなく、馬に個性を追加して、認識しやすくする方を選ぶべき。
    この辺、ハートメテオは上手くできていました。

    馬の性質や強さでなくても構いません。
    馬体の色や年齢、出身地、ベテランか若い馬か。
    これだけでも馬の外見を想像しやすくなり、モブ感を消せるはず。

    私ならそれぞれに個性を持たせ、レース中盤から熱く競り合う方を選ぶ気がします。
    もちろん文字数は増えますし、単純に好みの問題ではありますが。

    2.専門用語
    前半は問題ありませんでしたが、後半ところどころ、意味のわかりづらい用語がありました。

    この小説が競馬ファン向けなのか、競馬に馴染みのない初心者に向けたものか私にはわかりませんが、
    書き方を見るにおそらく後者だと思われます。

    文字面で意味が読み取れる用語ならよいですが、そうでない場合は、用語を使うとともに説明を加えたり、
    あえて専門用語を使わない、という配慮も必要になるかと。

    というか、前半はそれが出来ていましたので、後半は息切れしただけかと思いますw

    3.終盤の盛り上がりに欠ける

    この小説は、騎手目線とはいえレース実況のような内容です。
    実際のレース実況を見ればわかるように、やはり盛り上がるのは終盤です。

    それまで淡々としていた解説者が、次第に興奮を帯び、自らも熱狂する。伝説として語られる名実況は、例外なくそのパターンです。

    しかるに、この小説はむしろ逆。ゴールが近づくほど勢いが減り、文章は淡々としたまま、決着します。
    もちろん熱さだけが小説の価値とは思いませんが、他に醍醐味があるかというとそうではないので、どうしても肩透かしを覚えます。

    私なら実況にならい、序盤は淡々と、終盤はありったけの熱を込めてレースを書ききります。
    むしろギャップに読者が呆れるくらい、フル加熱しますね。
    競馬をよく知らないので作れるかわかりませんが、逆転が一番盛り上がるので、そのための設定や伏線も張り巡らせます。

    例えば主人公の旗手とデンカノホウトウの思い出エピソード。
    このレースに賭ける思い。そういうものを撒いておけば、終盤の燃料になるはずです。

    一つ思いついた終盤の盛り上げとして、「騎手が鞭を落とす」なんてどうでしょう?
    調べたら幾つか例があり、馬を手で叩いて走らせたとか。
    ピンチを演出し、騎手の機転と馬との繋がりを強調できる、悪くない展開だと思います。
    過去の事実をベースに、フィクションらしく膨らませてもいいかもしれません。

    ラストスパートの文章も、騎手や馬の疲労、伝わる体温、風や匂い、音といった乗馬経験を生かした体感的な描写が、赤伊さんなら可能ではないかな、と思われます。


    ⬜️総評
    ・序盤は申し分なし。尻切れトンボなのが非常に残念。
    ・終盤の盛り上げ方、熱ある文章に課題。
    ・名実況、乗馬経験を作品に生かすべし。

    なまじ出だしがよかっただけに、落差が激しかった感はあります。
    逆に終盤を盛り上げれば、同様のプラス効果が生まれるはず。
    ポテンシャルは感じられます。これからの伸びに期待します。
  • 【22】接吻 ―祖国ハンガリーから―(小鹿)
    https://kakuyomu.jp/works/16816700427950836883

    これまでで一番難しい小説が来ましたw
    純文学、ハンガリー、共産主義、同性愛です。
    詳しくないジャンルのオンパレードです。
    しかもガッツリ書き込まれた文章で、迂闊なこと言えない雰囲気。

    まあ、ジャンル不問の募集でしたし。
    「わからないなりに書く」と宣言しているので、恥晒すの覚悟で、「素人が読んだらこんな感想になる」参考にしてもらいましょうか。

    一読した感じ、70年代の少女漫画ぽい雰囲気を感じました。
    たとえば「トーマの心臓」とか。私は萩尾望都も好きで結構読んでるんです。
    竹宮恵子はあんま合わなくて、ろくに読んでいませんが。

    純文学については真似事程度。ハンガリーは名前しか。
    共産主義は最近調べてたので、政治システム的な意味では。
    同性愛は……まー漫画程度の知識でw

    不安要素しかないですが、感想行きます。


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。

    文章が達者な方なので、文章面での突っ込みは重箱の隅モードです。

    >トカイ駅前で私を拾った馬車曳きの爺さんは、道中、過ぎ行く葡萄酒工房を指しては、味わいの違いを語って聞かせた。

    出だしは文句なしですね。
    状況と雰囲気、お国柄まで一文で表現されています。

    >「そやけど、最近は工場だ、ガス田だ、坊ちゃんも車窓に見たはりまっしゃろ? お上は葡萄酒作る人手、みんなそっちに持ってかはってまいますねん」

    これは……京都弁?
    少なくとも大阪弁ではないですね。(梶野は大阪人)
    御者が客に敬語を使うのはよいとして、使い方が変だと思います。
    梶野の知らない別の方言だったら謝りますが、「はる」の使用に違和感があります。

    あと、「車窓」は御者が会話で使う単語とは考えにくいです。

    私なら、
    「そやけど、最近は工場だ、ガス田だ言うて。坊ちゃんも窓から見えはるでしょ。お上は葡萄酒作る人手、みんなそっちに持ってかはりますねん」

    ちなみに大阪弁(まあ色々ありますが)だと、
    「せやけど、最近は工場やガス田や。坊ちゃんも窓から見えまっしゃろ。お上は葡萄酒作る人手、みんなそっち持っていきまんねん」

    ちろっと調べた感じ、トカイは典型的な田舎のようで。
    そこの住人に京都弁を用いるのは、どうなのかな……まあ後述します。

    >「……重工業化は、祖国を富ませるために欠かせない政策ポリティカですから」

    主人公の考え(まあ上辺ですが)が最初にわかるのはよいです。

    >荷台に乗る私は、振り返りもせずに答えた。

    御者と主人公の配置が、最初、イメージできませんでした。
    御者は当然前を向いて座っていて、「振り返らず」ということは主人公は後ろ向きに座っている。
    普通、馬車に一人で乗るなら、前向きに座りませんかね。
    ……いや、そもそも馬車内と御者って会話できるのか?
    窓があるなら、壁越しってことですかね?

    >開発には私の父が幹部として関わるのだが、爺さんは知る由もない。

    「坊ちゃん」とわかったのは、服装からですかね。

    >「祖国の富む前に、儂らぁが貧する……なん、まあ、坊ちゃんに聞かす話とちゃいましたわな。――もう着きますえ」

    「なん」の意味が分かりません。方言でも知らないです。
    文尾に「え」がついてるので、まあ京都だと思うんですが。

    >いけない。決して目立ってはいけない。
    ハンガリーの歴史知らない素人の疑問なんですが、共産革命って貴族は粛清されないんですかね?

    マルクスの持論で、労働階級が全権握らないと共産主義は成立しないみたいな話を読んだ気がするんですが。元貴族の父が幹部してるのが、ちょっと不思議。

    ともあれ、主人公の葛藤はわかります。

    >四面に時計のある尖塔の先端には、しかし、十字架はない。
    共産主義は宗教禁止ですからね。
    これも背景描写で間接的に説明されていて上手いです。

    >新入生名簿と部屋割が張り出される。
    「張り出されている。」かと。

    >踊り場の高窓の下にある壁龕へきがんは、こちらもやはり空だった。

    壁龕はイメージしづらい。もう一言説明欲しいです。
    私なら、
    「踊り場の高窓の下にある壁龕にも、あるべき聖人像の姿はなかった」
    で、「多分アレだな」くらいの情報出します。

    >私を新たな主人に迎える東半分とは対称に
    「主人に迎える」は凝った表現でよいかと。
    「対称」は「対照」が正しいと思われます。

    >隠れカトリクシュ――!
    多分、「カトリックシュ」が正しいのではないかと。
    よく知りませんが、ググってもこの表記出て来なかったので。

    >宗教者とは、反社会主義者ソツィアリシュタだ。私は告発しなくてはならない。

    同国人ならわかるんですが、留学生に適用されるものなんですかね?
    よく知りませんが、共産圏に移住したら宗教捨てないとなんです?
    それとも、信者は共産圏に移住できないとか?

    >しかし、告発を知れば、指導生はまず私を疑うだろう。殴るだけでは済まされないはずだ。

    告発しない動機としては、ちょっと弱い。
    指導生がゴリラとかなら話は別ですが、まだ顔も見てないわけで。
    殴れそうもないヒョロガリかもしれないじゃないですかw

    何より、主人公の「共産主義者の模範たる」べき指向から考えて、
    この程度の理由で踏みとどまるのは、説得力を感じません。
    ここでは断固、告発すべきと考えるも、後に出会った後の印象や会話で、告発を保留する、とした方が自然です。

    >冷や汗に動けず、部屋にも過ごせない。
    よくわからない心理。
    私なら「証拠品と同じ部屋におられず」、部屋を出ますかね。

    >今すぐの告発は無策だ。
    ここら辺の思考は、まあわかります。

    >歪んだ硝子窓を指す冴えた月光を描く。
    「歪んだ硝子窓「に差す」冴えた月光を描く。」
    だと思われ。

    >旋律ばかりが色めき、華やぐ。
    「月の光」ってそんな曲だったかなと思い聞いてみましたが、
    確かに華やいでる気がする!

    >曲が変わる。『アラベスク』。
    シューマンとドビュッシーに同名の曲があるんですが、どっちでしょ。

    >気付けば私は、彼の長いまつ毛のまたたきまでわかるほど、近寄っていた。

    壇の下ギリギリまで寄ったのかな?と思ったら、

    >最後の一音、遠くへ置かれた響きがこだまを残す。彼が私を見上げ、微笑んだ。

    見上げるんかーい!
    もうそれ、手元覗き込んでるレベルw
    ここは普通に、「壇上に登って」と書いた方がわかりやすい。

    >黒曜の目は、南方の陽光。この地を異郷とする男。私にはそれだけで慕わしい。

    よくわかりません。
    共産主義に染まった同国人が嫌だからと思いましたが、馬車の老人も敬遠してましたし。
    共産圏外の人間だから、だとすると、告発を悩むのと矛盾が生じますし。
    単に黒い瞳が好みだったから?

    >イシュトヴァーン
    調べたら初代ハンガリー国王で、聖人なんですね。
    殉教者でも出てくる名前のようですし。
    何か含んだ意味がありそうですが、調べてると無限に時間過ぎるのでここら辺で。

    >レバノンの綴りだから
    ここで出身地がわかるわけですが、ぶっちゃけレバノンがどこの国かすら知りません。
    詳しくない読者に伝えるなら、ここで簡単な地理説明を加えるべきかと。

    >父が葡萄酒工房を営んでいるだとか
    これはレバノンで?ハンガリーで?

    >大らかに笑いながら握り合った手を上下に振った。
    読み物としては、一話の最後をこの文章で締めた方が、物語としてのまとまりはよくなりますね。

    >中編 永遠

    >伯爵エステルハージ
    伯爵イシュトバーンでなく?
    ファーストネームで呼ぶものなんですかね?

    と思って調べたら、ハンガリーは姓名の順で書くんですね。
    引っ掛かるので、どこかで解説欲しいところ。

    >ふん、家業取り上げられはって、お前さん、将来はどないしよう思たはるね?」
    ここの方言も猛烈に違和感。
    「はる」は敬語ですが、主人公を馬鹿にした教師が使うとは思えません。
    京都弁なら
    「ふん、家業も取られよって、お前さん、将来どないしよんねん」くらい。
    ちなみに大阪弁。
    「はっ、家業も取られて、お前、将来どないすんねん」

    >「人間、一度覚えた贅沢はな、欲はな、消されへんもんや。エステルハージ、お前さんは首都の言葉しゃべらはるなぁ。言葉は習慣や、習慣は生い立ちや、生い立ちは偽れへん」

    「消されへんもんや」だけ敬語じゃないですね。
    敬語を使うなら、「消されへんもんですわ」くらい。
    まあ敬語を消す方が自然だと思いますが。

    内容はただの田舎もんの逆差別ですね。
    生い立ちどうこうって、関西来たらすぐに方言移りますけどねw

    >クスッと誰かが笑い、小石を投げ込まれた池の波紋は、教室中に伝播した。

    ちょっとくどいです。
    「クスッと誰かが笑うと、それは波紋のように教室中に伝播した。」

    >堪えられず、両肩を包む手が離れないうちに、彼の胸へと頭を寄せた。躊躇いもなく抱き締められる。

    何か、同族を発見するセンサーでも備わってるんですか?
    こういう人たちって。

    >マジャル語
    調べないとわかりません。
    ハンガリーの公用語なんですね。

    >放蕩さを感じさせる、入れ込むような、無秩序でひたすらな優しさ。

    放蕩さと入れ込み、優しさは真逆なので、私ならこう繋げます。

    「放蕩でありながら、入れ込むような、無秩序でひたすらな優しさ。」

    >屋敷が大湖バラトンこの湖畔だったから
    ここのルビの「バラトンこ」、違和感があります。
    普通に「バラトン湖」でよいかと。大きさは口ぶりで伝わりますし。

    >私たちは、この学校にありて等しく他所者。
    なぜこの二人が、よりによってトナリの学校に入学したのか、気になります。
    どんなあつかいを受けるか、親ならわかりそうなものですが。

    >「ね、レバノンはカトリクシュの国なの? ステファノス……」
    ここの名前、「ア」が抜けてるのは脱字?
    それとも、そういう略称をするもの?

    >政治経済の支配階級は大抵カトリクシュかな」
    >「……あなたも?」
    >「うん」

    カソリックって、思いっきり同性愛禁止のはずですよね。
    共産主義も、おそらくこの時代はそう。
    なんかナチュラルに絡んでますが、そこら辺の意識はどうなってるんでしょうね、この二人。

    >罪の意識が、忠誠をより焚き付ける。
    ここの罪の意識がそうなんですかね。
    ……えらくあっさりしてる気がw

    >宗教は阿片だ、とマルクスは言った。
    まあ共産主義も阿片ですよねw 大差ない。

    > 聖ステファノス。そして、私はカトリクシュの守護者、ハプスブルク家に連なるエステルハージの子。湖畔へと置き去りにしてきた母の十字架。私を祝福した老司祭は、捕らえられ、既に亡いと聞く。
    >「……僕が信じるのは、神の力じゃなくて、社会主義ソツィアリズムシュの平等と生産性だから」

    ここら辺の葛藤は共感できます。
    終戦後の日本人もこんな感じだったらしいですね。

    >私を惹きつけ、焦燥させる。
    ここ、アステファノスは特に主人公を責めていないので、焦燥する理由がないですよね。
    もちろん、内心で責められたように感じて、そう思ったという可能性もあるし、理解もできます。
    なので、もしそうなら、「彼は責めたわけではない」意味合いを追加して、主人公の心理を明確にした方が読者に伝わりやすいと考えます。

    >「貧しい生活を救うのは、豊かな社会体制だ。祈りではない」

    中学生にいうのもアレですが、社会体制と祈りってバーターじゃないですよねー。
    共産主義が宗教敵視するのは、体制として不完全であることの証明な気がします。

    >「君はもう知ってる。だから、僕が不善を行なったなら、君が導いてくれ、善に。それまで、僕らは自由だ、社会にも互いにも」

    今まさにやっとるがな。いちゃいちゃと。

    >「君はもう知ってる。だから、僕が不善を行なったなら
    私には全然わかりません。
    何か善を知ってる場面ありましたっけ。社会主義?

    >それまで、僕らは自由だ、社会にも互いにも
    ここも意味が分かりません。
    「お互い不干渉でいこうぜ」くらいは読めますが、社会にも自由とは?

    >穏やかな目の奥に、燃える火が潜む。決して、他人の風に揺らがない火が。私には告発できない。外れた調律に煌めく月の光に魅せられてしまっては、私はこの男を善き者と認めずにはいられない。

    告発をやめる理由、この段であれば納得ラインですが。
    ただ、燃える火とか他人の風に揺らがないと思うには、ちょっとエピソードのパンチ弱いですかね。

    アステファノスは異邦人で、社会主義に与したハンガリーの人間ではありません。
    そりゃあ宗教も自由でしょうし、不満なら国に帰ればいいだけで。
    これが同じハンガリー出身で、体制に屈した主人公とは異なる気骨の持ち主、というのであれば、
    尊敬する気持ちもわかるんですが。
    まあ、自由な発言を羨ましく思ったり、魅力的に感じるのは共感できます。

    >黒板の掛かる画架とを囲む。
    ほとんどの人間が「学校の黒板」を想像してしまうので、
    私なら「小さな黒板」にします。

    >「君、なんでフランス語なん選ばはったん? ――いやいや、ほんまのとこ言いやぁ。楽単・・や聞かはったんやろ? その先輩は誰や。教えてくれはったら、そいつの成績の三割、君に付け替えたるわ」

    この仏語の先生だけは、京都弁がよく合ってますね。
    キャラクター的に、そんな感じ。

    >エル=コーリーの五割をやったるわ
    「やったる」は乱暴な言い方なので、「つけたる」の方が。

    >戦後のパリ市街の写真も見せた。
    この時代のパリはどういう状況なのか。
    共産主義国との関係や、ハンガリーとはどうなのか。
    ここら辺の情報は、素人的には最低限欲しいところ。

    >行ってみなわからへん魅力ってもんがある、人も町も。そん目で見てきはりぃ

    ちょっと不自然な言い回し。
    「行ってみなわからへん魅力ってもんがある、人も町も、そん目で見てこそや」

    >私の心に善を刻み込む。
    ここで何故、善?

    >朝も、葡萄酒の空き瓶が彼の祭壇を隠すまでは起きなかった。秘匿をそのままに過ごす日々。

    ここも謎です。
    アステファノスがガチのキリスト教信者であることは教えられてます。今更、祭壇や十字架を知らないふりをする必要性とは?

    むしろ秘密の共有として、背徳感に浸りそうな関係に思われます。

    >古い採石場の切り立つ岩壁は、
    切り立った岸壁と採石場の位置関係が読み取れません。

    >暮れかけに淡く燃える湖水を楕円に抱える。
    こっちは秀逸な描写だと思います。

    >櫓が桟橋に押し当てられ
    難読なので、「ろ」のルビを。
    「やぐら」とも読めてしまうので。

    立って漕ぐということはゴンドラ型で、ボートじゃないんですね。

    >彼の目に、東洋の陽光と海岸線とが映る。
    好きな表現。

    >「この湖、川に繋がってるの?」
    >「いいや、雨が貯まってるだけだから、流れ込まれもしない、出て行きもしない」

    レバノンジョーク?
    ここは主人公に受けて欲しかったw

    それはそうと、アステファノスの台詞がやや冗長です。
    「いいや、雨が貯まってるだけだから、どこにも出ていかない」
    くらいの方が。

    >夕焼ける湖面は揺れる舟影に拭われて、水底の暗みが現れる。
    ここは詩的でよい表現。

    >両脚を伸ばしてもなお届かない距離。余力に滑る舟が止まる。湖水に冴えた空気は、じきに来る冬の匂い。

    でも、ここまで続けるとやりすぎ。
    体言止めに装飾過剰で、読むのが億劫になります。
    凝った表現の前後は、意図的に抜いた方がよいです。

    >明るさは、一転して憂いに変わり、それを隠した微笑みが浮かぶ。
    この一文だけ三人称のように読めます。
    私なら、
    「明るさは、一転して憂いへ。それを隠して、私は微笑みを浮かべた。」

    >「それじゃ、イシュトは国外に行くの?」
    「それじゃ」は不要です。

    >寂しさに、私の心境を探している。互いに自由と線引きした彼が。神への祈りを見せない彼が。
    ここの心情はよくわかりません。
    「神への祈りを見せない」って、「見なかっただけ」では?

    >これは、私の待っていた大風だ。孤舟を覆し、大海へ身を投げ出させるほどの。
    えっ。
    こないだ、ベッドでいちゃいちゃしてたのに?

    >私を見つけ出せ、同じ寂しさを持つ私を――!
    攻撃的な受け身だなあ。

    >『永遠』。低い声は不機嫌か、宣戦布告か。
    ここは主語が欲しいですね。
    まあアステファノスだろうとは思うんですが、主人公も!とか使ってて、攻めに転じた可能性だってあるわけで。

    >波紋が同心円に広がる。
    ここは意味が被って見えるので、「波が同心円に」の方がよさそう。

    >私は針で押されたように動けない。
    押される?
    刺される、ではなく?

    >何って? ――永遠さ。
    この部分だけ読むと意味不明でしたが、
    ランボーの原文読んでみると、なるほど。
    かっこいい詩ですね。好み。

    >『mêlée』は、交(まぐ)わうってことさ。わかるか?
    おまわりさん、こいつです!

    ランボーの詩をナンパに使う人、初めて見ました。
    そこだけはちょっと評価w
    意訳が過ぎるとは思いますが、まあ元の詩も勢いマックスみたいなノリですしねえ。

    >私は彼の目に貫かれ、身を強張らせて首を振るのみ。
    ここ、「首を振る」のが縦か横かで大違いなので、明記すべきかと。

    >舟酔いは、けれども、陸には持ち越されない。
    そんなこたーないです。
    車酔いだってそうでしょ。

    >日常の会話に過ぎる夕食。肉のない汁物グヤーシュ。
    ここは意味が分かりません。

  • 【22】接吻 ―祖国ハンガリーから―(小鹿)
    感想その2


    >後編 接吻

    >フランス女と通じ、西側陣営へと機密を漏らしていた!
    わりとよくあるパターンですね。この手の作品だと。

    実際には外語教師とか、一番疑われるだろ!と思わんでもないですが。

    >反体制者と看做された生徒は、吊し上げられて、暴行された。
    「ラカトシュ先生と親しかった教え子から」とかの方が、わかりやすそう。

    >取り囲まれ、弁明は聞かれもせず。私はもう声も挙げられない。腹を押さえて部屋に戻り、寝台に倒れ込んで泣いた。
    暴行を「腹を押さえて」だけで済ますのは、インパクト薄いと思います。
    この程度?とも思いますし、具体的な怪我の描写は必要かと。
    アステファノスも同じです。

    >「僕の罪は事実じゃないか!」
    逆切れ感ありますが、本気でそう思うなら甘んじて受け止めるしか。

    >未だ耳に残る「級長伯爵」と嘲笑する級友の声。
    これは、転校前の話です?
    今だ耳に残るって、最近の話じゃないですよね?

    >陰口の内容など、庁舎でも変わらなかったのだろう。
    どこから庁舎が?
    父親の職場って意味ですかね。父親は役人?
    でも「私がどれほど平気な顔をしていても」ですよね。
    誤字なのか、いきなり文脈が飛んでるのか。

    ここら辺、情報なさすぎるのと、文の繋がりが謎で、読み取れません。

    >「この先、国のために働くことでしか、民には贖えない。」
    社会主義だと、どのみち「国のために働く」以外の選択肢はないですけどね。

    >背中から抱き締められて、煙草の匂いが肺を満たす。
    残り香では、さすがに「肺を満たす」は大げさかとw
    喫煙中ならわかりますが、その描写を。

    >「……僕は、もう」
    これは神を捨てたことかな?

    >「……ねぇ、イシュト。レバノンに行ってしまおうか。誰からも責められない、迫害もされない」

    ここの台詞の重さも、主人公の怪我の具合によって違ってきます。
    いじめ程度なら大袈裟ですが、ガチの暴行、骨折や大怪我の類であれば、命の危険も考えるべきところなので、誘いも納得できます。

    狂信ゆえの暴走というのもありそうですからね。
    ここの教師が何を管理してるのか、まったくの謎ですが。

    >「……行かない。僕の祖国はこの国なんだから」

    ぶっちゃけ、この台詞は中学生が言うとチープです。
    覚悟の裏付け的なエピソードもありませんし。
    ただ、背伸びが故の発言という感じも、リアルな気はします。

    >私は、自分も残ると言う彼を重ねて諫め、送り出した。
    ここで主人公が学校に残る選択をした理由が謎です。
    普通は一時的にでも退避するかと。
    何か、よほどの理由があるはずですが。

    >家々から漏れた赤い光が
    何故赤いのかは謎ですが、共産化の隠喩ですね。

    >胸に入り来るやや埃っぽい空気の量は変わらない。私を満たして温めはしない。

    アスティファヌスと対比としての文章でしょうが、ここはイマイチな表現。

    >樅ノ木の下に寄せられた贈り物
    樅(もみ)は要ルビかと。

    なぜ、「ノ」なんでしょう?
    調べた限り、「樅ノ木は残った」で使用されてるくらいですが。

    >夜が明けたらと、星は見えぬかと。
    星はともかく、夜が明けたらとは……?
    一晩中見てたってことです?

    >母の十字架を聖堂の聖母像の手に掛けた。

    あれ。
    >湖畔へと置き去りにしてきた母の十字架。
    って書いてありましたけど。

    >……ああ、私は本心から望んだのか。形見の十字架と替えてまで、紅巾を首許に留めることを。

    ここら辺は共感しますねえ。

    >時計は十一時に近付く。
    「十一時。」でよいかと。

    >聖堂の脇戸を揺り開けて、彼は尖塔の螺旋階段を昇る。
    場面変わってるので、この前に一行開けるべき。

    >杯を受け取り、捧げ返した。
    ここら辺、主人公の葛藤がまるで書かれていないのは不可解です。
    共産主義と信仰を天秤にかける、まさに審判の時でしょう。
    流されて受け取った。飲んだ。という展開は軽すぎます。

    >「イシュト、君はここへ来た。神が赦し、愛したまうからだ。君も、神の子だ」

    このアスティファヌスの行動も、唐突過ぎます。
    「お互い自由で」と言い出したのは彼の方です。
    宗教的な儀式に拒否する友人を連れていくのは、約束違反のはずです。

    主人公の内心に眠る母と宗教への想いに、彼が何かしらの台詞や対応から気付き、それを作中で描いた上で、この展開に至るなら納得できますが。
    このままでは、彼が空気読めない人にしか見えません。

    >今夜を一人で過ごせない、孤独に圧された者。聖夜カラーショニの夕べに、父と何を争ってきた。赤い目をして。明かせよ、その心境を。

    ヒントもろくにないので「なんだその展開」という感じ。
    てっきり、イシュトを一人に出来ないので戻って来たんだと思ってましたが。
    レバノンって、簡単に往復できる距離なんです?
    いくら喧嘩しても、その日のうちに追い返す親は珍しそうなもんですが。

    >顔を背けても、追い来る煙草の香り。
    これだけ煙草臭するのに、喫煙シーンがない謎w

    >熱い抱擁は、今までとは違う強引さ。暖を求めているわけではない。明確に私自身を求めている腕。

    えっ、船でヤっちまってるんじゃ?
    行間でファックし終えてるとばかり。

    >振り向かされて、私の面前にはいつかの夕陽に燃える目。船酔いの波音。痺れるような、熱くも冷たい水が全身を貫く。制止の言葉も思い浮かばないうちに、押し付けられる唇。割り入って侵しくる血潮の舌。

    修飾語が渋滞してます。交通整理をお願いします。

    >幼き日に母を亡くした私にとって、接吻とは、形見の十字架へとなすものだった。

    父親とはしないもんなんですかね、ハンガリーでは。

    >『ユダの接吻』
    ここの由来をきっちり説明してるのは、素人的にありがたいです。
    タイトル回収ですね。

    >そのために、ユダヤ人は今や滅びようとしているのです」
    キリ教もたいがいという一例。

    >紅巾と、級長に与えられる金の襟証。
    説明が必要なのはわかりますが、いかにも語呂が悪い。
    級長になった際、この襟章についてもあらかじめ言及しておくとか。

    >孤独の唇でマジャル語を語り、
    マジャル後はハンガリーの言葉ですから、裏切りに相当しません。
    「コミュニズムを語り」の方が適切かと。

    >鉄鎚に頭を撃たれたような
    「打たれた」、ですね。

    >アスティファヌスを突き放し、螺旋階段を駆け降りた。

    ここにきてやっと、宗教的な恥の感覚がw
    まあそりゃあそうですよね。
    むしろ、今までの接触をスルーしてる感覚がおかしい。

    >寂しさのまま、彼の心を求めたばかりに。
    「体はNG」って言えばよかったのに。

    >ユダヤ人、エル=コーリー・アスティファヌスは、変態性欲者である!

    これ、学校側の文章ですか?
    それとも、生徒の書いたもの?

    >上級生たちは、止めにかかる先生までをも取り押さえる。
    やはり生徒の暴走ぽい。
    というか、先生の出番ここだけとはw

    >取り分けて体格の良い最上級生が、甘ったるく笑う。
    「甘ったるく」はちょっと違和感、
    私なら「愉快そうに」かな。

    >「自分、二十四日の晩な、部屋にいはらへんかったんやて? どこで何したはったん?」

    緊迫シーンなのに、何故敬語w

    「自分、二十四日の晩な、部屋におらんかってんやて? どこで何しててん?」

    >腐肉にわく蛆虫でも見る目が、私を凄む。
    蛆虫に「凄む」人はいないでしょう。「蔑む」かと。

    >「集会堂の二階で、あいつと交まぐわりよったやろ⁉︎」
    外国の男子寮だと、同性愛は前提なんですかね。

    >変態、異常者、出て行け──!
    あれ、でも異常扱い?
    BL世界かと思ってましたが、どっちなの?

    >全ては──酔ってしまったせいだ。褐色の頬と、黒い眼差しに。調律の外れた演奏に。優しさに。葡萄酒に。アスティファヌスの、見せられもしない内奥に──!

    クソ女みたいな言い訳をかましますね。

    >「僕は変態性欲者なんかじゃない! それは、こいつだ! こいつが無理矢理、僕に、接吻したんだ──!」

    売った────ッッ!!(友人を)
    クズ行為ですが、まあ気持ちはわかります。
    ただ、もっと危機感を高めた方が、主人公も「やむにやまれず」感が出て、もうちょい同情できる気がします。後述。

    >「──決して、自分を責めるな」
    ここら辺のアスティファヌスの台詞はかっこいいですね。
    これは兄貴と呼びたくなる。
    おまえが悪いんだけど。

    >アスティファヌスはよろと立ち上がると、人垣に向かって歩む。自ずから道が開かれて、

    この展開だと、普通にフルボッコにされません?
    「変態性欲者」が目の前で「変態行為」をやって、のうのうと去るんですから。
    何かしら周囲を圧する、カリスマ的な描写がなければ、納得しづらいと思います。
    それがあればこそ、無事に学校を辞められるような。

    あるいは、フルボッコにされて、「一命はとりとめて退学」にしてもいいかと。アステファノスの無限の愛が強調されて。

    >学窓深くに留まった。
    よい表現。

    >三十四歳になって、希望が通った私はレバノンに着任した。

    これだけやらかして、行きたいと思いますかね、レバノン。
    まあ二十年も経てば心境変わっても変とは思いませんが、
    その辺の心の変遷については、多少なり説明が欲しいところ。
    「贖罪に生きる」まで言ってたのですから、

    >ピアノの音が立った。
    創作表現ぽいですが、雰囲気は伝わるのでよし!

    >彼は客席に顔を向けないが、選曲は全て私に宛てたものだとわかる。
    まあ、ここら辺はレバノン着任の時点で既定の展開。

    >彼の左手の薬指には、銀の指輪が光っていた。
    ここら辺は順当ではないでしょうか。

    >胸の前で十字架を切り、愛しき者とその家族へと、神の祝福を祈った。
    ふうむ。結局信教に戻った感じですか。
    まあ、神の教えをガチ実行されたわけですし、それが原因かもですね。

    >演奏は終わり、珈琲が出る頃。私はセルヴィエットを膝上に畳んだ。
    セルヴィエットとラパトリー、全然知りませんでした。
    まあ雰囲気あるし、これくらいは調べるべきかな。

    >「閣下。失礼ですが、少し……」

    これ、多少怪しい指摘で申し訳ないんですが。
    大使に対する呼び方は、「閣下」より「大使」で使用されるケースが多いと思われます。

    昔読んだ大使官邸の漫画(実際に原作者が務めてた)で、
    大使に対して「閣下」でなく「大使」を使用していたので、どっちなんだろうと調べたところ、知恵袋ではありますが、見つけました。
    文書でなく会話の場合は、Your Exellency(閣下)でなく、
    Mr. Ambassador(大使)が使用されているとのことです。

    多分、こっちが正しい気がするんですが、確定情報まではいかず。
    なので「おそらく」という形で指摘しておきます。

    >「Je l'ai retrouvé. Mon vieil ami. Adoré le bien et un soleil」
    >(見つけたんです。善なるものと太陽とを愛した、私の古き友人を)

    なんでフランス語なんだと思いましたが、まあ仏語先生の思い出的な?
    二人でフランス語習い覚えたとかのシーンがあれば、わかりやすく「なるほど」なんですが。

    王道展開ではありますが、綺麗にまとまっていて、すっきりと落ちてると思います。
    ちょっとアスティファヌスが聖人過ぎると思いましたがw

    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    「ユダの接吻」、そしてアスティファヌスの「許しの接吻」ですね。

    個人的には、「永遠」とか「太陽」の方が印象的ですが、
    やはり「接吻」が固い気がしてきました。よいと思います。

    ・文章について
    ぶっちゃけるまでもなく、私よりレベル高い文章だと思います。

    本来、ろくに純文学も読まない私が、何か言うべきではないと思いますが、「わからないなりの感想」を書ける機会は滅多にありませんし、せっかくなので忌憚なく書かせていただきましょう。

    あ、小鹿さんがこの小説を「素人に読んでもらう必要はない」とお考なら、この「文章について」の指摘は飛ばしていただいて結構です。

    そういうスタンスの書き手もおられるでしょうし、別にアリだと思います。私がこの小説のターゲット外だというだけです。

    それでは、てらいのない感想を。

    一言で言えば、修飾が過剰で、うるさすぎると感じました。
    二行に一つくらい差し挟まれる凝った言い回しは、単体ならば極上ですが、こうも続くと読むのに疲れてしまいます。

    謎解きにも似た文意を探す思考は、食事で言えば消化のようなものです。咀嚼し、よく味わって呑み込む。それが立て続けだと、顎が疲れてしまいます。

    何より、謎を解いた余韻を味わう間もなくおかわりが来るのは問題です。文章はハイレベルなのに、意識はどんどん物語から遠ざかっていくのです。

    私は一読目、この小説をスマホで読み切りましたが、何度となく目が滑り、かなり我慢して読み返しました。
    二読目はPCで、チェックしながら読んだので話を呑み込めましたが、同時に知らない語彙や未知の知識を調べながら読んだので、ほとんど丸一日かかってしまいました。

    二読目ではさすがに理解しましたが、この読み方を万人に勧められるとは思えません。
    まあ、普通の読者はわからないところは適当に飛ばす気もしますが、それが作者の本意かどうかという話です。

    このレベルの書き手が引き算を知らないとは思いませんが、少なくともこの作品においては、装飾過剰で隙間が足りていません。背景ぎっちり書き込んだ漫画のようです。

    芸術的なのと、読者に届くかは別の問題なんです。

    特に難解に感じるのは、言葉遣いに加えて、設定が一般的でなく、説明もほとんどないこともあると思います。
    片方だけならまだしも、両方揃ったのが不味かった。

    ハンガリー共産主義歴史物を明快な文章で書くか、誰でもわかる設定を格調高く書くか。
    どちらかであれば、ここまでにはならなかったのでは、と思います。

    あと、結構な確率で使用される体言止めも、この二つに上乗せされるとくどく感じました。
    私も体言止めは使いますし、嫌いじゃないんですが、セットで使うとこうもうるさくなるのかと。
    ちょっと自省したくなるくらいでした。

    一段落に凝った言い回しは一つか二つ。体言止めの使用は最低限。
    難解なテーマを書く際は、文章は平易に、わかりやすさを心掛ける。
    エンタメ書きとして、自分の肝にも銘じておこうと思います。

    ・内容について

    先に引っ掛かった点、問題を感じた点をあげておきます。

    1.方言

    これははっきりと、滑っています。
    関西の人間が読んだらギャグパートかと思うレベルです。
    小鹿さんが関西人ならすみませんが、何故こう書いたのか、聞きたいくらいです。

    トカイが元首都とかなら、京都弁を選んだのもわかりますが、
    調べる限りワインで有名な片田舎という感じですし、関西という感覚とも遠いです。
    狙いはわかるんですが、この重いテーマの物語にはマイナスの方が大きいかと。

    ただ、仏語の先生と京都弁は、相性ばっちりでしたね。
    フランスと京都は親和性高い気がします。お高いところとか。

    私も方言さして詳しくないので、改善案というのは思いつかないのです。秋田くらいの方言を使うか、オリジナルで方言ぽい言い回しを作るか。
    あるいは潔く方言を使用しない、というところに、落ち着きそうです。

    2.同性愛の認識

    二人は普通に同性愛の関係になりますが、調べた限り、カソリックは無論のこと、共産主義も同性愛は禁じてたようです。
    本来言及はなかったが、スターリンから禁止令が出て、他国が倣ったそうな。
    時代的には、まさにこの辺だと思われます。

    祭壇を自作する敬虔な信者のアスティファヌス。
    棄教を悔やみ、模範たる共産主義者を己に求めるイシュト。

    こんな二人が、禁止されてる同性愛について、何の苦悩も会話もなく、流れでイチャイチャしてるのは、リアル男性の私にとっては、謎以外の何物でもありません。

    まあ、「トーマの心臓」もそうだったし、そういう世界だと言われればそれまでですがw

    外国の寄宿舎生活は全員同性愛前提というか。まあ、それはそれで一つのフォーマットなのかと、半ばあきらめて読んでいたので、今作についても突っ込みはヤボかなとは思わなくもないです。

    ただ、カソリックと共産主義の板挟みによる懊悩が、今作のテーマと言っても過言ではありません。
    そういう作品で、同性愛というテーマだけ、特別扱いでスルーというのも、なんか違う気がするな……と思い、書かせていただきました。
    そういうテーマでなければ、いっそあきらめもついたと思いますが。

    私が書くとすれば、まずイシュトは本来の趣味はどうあれ、両方の禁忌から徹底的に同性愛を嫌う方向で描きます。理由も明記します。

    けんもほろろな扱いのアスティファヌスが、ピアノとか船とかで魅了して、なんとかかんとか祭壇で惚れさせる。で合体。そこからあの展開なら、まあ許せるかな。

    ああ、アスティファヌスは何故?の問題が残るな……
    うーん……まあ「最初から運命感じてた」みたいな……(適当)

    3.この二人、どこまでヤってんの?

    よい子のカクヨムですから、行為まで書けないのはわかるとして。
    この二人、どのタイミングでどこまでヤってるのか、わかりません。
    行間でやってんだよ!読み取れよ! と言われてる気がして、私はかなり妄想を働かせていました。

    最初にベッドで抱かれて髪梳かれてる時点で「この後ヤったなこりゃ」と思いました。
    船のシーンも、「最後なんかよくわからなかったけど、ようするにヤったんだな」と結論しました。
    祭壇シーンはむしろ、
    「なんでこいつ逃げてんの?とっくにヤってんだろ?
     ああ、さすがに神様の前で羞恥プレイは無理だったか?」
    とか推理してました。
    あと当然ですが、同じ部屋で生活してる間、ヤリまくってると思ってました。

    思春期みたいな疑問ですが、ここを読み違えると、最後の「ユダの接吻」の罪の度合いが変わってきます。
    本当に「祭壇キスだけ」ならイシュトの言い分も一理あると思えますが、「前からヤってる」なら、まさにユダ的な裏切り行為です。

    実際のところ、どうなんでしょう?


    閑話休題。
    よいところですが、ストーリーがオーソドックスなところでしょうか。
    出会い、別れ、年を経ての再会というパターンは王道ですが、
    ストーリーをシンプルにしたのは、正解だったと思います。
    コッテリした設定と文章に加えて、ストーリーまで複雑だったら、音を上げたかもしれません。

    共産主義と宗教というテーマは、「アスティファヌス=神の愛」に救われるというオチで、
    それなりに拾われてる気がするので、アリだと思います。
    聖人過ぎるだろという気はしますが……そこはフィクションということで、見逃せる範囲。

    逆にアスティファヌスの魅力は、正直私にはいまいち掴みかねました。
    放蕩と敬虔という二つのキーワードが、どうにも脳内で融合しなかったので。
    台詞とかピアノとかランボーとかは素敵ですが、何を考えてるのかよくわかりません。
    あと、最後まで名前を覚えられませんでしたw

    イシュトの方はわかりやすいほどわかりやすく、共感もできて、よいキャラクターだったと思います。
    もっと細部まで苦悩してもらいたい気もしましたが、ショートバージョンですもんねこれ。

    仏語の先生もいいキャラだっただけに、もうワンシーンくらい欲しかったかも。
    この小説には息抜きの場面が足りていないので、それがあればほっこりできる場面が増えたと思います。
    はっ、まさかあの方言は、計算づくで……!?

    まあ、素人なりに「ひたすら本音」を武器にしてここまで書いてきましたが、
    一日かけてじっくり読んだ結果、「わりと面白かった」という結論に至りました。
    でも、多分一読目だったら、「小難しい腕自慢小説」って書いたと思います。
    そこら辺含めて、本音感想ということで。


    ⬜️総評
    ・方言など穴はあるも、文章はハイレベル。くどさに課題。
    ・下調べのしっかりした設定と物語。本格派。
    ・同性愛との親和性に、やや疑問。

    いろんな意味で、一読の価値はあると思います。
    長々と好きに書かせていただきましたが、感想は以上です。お疲れさまでした。
  • 【23】短編の多い作品集。(ゆげ)
    https://kakuyomu.jp/works/16817139555685334945


    今回は短編集です。四作あります。
    ……一人一作と書かなかった自分を呪いたい!
    でも、引き受けてしまった以上、完遂以外ありません。

    スケジュールはやや遅れていますが、ゴールも見えてきました。
    四作品、ガンガン書いていきたいと思います。


    【No. 037】「とと」の大人様ランチ


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。

    >高森隆盛たかもりりゅうせいの意識はそこで飛んだ。社畜歴四年。
    死んだかと思いました。

    >隆盛はフラフラと立ち上がり、吸い寄せられるように外へ出た。
    ここの前に、
    「一日何も食べてないこと」「ひどい空腹であること」を書き加えると、主人公の行動がよりスムーズに読めます。

    >すぐに小さな屋台が見えた。
    「匂いをたどると」の方が、吸い寄せられてる感出ませんかね。

    >「お疲れですね。元気の出るものを用意しましょうか?」
    >「あ、ああ、それで頼みます」

    いきなり見ず知らずの屋台にこんなこと言われたら、ちょっと引きます。
    空腹を差し引いても、まず屋台の設備や看板を見て、「何の店か」を知ろうとするのが普通だと思います。
    この場合なら、どんな料理を出すのか教えないために、
    「暖簾にラーメンの文字はない。
     所狭しと並んだ調理器具も、ラーメン用ではなさそうだ」
    くらいの思考と描写を、簡潔に書くとよいと思います。

    >この男とはどこかで会ったことがあるのだろうか。
    会ったことがあるか、は顔を見て考えることです。
    名前からとっかかりを作るなら、「聞き覚えのある名前だ」。
    そのあとで、「でも顔に覚えはない」と繋げるのが自然かと。

    >「望都の特製『大人様ランチ』です」
    料理の描写はいいと思います。おなか減りました。
    ただ、お子様ランチのバージョンアップというより、大人向けのプレートという感じがあり、名前負けしてる感があります。

    私なら、お子様ランチの象徴である旗に着目しますね。
    この旗を「食べられる食材」で作るとか。
    竿はパスタスティック、布地はライスペーパー。
    日の丸なら、赤はラズベリージャムをつけて。
    まあ、食材は今適当に考えただけですがw

    主人公に「ただのお子様ランチじゃない」と思わせれば、読者の驚きにもつながります。

    さらに、食べた時点ではこの旗を「材料も作り方もわからない」としておいて、のちに調理師になり自分で作った際に、レシピを公開することで、主人公の成長アピールに繋げられます。

    >『たかもりたかもり』とは隆盛のあだ名だ。高校生になるまでそう呼ばれていた。

    呼ばれるには、ちょっと長い気がしますね。
    「高校生になるまで、そうからかわれていた」とかの方が。

    >飯食う暇もなくて
    ほんとに飯食えないと仕事すらできないですし、コンビニ弁当の残骸もあったので、
    「まともな飯食う暇もなくて」の方がよいかと。

    >同い年だった二人は
    「同い年とわかった二人は」の方が自然。

    >自分の他に一人の客もいないことなど、隆盛は気にも留めなかった。

    これは即バレです。私なら、
    「客のいない屋台で、毎日のように話し込んだ」にします。

    嘘は言っていないが、別のようにも読めるように書くのがコツ。
    ゆげさんの文だと、誰も屋台に来ない=変だとすぐ気づかれますが、これなら、「客のいない時間を見計らって、話していたのかも」と解釈する余地が出ます。うまくごまかすのがコツ。

    >田舎の小っちぇえ店にしがみ付くのが嫌だって啖呵切っといて

    料理人が嫌なのか、田舎の小さな店が嫌なのか、はっきりわかるように書いた方がいいかもです。
    実家に戻っても家を継がない道だってあるわけで。

    私なら、「幼い頃の夢だった料理人を無意識に避けたのは、望都の死が原因」としますね。

    >隆盛は静かに涙を流していた。そうだった。ずっと忘れていた。
    ここら辺、ムードがあって大変よろしいです。

    >間もなく聞こえた急ブレーキの音と
    車が接近するまで、ちょっと時間があったように読めます。
    ここは間一髪である方がインパクトあるので、「間もなく」は不向きです。
    私なら、
    「悲鳴のような急ブレーキの音と」にします。

    >望都の屋台はそれきり現れることはなかった。
    ここは余韻が欲しいので、私ならこの行の後に改行入れます。

    >隆盛はゴミ屋敷一歩手前だった部屋を片付け、鍋を磨いた。
    まず、「会社を辞めた」を書くべきです。
    退職しなければ、こんな時間も取れないでしょうから。

    >父は望都の調理学校時代の後輩である。
    「だった」の方がいいかな?

    >望都を尊敬していた父はまた、この洋食屋の常連でもあった。
    常連より、「この洋食屋でサブシェフを務めていた」の方がわかりよいかと。

    >試験が終わり隆盛は店を出た。空を仰ぐ隆盛は清々しい顔をしていた。

    「試験が終わり、店を出た隆盛は、清々しい顔で空を仰いだ。」
    ここはまとめた方が綺麗。

    >明日から料理人見習いとしての日々が始まる。吹き抜ける風に、かすかに懐かしいトマトソースの香りが混じっている。

    「混じっていた。」の方が終わりに相応しいと思います。

    意外性こそないものの、気持ちのよいラストでした。


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    ほっこり感と不思議感がある、よいタイトルだと思います。

    「とと」の方は父親のことかと思っていましたが、そこはいい意味で裏切られましたね。狙っていたならお見事です。

    ・文章について
    読んでいて温かみのある文章です。
    キレやセンスはあまり感じませんが、朴訥というか、素直で真面目な印象ですね。
    少なくとも童話的なジャンルにおいては必要十分ですし、何ならもっとも向いてるまであります。

    あえて注文するとすれば、このジャンル以外を書く際に大丈夫か、というところくらいですか。

    ミスディレクションなど、読者を引っ掛ける書き方はまだまだ。
    自分が引っ掛かった作品を読み返し、「なぜ引っ掛かったのか」の構造を分析する癖をつければ、上達できると思います。

    ・内容について
    屋台が幽霊だというのは、食べに行った段階くらいで想像できました。
    「客がいない」で確定。外したのは「死んだのは父親」の部分くらい。
    展開も「およそこんな感じ」をなぞっていて、意外性は皆無です。

    ですが、「いい話」だと思いました。
    箸休めというか、たまにはこんな作品が読みたいと思う感覚。
    目新しさはないが、毎日食べられる定食屋の味というか。
    ふと読み返したくなるのは、こんな作品かもしれません。

    方向性としては、これがベスト。
    児童書の専門でもない私にすれば、これが素直な感想です。

    ……ああ、引っ掛け部分は工夫の余地あり、ですかね。
    ベストと言った後でなんですがw

    改善案は読みながら書いておきましたので、参考にしてください。


    ⬜️総評
    ・ちょうどよいほっこり感。この食感は大事にしてほしい。
    ・素直過ぎて、読者を騙せないのが課題。
    ・久しぶりに箸休めできた。

    こういう作品も地味に貴重だし、需要も多いと思います。
    私には真似のできない素直さかもしれません。
    ついつい「人と違うものを」と考えてしまうので。


    【No. 125】幼馴染はちんこくさい


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。

    >此場所台北市,台湾首都。我名前虎・忠・
    インパクトすごいですね。
    これは挑戦的。

    中国語として合ってるのかと思いましたが、
    日本語のひらがなが書けないので漢字になってる設定ですか。
    中国だと漢字は略字過多になっていて、日本語の方が漢字が多いとか聞いたこいがしますが、台湾はどうなのかな……いや、台湾は日本語に馴染みあるからこれでいいのか。

    >幼馴染国・際・,
    ここ、「国際的な幼馴染」かと思って、??となりました。
    特に意味がないなら、読みやすく名前らしい「国祭」とかにした方が。

    読み落としてましたが、国際、男なんですね。
    これは女の方が絶対いいと思います。

    >宅男宅女的聖地秋葉原豪遊。
    ここら辺でギャグとわかって吹きました。
    まあ、タイトルの時点で気付くべきだった。

    >《火影忍者》、《七龍珠》,全話鑑賞完了。《機器猫》映画,

    《火影忍者》ってなんでしたっけ。ナルト?
    あとはドラゴンボールとドラえもんでしたよね。

    >最近漫画(黄金神威)途中休止不可能,
    ここ、ルビミスですかね?
    意味がわからなかったんですが、黄金神威……
    ああ、ゴールデンカムイか。

    >《ちんこくさい,ちんこくさい,ちんこくさい……》
    ここで不安を覚えました(作品的な意味で)。
    オチつけられるのかなこれ、と。

    >AV女優全員可愛
    そういや、AV女優がアジアで人気って聞いたことあるなあ。

    >そうそう、ところで。
    上達しすぎ笑った。
    ここは、固い丁寧語とかの方が「らしい」気がします。

    読者に語り掛ける展開も、ちょっと違和感あります。
    俯瞰して説明できるなら「それくらい書き直せよ」と思いますからね。書き直せない、例えば日記形式なら納得なんですが。

    >幼馴染の国際と会える日が、俺は今から楽しみでならない。
    えっ、これで終わり?
    名前のアレは拾われず?
    これはガックリ。まあ、ある意味予想通りでしたが。

    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    これは肩透かしですね。
    日本語読みがアレ、という部分がまったく回収されてません。
    詐欺みたいなタイトルです。

    せめて名前に関する一悶着がある内容にすべきです。

    ・文章について
    アイデアだけを見るなら、かなり珍しい部類の書き方で驚きました。
    ギリギリ読める感覚は新鮮で、面白かったです。

    書いたことないので想像ですが、わかるように書くのは、結構テクニックを要するんじゃないでしょうか。

    おしむらくは、それがオチに繋がらなかった点。
    まあこれは内容に譲りますが。

    この形式は、いろいろ応用が利きそうです。
    主にギャグ分野になりそうですが、私も一度やってみたいです。

    ・内容について
    文章のインパクトはかなりよく、ギャグを交えた話の流れは悪くないのですが、オチが最悪。というか、落ちていません。

    「日本に来たら名前の読みでビックリ」という意味かもですが、
    中国語読みで通すのでは?と思うだけですし、最後の部分で日本語が流暢になっているので、気付かない方が不思議です。

    改善案としては、国際の設定を「潔癖症の女性」にすることでしょうか。
    AV関係の話を、幼馴染にバレる展開にして、そこですごい拒絶反応をされる。
    ハレンチ系の話はブチキレするくらい嫌い、という感じの反応を描いた上で、日本語の成長はほどほどにしておき、
    「日本語で自己紹介するのが楽しみです」
    で終わらせれば、いちおうオチますかね。まだ弱いけど。


    ⬜️総評
    ・漢字表記形式は面白い。進行もマル。
    ・オチてないのは最悪。読んだ時間返して。
    ・この形式を使った新作に期待。

    余談ですがこの二人(男女だとして)、結婚して姓が変わっても問題解決しませんねw
  • 【23】短編の多い作品集。(ゆげ)

    感想 その2


    【No. 126】飛んで、わたぼうし

    >突然、頭上に生い茂る葉っぱが掻き分けられたかと思うと、パッと空が開けました。

    とくに童話調のお話なので、難しい漢字は避けた方がらしいと思います。
    私なら、
    「あたまの上の葉っぱがかきわけられたと思うと、パッと空があけました。」
    くらい読みやすくします。
    「葉」は悩みどころですが、アクセントとして残しました。

    全て直す時間がないので、とくに気になった部分だけピックアップします。
    あと、難しめの漢字は全てルビを振ってもいいかもしれません。

    >明るい日差しに蒲公英たんぽぽは思わずきゅっと目を瞑りました。
    「蒲公英」をあえて漢字にする意味がないと思います。
    全体の雰囲気にそぐいません。
    同じ理由で「瞑り」に漢字を使うのも謎です。
    一般小説でも開きそうな表記を童話に使うのは、雰囲気を阻害します。

    >綿帽子
    「わたぼうし」か「綿ぼうし」

    >蒲公英の綿帽子を摘みます。
    私は花ごと千切って吹いてました。
    まあ、イメージ的にこっちが正解ですねw

    >破裂せんばかりに膨らませ
    童話を逸脱してますw
    「おもいきり膨らませ」

    >一斉に空へと舞い上がりました。
    「いっせいに」

    >手を振っています。
    「ふっています」

    >子どもたちが芽吹くのでしょう。
    「芽ぶく」

    >所狭しと咲き誇っていました。
    「所せましと」

    >あの小さな男の子の背丈よりもずっとずっと長い、丈夫な根っこが。

    わかりやすく力強い、いい表現。

    >翌年、蒲公英たんぽぽが芽を覚ます
    まあ「芽」でも間違いではないw
    私なら傍点をつけますかね。

    >大きなショッピングセンターに代わっていたのでした。
    「代わって」は間違いではないですが、「変わって」のイメージも。
    私なら「かわって」にしますかね。

    >少し寂しい気もしたけれど
    「さびしい」

    >遠い日の記憶が蘇ります。
    遠いかな?とは思いますね。
    あと、蘇るはNG。。
    私なら「なんだかなつかしい光景です。」

    >女の子の後ろから覗き込んできた
    「のぞきこんで」

    >その人間が、かつて自分を見つけてくれた男の子であることを。

    これは女の子出た時点で読めました。

    >蒲公英を見つめるきらきらした瞳は、あの頃とちっとも変っていなかったのでした。

    「いませんでした」の方が。
    ここら辺の無邪気なセンスは、私にないものですね。

    >女の子はそこで初めてお父さんを振り返りました。
    ちょっと説明的。
    「女の子はお父さんをふり返り、言いました。」

    >女の子は柔らかい両の頬っぺたを破裂せんばかりに膨らませ

    父親の子供時代に被せてるのはいいですね。
    でも破裂はよせっ!!
    「女の子は、やわらかい両のほっぺたを思いきりふくらませ」

    >目の前では、お父さんになったかつての男の子が、女の子を抱いて空を見上げています。蒲公英は二人の笑顔を見つめながら、嬉しそうに花や葉を揺らすのでした。

    絵本のような情景が浮かぶ、いい終わり方ですね。

    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    普通のタイトルだと思います。

    人間とタンポポ、二者の子供を表現するタイトルがあればなあと思いましたが、考えても思いつかないので、ひとまず順当かと。

    ・文章について
    とくに童話調の話であり語り口なので、漢字や表現は気を付けるべきです。
    対象年齢によっても変わると思いますし、私は専門ではないのでかなり適当なチェックですが、意識するのとしないのでは大違いでしょう。

    その他には、特に指摘はありません。
    安定していて、物語にふさわしい文章だと思います。

    ・内容について
    「大人様ランチ」と同じような感想になりますが、
    「これでよし」という感じです。

    「展開が淡白」とか「捻りがない」とか指摘はできますが、
    そのシンプルさが味なので、このままがベスト。
    下手に要素を足すと、ほっこり感が消える可能性さえあります。

    このジャンルにおいては、およそ完成しているのではないでしょうか。
    それくらい、ケチをつける要素がありません。

    ⬜️総評
    ・ほっこりするお話。起承転結もはっきり。
    ・文章にやや粗さ。漢字や表現をより丁寧に。
    ・絵本にしてほしい。


    【Ex- 037】笑顔と感謝でおもてなし、大人様ランチを召し上がれ


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。

    >キッチンに立つ隆盛りゅうせいは活き活きとしていた。

    まさかと思ったら、やはり「大人様ランチ」のキャラですか。
    名前が特徴的だと、こういう時わかりやすくてよいですね。
    タイトル的に、コラボ的な作品なんですかね。

    >社畜生活に見切りをつけ、両親の経営する洋食屋の料理人見習いになって早半年。店のメニューには『大人様ランチ』が増えた。
    物語の「その後」が書かれるのはいいですね。

    >その売れ行きはというと、まあ、なかなかの好調といったところか。ほら、早速忙しくなりそうな予感がする。

    「まあ」や「ほら」に書き手の色が出過ぎていて気になります。

    > チリリーン。
    >「いらっしゃいませ」

    安い表現ですが、まあこの作品の雰囲気的にはありかなあ……

    >最初の客は若い父親と小さな女の子だった。
    ここでもしやと思いましたが、やっぱり。

    >父親がそっと摘み取ってみると、それは蒲公英たんぽぽの綿毛だった。

    隆盛が取らないのは、気配りがあっていいですね。

    >そう言って女の子はハンカチを取り出し、大事そうに綿毛を置いた。

    丁寧さがあっていいですが、子供としてはやや不自然。
    私なら「おそとにかえしてあげなくちゃ」を受けて、入口に行かせます。
    そこで入れ違いに入って来た客にカメラを向ける展開にすれば、視点変更なく、スムーズに物語が進行します。

    >次に入ってきたのは、リュックを背負った学生風の青年二人組だった。

    おお、全員登場。
    ボーナストラックな感じだったんですね。
    続けて読んでいた私には嬉しい展開。

    >「一昨日はお寿司とラーメン食べました」「昨日は天ぷらとカレーライス食べました」
    >「今日はオムライスが食べたいんです」「日本の洋食と言えば何と言ってもオムライス」

    いきなりオムライスだとご都合感出ますが、こう並べるとアリに感じられるの、上手いですね。

    >女の子を囲む黄色い花、そして綿帽子。
    綿帽子ですから、黄色くはないはずですけどね。
    まあ、子供の絵だし、いいかw

    >オムライスとハンバーグには角切りトマトがごろごろ入ったソースがかかっていて、ハムとチーズ入りのサラダにはプチトマトが彩りよく添えられている。お子様ランチ用のサラダは、ハムとチーズを星の形にくりぬいて。それに、具沢山のナポリタン、ウサギのりんご。

    望都の大人様ランチと、描写を揃えてるのが憎いですね。
    私なら追加の一文は最後に回して、完全に揃えます。

    「オムライスとハンバーグには角切りトマトがごろごろ入ったソースがかかっていて、ハムとチーズ入りのサラダにはプチトマトが彩りよく添えられている。それに、具沢山のナポリタン、ウサギのりんご。お子様ランチ用のサラダは、ハムとチーズを星の形にくりぬいて。」

    >「むふっ」と声が聞こえてきそうな満足そうな笑顔
    目に浮かびそうないい表現。

    “哇塞うわ,好好吃哦!うっまあ! ”

    思わず母国語が出た、という表現ですかね。
    ここは「「」」でくくるべきかと。

    >店内は謎の一体感に包まれる。
    客同士の交流につなげるのは上手いです。

    >いや、今やこの忙しさが隆盛にとって逆に楽しみでもあるのだ。
    ここは、
    「いや、今やこの忙しさが、隆盛にとって楽しみなのだ。」
    の方がわかりやすいかと。

    >さあ今日も。笑顔と感謝でおもてなし、特製の大人様ランチをどうぞ召し上がれ。

    御馳走様でした。
    ボーナストラック、楽しめました。


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    ちょっと長いと思います。
    「笑顔と感謝でおもてなし」だけで十分かと。

    ・文章について
    ちょいちょい指摘こそしてますが、総じて安定していますね。
    この雰囲気の物語である限り、大きく外れることはなさそうです。

    ・内容について
    ここまでの数話のキャラが集合し、交流する。
    それだけの内容ですが、ボーナストラックとして楽しめました。
    各キャラが繋がり、自然と仲良くなる展開は、読めば地味ですがなかなか力量を要するものだと思います。

    普通に面白く読めました。絶賛ではないですが、満足です。

    今、気づきましたが、三話目の主役であるタンポポも綿毛として参加してるんですね。芸が細かい!

    ⬜️総評
    ・三話分のボーナストラック。満足。
    ・抜群の安定感。
    ・「こういうのでいいんだよ」

    最後は、四話まとめての総評にしましょうか。
    「幼馴染はちんこくさい」がコケた以外は、安定して面白かったと思います。
    「児童向けのよい話」に関しては完成度が高く、何も言うことがありません。
    こういう味が案外出せないものなんです。私は細部の改善案を書いた程度。お見事の一言につきます。

    「いろいろ書きたい」ということで、もし次があれば、一番の挑戦作を持ってきてください。その時は存分に批評させていただきたいと思います。

  • 【24】燦(南雲 燦)
    https://kakuyomu.jp/works/16816700428953294666

    次は二作品。
    特に何かテーマがある短編集ではないそうです。
    一つ目は、恋愛/♂/静か男子×活発女子/高校/HE 
    高校の恋愛もの。

    二つ目は、恋愛(歴史系)/商人×遊女/○/BE
    歴史小説の恋愛もの。

    HEとかBEの意味がわかりませんが……
    ああ、ハッピーエンドとバッドエンドか。
    先に結末書いてしまうのは今風というか何というか。
    個人的にはネタバレ同然だと思ってしまいますが。

    前も触れましたが、梶野は時代小説はさして読みません。
    一応疑問に感じたことは軽く調べますが、指摘に誤りがあれば謝りますので、指摘してください。まあわからないことはわからないと言うスタンスですが。

    それでは、感想開始です。


    >01.『艶色パレット』


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。

    >パレットには、色がのっている。
    > 青、赤、緑、白、黄。
    私なら、
    「パレットに並ぶ、青、赤、緑、白、黄。」
    こちらの方が、「ずらりと並ぶ」感じが出ません?

    >僕は暫し逡巡しゅんじゅんして、白を選んだ。
    逡巡にルビを振るなら、「暫(しば)し」もルビを振っていいかと。

    >絵の具の仄ほのかな薫りと春の空気を、ふんわりと混ぜる。
    とんちんかんな表現。
    絵具と水を混ぜてるのに、何故、気体を混ぜる描写を?

    >横から口を出す被写体が
    被写体はカメラやビデオで撮る場合の言葉です。
    絵画だとモデルが妥当ですね。

    >何度も描き直した跡が薄く遺のこっていた。
    「遺す」は、特に価値あるものに対する言葉です。
    遺産や遺志、遺族など、人の死に関してもよく使われます。
    この場面で、下書き跡に用いるのは不自然です。

    >妄想と現実の狭間で揺れる、僕の手が描きだした身体からだの線は、どうしても黄金比へと寄っていく。

    長いですが意味不明瞭で、情報が伝わってきません。
    まず、この絵はどんな絵なんですか?
    普通に女性をモデルにスケッチしたもの?それともヌード?

    スケッチなら妄想が挟まれる余地はないはずです。
    ヌードなら、まず服を着たモデルを見てヌードを描くなど、聞いたことがありません。
    普通に脱いでもらうのでは?そのためのモデルですし。

    黄金比へ寄っていく、も意味不明。
    想像で描いてるんですか? モデルがいるのに?

    >そんなことを繰り返したせいか。宛あてもなく彷徨さまよう黒鉛が振り撒いた塵滓じんしが、燦きらめく太陽光の風ふりをして、平面上の彼女に降り注いでいた。

    なんじゃこりゃ。
    一度、知り合いの前でこの文章を朗読してみてください。
    私なら恥ずかしくて腹を切りそうです。

    あと、この段落はもしかして、「色を塗る前の下書きを書いた時の話」なんですかね?
    区切りが書かれていないので、時間的に続いてるのかと思いました。
    凄まじく読みづらい文章です。

    >女はすかさず、ふざけたポージングをとる。
    どんなポーズか、まるで想像できません。

    >部活で鍛えた、健康的でしなやかな肢体したい。雪を欺あざむく玉肌ぎょっき。胸元までまっすぐ降りる髪は少し色が抜けているが、椿油で梳といたかのように艶つややかだ。

    一人称にあるまじき表現力。アラビアンナイトかと思いました。
    主人公は絵が上手いだけの普通の高校生ですよね?
    こんな内容を言ったり考えたりすると思います?
    文学部の学生なり詩人なりが主人公なら。まだわからなくもないですが。

    >制服に紺のカーディガン。左右の長さがちぐはぐの真っ白な靴下。上履きの踵かかとは履き潰され、後方に反って仰向あおむいている。

    外見描写なら、まず制服がブレザーかセーラー服かの情報が欲しいところ。
    キャラを想像する上で、そっちの方が重要です。

    あと、私ならスカートの丈も描写しますね。
    そのキャラの人となりが、かなり出せる部分ですから。

    >高嶺の花のイメージからは随分と乖離しているが、美人と称され、一目置かれるだけの美貌と才智を兼ね備えていた。

    どうも胸に落ちない文章。
    私なら、
    「高嶺の花のイメージからは随分と乖離しているが、美貌と才智を兼ね備え、一目置かれている」
    ですかね。
    「高嶺の花」にかかるのは「一目置かれる」部分で、「美女」ではないので。

    >片目を閉じ、鉛筆で身体の比率を確認する僕に、彼女は期待の滲む声で訊たずねる。

    シチュエーションが本当にわかりません。
    説明がまるでないので、とりあえず
    「美術部の主人公がヒロインにモデルを頼んで絵を描いている」
    のだと仮定して読んでいましたが、モデルが勝手に動いたりポーズ取ってたら、モデルにならないのでは。
    この主人公は何を計ってるんです?

    >彼女は僕に興味があるようだ。
    >どうしてかは知らない。
    語り手が説明を投げてるものを、読者がどうしろと。

    >彼女の本懐は未だ、ベールに包まれている。
    「本懐」を使うべき場面ではないです。
    「ベールに包まれている」も、もったいぶりすぎ。

    >「ボタン、ひとつ外れてるよ」
    この場面は不要だと思います。
    何かの伏線でもないようですし。

    >僕は至って普通の人間だ。
    >人より少々口下手くちべたで、運動が若干じゃっかん苦手で、多少は絵を描くのが得意な、ただの高校生。

    ボタンシーンを挟まなければ、「彼女の興味」に対して「僕は普通」と話が続くのですが、挟んだおかげで、「いきなり自分語り始めた人」になってます。

    >淡い花はなが、白い紙の上で、恥ずかしそうに咲いてゆく。
    「高嶺の花」なキャラなら、こんな表現もわかるんですが、
    「そうじゃない」と説明した後でこれは、おかしいと思います。

    >彼女は、席が隣というだけの、ただのクラスメイト。
    >僕のなにが、彼女の興味をくすぐったのかはわからないが、彼女はいつも僕にちょっかいをかけてきた。

    「隣の席でちょっかいをかけてくる」だけのクラスメイトが、何故モデルを?
    説明は長いのに、欲しい情報がとにかく抜け落ちてる感じ。

    >──誰かを好きになるのに、曖昧な理由じゃ、だめ?
    興味も何も、普通に告白しとるがな。

    >──静かなの。貴方の傍って、あたたかくて穏やかで、時間ときがゆっくり進むように感じるの。

    それって、彼女の感想ですよね?
    ここまでの物語からは、そんな風にはまるで感じられません。
    読者が完全に置いていかれています。

    >何気なく訊たずねてみれば、曖昧で感覚的な感想が述べられた。
    この会話が過去ってことは。これ聞いた上で、
    「ちょっかいかけてくるだけのクラスメイト」って思ってるんですか。
    理解不能です。

    >彼女の粋すいな眼まなこ
    そろそろ突っ込むのが面倒になってきました。

    >「あっ、私のお腹こんなんじゃないわよ!」
    >「カーディガン着てるんだから、こんなだろ」

    ここに来て、いまだにどんな絵を描いてるか説明がない。

    >途端、意地悪な笑みを浮かべた。
    こここそ、「からかうような笑み」でしょう。

    >「見ればいいじゃない」
    やっぱヌードを描いてたってことですかね。
    服着たモデル(クラスメイト)の? 
    ザ・セクハラって感じですが、大丈夫です?

    >満ちた静寂しじまに、足音が木霊こだまする。
    >乱れた呼吸が、宙ちゅうで泡色あわいろになる。
    >斜陽が、二人の影をひとつにした。

    ポエムだけは余念がない。

    >「どこ、行くの!」
    >「部室!」

    まず、絵を描いてたのがどこかすら情報がないので、
    「なぜ部室に移動?」と疑問を覚えます。
    私のように美術室を想定していたなら、わざわざ移動しなくても、
    「ここで脱げばいいんじゃ?」ってなりますし。

    >カーディガンをむりやり引っ剥がされ、シャワールームに押し込まれる。

    新手のいじめかな?

    >頭上から、ぶつかるようにシャワーが降ってきた。水が目に入り、コンタクトが飛んでいく。

    わけがわかりません。
    何故、主人公に水をぶっかける必要が?

    >沈黙を否と受け取った彼女は、嫣然えんぜんとした笑みを浮かべた。
    >美しかった。

    その前にまず突っ込もうよ。

    >ぬるい湯が、ふたりを徐々に濡らしてゆく。
    いや君、いきなりずぶ濡れにされてたやん。

    >湯気にぼやける視界のなか、服が透けて、黒の下着が見えた。
    この二人、どうやって帰るんでしょうね。
    下着までずぶぬれで。

    >怯懦きょうだな僕の手を取り、自分の腰へと導く彼女。
    >指先がくびれをなぞり、腰骨を撫で、臍部さいぶを這う。柔らかかった。

    普通にさわるんかーい!
    この主人公、セックスの時も「陰茎を女性器に挿入した」とか言いそう。

    >「ね? 触れてみなきゃ、本当の姿ってわからないものなのよ」
    このクレージー展開でなければ、一理ある台詞だと思えるんですが。

    >「こうしてるだけで、幸せを感じない?」
    恐怖なら感じそう。

    >心臓の鼓動が聴こえてやしないか、僕は少し心配だった。シャワーの音が掻き消してくれることを願うばかりである。

    別に普通の感情なんですが、書き方がマシーンのようで、まるで共感できません。
    ある種のテクニックかと思えるくらいです。

    >彼女を見下ろす。あまりにも純粋に、僕に身を委ゆだねている。
    あ、彼女の方が背が小さいんだ。
    徹頭徹尾流されっぱなしだから、男の方が小さいイメージでした。

    >婬情いんじょうに誘いざなわれるがまま
    官能小説みたいなワードが出てきた。

    >水鞠みずまりを弾く肌が、吸いつくように掌てのひらに馴染む。
    表現も大概ですが、どこの肌を触ってるのか気になります。
    服着てシャワー浴びてる状態で抱きしめたんですよね。
    素肌出てるところ、なくないです? 首?

    >うなじに張りつく髪を退のけて、顔を寄せる。
    でも髪がうなじを隠してるから、ミズマリ弾いたりしませんよね。

    >彼女が道案内する。僕がゆっくりとついていく。

    とりあえずエロシーンを想像させようとしてるのはわかりました。
    抽象的すぎる表現が、モザイクになってる感ありますね。

    私ならよくわからない説明を書き連ねるより、印象的なワンショットで「後はご想像にお任せ」にすると思います。

    >「厄介なことになった……」

    リアルなら大喧嘩不可避。

    >彼女が内包するのは、滂沱ぼうだと溢れる刺激的な極彩色。こんな色味だけでは足りない。
    >混ぜて作りだせ。思うがまま筆にのせろ。

    この展開自体は順当なんですが、呑み込むには障害が多すぎる。

    >僕の腕のなかで、紗うすぎぬに包まる彼女は満足げに微笑んだ。
    うーーん。
    私は何を読まされたんだ。


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    「つやいろ」と読むのかと思ってましたが、普通に「えんしょく」とは。
    官能小説みたいなタイトルですが、中身も実際にそうだったので、
    確かに正解としか言えません。

    ・文章について

    「難読多用病」ですね。
    この小説の文章面の問題は大きく二つありますが、まずこちらから。

    1.「難読多用病」

    カクヨムだとおそらく誰も指摘しないでしょうからかも、私からはっきりと告知しておきますね。
    「難読多用病」というのは私の造語です。
    「難読漢字や凝った言い回しを多用する=上手い」と思い込むのが主な症状で、主に思春期に発症し、たいてい一過性です。
    何を隠そう、私も高校時代にかかってたことがあります。(まだ影響が残ってたりもします)

    語彙が豊富なのは、基本的にはよいことです。
    文章表現において、知識の量は表現の幅でもあります。同じ言葉の繰り返しは飽きに繋がりますし、推奨されません。

    ですが、それが過ぎると、小説を書く目的が「物語を読んでもらう」から、「語彙自慢」に変わってしまいます。頭のいい人ほどかかりやすいかもしれません。
    いわゆる本末転倒で、こうなると小説は一気に陳腐化します。

    ひどい例で申し訳ないですが、暴走族の無駄にゴテゴテ装飾したバイクや、普通に読めないチーム名とかあるじゃないですか。一周回って「ダサい」んです。

    もちろん表現は自由で、趣味は人それぞれです。
    あくまでその道を突き進むという選択肢もあるでしょう。
    ただ、極端に読みづらい文章は、そもそも読者の敷居が上がり、読んでもらえません。読まれても表面を撫でるようになります。
    感想に「すごい」「かっこいい」といった、表面的な誉め言葉が並び出したら要注意です。それは字面を拾っただけの適当な感想です。

    小説の存在理由は、まずもって「読んでもらう」ことに尽きます。
    料理のそれが「食べてもらう」ことであるように。

    難読はスパイスのようなもので、多用すると味を壊す劇薬です。
    まったくの初心者はスパイスを使いませんが、それを脱した次の段階では、スパイスを使い過ぎる人が出てくる。
    それが「難読多用病」なんです。

    私もいまだに難読は使いますよ。
    でも常にうるさくならないよう配置を考えますし、読み返して邪魔だと思えば平易に置き換えます。
    あと、使う作品は選びます。現代舞台の一人称ではまず使いません。


    治療法は以下を意識すること。

    1.小説の雰囲気に沿う表記を選ぶ。
    2.適切な量を心掛ける。
    3.本当に必要な場面を吟味し、使用する。

    今作で言えば、1は一人称なのに難読過多な点です。
    自身の思考と視点をもとに書き進める一人称で、やたら難読が多いのは違和感しかありません。幼児が一人称で「拙者」を使うようなものです。

    2は言うまでもないですよね。
    あまりにも多すぎです。読みながら辟易としました。
    難読はアクセント程度にしましょう。

    3もそうですね。
    普通に書いた方がいいような場面まで難読になっていて、逆に笑いがこみあげてきました。
    難読なら何でもいいという価値観は間違いです。
    ここしか、というタイミングで使用してこそ輝くのです。

    語彙が豊富なことは、悪いことではありません。
    ですから次は、その語彙を適切に使うよう、配慮してください。

    2.必要な描写が足りていない。

    こっちの方が深刻ですね。
    「難読症候群」の副作用かもしれませんが、物語には致命的です。
    小説は書かれた文章から、脳内でイメージを構築するメディアです。
    情報が少ないほど、読者のイメージはぼやけ、適当な想像で補われます。
    この情報をいかに絞るのかが作家の力量ですが、この小説では、最低限の説明すら足りていません。そのくせ、無駄な難読は多いので、ストレスがマッハで溜まっていきます。

    具体的に何が足りないかは、上記感想で逐一、書いておきました。
    まずはそれら全てを書き足した上で、書き方を工夫すべきでしょう。
    難読を削って埋めればほぼ同量の表現になるはずです。

    こちらの対策は、とにかく読者の視点を意識することです。
    作者には見えていても、読者には見えていないものは多いです。
    それをどこまでを描写し、どこからを想像に委ねるか。
    描写の技法、独自性、並べ方、見せ方、リズム、言葉の選び方。
    難読なんて、その選択の一部にすぎません。
    こういう普通の表現の方が、突き詰めれば難読表記より何倍も奥深く、難しいんです。

    ただ、やり甲斐はすごくあります。「読みやすい」と言ってもらえますから。
    それは「難しい言葉知ってて偉いね」より、よほど誇らしい賛辞だと、今の私は思っています。

    ・内容について

    文章面の指摘が長すぎたので、こちらは簡潔に。

    話の主題は「絵描きの主人公がモデルの女性に美の本質を教えられ、成長する」くらいでしょうか。
    これだけ抜き出せば間違ってはいませんし、書き方次第で面白くなりそうです。

    ただ、今作では文章面の障害に加えて、キャラの非現実的な言動が多く、まるで感情移入できませんでした。

    まず主人公。まるで共感できません。
    好意を隠しもしない彼女を相手に、逃げるかのように思考を放棄し、そのくせ、やることはやるという、支離滅裂な性格です。
    思春期は支離滅裂になりがちなのでそれ自体はいいのですが、一人称でその悩みを書かないと、ただのスカシになります。一番ダサい奴です。
    絵を描く際も、初心者の私でも疑問に思うような場面があり、「なんだこいつ」という感じです。

    彼女の方も、理解不能な動きが目立ちます。
    何故シャワールームに行くのか。水泳部が帰るくらい遅い放課後なら、美術室も人目ないですよね?
    なぜ男含め水をぶっかけるのか。着替えあるの?
    色仕掛けに走るのも、聡明という設定と乖離しています。

    何より、二人の会話から、互いの距離感というものがまったく見えません。
    描写不足が目立つ今作ですが、恋愛ものとしては致命的です。

    シャワールームの描写も、無駄に難しい表記が飛び交い、出来損ないの官能小説のようです。別に官能小説でもいいんですが、ふわふわした描写ばかりで、結局何がなんだかわかりません。エロスを読ませたいなら覚悟を決めてください。

    普通の高校生活を描いているのですから、まずは普通を前提に物語を組み立てましょう。突飛な言動や派手な場面は、その上に乗せるものです。
    最初からわけがわからないのは、スラップスティックではアリですが、恋愛小説ではノイズだと思ってください。

    私ならというか、どう書けばまず読めるようになるかですが。

    ・まず難読をすべて排除し、必要な情報を書き加える。
    ・その上で強調したい場面を絞り込み、凝った表現で修飾する。
    ・主人公の心情を赤裸々に描き、共感を募る。
    ・意味不明の展開を改善し、二人の関係の変化を的確に示唆する。

    本筋は悪くないですから、これだけでかなり読めるようになると思います。

    恋愛の機微をすっ飛ばして、肉体関係に持ち込む点は、
    恋愛小説としてどうなのと思わんでもないですが。
    まあ学生ってそんな感じだよね……てことでスルーしときます。


    ⬜️総評

    ・「難読多用病」。描写の欠乏も深刻。
    ・主人公に共感できない。一人称の意味なし。
    ・とにかく読みづらい。まずは意識改善を。

    これを機に、次のステップアップを意識されてはいかがでしょう。

    近い設定の作品として、
    「僕の心のヤバイやつ」(漫画)があげられますね。
    主人公のスカシぶりとか似たものを感じますが、あちらは恥ずかしいほど内心の苦悩を描いており、今作に足りない部分だと思いました。機会があればご一読を。
  • 【24】燦(南雲 燦)

    03.『螺鈿迷宮』


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。

    >蓮の花が沈んだ。
    ヒロインの死を暗示していますが、
    藤四郎が死んだ際には花は手に握られており、落ちていません。

    私なら統一性を持たせるためにも、ここは
    「藤四郎の手には、蓮の花が握られていた」にします。

    藤四郎の名前も、ここで出してしまいます。
    旦那と藤四郎が同一人物であることは後にならないと提示されませんが、とくに劇的でもないので、ここで提示してよいと考えます。

    >烟月えんげつが夜天を照らす宵、心地よい風の流れる縁側で、主人は突拍子もなくそう言った。驚いた嘉六かろくは、思わず手に持っていた酒器を落として、月に映える彼の横顔をまじまじと見た。

    せっかく烟月(雲に霞む月)を使うのですから、「月に映える」方の描写を工夫すべき。書き方次第では主人の秘めた懊悩の示唆にも使えるはずです。

    >「私には荷が重すぎます。それに、まだ御隠居なさるようなお年でもないでしょう」

    主人の年もそうですが、まず嘉六の年が知りたいところ。
    この言葉づかいでは、年齢層が読めません。

    >旦那様は目尻に皺を寄せ、首を振る。
    三人称の地の文で、旦那様を使うのはおかしいです。
    主人か店主であるべきです。

    >旦那様のように人から好かれることも少なく
    あまりよい表現ではないです。
    商談と算盤だけにした方が、わかりやすいと思います。

    >「これから沢山経験を積んでいけばいい。
    店を引き継がせるには見込みが甘すぎますが、まあ事情があるんで。

    >旦那様は朗らかに笑って、嘉六の肩をぽんぽんと軽く叩いた。
    私ならここで、烟月を使いますね。
    「雲に隠れた月の光が、笑顔をまだらに照らしていた。」
    を追加するとか。

    >彼の手に、萎れた一輪の花が握り締められているのが、ちらりと見えた。

    入水自殺で、花が萎れるか疑問です。翌朝だし。
    まさか萎れた花を握って飛び込んだわけではないでしょう。
    ここは「一輪の白い花」で十分かと思います。

    >何故だろうか、涙は流れず、堰き止められた感情が、胸と肺を押し潰しているようであった。

    ぎこちない表現。
    「堰き止められた感情は、胸に閊(つか)えたようだった。」
    「閊えた」は難読ですが、ここはかなに開くと「使える」と誤読されそうなので、あえて使用します。

    >ふと、水が鳴いたような気がして、
    捻りすぎて、かえって意味が分かりません。

    >その鳥は円つぶらな瞳で嘉六を見ると、大きな白翼を二度ほど羽ばたたかせて、飛び去った。
    >生温なまなるい雫が一筋の途みちを描いて、嘉六の頬から落ちていった。

    念の入った悲しみの場面ですが、店主と嘉六の関係がろくに語られていないので、読者的にはあまり共感できません。
    赤の他人の葬式レベルです。

    >平凡な家の四男坊は、
    平凡な家という表現が気になります。
    例えば町人なのか、百姓なのか。
    一言でも説明があると、人となりが想像しやすいんですが。

    >奉公にでも出て、小遣いの足しになる程度の銭を稼ぐのがせめてもの務めであった。

    ちょっと調べた限りだと、商家の丁稚は衣食住の保障だけで無給らしいですよ。
    仕事が雑用レベルなので、そうらしいです。
    まあ農家だと、口減らしに奉公に出すものですし。

    >その頃、旦那様はまだ若旦那と呼ばれており
    ここも三人称であれば、「旦那はまだ若旦那と呼ばれており」かと。

    嘉六自身の回想ならこれでもよいのですが、
    直後に「出来の悪かった嘉六にも」とあるので、やはり三人称ですね。

    >人からよく好かれ、評判も高かった彼は、
    いまいちピンとこない表現。
    私なら
    「商才があり、人にもよく好かれた彼は、」にします。

    >最初は小さかった店の業績も鰻登うなぎのぼりに伸ばし、
    「業績を」の方が。
    「も」を受ける言葉がないので。

    >女中は心持ち眉尻を下げて、
    描写がうるさいです。
    「女中は何も言わず」で十分かと。

    >彼は時折、表情を翳らせることがあった。美しく、儚く。それは形容し難い、なんとも朧おぼろな表情であったことを、よく覚えている。

    これだけ言葉を尽くしても、「よくわからん」の一言です。
    どうしても伝えたい表情があるなら、もっと表現を凝らしてください。

    >「君はよく勘案し、いつも自分の意見を持っている」
    旦那様の呼び方は「お前」だったはず。
    でっちに「君」呼びは違和感あります。

    「持っている」がイマイチ。
    「勘案」を受けるなら、「自分の答えを見つけ出す」など。

    >酒器を手に縁側に座る旦那様の、今にも消えてしまいそうな姿を見た時、嘉六は思わず声を掛けた。手招きする旦那様に呼ばれ、隣に腰を下ろした時、彼は静かにそう言った。

    この場面が過去の回想なのか、今、幽霊的な幻を見ているのか、わかりません。

    >「そうだよ。君の利点だ」
    人を誉めるのに「利点」はあまり使いません。
    「長所」か「強み」が妥当。

    >「私はよく人と意見がぶつかります……今まで一度も、それが自分の利点だとは思ったことがありませんでした」

    この時点での嘉六の年齢がわからないので、判断がつきません。
    子供時代であれば「意見がぶつかる」ようなでっちは、失格です。
    回想する場合は、何歳の頃の思い出か明記してください。
    というか、登場人物の年齢がろくに書かれないのが、まず問題です。

    >皮膚は厚く、皺の多い大きな手だった。温かい人の温度が伝播するにつれ、

    人情ものの表現には無骨すぎます。

    >旦那様に出逢えたことは、天からの唯一の贈り物でしょう」
    いかにも西洋的な物言いに聞こえます。
    私なら、
    「旦那様に出逢えたことに、感謝しない日はございません」
    とかにしますかね。

    >「本当に思っているのですよ!」

    ここら辺を強調するほど心酔する理由が、作中で描かれていません。
    せいぜい飴玉をくれたことくらいです。
    せめて「商売のいろはを根気よく教えてくれた」とか、
    今の自分があるのは旦那様のおかげ的なエピソードが欲しいところ。

    >莞爾かんじと笑う旦那様は、柔らかな面輪おもわにすっと真面目な表情を浮かべて、

    「難読多用病」。
    その表現、絶対に必要ですか?

    >「悔いていないなら、よかった。……人生、後悔だけは、残しちゃあいけないよ」

    奉公先の主人に「後悔してる」と言える人間がいるとでも?

    この台詞は、後にわかる彼の失恋に重なるわけですが、うーん。
    いまいちピントが外れてるとしか。後述。

    >硴水かきみず藤四郎とうしろうは、素朴な青年であった。

    ここから始まるヤング旦那様編ですが。
    私はこれが旦那様だと、最後までわからずでした。
    ただ、それがわかって「おお!」となったかと言えば、
    正直「ふーん」くらいの反応で、あまり隠す意味を感じなかったです。

    むしろ、最初から旦那であることを匂わせた方が、読み手の興味を維持できるのでは、と思います。
    例えばこの登場時の描写に、旦那様と共通の特徴を入れておくとか。

    >あまり派手な顔立ちではなかったが、それが人の警戒心を解くようで、「眠そうだ」と言われる柔和な笑顔も相まってか、人からは良く好かれた。

    ほとんど同じ内容を繰り返しているので、冗長に感じます。

    >奉公に出て三年の月日が経った、ある日のこと。

    だから「何歳から奉公に出たか」がわからないと、意味がありません。
    少ない情報からキャラを想像する上で、年齢は必須の項目なんですよ。

    >そんな兄貴分の一言で、藤四郎は齢よわい十九にして
    やっと年齢出た。遅い!

    >掛行燈かけあんどんの幽かそけき光が
    画像で見た限りでは、「幽けき」って感じはない普通の灯りです。
    それに色街なら、灯りは大量にあったのでは?

    >枝垂れ柳を潜ると、別世界が遍あまねく広がっていた。
    この後の色街の描写。
    派手な表現がひたすら列挙しますが、まるで頭に入って来ません。
    まるでイメージに繋がらない、典型的な難読多用病です。

    >藤四郎は熟れた柿のように顔を真赤にした。
    これくらいの表現の方が伝わりよいです。

    >人形、ではなかろうか。
    美女の形容の代表格ですが、ガチ恋する相手に使うと、逆に遠ざかる気がします。
    人形に恋するって、外見に惚れる典型ですから。
    私なら、人形的形容を使うなら見惚れたくらいにして、
    心を通わせ合う場面で初めて恋した描写をすると思います。

    >そう疑う心と裏腹に、脈打つ心臓は藤四郎を締め付け、生きし感情がむくりと顔を出す。小さな期待と希望に膨らむ胸の底、埋まっていた種が、はじめて芽吹いた瞬間であった。

    時々出てくる力を込めた書き方。
    悪癖だと思います。くどくなって、逆に伝わりづらい。
    同じような言葉を並べても重いだけです。
    一番気に入った表現だけ残して、もう一文。
    この半分の量、二行以下でまとめるようにしてみては。

    >その奥には深い深い沼が
    沼はイメージが悪いです。
    性悪設定でなければ、淵とか湖の方がよいのでは。

    >うるるとした唇
    ……ってなんですかね?
    調べましたが出て来ないので、オリジナルの擬音でしょうか。
    目なら「うるうる」から類似の表現かなと思うんですが。

    >それは、穏やかな春のような恋であった。
    遊女に一目惚れする展開を、春のような恋とは思いませんねえ。

    >形骸的愛を、乱れた情慾じょうよくを、歯の浮くような平凡な科白せりふを

    こういう形容を見ても、後に春っぽくなったわけでもなし。

    >藤四郎は、彼女を本気で好いていた。
    >彼女もまた、藤四郎を欲した。
    >「永久とこしえの愛を、わちきに教えておくんなんし」

    完全に商売モードでしょ、これ。
    それもタチが悪い奴。

    >「待っていてくれ。私が必ず……必ず君を迎えに行く。だから、待っていてくれ」

    ここまで思い詰めるだけのエピソードがないので、ひたすら純な男が騙されてるように見えます。

    >そうして月日が流れ、やっと彼女を迎える算段がついた頃
    これも、何年後の話かでかなり印象違ってきますね。
    十年とか待たせてたら、そりゃまあ……てなりますし。

    それだけ時間があれば、花魁でない普通の遊女であれば、
    年季が明けそうな気がします。

    >「漣夏は死にました」

    何を考えてこの心境に至ったのか、理解不能です。
    そんな熱愛の素振りなかったですし。手紙返すのはたまにだし。

    >「豪商の武左ぶざが痺れを切らして、姉さまを無理矢理買おうとしたのです。

    他に手があるだろうとは思いつつ、自死の理由としてはおかしくありません。
    ただ、いまいち藤四郎の絶望に共感できない。
    理由ははっきりしています。後述。

    >彼女の文には、藤四郎を責める言葉はひとつも書かれていなかった。

    ここも、内容をほぼ書かないのが謎。
    蓮夏の気持ちを隠す必要はどこにもないというか、
    絶対出さないといけない場面のはずですが。

    >彼女は若く、愛らしい容すがたをしていたが、心はどこまでも大人だった。

    ここら辺も、藤四郎はそう信じてるんでしょうが、
    読者としては「そうかー?」という感じ。追体験してませんから。

    >なによりも、中途半端に手を差し伸べた、私のせいなのだ──。

    自分を責めたいのはわかりますが、これは関係ないかと。
    というかやはり、感情移入できない。
    蓮夏の「無理やり死なされた感」が先に立ちます。

    >哀しげな咆哮
    咆哮はちょっと違うと思います。
    私なら「慟哭」かなあ。

    >それから藤四郎は、狂ったように仕事に精を出した。
    いや、今までもそうだったはずでは?

    >藤四郎は商事に向いていた。店を大きくする為に、己の金や時間を惜しむことなくありたけ投資した。

    どうもよくわかりませんが、この時点で藤四郎は店の何だったんですかね?
    手代?番頭?
    まあ身請けが出来るんですから、最低でも番頭だと思うんですが。
    自分の店でもないのに、時間はともかく金を投資とかはおかしいです。

    思考的にという意味でなく、番頭がそんな金持ちとは思えないです。
    現代で言えば住み込みの独身社員が、やっと一人暮らしできるレベルですから。
    百歩譲って大金を貯めていたにしても、さっきお篠に全財産渡してたじゃないですか。

    >「私は疲れてしまったよ、漣夏。一体何の為に、懸命に働いているんだろうね……もう君は、この世にいないというのに」

    社会人的に言わせてもらえば、一番商売に向いてないタイプです、こういう人。
    会社第一ですらない、無目的に働くタイプとか。

    >あの頃から瑞々しいままの彼女の名
    意味不明です。

    >仕事に没頭すれば、考えずに済んだ。
    確かにあります、こういう効果。
    でもそれは何も考えず働ける場合で、上に立つ立場では考えにくい。
    ましてや会社を大きくするとか、絶対無理だと思います。

    >心にぽかりと空いた穴からは、絶えず何かが注がれては漏れ出ていくのであった。
    悪くない表現ですが、惜しい。
    「心にぽかりと空いた穴からは、何が注がれても漏れ出ていくのであった。」

    >「嘉六か。隣においで」
    この時点で幾つなんですか、藤四郎。
    というか、すでに店主になっている?
    そこら辺の店を任せられる経緯が不明。

    >ふと、この子に店を継いでもらおうと思った。
    説明なしに、もう継いでることになってるし。

    >一度そう考えたら、もう心は決まったように思えた。
    投げやりかな?

    >そうして導き出した答えは、算盤そろばんを弾いて出した答えとは異なっていたけれど。ある人は美と称し、ある人は醜と吐き捨てる。そんな脆く儚い恋であったけれど。

    これは後継を決めた話ですか?それとも遊女への恋?
    混ざっててどっちかわかりません。

    >彼女と同じ場所に眠れるのならば、それでいいと思った。
    本当にそうなら、何故嘉六を育てるまで待ったんでしょう。
    そこまで店が大切にも見えませんが。働く意味もないのに。

    >沈んだ底に再び根を下ろせるのであらば、私は花托がくにでもなって、あの娘こを守ろうと思った。穏やかな陽射しが降る河かわの傍、ひっそりと咲く小さな花を包み支える存在になりたかった。
    >風が吹けば喜び、雨が降れば幸せを感じる。ただそれだけを求めていたのだから。
     
    また、読者置いてけぼりのポエム。

    >「おばば様」
    >背後から嘉六の名を呼ぶ声がした。

    嘉六はいつ、おばば様に?

    >「藤四郎に花を手向たむけてくれたのかい」
    場所はどこですかこれ。
    川辺?墓の前?

    >嘉六もいつか、彼らのように所帯しょたいを持ちたいと、人知れず思い描いている。

    大通りに店構える大商人ですから、どうとでもなるのでは。

    >彼の死で喪われた将来が、勿体なくて仕方がなかった。

    (自分の)将来に読めてしまうので、他の言葉の方が良いかと。
    というか、なんとなく上から目線。
    私なら「まだまだ商売のことを教えてもらいたかった」とか。

    >「あの子ほど成功した者を、私は見たことがないよ。だが成功者とて、思い通りに人生を歩める訳ではないんだね。それでも、あの子の人生が少しでも幸せだったことを、私たちは祈るしかないのだろうね」

    お年寄りの台詞にしては、あまりにも軽いです。
    思い通りの人生を歩んでる人間なんて、本当は誰もいないんですよ。

    この二人は藤四郎の死因を知ってるんですかね?
    もし知っていたら「そんなことで死ぬなんて」と思うのが親心だと思いますが。

    >彼もまた、あの笑顔の裏に、あの優しい眼差しの奥に、深い懊悩おうのうを抱えていたのだろうか。

    せめて嘉六くらいは気付いてる展開でもよかったかも。
    若くして選ばれる理由にもなるわけですし。

    >優しい涼風が吹いた。墓を囲んで咲く草花が、笑うかのように緩やかに揺れるのであった。

    納得することなく、終わってしまった。


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    綺麗だし順当なんですが、オリジナリティはないです。
    そういう意味では、内容に吊り合うタイトルではあります。

    ・文章について

    前回にがっつり書きましたので、こちらでは簡単に。

    難読多用病は見られますが、こちらは時代小説な分、専門用語もやむなしな面があるので、艶色パレットよりは読めました。

    感情が乗ると、同じような内容の描写を連ねる悪癖が見られます。
    感想にも書きましたが、頭を冷やして再チェックし、過剰と思われたなら削る習慣をつけた方がよいです。変な癖は早めに矯正しましょう。

    描写漏れが多いのも共通点。
    時代小説で登場人物が多かったので、被害は今作のがひどいです。
    特に年齢と場所抜けは最悪。
    ショートショートのように「若者」で済ますレベルなら構いませんが、キャラクターを推して読ませる作品では可能な限り早く、せめて3行以内にはこの二つの情報は提示すべきです。大雑把でもいいんで。

    ・内容について

    これも艶色パレットと同じで、まるでキャラに共感できません。
    恋愛もので感情移入できないのは致命的です。

    特に今作では、艶色パレットにはなかった出会いの場面から描かれています。
    出会いから現在まで、いかに愛を育んできたかを伝えられる形式なのに、よくわからない蓮夏の台詞と、よくわからない絡みシーンだけでは、読者が共感できないのも当然だと思います。

    そもそも、若い商人が遊女に入れあげた挙句自殺するという筋書きは、普通に考えれば「男が馬鹿」と思われる類です。
    現代で考えれば、新入社員がキャバクラに貢いで自殺するようなもの。よほどの理由がなければ、男に同情する人間は少ないでしょう。

    それを覆すには、それなりの物語が必要になります。
    何故、二人がそれほどまでに惹かれ合い、遊女と客という枠を超え、命を捨てるほどに愛し合うに至ったのか。
    そこの理由が、今作は書けていないんです。

    書けていないというか、書いていません。
    これは艶色パレットでも言いましたが、恋愛小説で一番おいしい部分に、あえて触れないのは、一体何故?

    もちろん、今作でそれを書き切るのは難度高いです。
    花街についても調べないとですし、特に蓮夏については生い立ちも含め、キャラをしっかりと練らなければならないでしょう。
    蓮夏のよくわからないムーブは、そこら辺をすっ飛ばしたが故の事故だと私は睨んでいます。

    ですが、そこに触れないことには、いくら筆を尽くしても、藤四郎は純情馬鹿の客になってしまいます。
    どれだけ情熱的に愛を語ろうと、キャバ嬢をくどく兄ちゃんと同じ扱いです。
    「悪いこと言わないから、適当に引いた方がいいよ」とか言いたくなります。

    このイメージを払しょくするには、かなりインパクトある場面が必要になりそうでしょう。

    改善案としては、

    1.二人の関係に、愛を裏付けるだけのイベントを。
      客と遊女の関係を越えるような展開は必須。
    2.蓮夏の心情がより伝わる仕掛けを。
      直接書かずとも、読者が心情を読めるほどの。
    3.会わない間の二人の描写を、もっとしっかりと。
     
    1は例えば出会いから奇抜に。初めての床で、蓮夏が特別視してしまう何かを。
    2.は例えば逢瀬を重ねるうちに自らの過去を語るとか。
    互いの将来の夢を教え合うとかは、定番ではないでしょうか。
    3.は、会えない間のつらさや努力をもっとガッツリと。
    藤四郎はもちろんですが、蓮夏も間接的に寂しさが伝わるような話を。

    これぐらいすれば、わりと二人の関係もアリに思われますし、
    二人が自殺に至った理由もようやく納得がいきます。
      
    まあこれでやっとスタートラインという話で、
    わりとよくあるこの手の話を、いかに工夫を凝らし、新しい切り口で読者に読ませるべきか、そこを考え抜かなければならないわけですが。

    嘉六については、キャラは普通ですが、藤四郎との関係がふわふわしていて、どちらも経営者には向いていないように見えます。
    経営者には非情さも求められます。リアリストな感じが、どちらにも足りません。

    たとえば藤四郎の「惚れた女が死んで生きる意味がない」という台詞が好例です。
    私なら同じ人生を歩んだとしても、

    「惚れた女に死なれたが、先代から継いだ店だけは守る。
     そのためにつらさを捨て、店を盛り立ててきた。
     嘉六を育て、店を譲り、ようやく私は蓮夏の後を追える」

    という風に書きますね。
    嘉六にきっちり引き継いだ後の死を選べば、後に嘉六がその事実を知っても、藤四郎のことを商売人として軽蔑はしない、むしろ尊敬すると思います。
    大人の責任の取り方として、こういう風なら、私も共感できます。


    ⬜️総評
    ・描写不足で、キャラに感情移入できない。
    ・特に愛を深める描写がないのが致命的。
    ・文章面はまず、悪癖の改善を。


    艶色パレットとどっちがマシかというと、うーん。
    まあ、まだこっちのが読めますかねえ。
    でも、このままの状態なら、三作目を読みたいとは絶対に思いません。
    癖を直すも、このまま突き進むも、南雲さん次第です。

  • 【25】玉藻前さん、迷惑です!(野原せいあ)
    https://kakuyomu.jp/works/16817139557478563793

    今日は26日。書き終える頃には27日。
    そしてこの作品は、25回目のじっくり感想になります。
    二日分遅れております。どこかで挽回せねば……!

    それはさておき、今回はラブコメです。
    恋愛よりギャグに寄り気味だなと一読目で思いました。
    「うる星やつら」とか、ああいう感じですね。

    梶野も買う程ではないですが、読んでるジャンルです。
    「うる星やつら」も全巻読んでますね。
    最近アニメ化するとか、令和すげーなって思いましたが。

    一方で書くとなると、なかなか難しいジャンルです。
    梶野はギャグにはうるさいですが、書く方はセンスありません。
    アドバイスも難しいものがありますし、うーん。
    いや、今から悩んでもしょうがないんですが。

    それでは、感想始めます。


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。


    >田舎の市営住宅の狭い公園には、俺だけしかいなかったはずだった。
    >なのにいつの間にか、隣のブランコに女の人が座っていた。

    悪くないですが、ちょっと「田舎の市営住宅の狭い公園」が重い。

    私なら、
    「田舎の市営住宅にある狭い公園。オレだけしかいなかったブランコの隣に、いつのまにか女の人が座っていた。」

    ・「田舎の市営住宅の狭い公園」は「の」が続くので変更。
    ・重く感じるので文章を続けない。
    ・ブランコに座る自分をまず書き、次いでカメラを隣に送る。

    >モデルみたいにキラキラしてるとか、女優みたいに華やかとか、そういう印象じゃなくて、いわゆる〈顔立ちが整っている〉というやつだ。

    ……一緒でしょ?w
    むしろモデルや女優以下って見えます。

    モデルや女優とは違う「何か」を、わからないなりに書いてみましょう。

    >小顔で、目が大きくて、黒目勝ちで、唇は厚くてツヤツヤしてて。
    誤字。「黒目がち」

    顔パーツの描写は二つくらいに留めておくのがコツ。
    髪とか全体を描いた方が総合的にお得です。
    顔は読者が勝手に好みな顔を想像してくれるので。
    よほど訴えたい特徴があるなら別ですが、この程度なら書かない方がいいくらいです。

    >真っ黒な髪は腰を覆うくらい長いのに、重苦しくなくて、さらっと風に揺れるたびにドキっとさせられる。

    ここら辺の髪表現は特徴的ですが、表現が普通すぎ。
    私なら、そうですねー。

    「艶やかな黒髪は腰まであるのに、シャンプーのCMかよってくらいサラサラ。軽やかに風に揺れて、ドキッとさせられる。」

    ・「腰を覆う」は変。
    ・長文なので、区切った方が読みやすい。
    ・「重苦しくなくて」は、軽やかな描写をすれば省ける。
    ・ギャグもワンパン入れてみました。

    >横から見ただけだけど、スタイルも良さそうだ。とくにボインが。テレビでときどき見るゴージャス姉妹みたいにボインしてて、つい目で追ってしまう。

    正直でよろしい。
    ゴージャス姉妹、最近見ない気もしますが。
    小説で使うなら、息の長い対象の方が無難ではあります。

    >必死に自制して視線をもどしたってのに、全部台無しにしてくれたのはその美人だった。

    説明が過ぎて、面白くありません。

    私なら、
    「美人が振り向き、オレの顔を見つめる。ヤバい。訴えられる。
     だが、その美人の第一声は「お巡りさんこいつです」ではなかった。」

    とかですかね。

    ・「全部台無しにしてくれた」は、ややズレた対応なので差し替え。
    ・「台無し」を先に書くと意外性が減る。
    ・「期待を盛り上げる」という効果もあるので、悩みどころ。

    >「あんさん、総理大臣になる予定があらしゃりませんか?」
    内容はいいと思いますが、ちょっと長いですかね。

    「あんさん、総理大臣にならしゃりませんか?」

    の方が言いやすそう。
    「海賊王にオレはなる予定がある!」よりいいでしょ?

    >理性で考える前に答えていた。「そんな予定はない」という意味と、「美女の第一声がそれかよ、ありえない」のダブルミーニングだ。

    後ろが長いので、一文目は「即答していた。」と短くした方がリズムいいかも。
    あと、私なら「ありえない」は削ります。リズム的に。

    >うちは貧乏ってほどじゃないけど、親父は田舎のサラリーマン、おふくろはパート、オレはバイトの三拍子。ついでに小学生の双子の弟妹がいる。大学に行くにも、私立は苦い顔をされる家庭だ。

    簡潔でわかりやすい説明、いいですね。

    >まだ高二になったばかりなんだから、頑張れば公立も夢じゃない。
    「なん」はいらないです。
    「まだ高二になったばかりだから、頑張れば公立も夢じゃない。」

    >そんな普通な俺が総理大臣?
    >あんなもん、幼稚園から有名校に通うようなエリート様がなる職業だろう?
    >つーか初対面の人間に振る話題として適切なのか、総理大臣。

    切れがあって、とてもいい感じ。
    やはりギャグものは突っ込みのキレが命ですね。
    私なら「だろう?」は「だろ?」にします。

    >「ほな、総理大臣になる気はあらしゃりませんか?」
    >「ねーよ! てか、なんでそんなに総理にこだわるんだよ!」

    「ボクと契約して総理大臣になってよ!」という電波を受信しました。

    >美女がおっとりと笑った。
    >ああ、ほんとに美人だなぁ。
    >……なんてうっかり見惚れてしまった。

    まだ「抜く」タイミングじゃないです。速すぎます。
    ここはさくさく進めましょう。

    >「たまも……って、狐の……? しっぽが八本くらいあるやつ?」
    >「へぇ、正確には九本か二本でおますえ」
    > 九本か二本で正確ってなんだよ。

    突っ込みは悪くないんですが、「九本か二本」で本人がわからないのは意味不明すぎます。ギャグにするなら、

    「へぇ、正確には九本でおますえ。
     二本言(ゆ)われたこともありますけど、邪魔やさけ、しもてた(しまっていた)んどすえ」

    とかですかねー。

    >脳内では、ネギを持ったツインテール娘が「ミクー」と叫んでいた。
    その名は出さない方が粋かとw

    「ネギを持ったツインテール娘が脳内でダンスを始めたが、今は話の続きだ。」

    >「つまり後付け設定」
    > なるほど。
    > いやよく分からないけど、なるほど?

    読者もよくわからないんですが、主人公もわかっていないので、安心できます。

    >「後世のおひとにつけられた偶像でも、魂を縛りつけるほど強い想像は拘束力が強うおましてなぁ。
    >「なるほど?」

    これもよくわかりませんが、まあよし。
    いや、よくないな。
    設定的には悪くないですが、説明がイマイチですね。
    もっとシンプル明瞭な方が。ラブコメはわかりやすさ命。

    「妖怪は人間たちのイメージ通りの妖力を使えるが、
     イメージ通りの活動も強制される」

    くらいでどうでしょ?

    >ましてや九百年ちこう年月が過ぎとります。玉藻前、妃華陽夫人、褒姒ほうじ、妲己だっき……要はうち、一番偉いお人に憑とりつかなあかんようになっちょりますねん」

    ここはちょっと疑問です。
    ミクさんの説明によれば、「元は一般人だったが濡れ衣の恨みから妖怪になった」ですよね。
    だとすれば、玉藻前の前身とされる、妃華陽夫人、褒姒、妲己はどういうスタンスになるのか。ここが説明されていません。

    >「じゃあ憑りついてきたら?」
    至極まっとうな展開。

    東京行くなら、皇居に話振ってもいいかもですね。
    上皇の子孫がいると。
    「象徴だけならいらん」とか言いそうw

    >「でも憑りつかなきゃいけないんだろ? 仕様書ができてるんなら、やるしかなくない?」

    「仕様書」という例えは秀逸。

    >ミクさんが頬の横で両手をぱんと重ね、
    「ぱんと合わせ」の方がわかりやすくないです?
    いや、「重ね」でも伝わりましたけど。

    >俺、うっかりズキュンってなったぞ。
    ちょっと緩いかも。
    私なら、
    「心臓がズギュンて鳴るの、初めて聞いた。」

    >なんだよこの美人、すんげぇ屁理屈こねてワガママ通そうとしてるぞ!
    >筋立てて話す口ぶりとかしっかりしてるから、ついつい聞き入ってしまったけどさ!
    >そもそも自分から化け狐だって名乗るなんて怪しすぎるだろ、なに信用してるんだよ俺!


    突然、主人公が怒り始めたように感じられて、違和感あります。
    ミクさんが言ってることは、最初からアレでしたし。
    それに、この時点では、主人公が苛立つ理由はないわけですから。

    ミクさんが主人公に熱視線を注いできて、
    「なんか嫌な予感がするぞ」と、立ち去ろうとする方が、わかりやすい展開かと。

    >いまなにが起こった!? ミクさん瞬間移動しなかった!?
    この一文は削って、

    >え、なんで俺、ミクさんに背後をとられてんの!?
    いきなりこっちの方が、インパクトあります。
    瞬間移動と書かなくても読み取れます。
    どうせ妖怪です。何でもありです。

    >あ゛っ……首筋つつーってしないで!
    ここは「背後から抱きしめる」方が、この後の耳に声とかおっぱいとか、わかりやすく繋がるので、オススメです。

    >つーか背中にむにゅっとしてもにょっとした柔らかいアレがああああぁぁぁ……。
    全人類が共感した。

    >雷鳴のような怒りに満ちた声が割り込んできた。
    「怒りに満ちた」は省けます。
    雷と後の台詞で、十分伝わります。

    >ギン! と睨まれて体を縮めた。
    >怖ぇ! 怖ぇよ、化け狐より怖ぇーよ!!

    漫画的ですが、この場面ではベストかも。

    >「人を呼び出しておいて、自分は美人と白昼堂々イチャイチャして、なにこれ、あたしに見せつけたかったわけ!?」

    ここはちょっとわかりづらい。
    「そうだ、幼馴染のタマコと、ここで待ち合わせしてたんだった。」
    みたいな解説を、事前に主人公にしてほしいところ。

    >「ちがう、ちがうから! 俺、今日こそお前にちゃんと告白しようと思って!」

    ここの勘違いは上手いですね。

    >やめてくれ、俺の一世一代の大事な場面を邪魔しないでくれ!

    ここは、直前にミクさんのリアクションがあるべきでしょう。

    「「誰なん? このドロボウ猫はん」
     ますますお胸を押し付けながら、美女が耳元でささやいてくる。」

    みたいな感じ。

    >……とか言ったらミクさんが責任とってくれそうな気が……ってちーがーうー!!

    眩ゆいばかりの正直さ。

    >タマコの肩が怒りでぷるぷる震えてた。
    「これは余震だ。大地震の前触れだ。」的な。

    >制服のスカートを破る勢いでぎゅっと握りしめて、学校指定のカバンもプルプルしてる。

    長いですし、カバンプルプルが肩と被ってます。

    「制服のスカートを破る勢いで、ぎゅっと握りしめている。」
    でよいかと。

    >狐に魅入られた人間なんて、加護を与えるにふさわしくないと見切ったのかもしれない。

    ちょっと長いです。

    「狐に魅入られた人間に加護など無用と、見限られたのかもしれない」

    >勢いよく足をひねった。
    >転んだ先にタマコがいた。

    この前に、「あと少しで追いつける」的な説明があれば、よりわかりやすいです。

    >気づいたらタマコを押し倒して、ささやかな丘陵地帯に顔面を押し付けていた。

    25作品読んできましたが、ラッキースケベは初です。

    >これは……たまんなくね?
    正直でよろしい。

    >十秒くらい経って現実にもどってくる。
    ここは畳みかけないとなので、不要な一文です。

    >目の前には、上半身を起こして、顔を真っ赤にして、さっきの五千倍はお怒りの幼馴染様がいらっしゃった。

    いらっしゃった。
    うーん、迷うところですねえ。
    私なら「降臨していた」ですが、どっちがいいかな。

    >俺は紙切れみたいに吹き飛んで、
    私ならバレーを受けて、
    「相手コートに打ち込まれたように吹き飛んで」ですね。

    >二つの大福に埋もれてただけじゃんかよぉ……。
    ここも、
    「二つのボールをブロックしただけじゃんかよぉ……。」
    にしますかねw

    >朝の占いで「今日は最高にラッキーデー★」って言ってた占い師に責任とって欲しい。

    唐突だけど、ちょっと笑った。

    >一世一代の告白を邪魔してくれたこともだけど、さっき顔見知りになったばかりの男ヤローにぐいぐい女の武器を使っていることもだ。

    「女の武器を使っていることにだ。」
    「に」の方がよいと思います。

    >おいてけぼりにしたミクさんが、ぽっと顔を赤らめていたなんて、俺が知る由もない。

    一人称にあるまじき表現ですが、ギャグだし、まあいいか。
    ミクさんの反応が普通に可愛いのはポイント高め。

    >ちなみにタマコは一週間、口をきいてくれなかった。
    >土下座百回で許してくれた彼女には感謝しかない。

    うーん。オチとしてはちと弱いですが、
    赤面ミクさんがオチだと思えば、まあアリかなあ。

    個人的には最後までミクさんメインで進めてもらいたかった気もしますが。


    >登場人物紹介

    こっちの方がちゃんとした文章で読み応えありますね。
    この文章でギャグを書いても面白いのでは?


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    ラブコメというか、ギャグ系ぽいストレートさ。
    よいと思います。

    ・文章について
    ラブコメとしては、さしたる問題を感じません。

    ギャグとしては、文章がもっさりしてる時があるのが気になります。
    ギャグにも色々あるので一概に言えませんが、個人的な好みとしては、キレと勢いが重要だと考えていますので、短く畳み込む感じがある方向で感想を書きました。ギャグ漫画に近い方向だと思います。

    台詞に関しては、主人公の突っ込みがなかなか爽快でした。
    あけすけで欲望を隠さず、でも憎めない。
    まあラブコメでは定番の設定ですが、気持ちよく書けていると思います。

    半面、玉藻前(ミクさん)の謎の方言も、まあギャグだしアリでしょう。

    ギャグやラブコメだととたんに評価甘い気がしますが、実際なかなか突っ込みづらいジャンルなんですこれ。何でもありだし。

    ・内容について
    雰囲気やテンポは悪くないです。
    会話メインの話ですが、主人公の突っ込みの切れが良くさくさく読んでしまいます。

    キャラクターも、定番ではありますが、
    お色気系の玉藻前とツンツン幼馴染、両方に挟まれる主人公と、
    定番とわかっていつつも、やはり楽しく読めてしまうものはあります。
    どう絡めても面白く転がりそうで、よいキャラではないでしょうか。

    まあ、オリジナル要素がもうちょい欲しい気はしますし、
    玉藻前はもっと弾けた方が、話は面白くなると思いますが。

    課題としては、まず玉藻前(どっちが正式名称?)。
    看板キャラですが、今回を見る限り消化不良です。
    総理大臣をどうこうという話が、幼馴染の乱入で放置されたままなのがまず一つ。

    もう一つは、やはり出番が少ないことですね。
    一話のボリュームとしては、活躍の場がもう一つくらい欲しい。

    ラストに追加で玉藻前の見せ場を作り、タマコのトラブルを回収しつつ、総理大臣についても回収しながら、次回への引きを作れば(大方ドラえもんのように居候に入る線が濃厚)、文句なしだったと思います。

    最後の幼馴染に謝り倒すオチは、照れる玉藻前があるので、まあいいかと思いましたが、単体としては、やはりオチとして弱く、ボリュームも足りません。
    あそこでもう一盛り上がり(ラキスケという意味ではなく)あるべきかと。

    読みながら私が思いついた展開は、

    >おいてけぼりにしたミクさんが、ぽっと顔を赤らめていたなんて、俺が知る由もない。
    (この場面好き)の続きから。

    体育会系の脚力で主人公を振り切ったタマコ。
    残念そうに振り返ると、意外にも主人公が追いついて来る。
    立ち止まるタマコを抱きしめ、謝罪と告白をスマートにこなす主人公。
    予想外の展開にドキマギするタマコだが、まんざらでもない。
    流れに乗せられ、キスまで許しかけた時、本物の主人公が追いつく。
    あっけに取られるタマコ。抱き合う主人公が玉藻前に戻る。
    狐美女は悪びれもせず「特技はハニトラ」「主人公の役に立てた」と威張り、主人公との同居を対価に求めてくる。
    総理大臣は無理だが、色仕掛けのゴリ押しを受け、主人公は承諾。
    ラブコメお約束の同居生活が始まる──

    みたいな感じ。
    「こっちがいい」という話でなく、単に私が読みたいだけですがw


    ⬜️総評
    ・切れのいい突っ込みとスピード感。
    ・男性的に共感できるキャラ。わかりやすさは正義。
    ・ボリュームがやや残念。

    普通に続きが読みたい感じ。
    絶賛とまでは言いませんが、普通に楽しめました。
    続編期待します。
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