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【先着30名】じっくり読みこんだ本音感想を書く企画【26】〜【30】

質問・返信は以下のノートにお願いします。
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330647889422158

参加作品:
【26】私達は、死に場所を探す(涼水 唯一)
https://kakuyomu.jp/works/16817139556801328880
【27】アマイロガラス(ARuTo/あると)
https://kakuyomu.jp/works/16816452220119856852
【28】朝に道を聞かば(杜松の実)
https://kakuyomu.jp/works/16816452221149715794
【29】【短編】追放された冒険者~パーティどころか国から追放されましたが、魔王城で最強の門番をしています~(少尉)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054918072343
【30】やってみないと分からないから君もやってみろ(@merutomo82)
https://kakuyomu.jp/works/16817139558500414961
【31】オリオン座の見えるバス停で(深夏)
https://kakuyomu.jp/works/16817139558572698715

【01】〜【05】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139558448303881
【06】〜【10】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139558641572246
【11】~【15】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139558827416647
【16】~【20】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139559021075559
【20】~【25】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330647559848000
【26】~【30】+【31】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330647793336857

⬜️企画説明。

参加条件:
・先着30名。一日一感想で九月内に終了(予定)です。
・一万字以内の短編。短い方が熟読できます。
・ジャンル不問。作者の好みの傾向はプロフ参考。
 よく知らないジャンルは、前置きの上で、わからないなりの感想を書きます。
・辛口でも泣かない。
 反論は近況ノートにて受け付けます。誤解があれば訂正します。
 それでも納得できない場合は「所詮一個人の感想」と割り切ってください。
・梶野の趣味や傾向が気になる方は、プロフや作品をご確認ください。
 いわゆるラノベより、やや一般小説よりかと思います。

ご注意:
・正直な感想を書くので、辛口の場合もあります。
 梶野の近況ノートを遡れば、どういう感じかある程度わかるかと思います。
・可能な限り、「自分ならこう書く」を提案するスタイルです。
 作品の改善を求めるというわけではなく、単なる作者の練習です。
 もちろん、提案通りに直していただいても構いません。
・テンプレ的な異世界転生やなろう系は、ほとんど読んでいません。
 それでも読んでもらいたいという野心作なら歓迎です。覚悟してください。
・星やレビューはお約束しません。内容次第です。
・その他、質問などがあれば、以下の近況ノートまで。
・初の企画で何かと不手際がありそうですが、よろしくお願いします。

8件のコメント

  • 【26】私達は、死に場所を探す(涼水 唯一)
    https://kakuyomu.jp/works/16817139556801328880

    高校生小説ですね。
    オブラートオブラート。残ってたかな……

    タグは高校生と屋上。
    屋上って、学校物の定番ですよね。
    開放感があって、人がいなくて、ちょっと治外法権ぽくて。
    どんなジャンルでも使いやすい、便利な場所です。
    屋上限定で小説集めても、そこそこ集まりそうなくらいです。

    さて、この小説では、どのように使われるのか。
    現役世代の目を通して、読んでまいりましょうか。

    感想、始めます。


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。

    >さわり、と木の葉が揺れた。
    出だしは平凡ですが、擬音は個性が感じられて悪くないです。

    >そのまま風は窓を気にせずやってきて、私を撫でて過ぎ去った。
    「窓を気にせず」も「過ぎ去る」も違和感。
    特に後者は、教室の主人公と「過ぎ去る」のイメージが嚙み合いません。

    私なら、
    「窓から吹き込んだ風は私の髪を揺らし、新緑の香りを教室に運ぶ。」

    >それがどうにも、私の気に食わなかった。
    つなぎとしては面白い表現ですが、
    続くのが「気に食わなかった」とイマイチ繋がっていないのは残念。

    >出会って間もないひとたち。使い古された教室のもの。敷地の中に点在している大きな幹の樹。

    次文の「いままでこの学校で過ごした人の名残はそこら中にある。」に、
    「出会って間もないひとたち。」は含まれません。
    ああ、先輩という意味なら含まれるか。
    でもそれなら、明確に先輩を示す文章にすべきですね。

    >だけどそれらは感じ取れるだけで、私達が昔を知る理由になれない。集団の中での生活は、水を通して世界を視たようにちぐはぐで曖昧だ。まるで、合わせるための焦点がはじめからないかのような錯覚を覚える。

    説明が曖昧で、文意が伝わりません。
    「昔を知る理由になれない」とは?
    「昔を知りたいと思える理由になり得ない?」という意味?
    そもそも主人公は、学校の過去を知りたいのですか?
    見る限り、「全てがどうでもいい」と思っているようですが。

    元より動機のない気持ちを延々と書かれても、
    作者も読者も時間の無駄というものです。

    >新しい生活が始まって一週間経とうが一ヶ月経とうが、教科によって楽しさに違いがあることは変わらない。

    どうも文章が変です。
    「新生活の時間経過」と「教科による楽しさの違い」に何の関連性が?あるとすれば、

    「高校(多分)の授業にも慣れてきたが、つまらない授業はつまらない」
    と書くべきかと。

    >それこそ、聞いていて眠くなるほどに。
    私は普通に内職してましたっけ。
    つまらん話につきあう義理もないしw

    >果たして、本当に意味のない時間は何なのだろうか。無駄にしている時間とは。

    むしろ意味のある時間は何か、を考えるべきでは。

    >全ては平等でなければいけないが、同時に全てに価値は必要だ。
    意味が分かりません。
    平等、どこから出てきました?

    >ならそれを決めるのは誰。私? 他人? いるかわからない観測者と呼ばれる人々?

    観測者って何ですか? ムー的なオカルト?

    >わからないのは楽しいが、わからないままなのをつまらないと思うのはまた、当然のことなのだろう。

    よくわからない理屈な上、まるで脈絡がありません。
    時間と価値の話はどこに行きました?

    >キーンコーンカーンコーン。
    頭が悪そうな表現。
    なんか既視感を覚えるな……前も誰かの小説で言ったなこれ。

    >散乱していた思考が一つにまとまり、過去になりゆく今に集中できるようになった。

    意味不明です。
    今に集中して、何か行動しているならともかく。

    >「今日はここまで。範囲のところの宿題をしてくること。号令」 
    >「起立、気をつけ、礼」「ありがとうございました」

    小説をタイトにしたいなら、まっさきに削るべき無駄な文章。

    >さあ、昼休みの開始だ。
    ダウナーっぽいのに、昼休みはテンション上がるのが学生らしいですね。

    >ほんと、クラスの人同士の結び付きが強くてなによりだ。
    よくわからない感情。
    皮肉として言っているなら、もうちょっとわかりやすく。

    >そういう私も、一緒に食べないかと誘われた。
    「かく言う」の方が適切ですが、
    学生の一人称には固すぎますかね。うーん。
    「そんな私も」の方がいいかな。

    >にべもなく断って、
    「にべもなく」は「そっけなく」の意味です。
    「また今度誘ってくれない?」は削るべきですね。

    >往・古
    サブタイトルの意味がよく分かりません。

    >今日も彼女は挨拶をする。
    >「こんにちは」
    >そして私はそれに返す。

    私ならこうします。

    「「こんにちは」
     今日も彼女は挨拶をする。
     そして私はそれに返す。」

    >「あなた、いつもご飯をここで食べてるじゃない。お友達は?いないの?」

    > --私と彼女が出会ったのは、やっと桜が満開になった頃だ。

    いきなり過去回想が始まるので、面食らいました。
    過去の出し方は色々考えられますが、ここはないでしょう。

    私なら、挨拶の終わった後に回想を始めて、回想終了後にご飯の台詞を持ってきます。
    「普段と違う」ことがわかりやすいので。

    >あの子また一人でいる、みたいな目で見られるのは、慣れているとはいえ知らない人も多い。

    意味が通じていません。
    私が書くなら、
    「あの子また一人でいる、みたいな目で見られるのは、慣れているとはいえ不愉快なものだ。」

    >特に昼休みの昼食。
    前後で意味がわかるので、「昼休み」か「昼食」だけで十分です。

    >クラスメイトの大半が友人とともにワイワイと食べているのに、私だけは自分の席で一人黙々と食べる。

    対比にすると面白そう。

    「クラスメイトの大半が席を寄せワイワイと食べる中、私はただ一人、自分の席で黙々と食べる。」

    とか。

    >どこからともなく流される噂話

    主人公視点なので「聞こえてくる」の方が。

    >このままは無理だと
    「このままでは無理だと」

    >学校の屋上というものはなぜかよく、小説などで話題に挙げられる。

    やっぱそう思いますよねー。

    >そんな印象もあって、まあ何となく、どうにかしてつまらない日常に終止符を打とうと行動しただけなのだろう。

    とりあえず死んどくかー、みたいな?
    ここまでの情報だと、まるで理解できません。入学すぐに?
    死にたい理由を知りたいです。こんな理由で動かれても共感できません。

    あるいは、高校生にありがちな「何となく死にたい」的な感情でしょうか。いずれにせよ、共感はしにくいです。
    「つまらない日常から距離を置きたかった」くらいならわかりますが。

    もしタイトルにあるように、主人公が自殺志願なのが前提ならば、
    はっきりと「死ぬ気で屋上に行った」ことを明記すべきだと思います。
    こんな、部活で汗を流せばさっぱりしそうな言い回しでなく。

    >もしかすると鍵がかかっているかもしれないという心配をしていたのに、それを裏切られるほど、ドアはあっさりと開いた。

    冗長だし、文章もおかしいです。
    「裏切られるほど」と続けるなら、「絶対鍵がかかってると思った」くらいでないと裏切りになりません。

    「鍵がかかっているかもと心配したが、ドアはあっさりと開いた。」

    普通の感覚だと、屋上が開いてるかどうかは五分五分くらいじゃないですかね。

    >「こんにちは」
    >まさか人がいるなんて思いもしなかった私は、掛けられた声に反応できなかった。

    私なら、まず視界の描写から入ります。
    扉を開けて屋上に出たこの場面、読者は屋上の様子を「見たがる」はずですから。
    柵に腰掛けた女生徒の姿を描いてから、挨拶に入った方が自然でもあります。
    いきなり「こんにちは」だと、待ち構えてるみたいですからね。

    >彼女は屋上の扉を開いてまっすぐ向いた先の柵に足を浮かせて腰掛けていたから、普通なら、危ないとかそんなかんじのことを思うのだろう。

    この書き方だと、主人公に背を向けて座っているのか、こちらを向いてるのかわかりません。後には出てきますが、結構重要な描写なので、ここで書くべきです。

    >でも私はそんな彼女の姿を、すごく綺麗だと思った。
    それと同時に、こんなに青空が似合う人は他にいないと思った。
    この人をずっと眺めていたくて、私は彼女が見えるところに座った。

    ここら辺は何となく共感できて、悪くない描写。
    私なら「死にに来たことも忘れて」と入れますね。

    >こうして私は、彼女がいる屋上へ通うようになった。

    この締めはよいです。

    >私が彼女が斜め上くらいに見えるいつもの場所に
    表現がぎこちないです。
    「私が彼女を仰ぎ見るいつもの場所に」くらいで。

    >やっぱり彼女は挨拶の時みたいに私の方を見ているわけではなかった。

    「やっぱり彼女は挨拶の時みたいに、私の方を見ているわけではなかった。」

    と分けると、挨拶時に「見ている」と「見ているわけではない」のどちらにも取れます。ここ、要確認。

    >「ふーん、そう。ねえ、あなた。よければそのご飯、私に一口くださらない?」

    振り返らずに、なぜわかったんですかね?

    >あまりにも人間味にかけているように見える彼女が、
    ちょっとくどいです。

    「そんな、人間味に欠けて見える彼女が、」

    >私の弁当に興味を見せるなんてありえないと思っていた。
    確かに意外です。
    ここで主人公が突っ込み、読者に寄りそうのは大事。

    >誰にも見られないし食べられないことをいいことに弁当はいつも手抜きなのだ。

    弁当は自作なんですね。
    ここら辺の事情が、後に語られると面白そうなんですが。

    >「くれないの? いつもは、ああ、食べてるのね、としか感じないのだけれど、今日はね。朝食をいつもより少なくしたことがまずかったのかしら。お腹が空いて仕方ないの。ねえ、一口で十分よ。それ、くださらない?」

    一気に書くと、少女がものすごくガッついて見えます。
    もう少し主張を減らすか、主人公とのやりとりを加えて分割すべきかと。主人公の驚きや躊躇いも描写できますし。

    >「冷凍食品を解凍して詰めただけのおかずか、冷蔵庫からそのまま引っ張ってきた白米の二択ですけど、それでもいいならどうぞ。

    少女らしからぬ台詞ですが、妙に個性を感じるのでアリ。

    >「あら、そんなこと言わなくていいのよ。欲しいと言ったのは私ですもの。
    この少女、確か年上ですよね。
    丁寧すぎる口調が作り物めいていて、どうも引っ掛かります。
    タメ言葉の方がらしいです。

    >やってほしいことがあったらいつでも言って。
    嘘つきという設定でなければ、理解できない言葉です。
    自殺したい人間は、自分から約束なんてしません。

    >ふわりと彼女が着ているスカートが広がる。まるで、彼女が空を飛んでいるようだった。

    「彼女」が被り。「空を飛んでいるよう」も違和感。

    「ふわりと彼女のスカートが広がる。まるで、重さがないようだった。」の方が。

    >スタっと危なげなく着地した彼女はこちらをじいっと見ている。
    稚拙な表現。
    無暗に擬音を使うと一気に安っぽくなります。

    >かわいいカップに入った冷凍もののグラタン
    「かわいい」の意味を掴みかねます。
    「愛らしいカップ」を主人公が用意し、冷凍グラタンを移し替えたのなら、「けっこう手が込んでるな」と思うのですが、これはおそらく、「最初から小さなカップに入った冷凍グラタン」かなと。

    後者なら「小さなカップ」と書いた方がよいです。
    誤読の可能性を潰すのも、読者のストレス減少につながります。

    >手に持ったそれを雑な様子で口に入れた。
    ちょっとわかりづらい。
    私なら「野良猫のように」と書くところ。

    >箸をまるで使おうとしないその行動は、私にはなんだか面白かった。
    冗長。「何だか面白い」はわかる。

    「手づかみで食事する姿は、私にはなんだか面白かった。」

    >少しの咀嚼音が静かな場所に響く。
    「かすかな」の方がいいですね。

    >時折嚥下するために動く白い喉が、いやに艶めかしい。
    「嚥下するたびに動く白い喉が、いやに艶めかしい。」

    >「ごちそうさま。私、今までこういうものってあんまり食べてこなかったのだけど、意外と美味しいのね」

    センパイの台詞、総じて長すぎます。

    >言うだけ言ってグラタンが入っていたカップを持ったまま
    返していいんじゃないです?

    >彼女が身を置いている空を眺める。
    悪くない表現。

    >本当はずっとここにいたいけど、授業には出なければいけない。
    先輩は授業に出ないんですかね。

    >別れの挨拶を言われることも初めてだった。
    「別れの挨拶を言われたのも初めてだった。」

    >もとから反応があることに期待はしていない。
    ここで主人公がどう思ったかは、かなり重要。
    一人称であれば、説明すべきでしょう。

    >「えーっ次って「あの先生「授業ダルい「部活ってさ」etc.etc.etc……

    挑戦しているのはわかりますが、うーん。

    >一人でいると、自分の価値がわからなくなる。
    とりあえずこの時点で、一人ではいないですよね?
    もし「孤独」だという意味なら、まずその旨を。

    >そういうときは、現実と夢の境とか、今がいつだとか、時間の感覚も、曖昧になる。

    この後に続く独白。
    具体性がいっさいない、ふわふわした悩みなので、まるで共感できません。
    せめて現実に抱えた具体的な問題や不安を前提にするなら、この類の漠然とした感情にも理解を示せるのですが。

    >キーンコーンカーンコーン。
    悪いことは言わないので、この手の書き方はおよしなさい。

    >チャイムは時間に忠実に鳴る。
    >先生が入ってきて、授業が始まった。

    この締めくくりはイマイチ。

    >往・生

    >秋風が吹きこむ。
    >あっという間に季節は秋になった。
    >雨の日が続く梅雨と、暑い暑い夏は、いつの間にか過去になっていた。

    わかりきった内容を並べてるだけです。もう少し工夫を。

    >あの日以降彼女に変わりはなく、挨拶をする関係だけが続いている。

    ここも、主人公がその事実をどう思っているかが気になります。

    >一歩的であるのに、双方向でもある

    「一方的」。
    意味が分かりません。挨拶を返すなら双方向では?

    >彼女にご飯を強張られたことも、そういえばあったとふいに思い出した。

    「強張(こわば)る」が意味不明です。
    「強請(ゆす)られた」の間違い?

    >「ねえ、あなた。お友達とはもうすっかり仲が良いのでしょう? どうしていつまで経ってもここで食べるの?」

    何故半年ぶりに会話が再開したのか、謎すぎます。

    >噂をすれば何とやらだろうか。いつぞやのことを話題に、話しかけられた。

    噂はしてませんよね。

    「心を読めるのだろうか。いつぞやのことを話題に、話しかけられた。」

    >「あはは。そうですね。
    ここの「あはは」は、違和感しかありません。
    センパイと主人公は、「互いを気にしない距離」のはず。
    詮索するセンパイも謎ですが、愛想笑いする主人公はもっと謎過ぎます。どういう気持ちで、この「あはは」が出たのでしょう?

    >仲が良いとも言えますし、悪いとも言えない。
    日本語的におかしいです。
    「仲が良いとも言えますし、悪いとも言えます。」
    「仲が良いとは言えませんし、悪いとも言えません。」
    どちらかです。

    >そういう、誰にも見えない境界線を見極めるのが苦手な私は、
    誰にも見えないことはないでしょう。
    主人公以外には「見えて」いるわけですから。
    この場合は「不可視の境界線」などと書くべきです。

    >「まあ。難儀な子ね。だから毎日ここに来るの? こんな何もない所でぼーっとしてるのは虚しいだけでしょうに」

    半年ぶり二度目の台詞がこれなのに、ものすごい違和感。
    センパイのキャラがわかりません。崩壊してる?

    >「明日は来ちゃだめよ。いい子は言うことを聞いてちょうだい」

    この時点で展開が読めるので、もっとわかりづらくしてもよかったかと。

    >頷かないわけにはいかなかった。
    いやいや。おかしいでしょ。
    せめて
    「頷かざるをえない雰囲気だった」とかで。

    >どこかから始まった少しのどよめきが波のように広がり、ざわざわと敷地全体を揺らしているみたいだった。

    描写が大げさすぎて、かえって現実から乖離しています。

    >「ねえ、今さっき誰か死んだらしいよ」
    早すぎでしょ。

    >ホント。だって隣のクラスの子が言ってた。
    こんな話が回るなら、飛び降りた死体が先に見つかりそうなもんです。

    >「ウソ。明日から人死にが出たところで勉強しなきゃいけないの? フツーにイヤなんだけど」

    まさに今、校内に死体が転がってることを嫌がるべき。

    >野次馬精神と興味の無さ
    >他のクラスメイトも大方、同じような内容を言っている

    現役高校生に言うのもアレですが、現実感ゼロですね。
    校内でリアルタイム自殺とか、蜂の巣を突いた大騒ぎですよ。
    退屈な日常が破られる事件そのものじゃないですか。

    >だから私は私が向けることのできる最大の無関心を以て、他人の死に可哀想と云う感想を抱く。

    「最大の関心」ですね。
    無関心なら「どうでもいい」です。

    >もういない人間に感情を抱けるほど、私はできた人間ではないのだ。

    この言い方は、知人が死んだ場合のものでしょう。
    赤の他人は、いるもいないもないですから。
    その意味では、主人公の感覚もわかります。

    >そこに何も事情を知らないひとが想いを寄せるなど、
    事情を知らないから想いを寄せるのでは?
    勝手な想像をするのなら、それは無粋だと思いますが。

    >「おまたせしました。皆さんには悪いですが、今日はここで帰宅とさせてもらうことになりました。各自解散してよろしい」

    リアリティに乏しい台詞です。
    まだ警察も来ていない段階なら、まず学校が考えるのは、生徒の目に死体を入れないことです。
    警察が来るまで教室に待機させるか、帰宅させるにせよ、進路誘導は絶対でしょう。その場で解散は有り得ません。

    ここは「サイレンの音が近づいて来る」などで、間接的にその流れを伝えるべきだと思います。

    >まさか、彼女はこれを見越していた、と......?

    いやいや。
    これは勘が鈍すぎます。

    >いくら彼女に予言されていたとはいえ、まさか自分が呼ばれるなんてつゆにも思わなかった。

    予言って何の話ですか?

    >私の適当な予想だと、これから先生が話すことは彼女と関係があることになってしまう。

    雑な一文。不要だと思います。
    「もしかして、と思った。」だけで十分。

    >「もう噂として聞いたとは思うのだけど、生徒が自殺したってのは本当。

    展開が早すぎます。
    教師が事実を伝えるのは後日(多分翌日も休みになる)になるのが普通です。主人公が悩む時間も作れます。

    >あのね、あなたが屋上で会っていた先輩。いるでしょう?
    何故、そのことを学校が把握してるんで?

    >それが、これ。今読んでしまいなさい。時間がかかってもいいから
    何故、今すぐ?
    遺書なんて普通、手渡すだけです。
    「この場で読め」とか言うものではありません。

    >『私の恩人へ
    >  あなたのおかげで私はほんの少しだけ楽しい時間がありました。ありがとう。

    段落を下げ過ぎです。

    『私の恩人へ
     あなたのおかげで私はほんの少しだけ楽しい時間がありました。ありがとう。

    が正解。

    >先輩の手紙
    長文ですが、内容と行動に食い違いばかり感じられて、驚くほど共感できませんでした。本当に先輩の手紙かと疑うレベル。後述。

    >短いものだった。
    いや、長いです。

    >もっと話をしたかった。もっと一緒にいたかった。もっと。もっと。もっと。

    ここもおかしいです。
    「無言の距離感」が好きで、屋上に行ってたはずです。

    >例え死ぬ、と聞かされても、私はきっと彼女との付き合い方を変えなかっただろう。

    こっちのが、まだ理解できます。
    というか、前後で完全に矛盾してますね発言。

    >「これ、屋上の鍵よ。あなたに貸してあげる。何もできない私からの餞別。

    自殺教唆かな?
    というか、今屋上行ったら、下に先輩落ちてますよね?

    >「こんにちは」

    ここの相手のいない挨拶はいいですね。
    乾いた哀しみを感じられます。

    >彼女がいないのなら、座った位置から見える景色はつまらない風景画になる。

    言いたいことはわかりますが、表現が稚拙。

    「彼女がいない空に、きっと私の望む景色はない。」

    >今までは見ることがなかった高所からの景色は、とっても鮮やかだった。

    ここは全力で主人公の心理を追うべき場面。

    その場所から見える風景、風、匂い。
    センパイは何を考えて座り続けていたのか、想いを馳せる。
    そんな描写を、持ちうる最大限の筆力で描き込むべきです。

    >彼女と過ごした仮初の時間を
    「仮初」は悪印象です。
    「束の間」か「あの時間」の方が。

    >ああ、彼女と一緒に......。
    >自分のほんとうの思いには、気づかなかったことにしよう。
    >それが現世に生きる私への戒めになるだろうから。

    この心理も理解不能です。
    自殺をやめる決意をする理由、ありましたか?
    センパイの遺言にあったから?本人は死んでるのに?
    この流れで死なない理由が、逆に思いつきません。

    >「さようなら。あなたに会えてよかったです」

    共感できていないので、言葉が上滑りに感じます。
    あと、私なら前に挨拶した「では、また」を使います。

    >還

    >奇しくもそれは、かつて私が座っていた場所と同じだった。

    センパイと自分の立場が入れ替わるのはいいセンスだと思います。

    >あなたはこんな心地で私を出迎えてくれたのですね。
    「気持ちで」ですね。

    >あなたが書き遺した通り、私は長生きしようと思います。
    最後語りに申し訳ないfですが、共感できません。
    まるで説得力不足です。

    >つまらない日常だとは思いますが、
    いや、屋上に通ってるのは同じですから。
    教室で食べてるなら「つまらない日常」ですけどね。
    日常をつまらないと断じてることからも、主人公は何も学んでいないんだろうなと思います。

    >もし生まれ変われるなら、あなたと一緒がいい。
    >私が死ぬまで首を長くして待っていてください。

    今、飛べばいいじゃないですか。
    「つまらない日常」を長生きする意味、あります?
  • 【26】私達は、死に場所を探す(涼水 唯一)

    感想 その2


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    タイトル自体はよいのですが、内容とは合ってません。
    主人公の自殺願望は希薄ですし、センパイは自殺志願であることを、一度も明かしていないので。

    ・文章について
    書きたい内容に、文章力が追いついていないイメージです。
    でも高校生ですからね。これくらいが普通だと思います。

    特にこういった、曖昧な心情に寄りそう話は、繊細な文章力が求められます。
    言葉の裏まで読者が想像することを常に忘れず、表現をよく吟味する必要があります。
    この辺はまだまだ力不足を感じました。
    挑戦はいいことですが、並行してよい作品をたくさん読み、模倣しましょう。

    あと台詞の内容が、ぶっちゃけ高校生らしくないのも気になりました。
    現役の方に言うのは失礼ですが、特にセンパイはキャラ付けが過ぎます。もっと普通か、口数の少ない普通でよかったかと。

    もちろん、個性的かつ魅力がある語り口があれば、それが一番ですが。お嬢様めいた口調は、ひたすら違和感でした。

    ・内容について
    舞台や設定は、光るものがあると思います。

    屋上を舞台にする学園小説は五万とありますが、
    「自殺志願の少女が先客と出くわす」という展開は寡聞にして知りません。もっと、そこの部分をアピールすべきだと思います。

    ただ、光ってるのはそこだけで、素材はよいのに調理は失敗している印象。
    気が付いた部分を列挙していきます。

    1.自殺志願のアピールがない

    主人公、センパイ(なんとなくカタカナ感ある)ともに、
    自殺志願なのは感じられながらも、まったくその意思や描写が見られません。
    そのため「なんとなく死にたい」程度なのかと感じられます。
    センパイに至っては遺書で書かれただけなので、おそらくそうだろうとは読めつつも、自殺の動機やトリガーについてはついに謎のままです。

    自殺の先輩と出会うという、面白いシチュエーション。
    私なら、主人公の感情は事情とともに明言し、
    センパイについては言葉少なくとも会話の場面を作り、聞き出すと思います。
    ガッツリでなくとも、輪郭が見える程度で十分です。

    2.キャラの考えが読めない

    登場人物二名は、ともに言葉少なく、自身について語りません。
    行動もわずかで、読者はそこから人となりを想像するしかないわけですが、そこが決定的に矛盾していて、最後まで物語に納得できませんでした。

    まずセンパイ。
    自殺したいだろうことは想像できますが、明言されないのは上記の通り。
    ひたすら挨拶のみの関係を続けますが、何故か半年に一度、弁当をねだったり、主人公の交友関係を聞いたりします。半年の間隔は一体、なに?

    遺書の中で「主人公がいたから自殺を延ばした」とありますが、そもそも自殺する理由も、やめない理由も謎です。心苦しくない友人が出来て、それでも自殺を決めた理由とは一体? そこが一切語られず、表情や会話にも気配がしないので、唐突かつ理不尽に思われるのです。作者の都合と言ってもいいかもしれません。

    「適度な距離」あればこその二人ですから、詮索が難しいのはわかります。
    ですが、弁当を食べたりするセンパイの態度を見れば、普通に聞き出せそうな感じもしますよね。そこら辺も謎です。「適度な距離」感がないんです。
    あのあたり、半年言葉も交わさない人間とは思えません。
    理由も適当なもので、統一性がないとしか感じられませんでした。

    遺書も同じくです。
    あの対応、距離が重要なのに、異常にウェットで、別人かと思いました。コミュ障で話せないわけでもない。弁当とかねだれるし。
    あの遺書のキャラと、屋上で挨拶しないキャラがまるで重なりません。

    主人公も、キャラがブレまくりです。
    「適度な距離」が好ましくて屋上に通っているのに、いきなり弁当をねだられたり、友人について聞かれたりしても嫌な顔をしません。明らかに「適度な距離」を逸脱した行為だと思うのですが。

    気持ちに変化があり「もっと仲良くしたい」なら、その変化を書くべきです。何も書かず、普段の主張と違う対応をするなら、それはキャラ崩壊でしょう。心情を語るのに優れた一人称の持ち腐れです。

    「自殺志願」のはずだった主人公が、屋上に日参しながらまったくそのことに触れない点も変です。こちらも「センパイと過ごすうちに、死にたい気持ちを忘れた」など描写があればわかるんですが、それもない。
    読者的にはいつ死んでもおかしくないセンパイとの日々で、それに気づかない主人公でもないはずですが、そこはスルーされたまま来たるべき日が来てしまい、「まさか何も考えてなかったのか?」と愕然としました。

    そこまで忘れていたに等しい自殺願望が、センパイの死で「私も」と復活したのはよくわかる心理ですが、「遺書に生きてとあったから生きることにした」という展開はあまりに軽すぎます。まあ主人公の自殺願望がその程度だったというならそれまでですが、だとすれば繰り返された日常への呪詛はなんやってん、という感じ。
    物語の根底を破壊するような展開です。

    3.リアリティがない

    これはまあ、高校生ということで仕方ない部分はありますが。
    自殺後の教師の対応や学校の動きは、特に学校に詳しくない私でも、
    「流石にそれはない」と感じるもので、一気に冷めました。

    現実の学校と地続きの物語であるからこそ、可能な限り現実に即した展開をすべきですし、考慮すべきだと思います。

    4.感情の描写が軽い

    センパイが死んだ際の、主人公の感情の描写が軽すぎます。
    そこまで淡々としているのは、「適度な距離」という意味でアリですが、だからこそ、死に関する感情は正面から向き合い、描き切るべきでした。
    絶望と羨望、死を選ぶか否か。ここだけで一話使える程度の葛藤があるはずで、そこをスルーすると、センパイとの関係が口だけに感じられます。

    「他人の死はどうでもいい」という前振りの方が、死に調面した描写より長いのは、あまりにいただけません。

    では、私ならどう書くか、ですが。
    ぶっちゃけ、この設定はすごく好みで、私が書きたいくらいです。
    すでに脳内には、リファインした新作があったりします。
    設定以外、ほとんど変えてしまっているので、ここでは書きませんが、いつか本当に書くかもしれません。それくらい気に入っています。

    なので、軽くだけ改善部分を言うと、こんなところです。

    ・弁当部分をもっと自然に。
    ・センパイが何故昼を抜くのか。主人公は手製の弁当なのかを掘る。
    ・センパイが座り続ける理由についてこだわる。
    ・主人公の初期設定と、屋上で過ごすうちに変わった部分を描く。
    ・遺書をありきたりにしない。
    ・主人公の遺書の受け止め方を徹底的にこだわる。


    ⬜️総評
    ・設定のセンスは光るものがある。
    ・キャラの思考がブレブレなのが致命的。
    ・文章は要修行。リアリティの意識を。

    もったいない……その一言に尽きます。

    ちなみに感想書いてる間、BGMには山本美絵の「17」を流していました。
    自殺志願の女子高生二人が、どちらが先に死ぬかをブランコになぞらえた名曲です。興味があれば、ぜひ。
  • 【27】アマイロガラス(ARuTo/あると)
    https://kakuyomu.jp/works/16816452220119856852

    またも短編集。
    こちらは詩に近い内容ですね。

    「全部見て欲しい」という相談もなかったので、一話だけ感想言おうかと思っていましたが、「読みながら感想」とざっくり総評で、全話書くことにしました。
    まあ、内容的に難しいものでもないですし。

    ちなみに梶野は詩の素養もないです。
    何の才能ならあるんだ、こいつ。

    それでは、感想始めましょう。


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。

    >ある部室での出来事
    もう少しこだわっていいかも。

    >天から雨が降ってきました。チャッチャと降ってきました。暫くしてプツと聞こえるようになりました。プツプツプツと。葉に当たったようです。やがてシャラリと流れ落ちました。見渡すと周りにも同じことが起きていました。

    擬音は工夫を凝らしていて、いいと思います。
    ただ、「音が聞こえてくる」シーンで、視覚情報が混ざるのは矛盾では?
    「葉に当たったよう」は想像なのでわかりますが、「天から雨」「見渡すと」辺りは変に思います。葉と同様、まず音から始めて状態を想起させるべきかと。

    >ポルンとした滴は弾力をもって大地に吸い込まれていきます。シュッとして後は何も聞こえなくなりました。

    「ポルン」はいいですが、「弾力をもって大地に吸い込まれる」とは?
    弾力と吸収は反発要素に思いますが。
    「弾力をもって転がり、大地に吸い込まれていく」なら、まあ。

    >小さな室内は忽ち暗くなりました。
    主体が学生の語り口調なので、私なら「忽ち」はひらがなにします。

    >『誰だ』と聞かれました。
    なぜ『』?
    後に普通の「」になっていますし、特別な意味もなさげ。

    >私は御無礼を述べました。
    無礼は「謝る」か「詫びる」ものかと。

    >少年は不思議そうな顔をしました。
    同じ学校であろう生徒に対して、少年と呼ぶのは違和感があります。
    口ぶりを見るに小学生ではなさそうですし、級友を少年とは呼びませんよね?
    一度使っている「男子生徒」「男子」「生徒」のどれかがいいかと。

    >ヘトヘトと不満を露わにします。
    この擬音は変。
    本来のものがあるので。

    >豊穣の大地に風の囁き。彼の絵には色彩がありました。
    色彩の対象に風の囁きは違うと思います。

    >彼の絵には振動するものがありました。
    振動はイマイチ。
    「色彩」と合わせてるかもですが、「震えるものが」の方が。

    >私はこの世界を見ることしか出来ません。だからせめて彼にはこの世界をずっと聴いていて欲しいのです。

    >ここも不可解。
    私はむしろ「聞く」方に特化しているように思いましたが。
    「絵から聞ける」センスといいますか。
    なので、私ならこの前にあった色彩のくだりの方を、削除して、
    感想は音に絞りますね。その方が幻想的ですし。


    >ある家の話
    手抜きのようなタイトル。

    >茶葉のルームフレグランス
    そんなのあるのか、と思ったら普通にありました。

    >紗幕から柔らかな光が流れ落ちていた。
    「流れ落ちて」がちょっと違和感。
    私なら「透け落ちて」にします。

    >リビングは橙に染め上げられ、
    「染め上げられ」に圧を感じます。柔らかさがないというか。
    私なら「橙に染まるリビングには」。

    >透明な容器の中には植物が入っていた。
    花に限らないので「植物」なんでしょうが、対象が広すぎて
    イメージしづらいです。具体的に書いた方がよいかと。

    >道端に落ちていた植物
    落ちてますかね、植物?
    枯葉とか?枯葉を植物扱いします?
    道端で枯れてるならわかりますが。

    >寂しげに彼女は言った。
    ここを寂しげにいうのは意味不明です。
    これだけ揃えるのですから、意味を確信してのでは?

    >瓶の中で枯葉が揺らめいている。
    印象的な映像で、とてもいいです。
    最初から枯葉で通した方がよいかと。

    >その一つ一つに物語が内包されているようだった。
    ここはあまり共感しません。
    「特別な枯葉」が演出されているなら別なんですが。

    >ふと、素直な感想が漏れた。
    不要な一文。

    >「私、実は知ってるんだ。葉っぱはね、ただ落ちているだけじゃない。枯葉は土を豊かにするための栄養源となって、また次の命を繋ぐ役割を果たしているの。私はね……その過程を拾い上げてしまうんだ」

    そりゃあ、枯葉全てを拾ったら困るでしょうが。
    悩みどころのポイントが外れていて、共感できません。
    悲哀含みなのも余計そう思わせます。
    淡々と「土に還るのを邪魔してるだけだよ」と言わせた方がましかと。

    >自然を愛してやまない彼女。だからこそ、この告白は酷く悲痛な叫びに聞こえた。

    この趣味を是とするか非とするかは読者の判断に任せるところかと。
    なので、主人公が断じるより、判断保留した方がよいと思います。

    >瓶の中にはタンポポが入っていた。濁った水の中でただ一生を終えるように浮いていた。

    なぜ、この水だけ濁っているんですかね。
    ハーバリウムで水が濁ったものなどないはずですし。
    配置を考えれば、浮いてもいないはず。
    「罪」への誘導だと思いますが、不自然です。

    私が「罪」に誘導するならむしろ、
    「真っ白なタンポポが美しいまま閉じ込められている。
     その綿毛は、もはや飛ぶことはないのだ」という方向にします。


    >アマイロという言葉
    これはまあ、タイトル回収なのでアリ。

    >三度みたび口にするのは
    どこから三度?

    >僕は言葉の響きを頼りに色を想像してみた。それは二枚貝の内側にある真珠層しんじゅそうの輝き、虹色ではないだろうか。

    言葉の響きの連想から、何故貝や真珠が?
    「雨」や「天(あま)」ならわかるんですが。

    >あの時、彼女は言ったんだ。信じて進んでいけばと。その瞳はどこか遠くを見つめていた。声音にはある種の好奇心が含まれていた。

    何も読み取れない文章。
    ノリだけで書いてるように思われます。


    >ある少女の詩
    手抜きタイトル。

    >しとしと雨が降っています。
    あれ、こっちは擬音は凝らないんですね。

    >まん丸い透明はさらさらと音を立てて
    凝りすぎて逆にイメージを損ねています。

    >幸せは長く続きません。
    >すぐに陽の光が足元を照らしてしまいます。

    主観なので間違いではないですが、雨のイメージに「すぐやむ」がありません。夕立ならともかく。

    >地面は──地球は──まるで貰いすぎた恵みを返すように白い光となって天へ昇っていきました。

    地球が?
    イメージにしても雨との繋がりが謎で、わけがわかりません。

    >私はきらきらと輝く草原を歩きます。
    ここはいいんですが、やはり前文との繋がりが不明で、ノイズになっています。

    >緑のそよ風が舞い上がります。
    「そよ風」と「舞い上がる」の組み合わせは違和感。

    >おひたしみたいな匂いがすると、いつも思うのです。
    おひたしの匂いってどんなでしたっけ。
    ちょっと共感得られにくそうな……

    >雨上がりも嫌いではありません。
    このオチは雰囲気ありますね。


    >キッカケ
    シンプルですが、まあよいかと。

    >そんな訳でそこらかしこに水溜みずたまりができる。
    其処彼処(そこかしこ)の誤用かと思われます。

    >川のような水が流れる側溝そっこう
    「川のように」の方が。

    >水溜りを泳げたらどんなに気持ちいいだろうと想像した。
    小舟はともかく、水溜りで泳ぐとは?
    高校生以前に、誰も不可能では?

    >親友を家に呼ぼうと考えた。いや、それはないだろう。長話に付き合わされるだけだ。学校で会うくらいが丁度良い。

    それは親友なのか?と思いますし、まるで意味のない段落なので削るべきかと。

    >家で読書でもしていれば暇くらい簡単に潰れるだろう。
    「簡単に潰せるのに。」の方が。

    >しかし、今考えてみるとどうだろう。僕はなんのために外に出たのだろうか。何か別の目的があったのではなかったか。

    これはなかなか思わせるところがあって、よい締め方です。
    「子供ならやってたこと」をもう少し強化していれば、なおよし。


    >ゆめ
    タイトルを見て読み飛ばすべきだったと後悔。

    >それはまるで凍りついた身体が氷解していくようだった。
    布団はあるのに?

    >ふと無地の天井を見上げた。僕は初恋にも似た気分になっていた。
    展開もわけがわかりませんが、「初恋」もわけがわかりません。

    >それは梅の飴玉みたいに酸味を帯びた甘い味わいだった。しまい込んだ蝋燭に火を灯されるような儚さと純情。僕は夢の中でそれと出会った。

    表現を重ねたせいで、かえって伝わりづらくなっています。

    >ある日、僕は屋敷の庭で彼女の姿を追っていた。美しい枯山水とため池のある庭だ。ため池には濃い若草色が反射していた。

    夢の話なんだな、とわかった時点で、急激に冷めました。
    他人の夢の話ほど、くだらないものはない。
    枯山水にため池ってなんやねんと思いますが、夢に突っ込むだけ無駄。

    >夢はここで途切れた。
    長くて中身のない駄文という感じ。まさに夢。
    読んだ時間返して。


    >ある少年の詩
    手抜きタイトル。

    >トン──トン──とゆっくり音の歩みを進めた。
    >確実な一歩だった。それでいて軽やかだった。
    ピアノと歩み、私はいまいちリンクしませんね。
    雨に繋げるなら、「雨だれ」「雫」の方が。

    >雨粒一つ一つを感じるような音霊。旋律は弦を伝って彼女の世界を創造する。
    大仰すぎて雰囲気を壊しています。

    >指から音が出ていた。鍵盤は彼女にとって色のパレットだった。

    パレットに例えるなら、「指から色が出ていた。」では?

    >高低を器用に使い分けて混色した。
    言いたいことはわかりますが、拙い。
    「高低の音を混ぜ、鮮やかな色を作り出す。」

    >僕は絵を奏でることしか出来ない。だからせめて彼女には音で描いていて欲しいのだ。

    「ある部室でのできごと」とのコラボ?
    私なら序盤にも、それを匂わせておきますね。

    「ひどい湿気に筆を置いたぼくは、彼女のピアノを聞きに来た。」

    で始めるとか。

    うーん、コラボ自体は悪くないアイデアですが、ただそれだけ。
    彼女のピアノの物語になっていませんね。
    コラボはその後でもよかったはず。

    >日常
    間違ってはいないが、何も感じない。

    >桜のしっとりとした温度
    なんぞこれ。

    >初々しい早朝
    逆に気持ち悪い組み合わせ。

    >まばらな通学路
    「人もまばらな」。略すとわけがわかりません。

    >樹木が落ち着きなく揺蕩っていた。梢が揺れてけたたましい葉擦れの音を響かせていた。
    樹木が「揺蕩う」のも、「けたたましい」葉擦れのも違和感。
    「揺蕩う」はゆっくり揺れる意味なので、「けたたましい」は矛盾です。

    >「まったく……遺伝も考えものだな」
    くせっ毛という意味ですかね。
    風で髪が乱れたはずでは?意味が分かりません。

    >今回もその性質が原因だ。
    「性格」の方が適切。

    >いつの間にか親友が佇んでいた。
    佇むはちょっと違和感あります。
    「じっとその場にいる」なので、「現れた」イメージがしない。
    私なら普通に「立っていた」を使います。

    >キミの子守りは俺以外の誰にも務まらないからなぁ」
    キミ呼びが「俺」に合わない感じ。
    私なら「おまえ」にしますね。

    >「まだ遅刻が確定したわけじゃない。急いで飛び込めば間に合うかもしれないぜ」

    なんだこの話。


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    総じて手抜きというか、こだわりがない感じ。
    タイトルは作品の顔であり、看板。
    読者が最初に目を通す場所である、最重要ポイントです。
    サブタイトルであれ、手抜きは絶対ダメです。
    むしろ一番こだわるくらいでよいです。

    ・文章について
    詩的なセンスは感じますが、文章力自体は褒められません。
    語彙が足りなく、単純なミスも散見されます。
    独自性を追うあまり、文章に凝りすぎて、かえって雰囲気を損なっている箇所も何度かありました。

    こういったセンスを読ませる、詩に近い作品は、文章の繊細さが命です。
    そういう意味では、普通の小説より文章力を求められます。
    ハイレベルな文章に触れ、雰囲気の作り方を学ぶべきでしょう。

    ・内容について
    詩的な作品について、内容をどうこうも難しいですが。
    あくまで私の感性ですが、
    「わりとよいと思った作品もあれば、クソと思ったものもある」
    でしょうか。どれがどうなのかは感想を参照。

    もうちょっと文章力が上がれば、好みな線なのですが。

    全体として見ると、雨や水にこだわりがある様子。
    ピアノの話のように、もっと複雑に各話をリンクさせる構造にしても、
    謎ときのようで面白いかもしれません。構成力が必要ですが。

    ⬜️総評
    ・雨と水にこだわりある短編集。センスは感じる。
    ・文章はまだまだ。サブタイトルの手抜きは最悪。
    ・文章力と感性を磨けば、推せる可能性も。

    何年書かれておられるか知りませんが、「卵」という印象を受けました。
    ここから何が生まれるのか、楽しみではあります。
  • 【28】朝に道を聞かば(杜松の実)
    https://kakuyomu.jp/works/16816452221149715794

    これはなんていうんでしょうね……
    純文学?古典派?
    ジャンルは現代ファンタジーですが、私の知ってるやつじゃないw

    一読時には、古語を駆使した文章に驚きましたが、
    じっくり二読すれば、どうなるのか。
    まあ、私は純文学も古典も無縁な、細かな文章の機微とか感じ取れないエンタメ野郎ですから、感じたことを素直に書くだけですが。

    ここまで回数重ねれば、もう怖いものなしです。
    さて鬼が出るか蛇が出るか。感想、開始します。


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。
    今回、文章達者な方なので、指摘は重箱です。


    >朝(あした)に道を聞かば――
    タイトルにルビ振れないので、苦肉の策と見ましたw

    >暗い中で橙色の灯に陰翳と分けられ

    「陰翳と分けられ」があるので、「暗い中」は余計かと。
    リズム的にもこちらの方が。

    >夕さりの序奏程ほどに、遠く澄んだ黄金に染めた髪が静かに襟迄まで触れ、微動だにしない。

    美文ですが、長い。引き算をすべき。
    私なら、
    「夕さりの序奏程に、遠く澄んだ黄金に染めた髪が襟迄触れている。」

    前半も長いですが、これは手を入れられない完成度。
    「染めた」も外人ではない描写ですし。

    >男は僅かの一瞬ひとまたたき女の目を認める事に堪え兼ね、
    「男は僅かの一瞬」で読点が欲しいかも。

    >節ふしの無い真白き指に抓つままれた水割りを注視した。、
    これは文人か一般職のニュアンスですかね。
    白手袋かもしれませんが。

    >嫌われる筈も無いのを知った上で、困らせようと試している様に男には思えた。男はこの女と対峙するのを避けていた。偏に女は美しかった。何時でも侮られている気がしてならなかった。男はそれを自覚しなかった。

    長文なのに、腑に落ちない説明です。

    >男はそれを自覚しなかった。
    これは、どこに掛かってるんでしょう?
    普通なら「侮られてる気がしてならない」ですが、どうも文脈的に「女を避けていた」のようで。ちょっと係りが遠い。

    「嫌われる筈も無いのを知った上で、困らせようと試している様に男には思えた。偏に女は美しかった。何時でも侮られている気がしてならなかった。男はこの女と対峙するのを避けていた。そしてそれを自覚しなかった。」

    に、私なら組み替えますね。

    >誘えば先生まれの笠に断られる事は無いと見越すも
    ここの「先生まれの笠」、本気でわかりません。
    何かの言い回しぽいですが、検索でも見つけ出せず。
    ご教示いただければ。

    >無自覚の根には、女から疎まれたくなかったのだ。
    「根には」に違和感ありますが、古典だとこういう言い回しが?
    古典知らない私でしたら、

    「無自覚の根は、女に疎まれたくない所以から生えていた」

    ですね。

    >男はあれから一度も女の顔を見ていない。
    確かに、自分から誘ったにしては不審な動き。

    >そこで男は此処がジャズ酒場であることを思い出した。――気が付いた。

    これはまあ、緊張のあまりでしょうか。

    >男はここで女の襟足に対象を変える。
    本当にジャズ好きなんです?
    思いっきり引っ掛かってるw

    >女の読み通りである。
    「計算通り」の方が適切に思います。

    >黒地に銀の唐草刺繍の入れられた小紋友禅から真白い項がすっくと際立つ。帯には流れが現れており、黄褐色と変じた秋の薄原が悉く靡いている様だ。先が明るい舞台なだけあって、此処等は一層陰と成る。陰の中で黒の着物はその輪郭を失い溶け出す。唐草模様迄も溢れて闇を絡み這う。橙色の灯に覚めた首筋が納まる。黄金の髪は強き舞台照明と向き合っても、その態度を変えなかった。

    あー、これは「難読多用病」ですね。
    作者が書きたいだけで、ほぼほぼ不必要な描写です。
    ここまで描写する意味もない場面だし。

    >女が居直り、男が舞台に目を戻す。女の手の白さは芸術を目的と拵えられた白磁程であり、和紙の如く光を浸み入らせ自ずから輝く。

    言葉は美しいですが、さすがに鼻につきます。
    「アラビアンナイト症候群」気味。
    (造語。女性の顔パーツを一つずつ拾っては褒め称える病。
     読者は「そこまで聞いてねーよ」という気分になる)

    >思ったからか、頼んだ覚えの無いグラスが卓に在る。
    なんですかこれ。瞬間移動?

    >女の顔に二つの人情が浮かぶ。一つは嘘をついている。それも優しい嘘である。無論優しさは男に向けられている。もう一つが怒りである。こちらも男に対してだ。女は怒りが正当を欠いているのを知っている。表出させれば先の嘘に反する。

    「男への好意を隠す嘘と、気づいてくれないことへの怒り」。
    だと読めますが、持って回りすぎです。もはやクイズの域。
    そもそも読者は、この女の性格をまるで知りません。
    なのでクイズにもなっていません。
    私の答えも「よくあるパターンだとこれ」ってだけです。

    >女は怒りを慈しむ笑みの眉を開いた。
    日本語として読み取れません。
    なんか、だんだん文章が雑になってきたような。

    >「そうですね。それは堀田さんが持って来た物ですか?」
    >「ああ」
    >「なら良いと思います」

    確かに意味不明ですが、男も同感なので、ここはよし。

    >笑って誤魔化す要は無かった。
    「必要」では?

    >答へ導く積もりも、責付く思いも無い。
    男の視線で見た描写的に読める部分ですが、
    「積もり」はともかく、「思い」が読めるのはちょっと違和感。
    私なら「気配」か「様子」にするところ。

    >『枯葉』に歌が入り、男は反射で以て舞台を見た。
    1マス開け忘れです。

    >黒人のソウルミュージックと、大和魂を貫いた声。

    忌野清志郎は「雨上がりの夜空に」と「パパの歌」くらいしか知らないんですが、大和魂的な感覚ありましたっけ……
    ちょっと調べましたが、君が代をロックで歌ってる、これかな?
    思想的には愛国って感じでもなさそうですが。

    >エル・キャピタン
    マイルス・デイビスか『枯葉』と関係あるのかなと思って調べましたが、無関係ぽい。
    単に桜と対を成すアメリカの象徴? ちょっと拍子抜け。

    >男は己と座面の接地が汗でじわりと湿るを、肌に感じた。
    ここの表現は雑に思えます。

    >女は一層優しく男を哀れんで問うた。
    よくわからない感情。憐れむ?
    と思ったけど、夢オチだったこれ。

    >女と目を合わせる。そこに逡巡も恐惶も羞恥も無い。
    この書き方だと、女の目のことに読めます。
    まあ流れに男だとは思うんですが、女の動きが意味不明なので。

    >何故なぜ見たのかは男にも分からない。
    1マス開け忘れ。

    >結果として、女の揺らぐ事の無い双眸が男の背を押した。

    夢に突っ込んでもしょうがないんですが、普通相手の目を見た方が本音は言いづらいですよ。

    >男はそんな夢を見た。
    ああ、読んで損した気分。

    >男はその額に手を乗せる。
    何故?熱があるでもなし。

    >あの女が癌に死んだのは十年前だ。
    えっ、終わり?


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて

    かっこいいタイトルですね。
    内容にかすりもしないことを除けば。

    ・文章について
    最初は、「これはすごい。私より遥かに上のレベルだ!」と思ったんですが、うーん。
    読むにつれそうでもないというか、メッキぽいというか。
    最近、私がトンデモレベルを読んじゃったからかもですが。
    悩みましたが、自分が感じたままを正直に書くと、
    「難読多用病」──この結論となりました。

    もちろん、語彙はすごいですよ。素晴らしい。
    私なんて及びもつきません。古典に造詣が深い方なのだろうなあと思います。文法的にも、今まで読んで来た参加作の中で上位に入る腕前です。

    でも、それだけ。
    感想でも言いましたが、「難読多用病」そのものです。
    凝った言い回しや古風な言葉で飾るばかりで、かえって物語の理解が阻害されています。
    無論、相当ハイレベルな部類ですが「読むのに邪魔」なのは、何ら変わりません。

    わかりますよ。皆の知らない、馴染みのない言葉を使えばスゴイですよね。
    でも読者が読みたいのは、華麗な文章表現ではなくて、面白い物語なんです。
    適度な量をアクセントに使うならともかく、これはやりすぎ。
    過ぎたるは及ばざるがごとし、です。

    私は古典の造詣皆無ですが、本当に古典の名作も、こんなてんこ盛りなんですかね?引き算されてませんでした?

    ・内容について

    本当は文章は褒めて内容は……のつもりでしたが、申し訳ないです。
    文章に続く形になりますが、こちらもまるで褒められません。
    というか、こんなの褒めようがない。

    「女に問い詰められる夢を見た」。
    これだけです。
    それも答えも悟りもなく、中途半端に。
    長編の第一話ならいざ知らず、これで何を感じろと?

    これで三度目ですが、例の言葉を贈るとしましょうか。

    「他人の夢の話ほど、くだらないものはない」


    ⬜️総評
    ・文章は美しいが、「難読多用病」気味。
    ・内容がないよう。
    ・読んだ時間返して。

    文章と内容に、これだけギャップのある作品は初めてです。
    文章練習とか、筆ならしに書いたとかですかね?
    そうじゃないかなと思いたくなるレベル。
    それで企画に参加するのも、不思議ではありますが……
  • 【29】【短編】追放された冒険者~パーティどころか国から追放されましたが、魔王城で最強の門番をしています~(少尉)
    https://kakuyomu.jp/works/1177354054918072343

    ラスト2。
    ここに来て初登場のなろう系!です。
    以前にも異世界ファンタジーものは読みましたが、こちらはガチ。
    帯は、「追放系テンプレの安心設計」。
    何を安心するんだって感じですが。

    企画にも書きましたが、なろう系は「覚悟してください」。
    ろくに読んでいないので、梶野はお約束とか知りません。
    手加減なしにぶった切る可能性があります。
    いや、逆に厳しいこと言えなくなるかもしれません。特殊過ぎて。

    ともあれ、警告を読んだ上で「覚悟を決めて」参加した作品です。
    全身全霊、丁重にもてなすとしましょうか。

    感想、開始します。


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。

    >鈍い光沢を放つ剣が、俺の身体を貫いている。
    >剣を握っているのは——共に冒険者としてパーティを組んでいた戦士アラン。

    文章力はともかく、出だしは悪くないです。
    インパクトと状況が二行で伝わるよう、書けています。
    しかしパーティとかのテンプレ、ドラクエを想像すべきか、ドラゴンランスなのか、おっさんとしては考え物です。

    >その後ろでは、怯える目でこちらを見る僧侶リナ。

    僧侶は心優しくて臆病って設定、どっから始まったんでしょうね。
    穴ぐらに突入してモンスターぶっ殺す一味に違いないのに。

    >剣で貫かれた箇所から、赤い血が吹き出す。
    血が噴き出すなら、剣を抜いた後でしょうね。

    >視界が、眩む。
    文頭1マス下げ忘れ。

    >魔法使いのフレイムだった。
    ドラクエのような安直ネーミングですが、まあ忘れにくくていいか。

    >火球の魔法に吹き飛ばされる。
    吹き飛ばされるだけで済むんですかそれ。

    >場所は、冒険者ギルド。
    屋内でファイヤーボールぶっ放すんですか。
    冒険者ギルドも、どんな場所かの説明になんらなってないですね。

    テンプレ?知らんがな。
    一般にない、作品ごと違うだろう場所を書くのに、名称だけで伝わると思うべきではありません。
    大広間なのか酒場に近いのか、イメージはまるで違います。

    >床に打ち付けられた俺は、
    「打ち付けられた」には、「叩きつけられる」と「打って固定される」の二種類の意味があり、この場合どちらとも取れます。
    たいしたアクションではないので些末ではありますが、難しいシーンを書く際には配慮して使わないと誤読します。

    >幾人もの冒険者から、剣や槍を身体に突き立てられた。

    ここまで痛みやダメージの描写がほぼゼロですが、
    これはショックで客観視しちゃってるんですかね。
    それとも魔族だから何も感じてない?
    まあ、この時点でわかる必要はないですが。

    >俺の右手の呪印が、紫色に光る。
    出た────!w
    ちなみに最後まで未回収。なんだったのこれ。

    >どうして、こうなったんだ……?
    読者も思ってるので、代弁はありがたい。

    >そして、Cランクに昇格すると、鑑定の水晶でステータスを確認し、正式な冒険者として登録されるのだ。

    ステータスとは?
    いやもちろん知ってますし、「それが当然なんだ」という疑問は置くとして、どこまで表示されて、説明が出るんでしょうね。
    RPGとかだと、数値や説明もゲームごとさまざまなもんですが。

    あと、Cからステータスを確認する意味は?
    「どれくらい強いか」とか「職業の向き不向き」とかを見たりするもんだと思うんですが、普通、登録時に向き不向きを見ません? 
    あえて初心者を放置する意味とは?

    >全ての冒険者の目的は、魔族を率いる魔王の討伐。
    「魔族」って言葉も、ファンタジーごとに違います。
    どういう定義なのか、ここでなくとも説明いるでしょうね。

    >戦士アランは、復讐者としてCランクを目指していた。
    Cランクで正式って、まだ初心者レベルってことですかね。
    つーか、Cランクの基準がわかりません。
    どんな功績を打ち立て、どれくらい強ければCなんです?

    この時点でのアランの強さが、この説明で余計にわからなくなりました。

    >気弱な僧侶のリナは、教会から派遣されたらしい。
    >いつも、戦うのは嫌だと泣き言を言っていた。

    ブラック企業か。

    >魔法使いのフレイムは、ただの戦闘狂だろう。
    >魔法をぶっ放す度に、楽しそうな顔をしていた。

    魔法使いって学者のイメージですけどね。
    まあこれは個性の範疇かな。
    ダークシュナイダーって例もあるし……

    >そして、俺はただの村人だった。
    >人よりも少し頑丈で、力があり、闇魔法を使えるただの村人。

    さらっと闇魔法入ってるけどw
    どういう位置づけなんですか、闇魔法w
    普通に村人が使えるもんなんですか?

    >狭い村では、気味悪がられ、居場所がなくて冒険者ギルドに来た。

    なるほど、珍しいんですね。
    冒険者ギルドや仲間からは気味悪がられなかったんですか?
    もしそうなら、何故?
    この世界における闇魔法の定義を伝える為にも、ここで説明はあるべき。

    >これで、正式な冒険者として魔王の城を目指せる。
    たいていのRPGだと、魔王の城って最終ステージなんですが。
    大丈夫か、そんなレベルで?

    >鑑定の水晶は貴重な品物で、自分の全てが明かにされるらしい。
    「全て」とか安易に書かない方がいいですよ。
    私みたいな重箱突きの格好の餌食になります。

    >珍しい闇魔法を使える俺の適正はなんだろう?と、楽しみにしていたのに……。

    村で居場所がなくなるレベルの迫害を受けてたのに、
    「珍しい」程度の認識なのは、笑えますね。

    >鑑定の水晶を前に、ギルド職員のお姉さん
    貴重な推奨なのに、職員のお姉さんが扱うんだ。

    >——何か珍しいスキルでも、見つけたのか?
    普通、自覚してるもんじゃないですかね。スキルって。

    >二人っきりの空間で、悲鳴を上げる女性。
    広さも何があるかも、部屋かどうかすら謎。

    >俺は臨戦態勢を取り
    せめて武器の描写くらいは。
    何で戦ってるんですかこの人。闇魔法だけ?

    >どこに魔族が!?と気配を探っていると
    まず「見当たらない」ことを書くべき。

    >俺は肩の力を抜いた。
    この状況で肩の力抜けます?
    誤解でも、殺されるかもなのに。

    >クロード Lv24
    >魔族 魔剣士

    表現の安さに、乾いた笑いが出ます。

    >俺が、魔族だなんて、そんなバカな事あるか!
    だから、魔族の定義をですね。

    >確かにアランからは、人とは思えない怪力だと感心された。
    >リナからは、ヒールが必要ないくらい自然治癒が早いと呆れられた。
    >フレイムからは、闇魔法を使える人間なんて珍しいわねと羨ましがれた。
    >だけど、俺はただの村人で、冒険者で、人間なんだよ!

    馬鹿しかいないのかな、このパーティは?

    >——人間なんだよ!
    痛切な叫びですが、定義が曖昧なので「お、おう」って感じ。

    >背中を斬られるが、痛みはあまり感じない。
    とりあえずこの時点で異常だし、自分に疑問感じたことないのかな、この人。

    >「悪魔が忍び込もうとしていたのか!」
    いや、もう侵入しとるがな。
    「悪魔が忍び込んでいたのか!」にすべき。

    あと、ここだけ悪魔なのは何故?
    魔族と悪魔は同じ意味ですか?
    RPGによっては悪魔族は別定義な場合もありますが。

    >物心ついた頃から、右手に刻まれていた呪印が怪しく光る。

    誰も呪印に突っ込まんかったんかーい!
    「左手にトライフォースを宿した普通の村人」くらい狂ってますね。
    そもそも呪印ってなんですか?
    この世界ではどういう場合に使われ、どういう扱いされてるんです?
    ここに来て設定が茶番と化した気分。

    >気づけば襲いかかる者を、吹き飛ばしていた。
    どうやって?

    >——オレハニンゲンダ……。
    いや、カタカナでしゃべるより前に。
    今どんな感じ?なのか教えてください。
    なんか色々変化してますが、どういう気分なのかを。

    >「クロード、おまえ、そのツノ……」
    だから、定義をですね。

    >アランが、何かを決意した表情で俺を見る。
    >リナは口元を押さえ、怯えていた。
    >フレイムは、完全に殺意を向けている。

    とりあえず、仲間に信用されてなかったことだけはわかります。
    状況はどうあれ、いきなり「じゃあ殺すか」にはならんでしょう。普通、仲間なら。

    >不思議と身体に痛みは感じない。
    >それどころか、呪印の光が増す度に力がみなぎる。

    痛みを感じないって描写は、逆にチープに見えますね。
    私なら痛みの描写を「それ以上の困惑と悲哀」に利用しますし、
    心の痛みともリンクさせますが。

    魔族って痛みを感じないんですか?
    それともこの人だけ?この状況だから?
    実は呪印の効果で、魔族は関係なかったり?
    謎だらけですが、この場はともかく、後にちゃんと判明するんですよね?

    >——闇魔法 漆黒を発動した。
    >周囲が闇に包まれる。

    いや、いらんでしょ。
    これだけ刺されて痛みもなし。火球のダメージもスルー。
    普通に逃げればいいだけでは?

    周囲を闇にとかの工夫は、勝てない場合にすることですよ。

    > ただただ、駆け抜けた。
    ここで「駆け抜けた」を重ねるのは、なかなかよい表現。

    >——俺は人間なのに……。
    >そう叫びながら。

    そこは思うくらいにしてください。
    本当に叫んだらかっこ悪すぎます。

    >第2話 再会

    >あれから、7年の月日が経っていた。
    一番美味しい時期をスルーするとは。

    >生きる為に、力が必要だったからレベルを上げた。
    >経験値の為なら、人も魔族も魔物も関係なく殺した。
    経験値w
    魔族も殺してるのに、魔族の国で生活できるんですか。
    秩序とかない、修羅の国?

    >額から伸びたツノと、身体全体に刺青のように広がった呪印を見て、俺を人間と思うやつはいないだろうな……。

    まだ言ってんのか。

    >仕事を求めて、魔族の首都 魔都に来た時に、
    これだけモラルなくて魔族なのに、仕事をする意味とは。
    殺して奪って食えばいいんでは?

    >四天王をぶちのめして得た仕事だ。
    ぶっ殺してはないんですね。謎。

    >力が絶対の魔族故に、四天王の椅子を用意されたが断った。
    そもそもまず魔王とは戦ってないんで?
    普通四天王クラスがやられたら、魔王が出てきませんかね。
    そうでなくとも、反抗的なら潰しにかかりそうなもんですが。

    >俺には、この仕事で十分だ。
    忠誠尽くさない奴に門番任せるとか、魔王もどうかしてます。

    >漆黒のローブに身を包んだ不死王
    魔族なのに描写これだけですか。

    >昔、こいつもぶっ飛ばしたからな……。
    恨まれてそう。

    >「それで、今日のご用件は?」
    城に戻ってきて、ご用件とは?
    作者の家では、帰宅したら母親に「おかえりなさい。ご用件は?」って言われるんです?

    >「戦利品を、実験室に運ぶ為ですよ」
    まあものとして扱う意味合いなんでしょうが、
    私なら「人質」にするかなあ。迷う。

    >そう言って指差す先には、馬車で引かれた牢屋の中に、人間が詰め込まれていた。
    文法がおかしいです。
    「そう言って指差す先には、馬車引きの牢獄があった。中には大勢の人間が詰め込まれている。」

    >こいつの実験室送りとは、運がないな人間よ。
    普通はどういう扱いなんですかね。
    比較対象がないのでもやもやします。

    >見慣れた光景で、いつものように牢屋の中を眺めると、
    つなぎが不自然。

    「見慣れた光景に驚きもない。いつものように牢屋の中を眺めると、」

    >何か話したかったわけじゃないだ。
    >ただ、もう一度やり直せるか期待したんだ。

    いや、まず本人とわかってない段階。

    >顔にかかった唾を拭いた手で、俺はアランの首を刎ねた。
    脳みそない人かな?

    >あの日、俺の身体を貫いたアラン。
    >これが、復讐を果たすという事か?

    イマイチ共感できません。
    7年でどう気持ちの変化があったのかわからないのが一つ。
    魔族である精神状態がどんなものなのか不明なのが二つ。
    (凶暴性、殺戮衝動、人を喰いたいなど)
    まあ、
    「7年でほとんど魔族になってるが、なけなし人間の部分も」的な?
    だとは読めますし、そこは理解できますが、共感に至りません。

    >ゴブリンの苗床
    ゴブリンって、この世界だと植物なんですか?

    >「その子も、サービスしますよ?」
    実験台勝手に殺されてるのに、さらに一人サービスとか、聖人ですか?w

    >第3話 運命

    >場所は、魔都の一軒家だ。
    魔族って家に住むんだー。

    >「……彼女は、魔族に辱めを受けるくらいならと……自爆魔法で……」

    魔族って性欲あるんですね。
    ここまで、まるでそんな描写なかったですが。

    >「お兄さんは怒ってるけど、本当は優しい気がするもん」
    お、おう。

    >そうか、彼女には、俺がただ怒っているお兄さんに見えるのか……。

    女二人に首輪をつけるお兄さん。

    >「……ロキ」
    ロキ……いやいいんですが……
    少女の名前じゃないような……まあいいんですが……

    >「ロキ、お姉ちゃんをいじめて悪かったな」
    なぜ謝る必要が?
    さっきはクソガキって言ったのに?
    「人間と言われて、少し昔の心が戻った気がする」とか書かないとわけがわかりません。というか、魔族の定義はよ。

    >「リナ、故郷に帰りたいか?」
    >「……無理です。 私達が捕らえられた事を、ギルドは知っています……」

    いや、ギルドは故郷じゃないでしょ。

    >城門に入る前に、味方に殺されるだろう。
    城門に入る前に調べりゃいいだけ。
    取り戻した捕虜も全員、殺す気か?

    >——魔族は、力こそ全てだ。
    >だからこそ、俺の所有物に手を出すバカはここにはいない。

    魔王は?

    >その言葉を聞いて、リナの表情はまた暗くなるのだった。
    話は進んでますが、全然盛り上がりません。
    よくあるパターンでご都合展開だなあ、と思うくらいです。
    幼女、純真、盲信のコンボは、腐るほどある定番ですし。

    >第4話 買い物

    >魔都に3人の人影が映る。
    魔都って言われても、全然イメージが湧きません。
    ディストピア的な?

    >盲目の少女ロキ。
    この子首輪されて、どうやって道を歩くんですか?
    杖とかの描写もないし。

    >魔族は可愛がるというより、遊ぶという感覚なのだ。
    わからんでもないですが、なら散歩させる意味とは?
    魔族の日常描写が欲しいですね。後述。

    >ロキは、気配に敏感なようで、微妙な顔をしていた。
    何が微妙に感じたのか、わかりません。

    >出迎えたのは、猫型の魔族であった。
    >狡猾な彼らは、直接戦闘より商人に向いている者が多いらしい。

    猫型魔族が商人に向いてるイメージはゼロですね。
    むしろ俊敏系戦闘民族なんでは。
    まあ異世界ごとに違うでしょうし、いいんですが。

    >お嬢様方、こちらへどうぞ」
    お嬢様?
    魔族の感覚がわかりません。

    >魔王城の門番の給料としては、なかなか痛い出費であったが、
    ペットの服程度で?
    流石魔王城、ブラック中のブラックw

    >上機嫌になった2人を見て、悪くないと思うのであった。
    チョロさここに極まる。
    真面目に読むのが馬鹿馬鹿しくなってきた。

    >いやだが、魔都でそれをするのも……。
    力がすべて言ってたやん。

    >俺も通う、人間用の食事を出す店なんだがな?
    魔族の設定すっとばしてるから、こういうわけのわからない話になる。

    >「そうだな。 何か買って家で料理をしよう」
    もう主人公が何考えてるのか、ぜんぜんわからん。
    適当過ぎて、察するのも面倒になってきました。

    >第5話 最終話

    >あれから、10年が過ぎた。
    説明もろくにないのに、ポンポン飛びますね。

    >——リナの墓だ。
    墓作ったり、祈ったりするんだ、魔族w

    >それでも、最期に彼女は「それなりに、幸せでした」と微笑んだ。
    もう開いた口がふさがりません。

    >この盲目の少女は、見えないハンデを克服する程、空間の認識に優れるようになった。
    >今では大人になった彼女に、剣と魔法を叩き込むのが日課であり、楽しみだ。

    魔族の人間認識、どうなってんの?
    敵を育ててる感覚ないの?

    >人間の目を移植する事で、視覚を取り戻せるらしい。
    戦えるくらい空間把握できるなら、いらんでしょ。

    >光を取り戻したロキは、それでも俺を人間と呼んでくれるだろうか?
    十年、一緒に過ごしてるのに?

    >リナが、冒険譚を聞かせていた影響だろう。

    魔族については聞かせてないんですかね?

    >魔王を倒すと言ったら、玉座まで案内してやろうか。
    こっちはまだしも、

    >その前に俺が魔王城の門番として、彼女に挑まれるのかな?
    こっちとか、意味が分かりません。
    その程度の愛情ってことですかね。

    >俺は魔族なのか、人間なのか。
    >それは姿形なのか、在り方の違いなのか。
    >——その答えを、ロキは教えてくれる気がした。

    締めくくりはかっこいいんですが、過程をすっ飛ばしてるので、
    首をひねるばかりです。 
    ロキをどう思ってるかすらわからないし。

    「とにかく色々あったけど、魔王倒してハッピーエンド!」みたいな。

  • 【29】【短編】追放された冒険者~パーティどころか国から追放されましたが、魔王城で最強の門番をしています~(少尉)

    感想 その2


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    国から追放されてないし、最強でもない(魔王出て来ない)。
    看板に偽りありですね。

    いつもなら、このタイトルの時点でスルー余裕なんですが。

    ・文章について
    なろう系の文章ってあまり読まないんですが、なるほど。

    確かに読みやすい。そして書きやすい。
    ただし浅い。一人称以下。

    この形式守る限り、小難しいことは書けないでしょうね。
    流行り出して随分経つのに、テンプレ内容を越える作品がろくに出て来ない理由が理解出来ました。

    ただ、確かに内容がこれくらいであるなら、「読む敷居を下げる」という意味で、これも一つの手段だと思います。エンタメ派として、そこは馬鹿に出来ません。

    他のなろう作品を知らないので、作者の文章力がなろう的にはどの程度なのかはわかりませんが、別になくてもいいだろって気がします。この内容なら。

    困るとすれば、もっと凝った作品を書きたくなった時でしょうね。
    なろう系だけ書き続けるなら、これで十分かと。
    というか、下手に勉強しない方がいいまでありそう。
    まさに「頭空っぽの方が夢詰め込める」です。

    ・内容について

    無茶苦茶ではないんですが、共感がまるで出来ません。
    なんというか、小説を読ませる意味、テーマがない作品です。
    最後はあるっぽいオチになってますが、
    「5話も書いて何も触れて来なかっただろおまえ。今更かよ」って思いました。

    多分、想定読者へ伝えたいのが、
    「強い」「かっこいい」「人間殺せる主人公クール」ぐらいで止まってるんじゃないかと思います。
    まあ、対象年齢中学生ならそれでもいいかもですが、それ以上になると読み手もそれ以上を求めそうなもんですが、どうなんでしょね。
    そういうのが好きな人が読むんだから問題ない?
    そういう考え方もあるので、もしそう思うなら、この先は読まなくて構いません。


    ……飛ばさなくていいんですね?
    よろしい。では、「私ならこう書く」を。

    まず、テーマについて。

    構成はともかく、この小説は「人か異形か」がテーマだと思います。
    導入もそうですし、終わり方もそれを意識させます。
    このテーマ自体は、普遍的で定番のものです。
    仮面ライダー、デビルマン、最近だと鬼滅の刃もそんな感じだったはずです。(最後のはろくに読んでないので印象)

    人ならぬ存在に変わった者、変わろうとする者が、その現実を前に、「人とは何か」という哲学的な答えを探し、戦い続ける──まあ、こんな感じでしょうか。

    よくあるテーマですが、人類永遠のテーマともいえるもので、テンプレとははっきり異なります。

    恋愛ものもそうですが、同じテーマに対して、主人公がどう考え、どう行動し、どんな答えを見出すのか。そこに読者は感動するんです。
    似たような答えはテンプレですが、オリジナリティを出すべきは枠組ではなく、「過程」と「答え」だと考えてください。

    そのためには、作者自身がまず、徹底的に「人間とは」「異形とは」について、考え抜き、それを生かして世界やキャラを設定しなければいけません。

    以上を理解した上で、この作品を読み返すと、指摘した部分がほぼほぼ出来ていません。

    1.「魔族とは何か」が語られていない。

    異形=魔族が何か説明がなさ過ぎて、人間との違いが判りません。
    外見面はいいです。角やら呪印やらあるんで。
    精神面はどうなんですか?
    例えば、吸血鬼を例にとれば、吸血鬼になった者は肉体的変化の他、「血を吸わなければ生きていけない」という業を背負います。
    これに対して、精神的にどう変化するかは作品によって違いますが、たいていのなりたての吸血鬼は抵抗を示し、ベテランほど普通だと思う傾向がある。
    また、血を吸いたくてたまらないという吸血衝動が描かれる作品もありますが、それらは作中であらかじめ明示され、その上で主人公に決断を迫るんです。

    ひるがえって今作では、魔族の説明がろくすっぽありません。
    特に精神面はまったくと言っていいほど描かれず、思考を書きやすい一人称の特性をまるきり無駄にしています。

    主人公はガンガン魔族の習性に慣れていきますが、これがナチュラルな慣れなのか、魔族の血の性質によるものかもわかりません。
    なので、「こいつ悩んでたの一話目だけだな」と感じられ、最終話でも
    「オレは人か魔物か……」みたいな終わり方でも、
    「本当はどうでもいいんだろ?」って感じるんです。
    ゆえに面白くない。

    2.主人公が何を考えているかわからない

    主人公は一話目でこそ「人間の意識を持つ魔族で被害者:ですが、
    二話目では普通に何でもぶっ殺し魔族ですし、たまに人間だったことを思い出す程度で、悲しむことも何もありません。レナとロキの扱いもぞんざいです。

    魔族の性質に染まる展開が一概に悪いわけではありません。ある意味、自然な流れですし。
    問題は、その経緯が一切描かれていない。自分の内面にろくすっぽ触れていないことです。
    普通なら昔の仲間と出会った際、人間だった時代について思いを馳せたり、現状に悩んだりするものですし、そういう方向のイベントがあるべきですが、今作ではそこの起伏がほぼゼロ。
    「あったなーそんなこと」程度で、普通に魔族ライフ継続です。
    そりゃあ読者も「ああ、もう終わってるなこの話」と思いますよ。
    ここから劇的な展開があるわけがない。

    主人公の苦悩や葛藤。魔族になった後に残る人間性をどう思うか。
    人間性は魔族にとって必要なのか邪魔なのか。人間と接する意味は。

    ここら辺をスルーするなら、作品書く意味ないでしょ。

    3.時間を飛ばし過ぎ

    とにかく5年とか10年とか、バンバン時間が過ぎます。
    これも、時間が過ぎること自体はいいんですよ。
    時間が過ぎたことで、主人公が魔族に馴染んでしまったことに理解が示せるなど、メリットもあります。
    ですが、2で書いた「主人公の内面変化」が、時間経過で説明放棄されているのが最悪です。
    一番書く必要のある場面が、飛んでいるんですから。

    私なら、一話後の「逃亡~人間を敵に回す」展開は、一話使ってでも必ず加えます。
    ここで、魔族の定義の説明、自身の性格の変化、人としての抵抗、呪印の謎、その他書くべきを説明できるシチュを用意して、それらにめどがついた時点で、やっと魔王城です。
    あるいは、魔族については魔王城に到着してから教えられる展開でもいいですが。例えば魔王じきじきに教えられるとか。

    4.主人公が動かない

    苦悩がないので、主人公がろくに動きません。
    2話以降の進展は、レナ、ロキを引き取ったくらいでしょう。
    あとは時間が経過したというエピソードレベルです。
    「主人公は魔族になった。仲間を殺し、幼女がなついた」。
    これだけですね。起伏があるのは一話目だけです。

    主人公が動かなければ、物語が動くはずがありません。
    主人公の気持ちをしっかり描いていないので、魔族ムーブしかさせられないのです。

    5.バトル描写がクソ

    まあこれは内容とは外れますが、びっくりするほどバトルがない。
    「四天王を倒した」「闇魔法」「超再生能力」。
    言ってるだけで、まるで描かれていませんよね。
    口だけ番長みたいで、まるで魅力を感じられません。
    強い強い言ってれば強く思ってくれるほど、目の肥えた読者は甘くないんです。

    私はバトルにはこだわりがあるので、特に強く言わせてもらいますが、「バトルやったことにした」という展開は、クソです。
    こだわりがあれば、たとえ数行の描写でも、それが現れるもの。
    私は「闇魔法・漆黒」の時点で「ああこの作者、魔法の思い入れゼロだな」とわかりましたし、実際そうでした。

    細部へのこだわりは、作者の熱意として伝わります。
    なろう系とはいえ、そういった配慮の差が読まれるかどうかを分けると思うんですが、どうでしょうかね?
    「神は細部に宿る」ですよ。


    さて、以上をもとに、ざっくり私が思いつく、
    「こういう展開は入れておきたい」を箇条書きしていきましょうか。
    思いつくままで質は問うていませんが、実際に採用するなら、
    まずはアイデアを数出した上で、厳選すればいいと思います。

    序盤
    ・主人公、故郷を目指す。親族か村に行き出自を確かめるのが目的
    ・旅の途中、人間と魔族が戦う場面に遭遇。どちらの味方をするか。
    ・人間の目を避けて旅する中、同様の境遇の魔族と仲良くなる。
    ・追って来た仲間の一人(レナ辺り)が、冷静さを取り戻し、
     真実はどうなのか調べるために追ってくる。
    ・なんなら主人公に恋心を抱いている。
    ・魔族を無差別に殺す人間の邪悪さに嫌気が差す。
    ・四天王か魔王辺りに戦場で巡り合い、魔王城へ向かう。

    中盤
    ・魔王のキャラのクローズアップ。
     悪のカリスマとして登場し、悪と魔族のシンボルにする。
    ・魔王と接することで、魔族に心が傾く主人公。
    ・魔王城での魔族の生活の描写。
    ・その生活に、最初は嫌悪感を覚えるも、次第に慣れていく。
    ・四天王を倒し、主人公を崇拝する魔族が現れる。
    ・倒された四天王は主人公を憎み、陰から暗殺を試みる。
    ・ハーデスが主人公の仲間を捉えたのは、これが目的。
     かつての仲間を改造し、ゆさぶろうとした。
    ・あるいは人質として使い、主人公を攻撃する。
     主人公はなけなしの人の心のもと、人質を救出するが、
     それ自体が「こいつは魔族じゃない」と広める罠。
    ・魔王、冒険者ギルドの征伐を主人公に命じる。

    終盤
    ・魔王城で育てられたロキ、故郷を恋しがる。
     主人公、連れてくべきか葛藤。
    ・魔王、ロキを花嫁に差し出せと求める。
     勝てない相手の「力こそ正義」にどう対処するか。
    ・人間側の逆襲。
     切り札的な新魔法によって、魔族優位の時代が終わる。
     力で優る魔族は、新魔法によって異常に数を増した
     人類に押され、ついに魔王城も包囲される。
     攻守を変えた残虐さで皆殺しにされる魔族たち。  
    ・魔王、四天王、そして主人公の決断とは。
     その時、ロキはどう動くのか。

    まー五分でざっくり書きましたが、こんな感じで。
    人類の新魔法は「繁殖魔法」とかどうでしょう。
    イナゴみたいに生まれる人数が増えて、成長速度も数倍。
    人口爆発によって、数で魔族を圧倒するとか。


    ⬜️総評
    ・キャラと世界、展開の練り込み不足。
    ・文章はなろう系としてはアリ。他ではナシ。
    ・テーマは悪くないが、考えが足りない。

    なろう系は嫌いですが、なんだかんだ「読めるは正義」を実感しました。
    これくらいの内容でも、とりあえずは読めるし、評価しやすい。
    まあこれ以上の内容となると厳しくなりそうですが、ツールとしてはアリかもと、認識を改めました。意外な収穫。

    ともあれ、奥深い作品を書くには、まず作者が悩み抜かないと。
    なろう系=手抜きでOKと思ってる間は、成長しないと思ってください。
  • 【30】やってみないと分からないから君もやってみろ(@merutomo82)
    https://kakuyomu.jp/works/16817139558500414961

    現代ファンタジー。
    あらすじないのは、珍しいですね。
    ごく短い短編だから、あえて省いたのかも。
    それはそれでいい判断な気がします。
    読まれる確率は減りそうですが。

    これでついに30作品目。
    ここまで一ヵ月。長く険しい感想ロードでした。
    思えば企画を始めた当初、ここまで地獄を見るとは露知らず……

    おっと、感傷に浸るのはまだ早かったですね。
    最後まで気合入れて、全身全霊でやりとげねば。

    それでは、最後の感想、行きます。


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。

    >この静まった空間で俺が今奇声を上げたらどうなるんだろう。
    この形式なら、段落頭の一マス下げはした方がよいかと。
    圧倒的に読みやくなるはずです。

    あと長文なので、読点も欲しいです。
    「この静まった空間で、俺が今、奇声を上げたらどうなるんだろう。」

    >みんなも同じ感覚になったことがあると思う。
    場所がわからないんで、なりません。
    読者に問いたいなら、せめて場所を書いてから。

    >あの日はそう晴天だった。雲ひとつなく、何をしてもいいような気がして俺の判断は理性の遥か外側へ飛んでいった。

    ファンキーな脳みそですね。
    「晴れ時々殺人」みたいな。そんなタイトルの小説あったなあ。

    >その瞬間俺の封印は解かれた。
    まさかの展開w

    >俺のひいおじいちゃんは、その声の力だけでかつて魔神と人間との長い長い戦いを終わらせ、勇者として伝説になった。

    ファンタジー世界だったのか、これ。
    現代ファンタジーって書いてたような。
    でも現代で勇者が伝説にはならないですよね。ゲーム以外。

    >俺の父さんと母さんは結婚して俺が生まれた途端に、魔人によって呪い殺された。

    魔神と魔人がいますが、違いあるんです?

    >1人生き残った俺は今さっきまで自分の力を知らずただのサラリーマンとして生きてきたのだ。

    なんか見たことある展開だと思ったら、あれだ。
    ハリポタだ。

    >あまりにその膨大な力を使いこなせなくて、俺の務めるこのクソブラックな会社を爆発させてしまった。

    内容の飛躍がすごくて、文章面の突っ込みが追いつかないw
    とりあえず、「あまりにその膨大な力を使いこなせなくて」は、

    「あまりに膨大なその力を使いこなせず」かな。

    >なんて素晴らしい結果だろう。
    おめでとう。明日から無職ですね。
    離職票もらえないと失業保険出ませんが、大丈夫?

    >そう、みんなも同じ感覚になったことがあると思う。そんな時本当に声を上げてみれば、君の眠っていた力が目覚めるかもしれない!やったね!

    青空でそれはないかなあ。
    「ブラック企業に勤めてて叫びたくなる」なら、共感するところですが。

    >やったね!
    なにが「やったね」なんだろう。

    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    まあ、勢いはありますし、内容的にも嘘ではない。
    タイトルは褒められます。

    ・文章について
    ノリのまま一気に書き上げたような勢いは認めます。
    表現力は全然ですが、この作品においては未熟さも粗削りな魅力と思えなくもないです。

    半面、勢いを優先しているため、説明は一切合切投げ捨てモード。
    ある意味ロックですし、好きな人は好きそうですが、個人的には完成度重視なので、そちら方面は評価しません。
    勢いを保ったまま、ここから無駄な100文字を削るのが完成度というものです。

    ・内容について
    起承転結で言えば、「起」ですね。
    まさか、これで終わりじゃないでしょう?

    伝説の血を受け継いだ主人公に目覚めた声の力。
    勢い余って、ブラック企業を蒸発させた主人公。
    明日から無職。両親も実家もなし。
    あるのはと若さと勢いと「声の力」だけ。

    まるで予想のつかない、最高の始まりじゃないですか。
    ここから最後まで物語を書き切れば、下手なテンプレが吹き飛ぶような作品が生まれるかもしれません。
    いわば「傑作の卵」とも呼べる存在です。
    この続きは、必ず書かれるべきでしょう。

    私も、一度チャレンジしてみたいですねw

    ⬜️総評
    ・勢いだけは認める。
    ・すべてが中途半端で投げやり。適当。
    ・ここから物語を進めて完結させたなら、認める。

    無茶苦茶な物語をうまくまとめて、ちゃんとした完結に導くのは、案外面白いし、いい練習になります。
    考えもしていなかったなら、むしろ自分の限界を破るチャンスというもの。ぜひ挑戦してみてください。
  • 【31】オリオン座の見えるバス停で(深夏)
    https://kakuyomu.jp/works/16817139558572698715

    余裕があったので、ボーナストラックとして、
    追加で一話、じっくり感想を書くことにしました。
    最後まで企画に残り続けた作品です。執念の勝利です。

    内容はホラー。
    ……タグはそうなっていますが、ホラーじゃないですねこれ。
    そして高校生作品。
    大丈夫、企画終わらせたので、オブラートは補充されました。

    それでは、最後の感想いきましょう。


    ⬜️読みながら雑感
    二読後の感想を、読みながら書きます。

    >第1話
    一話完結なので、サブタイトルが第一話はどうかと思います。

    >「おねーさん、今日も残業ですか?わたしは文化祭の準備で遅くなっちゃって。一緒に座ってましょ。」

    この形式なら、台詞最後の「。」は省くべきだと思います。

    >特にすることもないので頷く。
    文頭1マス下げ忘れ。

    >女の子の白い息が、ふわっと広がって消えていく。
    ここも文頭1マス下げ忘れ。
    多いのでこれ以上指摘しませんが、要チェック。

    >「オリオン座の右肩って、実はもう無いらしいですよ。」

    軽く調べましたが、「実はもうない」は事実に反しますね。

    ・ペテルギウスは550光年先にあり、見えているのは550年前の姿。
    ・10万年以内に超新星爆発を起こしてその一生を終えることが予想
     されている。(ウィキより抜粋)

    数字は諸説あるのですが、大きく見積もっても消滅までの年数の桁が違い過ぎます。
    「10万年」以内に起こる可能性が、「550年」以内に起こる確率は相当に低いので(ないとは言いませんが)、「実はもうない」は拡大解釈が過ぎるかと。後述。

    >「今見えている光は、500年前の光なんだそうです。わたし、それ聞いたとき笑っちゃって。なんか、自分がちっぽけだなあって思って。室町時代ですよ、500年前って。壮大すぎてわけわかんない。」

    天文学では、500年とか誤差の範囲だそうですよw
    それはともかく、話には共感できます。

    >「しかも、この形からオリオンを想像できるっていうのも、今の私たちの感覚からすると不思議ですよね。わたし今、オリオン座の右肩とか言ったけど、正直砂時計にしか見えない。むしろ砂時計にも見えないし。」

    まあオリオンには見えませんよねw
    砂時計には、私は見えますが。

    >こんな会話を昔誰かとした気がするけど、今ではもう思い出せない。

    何かの複線かと思いましたが、回収されてませんね。

    >「昔の人は、想像力が豊かだったのかな。
    それもあるでしょうしが。
    星空が今以上に神秘に満ちていて、かつ身近にあったからでは。
    都会に住んでいると空を見上げる機会すら減りますから。

    あと、娯楽の少なさとか。
    星座の起源は羊飼いだそうで、星の並びに名前をつけるくらいヒマだったんだろうと思います。

    >「そういえばこのバス停、幽霊が出るらしいですよ。今の人、私たちのこと幽霊だと思ったのかな。」

    いきなり幽霊の話を始める理由がわかりません。
    少女の意図が読めないというか。

    >だれにも言えなくてバスに飛び込んだとか。

    「バスに飛び込んで自殺」って聞いたことがないです。
    電車ならいくらでもありますが。
    一応ネットで調べたところ、バスで自殺した事件は一つも見つからず、ひたすらバス運転手の自殺事件が出てきましたw

    まあ、走行中のバスに飛び込めば死ねる可能性はあると思いますが、
    バス停付近では相当難しいんじゃないかと。徐行しますから。
    ちょっと無理のある設定ですね。

    >わたしは幽霊信じてるかって言うと微妙なんですけど、でもなんかこれは信じてて。

    この発言も微妙。
    少女は女性が幽霊であることを知っています。
    「幽霊信じるかは微妙」は、嘘ということになります。
    嘘をつく理由がなければ、削った方が自然です。

    >こんな高校生がわかるわけないって自分でも思ってます。

    これは「セクハラ」にも「独りって寂しい」にもかかっているように
    読めるミスディレクションですね。意図したかはわかりませんが。
    ただ、「高校生がわかるわけない」は不自然な気がします。
    「セクハラ」も「独りは寂しい」も、高校生ともなればわかるはず。

    「私も学校で似たような感じで」でも、話は通りますし、自然です。

    >そのあともずっと独りで。成仏しようったって出来ないですよね。

    何かに執着して成仏できない、という話の方が多い気もしますが、
    まあこっちの気持ちはわかりますし、アリですね。

    >その人のことを良く知っているような、知らないような。風が吹いたわけでもないのに、鼻の奥がツンとした。何とも言えない気持ちになって、早くバスが来てくれないかなと願ってしまう。

    ここの表現はとても秀逸ですね。
    ぐっと胸に来ます。

    >「わたしも死にたいなって思うとここにきて、ああ、独りじゃないなって思うんです。

    死にたい人が幽霊と話してたら、自殺まっしぐらじゃないです?
    普通にあの世に引っ張られるのでは。
    元気もらって生きようと思える展開になる気がしません。

    私なら「つらいなって思うと」にします。「死にたい」は重すぎです。

    >つま先に転がってきた空き缶を思いっきり蹴った。
    これは変です。
    空き缶が転がって来たのも謎ですし、幽霊が蹴れることにも違和感があります。特に必要でもないので、削除してよいかと。

    >「このバス停、その事故以来使われていないんです。だから。」
    このネタばらしは理想的で上手いと思います。

    >女の子が声を上げて泣いていた。ああ、そういえばあの時、私はバスに。

    雰囲気はいいです。
    でも、何故少女が突然、カミングアウトを始めたのかわかりません。
    これまで何度も、普通に話し続けて来たのに、何故?

    いきなり泣き出す理由も謎です。
    これが「女性が幽霊になって初めての再会」や、「成仏する時」なら理解できますが、今この時、泣く理由とは?

    >500年前のオリオン座が、夜空に光り輝いていた。
    幽霊とオリオン座を繋げるセンスは非凡だと思います。
    でも、これだけでは雰囲気どまりです。後述。


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    内容に即していて、よいと思います。
    オリオン座、バス停という単語にも雰囲気を感じます。

    ・タグについて
    はっきり言って、ホラーでは全然ないですね。
    むしろホラーと教えることで、話のネタが割れ、損してるまであります。絶対にこのタグは変えるべきです。

    ・文章について
    この物語に必要十分なものだと思いました。
    感情や情景を乗せる技術やセンスもあるように感じます。

    文章力自体に問題は感じませんが、段落開始時の1マス下げの忘れが多く、気になります。もったいない。

    一人称は基本的に書きやすい形式なので、総合的な力量は測りかねますが、難度の高い小説に挑戦する際は、特に気を付けてください。

    あと、この小説では、話すのは全て少女で、女性は無言ですね。
    今気づきましたが、こういうささやかな工夫も褒めておきます。
    とてもよいです。

    ・内容について
    雰囲気という点では合格を出せます。
    オリオン座と幽霊を繋げるセンスは高校生とは思えないセンスがあり、素直に感心しました。
    無人のバス停で進む会話劇も謎めいていて、読者の想像を掻き立てます。

    ただ、物語の整合性としては、首を傾げる部分が幾つかあります。
    以下、並べていきます。

    1.ペテルギウスについて
    オリオン座の右肩ですね。
    この小説の背骨とも言うべき存在ですが、感想で指摘した通り、「すでにない」は言い過ぎで、「誤り」と言っていいレベルだと思います。

    もちろん、小説はフィクションなので、物語のために事実を捻じ曲げても何ら問題はないのですが、豆知識として読者が信じる可能性はありますし、物語に不可欠というレベルでなければ、私は「ない」と考えます。この小説も同じです。

    改善案としては、「言い方」を変えれば何とかなるかなと。

    >「オリオン座の右肩って、実はもう無いらしいですよ。」

    これを、

    「オリオン座の右肩って、実はもう無いかもらしいんですよ」

    にすれば、事実の部分を曖昧にしたまま、狙い通りの展開に持っていけます。
    もともと聞いた話ですし、この小説においては真実が絶対必要でもないので。
    あ、言い回しは適当です。要するに「かも」が伝わればよいのです。

    2.バス停について
    ここも感想の指摘通り、バスに飛び込んで死んだケースはありません。

    改善案としては、要するに「飛び込んで」死ななければいいんです。
    物語的には、バス停でさえ死ねば成立しますから。

    私なら「夜のバス停で手首を切った」とか、「飛び込みの死因による自殺」に変えてしまいます。

    4.幽霊の反応について

    これはささいな部分ですが、幽霊である彼女が、椅子や少女の「温度を感じる」描写には、多少の違和感があります。
    まあ幽霊になったことないので実際がどうかは知りませんが、温度を感じられるのかなあ?と。
    私なら「冷たくしか感じない」ということにして、幽霊であるヒントに使うと思います。序盤の椅子が「冷たい」のは普通ですが、「少女の背中を抱いても冷たい」
    とすれば、幽霊感がより増すのではないかと思いました。

    3,物語について

    この小説は、
    「バス停で死んだ幽霊に、少女は日々話しかけ、慰められていた。
     ある夜、少女は泣きながら、彼女が幽霊だと明かす」

    星座とか抜けば、これだけですね。
    当然ですが、「何故?」と思います。
    何故、幽霊の見える少女は、彼女に打ち明けたんでしょう。
    ここまで黙っていたことを、今、このタイミングで。
    何故泣いてるんでしょう。今まだ話し相手をしてもらっていたのに。

    今、幽霊だと気付いたわけじゃないですよね?
    バス停がずっと使われていないことは知っていたわけですから。
    バスの来ないバス体に、彼女と会いに行っていたはずです。

    ここら辺の謎が、読者に投げっぱなしなのは、
    雰囲気としてはアリですが、物語的にはナシだと考えます。

    事実を打ち明けて終わり、というのも意外性がなくてイマイチ。
    ホラータグがついているので、私は二人が出た当初から、
    どっちかが幽霊なんだろうと思いながら読んでいました。

    「実は幽霊」は類似作が多すぎて、よほど捻らないとオチには向きません。
    それにこの小説は、全然ホラーじゃない。むしろ人情ものとか友情もの路線なので、そこをオチにするのは勿体ないと思います。

    せっかくの「ペテルギウスと幽霊」のネタも、「よく似てる」で終わらせるだけでは惜しい。
    なので、もっと使い込めるネタを考えてみました。

    以下、「私ならこう書く」です。

    「バス停で死んだ幽霊に、少女は日々話しかけ、慰められていた。
     少女はオリオン座の話をし、昔の人の想像力を不思議がる。
     もしオリオンの肩が欠けたら、なんて呼べばいいだろう。

     少女はとりとめなく、話を続ける。
     そうか。私たちで新しい星座を作ればいいんだ。
     昔の人がそうしたように、今の私たちもできますよね。
     ペテルギウスのないあの形、お姉さんなら何に見えます?

     女性は答えを出しあぐねる(幽霊なので声も出ない)が、
     少女は突拍子もない星座を幾つか考え、その一つに女性は首を振る。
     二人で決めた新星座に少女は喜び、女性も満足する。
     (ここまでを雑談のように軽く描く)

     (ここから本筋と同じ)
     
     少女は泣きながら、彼女が幽霊だと教える。
     自分はもうすぐ引っ越し、もうこのバス停に来られない。
     孤独なバス停に残すには忍びなく、事実を伝えることに決めた。
     
     それでも動こうとしない女性に、少女は言う。

     「二人で考えた星座、わたしは覚えてますから」

     女性は微笑し、星空に還るように消えていく」


    「すでにないオリオン座」も、何かを残すことが出来る。
    それを幽霊に伝えることが、物語の救いになるのではと考えましたが、如何でしょうか。


    ⬜️総評
    ・「オリオン座と幽霊」の組み合わせは非凡。
    ・雰囲気はよいが、物語の深みは足りない。
    ・ネタ元はよく調べること。

    文才がありそうな気がします。
    このセンス、大切にしてください。
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