• 現代ドラマ
  • ホラー

【先着30名】じっくり読みこんだ本音感想を書く企画【01】〜【05】

企画専用の近況ノートです。
感想はこちらに投下します。

参加作品:
【01】桃太郎 Version2(大村 冗)
https://kakuyomu.jp/works/16816700428791188215
【02】目には青葉(クニシマ)
https://kakuyomu.jp/works/16816927860044775128
【03】犯人は私です(@tonari0407)
https://kakuyomu.jp/works/16817139556544752174
【04】分岐店(あさぎ)
https://kakuyomu.jp/works/16816452219148280632
【05】好きの言葉は、海水に溶けて(篤永ぎゃ丸)
https://kakuyomu.jp/works/16816927863362135034

【06】~【10】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139558641572246
【11】~【15】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139558827416647
【16】~【20】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139559021075559
【21】~【25】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330647559848000
【26】~【30】+【31】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330647793336857

質問・返信は以下のノートにお願いします。
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330647889422158

以下、企画説明。
https://kakuyomu.jp/user_events/16817139558448314618

参加条件:
・先着30名。一日一感想で九月内に終了(予定)です。
・一万字以内の短編。短い方が熟読できます。
・ジャンル不問。作者の好みの傾向はプロフ参考。
 よく知らないジャンルは、前置きの上で、わからないなりの感想を書きます。
・辛口でも泣かない。
 反論は近況ノートにて受け付けます。誤解があれば訂正します。
 それでも納得できない場合は「所詮一個人の感想」と割り切ってください。
・梶野の趣味や傾向が気になる方は、プロフや作品をご確認ください。
 いわゆるラノベより、やや一般小説よりかと思います。

ご注意:
・正直な感想を書くので、辛口の場合もあります。
 梶野の近況ノートを遡れば、どういう感じかある程度わかるかと思います。
・可能な限り、「自分ならこう書く」を提案するスタイルです。
 作品の改善を求めるというわけではなく、単なる作者の練習です。
 もちろん、提案通りに直していただいても構いません。
・テンプレ的な異世界転生やなろう系は、ほとんど読んでいません。
 それでも読んでもらいたいという野心作なら歓迎です。覚悟してください。
・星やレビューはお約束しません。内容次第です。
・その他、質問などがあれば、以下の近況ノートまで。
・初の企画で何かと不手際がありそうですが、よろしくお願いします。

6件のコメント


  • 【01】桃太郎 Version2(大村 冗)
    https://kakuyomu.jp/works/16816700428791188215


    ホラーというか、スプラッタですね。
    個人的にはグロにも悪趣味にもさしたる思い入れがないのですが(その割に四肢切断とか書く)、その前提で感想書いていきます。

    ⬜️読みながら雑感

    ちなみに二読目の感想です。

    >お爺さんとお婆さんは二人とも四十歳前後でしたが、度重なる飢饉で栄養失調だったので、六十歳以上にみえました。

    個人差はありますが、四十代と六十代では、そこまで劇的な外見差にならないので、八十代くらいにフカしていいと思います。
    物語的にギャグテイストも多いので、ガンガンいくべきかと。

    >お婆さんは一人でこの大桃を食べようか、とも思いましたが、そのまま丸かじりするにはあまりにも大きく、食べやすい大きさに切る刃物もありません。

    餓死直前の人間の発想としては、甘すぎかと。
    展開的に持ち帰る必要があるのはわかりますが、理由が普通すぎます。
    私なら、
    「お婆さんはその場で桃にかぶりつくも、巨大すぎて食べきれない。
     こっそり家で保存しようと持ち帰るが、運悪くお爺さんに見つかる」にします。

    >スーパーで見切り品になったイワシの目のよう
    クスッとしました。いい表現ですね。

    >桃太郎両断
    まあこれは定番ですね。刀が出た時点で読める展開でした。

    >十分な栄養を取り満足した二人は、何年かぶりにセックスをしました。
    漫☆画太郎の絵で脳内再現されて困るw

    > 物成りが悪く
    こういう表現もあるんですね。勉強になります。

    >「しばらく置いて、腐りかけた方が旨いだろう」
    飢餓状態で余裕ありますねえ。
    ギャグテイストに突っ込むのもヤボな気がしますが。

    >お爺さんとお婆さんは、この男の子を桃太郎と名付け、育てることにしました。
    さすがにこの展開で命名桃太郎は無理があるw

    >イヌ、サル、キジ
    三匹それぞれの対応を並べるのは、昔話の定番パロディで面白い趣向ですね。
    勧誘場面はイヌサルがチョロすぎますが、まあ童話ベースですし。

    >「ちょうどいい、とっ捕まえて食ってしまえ」
    イヌサルはともかく、前段で桃太郎家以外も人食ってるのは、やりすぎに思います。
    不謹慎とかではなく桃太郎家の異常性を際立たせるために、村人については食人は禁忌のままにしておいた方がインパクトあったような。

    >桃太郎もさすがに自分の両親を食べてしまうのは気が引けたので、村人に呉れてやることにしました。
    どこからこんな常識が!?w
    桃太郎には悪の道を極めて欲しかった。

    >まだ真っ暗なので手探りで板戸を開けると、そこには無数の不気味な眼が光っていました。
    ううーん。
    無難なオチで、驚きはあありません。
    もっとこう、「そこまでやるのか!」という結末が欲しいと思いました。


    ⬜️全体の感想

    ・文章について
    文章そのものには問題を感じませんでしたが、やや冗長に思います。
    童話テイストなので仕方ない部分もありますが、グロの描写やセックスについては改善の余地がありそうです。内容がどんどん凝ったものになってくるとか、読んでいて楽しめるなら、冗長さは消えますので。
    私なら人肉料理がどんどん豪華になるとか、爺婆が48手を極めていくとかで過剰にエスカレートさせたかも。

    この内容で一行ごとに空白行を入れた書き方なのも、冗長さに拍車をかけている気がします。まあ童話寄りの書き方と言われればそうかもですが。

    私が個人的に空白行過多を好まないという点はありますが、台詞間の空白行をなくした方が、きびきび読めて勢い出るかな、とは思いました。
    まあこれは多分に好み寄りの感想です。

    作品の感想からはやや離れますが。
    大村さんの他作品、少し読ませていただきましたが、本格的な時代劇も書かれるのですね。
    その筆力を活かして、入口は童話風、出口は本格時代劇みたいな書き方も斬新で面白そうだと思いました。

    ・内容について
    「桃太郎でスプラッター」という着想をもとに、ノンストップで書き上げたような作品ですね。ノリと勢いはなかなかのものがあります。個人的にはスプラッタや食人に面白みを感じませんでしたが、趣味が合うならここもポイント高いでしょう。
    悪趣味ではありますが、私もそこまで評価低くありません。

    反面、勢いのまま読み切るにはややくどく、展開が冗長でした。
    お婆さんの二度目の食人セックス展開は私なら削るところです。
    二話にまたがる点もノンストップ系だとマイナスなので、削るべきを削って一話にまとねたと思います。

    命名桃太郎が無理やりだと書きましたが、桃を子供に絡めつつホラーな展開にもできるかと。例えば、
    「桃の種は植えて実がなるのを期待したが、三年かかる。
     その間、二人は食人で飢えをしのぎ、常態化していった。
     桃が実をつけるようになり、二人は桃をエサに人を誘き入れ、食うようになる。
     最初の餌食が妊婦で、桃を食べた直後に腹から取り上げたことから、
     桃太郎と名づけ、育てて食うことにする」などなど。

    桃太郎が最後に両親を鬼に見立てて襲撃する展開は、私も想定していました。
    この場合は「予想通りでつまらない」でなく「予想通りで嬉しい」やつです。
    いい展開だと思います。

    ・オチについて
    率直に申し上げて、オチは凡庸でした。
    この手の勢い重視短編のオチは、読者の想定外のところまでかっ飛んでいくか、読者の思いがけないところに着地するかが正解だと思いますが、このオチはどちらでもなく、もう一捻り欲しいところでした。
    私でしたら、うーん。
    襲撃場面を多少いじって、ラストを原作そのままのハッピーエンドに持っていくとかですかね。鬼ヶ島を鬼ヶ嶋(嶋には集落の意味がある)にして、両親が床下に追い剥いだ財宝を蓄えていて…みたいな。まあ実際に書くとなると大変そうですがw

    ・タイトルについて
    はっきり言って、適当すぎます。
    もうちょっとホラーが見て取れる、タイトルで読みたくなるようなものにすべきかと。
    私だったらえーと。かーにばる桃太郎、とか。
    ……なんでもないです。すみませんw

    ⬜️総評
    ・悪趣味をものともせず書き上げた勇気は認めたいところ。
    ・勢いが最後まで続かず、終盤イマイチなのが残念。
    ・理想形は読者に「グロは苦手だけどわりと面白い」と思ってもらえること。
    ・次の挑戦では、ぜひ「グロ+アルファ」で臨んでいただきたい。
  • 【02】目には青葉(クニシマ)
    https://kakuyomu.jp/works/16816927860044775128

    感想二作品目。
    耽美系というところでしょうか。
    普段、この手の小説はほぼ読まないことを前置きしておきます。
    百合ものの理解もさしてありません。
    昔の少女漫画にこういう作品結構あったなあ、と思い出す程度です。
    まああれは男同士でしたけど。


    ⬜️読みながら雑感

    二読目の感想を即時、書いていきます。

    > あのとき、私と彼女が手を重ねて閉じた扉の音は、私たちが自ら退路を断った音に他ならなかったのだと、今になって確かに思う。
    冒頭、いい出だしですね。
    総じて独特の雰囲気のある、素晴らしい文章ですが、その良さがこの一文に象徴されている気がします。

    >朝からひどく晴天だった。
    不穏な空気を滲ませたいニュアンスは感じなくもないですが、
    「ひどく」は適切な表現に思えません。
    私でしたら、とても美しい、清々しい朝であることを、ごく普通に文章にすると思います。主人公の悩みなど、まるで知らぬかのように。
    「(物語的な)嵐の予兆」を表現するならば、晴天にこだわる必要がそもそもないかと思います。

    >「食べるよ。」
    。の消し忘れかと。

    >そのため息が床を這って滞留し、部屋に暗がりをつくるのがわかった。
    前半の滞留の表現が詩的で素晴らしい反面、後半の暗がりの表現はイマイチです。
    ため息は気体で、暗がりに結びつかないからだと思われます。
    私なら温度の表現、例えば「足元にわだかまるため息が冷たく触れた」などにすると思われます。

    >瑞々しい葉をたくさんつけた、おとなしい色の花。
    表現に凝りすぎて、逆にイメージしづらくなっています。
    色に関しては、はっきりと読者に伝わる言葉にすべきです。
    一人称で変化に乏しい物語の中で、色彩はアクセントになり、暗喩にも使えます。

    >この鉢植えが枯れない限り彼女はやはりこの部屋にいるのだろうということ
    鉢植え=主人公の気持ち、という暗喩ですかね。
    限界に気付かされる理由として、これは上手いと思います。
    緑も印象に鮮やかですし。
    あ、そうなると花の色を抑えた方がよいとも言えますかね。
    うーん、でもやはり花の色は抑え気味にでも出します、私なら。

    >「長いね。」
    。の消し忘れかと。

    >「短かったよ。」
    。の消し忘れかと。

    >赤く染まった頬を転がるしずくが、いやになるほど透きとおって見えたから、私は彼女に心のすべてを打ち明けた。
    ここの心情がよく理解できません。
    幸の涙が引き金となった、という動機は理解できますが、涼の心の全てとは。
    主人公自身が「友愛ではない何か」と曖昧さを認める状態で、具体的にどう伝えたのか。
    本当に心のすべてを伝えたのか。迷いに蓋をしたのか。
    疑問が先に立ちます。

    >手を振って玄関のドアを二人で閉めた、その重くて短い音。
    ここが冒頭に繋がるわけですね。上手い。

    >「どうしたの。」
    。の消し忘れかと。

    >例えば普通の恋人同士のような出会いも幸せも別れも、私たちが知ることは決してない。
    ??? 何故?
    百合カップルにも出会いや別れはあるものと思うんですが。

    >「生まれ変わりなんて、ないよ。」
    。の消し忘れかと。

    >窓の外から射す光を受けて、長い睫毛の端がわずかに輝いた。
    >部屋にはどんな音もなくなっていた。
    ここら辺の表現、締め方は雰囲気満点で素晴らしいと思います。


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    正直、意味が読み取れませんでした。
    ああ、鉢植えの緑が青葉って意味でしょうかね。
    うーん、ちょっと伝わりづらい。奥行きも乏しい。
    タイトルに関しては、あまり評価できません。
    もっといいタイトルがある気がします。

    ・文章について
    細かな指摘を上でしていますが、総じて文句なしのレベルだと思います。
    あとは好みというか、個性の範疇に収まるもので。
    特に印象的な場面の文章の使い方、言い回しはハイレベルで、見習いたいくらいです。

    ・内容について
    梶野がいい年こいたおっさんであることを前提とした上で。

    美麗な文章にも関わらず、心に響くものが特にありませんでした。
    美辞麗句で耳障りの良い、けれど魂のこもっていない演説を聞いたような気分です。

    私は女性ではありませんし、同性愛者でもないです。
    なので、真の意味で共感が難しいのだろうと言われればそうなのですが、例えば漫画の百合物やゲイ物でも、内容のある作品であれば同情や共感、感動だってしますので、そういう問題ではないと思います。

    この空虚さは一体、何なのか。
    色々分析してみましたので、以下に書いておきます。

    1.物語がほぼ動いていない
    主人公は同性の同棲(シャレではない)生活に未来を見失い別れを切り出すが、何となくうやむやになった。
    これがこの小説の趣旨で、煮え切らないの一言です。
    もちろんそういう恋人間の曖昧な雰囲気を楽しむ、という見方もありますが、次にあげる理由で、それも難しく思われます。

    2.主人公の動機が謎
    涼は何度となく二人の関係に未来はないと嘆き、幸を縛り不幸にしていると嘆いていますが、どう見ても幸にその感覚は乏しく、独り相撲にしか見えません。

    幸に結婚すべきと言い出すくだりが象徴的ですが、幸の幸せのイメージすら曖昧なもので、相手を想っての別れというより、自分の不安を幸にかこつけて解消しているようです。

    そもそも涼の不安は漠然としており、明確な問題はない(説明されていない)のです。
    恋愛感情が希薄というのも「単なる同棲、やや百合」という関係は特に珍しくもないと思われます。昭和以前ならいざ知らず、この時代に問題意識を感じるべきは、そこではないのでは、という気がします。

    曖昧な関係から始まり、曖昧なまま同棲を続けてしまった、という点においては、多少なり共感できなくもないです。
    が、それが許されるのはいいところ学生時代までかと。
    二十年は長すぎる。今更すぎると感じるのは、私が大人だからでしょうか。
    そんな繊細な理由を持ち出すまでもなく、別れる理由なんてずんどこ押し寄せるものです。(経験談)

    3.現実味に乏しい
    まあ耽美系にリアリティを求めるのはナンセンスとは思うのですが。
    共感する上で、一定のリアリティは不可欠であると私個人は思います。

    女性二人が二十年一緒に過ごし(同棲は十年くらい?)、三十代近くになっているにも関わらず、女学生のようなふわふわしたやりとりに終始しているのは、どうにも現実味がなさすぎて、私は感情移入ができませんでした。

    二十年のつきあいで、この程度の意思疎通すら怪しい関係も、男性的なものの見方だと承知の上で、「いいから結論出そうよ」と思ってしまう次第です。

    私でしたら、この三つの疑問点は、最低限潰した上で物語を構築すると思います。

    なんというか、物語に血が通っている感じがしないのです。
    文章は申し分ないのに、具体性がない。
    ピカピカに磨かれているのに、体温を感じない。
    これは私が歳食ったが故の感覚かもですが、
    「美しさ」というのは「泥臭さ」があればこそ引き立つもので、
    ひたすら完璧さを目指しても、感動には結びつかないのでは、と最近は思います。

    陶芸なんかに通じると言いましょうか。
    経験や人生によって醸されたものこそが、作者のオリジナリティであり、唯一無二の味になるんです。
    美しさにも価値はありますが、感動の源泉はそこです。

    私はもちろん、クニシマさんをよく知りません。
    ですがこの作品から、クニシマさんの人生は感じ取れない。
    何となくですが、そんな感じがしました。
    もちろん、技巧ではない部分での話です。

    抽象的すぎて申し訳ありませんが、感じたところを正直に書かせていただきました。的外れでしたら謝罪しておきます。


    ⬜️総評
    ・文章力は申し分なし。物語は空虚。
    ・個人的にはもう少しリアリティが欲しい。
    ・背伸びせず、経験を生かした物語作りを心掛けては。

    まあ、私はエンタメ畑の人間で、芸術や純文学には縁遠いので、
    この感想はあまり気になさらない方がいいかもしれません。
    参加作品、やたらに純文系が多い気がするんですが、今から不安です。
  • 【03】犯人は私です(@tonari0407)
    https://kakuyomu.jp/works/16817139556544752174

    ⬜️読みながら雑感
    二読目の感想を即時、書いていきます。

    >◼️ドミノ◼️
    このサブタイトルは内容にイマイチ合ってないと思います。
    それぞれの死に因果関係があるならわかりますが、そうではないので。
    例えば母の死が父の死の遠因になっていれば、まさにドミノなんですが。
    私なら、二話目に合わせて「さよなら」に絡めたタイトルにしそう。

    >私は九つの命を奪った罪人です。
    数えた限り7つだと思うんですが、何か見落としてます?
    母、父、祖母、同級生、夫、子供、猫。
    あ、最後のスタッフ?と私も含まれてる?

    >私が母を殺しました。
    独白調に「私が〜殺しました」で締めていく形式。
    緊張とスピード感があり、よいスタイルだと思います。
    ただ、この母の部分だけは「殺しました」が冒頭で、最後に置かれていないのが統一感を欠いていて残念。
    私なら出だしを「私が殺しました」に変え、最後に「私が母を殺しました」と繰り返して締めくくり、終わり方を統一させると思います。

    >細かく教えられた通りにお茶を淹れて戻ってきたら、もういませんでした。
    いませんでした、の意味がわかりません。
    「こと切れていた」などの方が適切かと。

    >人であったかもわからないものになったあの子のことは直視できなかった。
    夫の死因は想像つくのですが、こっちは本当に読み取れませんでした。
    読者に想像させるスタイルとは思いますが、流石にヒント不足かと。
    語り手の反応から、同性愛とこの結果がまったく結び付きません。
    ここはもう一行ニ行、説明を加えるべきかと思います。

    >殺人者が遺体を自分の近くに埋める気持ちが分かった気がします。
    これは違うと思います。聞いたことのない理屈です。
    近くに死体を隠すケースは、移動手段がないなど止むに止まれぬ場合で、犯罪者の心理としては可能な限り遠く、バレない場所に埋めるものではないでしょうか。罪の意識がなく、死体に愛着がある場合を除いては。

    >ワタシ、きれいないろのおようふくさわりたかったの。
    これもよくわかりません。
    何かの伏線回収かと思ったんですが、見つけ出せず。

    >おかえりなさい。いってらっしゃい。
    後半をうまくまとめたよいタイトル。
    童話めいた内容に合わせてありますね。

    >二話目
    あまりの変化に、オムニバス作品かと疑ったくらいでした。
    ただ、これは「転」として考えると、最高クラスの変化かも。
    死後の世界の描写は、突飛でこそないものの、無理なく死後だと受け入れられる優しい世界で、とてもいいと思います。宮崎駿のイメージで読んでました。

    >1つ1つの毛玉たち声をかけていく。
    「に」が抜けています。

    >ぐしゃぐしゃに所々糸が飛び出た
    ちょっと引っかかる感じ。
    「ところどころ」とひらがなに開くか、読点が欲しいところ。

    >私はバスの中にそっと浮かんだ。
    ここは浮かんだ自分に驚く気持ちを描写した方がよいかと。

    >温かい色になって帰っておいで?
    ここは「?」はいらないと思いますw

    >私が私が生まれなければ皆死んでしまうことなんてなかった!
    ここで「私が」が重なっているのは誤字ですかね。
    いや、これはこれで表現としてはアリか?

    >影は私の中に何かを入れた。私の目の前の景色が変わっていく。
    せっかくの素敵な死後世界なので、ここは、「何か」とぼやかさず、
    イメージにそったアイテムを描写してもらいたいところです。

    この後、次々と過去が甦るシーンが逆順になってる点は、評価高いです。

    >長い階段の下に血まみれで倒れていたのは、
    ああ、ここでやっと、前話ラストに起こったことがわかりました。
    うーん、通しで読めばわかるとはいえ、あの場面の描写をあえてボカす意味はおそらくないと私は思います。
    描写を曖昧にとどめ、謎を残して後からわかるという構成はわかります。
    ただ、息子の死も同じパターンですが、その場合の謎というのは、
    「何が起こったか」を最低限読者に伝えた上で、「何故起こったか」を謎にすべきだと。

    例えばこの場合ですと、まず綺麗な洋服が何なのかが不明すぎます。
    主人公は老人ホームかそれに近い場所で介護されていると察せますが、そういった場所のスタッフが特段、綺麗な服を着ているイメージがないので、すぐにスタッフの服だと結びつかないのです。

    階段で落ちたというのも、後にはわかりますが、前段では場所の説明が一切なく、ご飯を食べさせられているので、まさか長い階段の傍とは想像しません。そんなホームは多分ですが、ないと思います。

    これらを私が解決するとすれば、

    前段:風通しのよい部屋で食事を与えられている描写。
       自分を責めて欲しいと迫る主人公。
       悲鳴とともにスタッフが姿を消してしまう。自分も床が消える感覚。
    後段:スタッフは主人公に迫られ、病室の開いた窓から落下していた。
       主人公も勢い余り、ともに落ちて死んでいた。

    とか、こんな感じにするかなと思いました。

    >俺は普通じゃないから、こんな息子じゃ家の恥になる。
    ええーー……
    いやもちろん、こういう人もいるかもですが。
    ちょっと共感できかねる思考ですねえ。最大の親不孝でしょ。

    >【私は誰よりも何よりも、馬鹿なことした汚れた自分が嫌い。
    他はともかく、この方にだけはご都合主義を感じます。流石に。
    この同級生のエピソードは、この作品で一番の問題だと思っています。詳細は後述。

    >【あの子は、お金があるのに父親を援助しなかった私をずっと恨んでいるだろう。
    ここまで行を割くのでしたら、祖母が何故援助しなかったのかとか、
    父親と反目した理由(特に悪くないのに)なども説明すべきだと思います。読者的にも知りたいところのはず。

    >私の心は今まで感じた事のない色の涙を流す。
    これはよい表現。

    >夜空に一際輝く赤い星が流れ、どこかに
    >消えていった。
    ここは謎の改行ですね。
    何となく編集ミスの気がしますが。


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    内容ズバリ。
    印象的ですし、よいタイトルだと思います。

    ・文章について
    達者、とは言えません。
    時々意味が通らない箇所がありましたし、凝った表現も少ない。
    (この作品に限れば、一人称というハンデがあったとは思いますが)

    ですが私の見るところ、tokoroさんは文章力で勝負する作風ではないと思います。
    心に秘めた思いや情熱で作品を創るタイプではないかと。
    もちろん文章力はあるにこしたことがないですが、それは見た目を飾る為ではなく、本当に書きたいものを読み手に伝えきるために、磨いていくべきものだと。

    勝手な感想で失礼かもですが、私はそんな風に見受けました。

    ・内容について

    批評をまとめるのにこんなに時間がかかるとは、正直、思っていませんでした。
    というのも、一読目の印象は、

    「自責の念が強い主人公が、死後ようやく解放されるお話」

    という救済のイメージだったのです。
    特に二話目がそんな感じで進行していたため、すっかりそういう話だと考えていましたが、改めて一話目を読むと、主人公のキャラが想像よりブレまくっていて、この小説をどう受け止めていいかわからなくなりました。

    問題は主人公です。
    私が想定していた主人公の設定は、

    「自責の念が強く、すべて自分が殺したと考えている。
     悪意や殺意は一切なく、誰も(間接的にも)殺していない」

    でした。
    死後の影とかもそう保証してましたし、死んだ人も誰も恨んでなかったので、まあそうなのかなーと私も受け止めかけてたのですが、改めて一話を読み直すと、かなりビックリ。

    母の死については「それでもいい」。
    父の死については「自分以外はほかの人」。

    他にも、どう見ても悪党が言いそうな台詞があちこちに出ていて、悪意がなかったとはちょっと思えないくらいです。
    でも、死ぬ間際には「本当はみんな好きだった」。
    これらを繋げられる設定として考えられるとすれば、

    「主人公は自責の念が強く、すべて自分が殺したと考えている。
     自責のあまり偽悪的になり、すべてを憎んでいるふりをした。
     一話の告白は偽悪によるものであり、本心は老後のみ」

    なのですが、でも夫や息子、猫には偽悪じゃないんですよね。
    普通に本心で悼んでいるように見えます。
    まあここだけは本心、という捉え方もできますが、じゃあ両親の扱いは何やねん、ということになる。

    このブレの解決、私にはちょっと不可能でした。
    作者さんが解答をお持ちなら、是非知りたいところです。

    とりあえず、主人公の謎がキャラのブレだと仮定して。
    私だったらどう直すかを考えてみます。

    これは私の想像ですが、多分、作者さんの本来趣旨は

    「自責の念が強い主人公が、死後ようやく解放されるお話」

    だったと思うのです。
    ちょっと調べたところ、二話目は後付けで書かれたようで、繋がりが不自然なのはそれが原因かもしれません。
    あちこちイジれば、上記の趣旨はわりと簡単に達成できると思うのですが、私はおっさんなので、もちょいヒネった方が好きです。
    それに一話目のミステリー風味の独白は、絶対に生かしたい。あれはいいものです。
    主人公の偽悪的な箇所も残したまま、二話の救済に持っていくには……

    1.老後のシーンを改訂
    まず、老後の場面だけ、「私が殺しました」の構図から外れているのはもったいない。
    私ならこのシーンも、最後まで統一して書きます。
    その上で、二話の死後に飛んだ方が、絶対にインパクト上がるはずです。

    次に直すとすれば、ここで「本当は愛してた」を出さないこと。
    この告白は二話目に、影たちに打ち明けるまで取っておくべきです。
    その際に、一話目の告白が偽悪であったことを説明すれば、評価はひっくり返ります。
    これなら、主人公が星になることに、読者も違和感を覚えません。

    あと、一話目は独白調、つまり「今の私」が語っているわけですが、
    老後で「実は愛してた」な私が登場すると、「今の私」の今ってどこ?
    と読者が混乱します。
    キャラのブレが生まれている大元は、ここではないかと思います。

    2.主人公が偽悪になる場面を入れる
    主人公は周囲で何人も人が死に、いわれなき罪悪感に囚われるわけですが、そのきっかけになった話が、一話目のどこかにあった方がいいと思います。

    本気で死を願ったわけではない主人公が、自責の念に駆られ、「私が殺した」と信じるに至るには、何らかのきっかけがあるのでしょう。普通はそこまで自分を追い詰めませんから。

    例えば、うーん。
    「祖母が亡くなった際、遺産相続目的の殺人だと疑われた」
    「週刊誌やネットで叩かれ、人間不信になった」
    「主人公は殺していないと信じてくれた友達が一人だけいたが、それも死んだ」
    などの話が同級生の話の代わりにあれば、
    主人公が引きこもり、独りぼっちになり、偽悪的になっても納得できます。

    同級生の話については、どうみても悪意しか感じないので、擁護できません。
    軽薄な彼氏が生きてるのも不思議ですし、ここだけは本当に変えるか消すかした方がいいと思います。「実は好きだった」枠から絶対外れてます。


    他に気になった点といえば、二話目の過去(死んだ側視点)が、色々と不自然なところでしょうか。
    意図はわかりますし、ある程度ご都合主義なのは仕方ないのですが、どうしても「言わされている」感が出ている気がします。
    ここは物語の肝なので、脇役でもキャラを作り込み、納得できる口調であの台詞を伝えられていれば、ベストオブベストだったと思いました。


    ⬜️総評
    ・前半の独白調、後半の童話調の変化は楽しい。
    ・主人公のキャラのブレが本当に惜しい。
    ・伏線の張り方と情報の出し方に課題あり。

    さて、ここからは、まったくの私的感想。

    「罪悪感に人生を狂わせた者が、死後に救済される」
    というテーマは、おっさんの私にはちょっと甘ったるく、そのことについて何か意見を書こうかと思っていました。
    私の好きなドラマの名言、「生きてる間には幸せになれないのか」とか、私の好きな漫画の台詞、「罪悪感は毒にも薬にもなる」とか。

    でも、そんなことをつらつらと考えるうちに、こうして思いあぐねてること自体が、まんまと作者に乗せられているなと。そういう意味では、作品として成功しているなと、考えを改めましたw

    色々と好き放題書かせていただきましたが、読んでいて面白かったです。
  • 【04】分岐店(あさぎ)
    https://kakuyomu.jp/works/16816452219148280632

    ファンタジーというか、物語設定が中世、いや近世ですね。
    銃のある世界のようですし。
    私が昔書いていた文章のスタイルに近くて、懐かしさを覚えました。
    まあ、もっとずっと下手でしたけど。
    今は歳食って趣味が変わっていますが、要するに好みの作風ということです。

    なお、基本的に文章は達者だと認識しています。
    ゆえに指摘については他より厳しく、普段ならそこまで言わなくてもいいか、という点も指摘しています。
    重箱の隅的なコメントも多いと思われますが、文章レベルに合わせてのものだとお考え下さい。

    それでは、書いていきましょうか。


    ⬜️読みながら雑感
    二読目の感想を即時、書いていきます。

    > 濃淡の違う黒い飛沫模様が施された漆黒のドレスが美しい。
    後に本物の血飛沫であることがわかります。
    伏線そのものはよいのですが、血飛沫を美しいと書いてしまうのはちょっと違和感。
    私なら「奇妙な」「不似合いな」といった、常とは異なる感覚を匂わせたいところ。

    > 入口で紫煙を燻らせていた男が訊いた。
    よい描写ではあるのですが、主人公が店に来た最初の一文で、描写ゼロはもったいないです。
    店の雰囲気がふわっと想像できる単語や描写を、ごく短く差し挟みたいところ。
    この場合は、数行後にある「カウンター」がそれで、私でしたら、「入口に近いカウンターで」を男の描写に加えます。
    「入り口で」だと、扉付近で立っている風に思われますし、それだと中か外かも微妙なので。
    喫煙中だと、なおのこと外かもと思う読者はいそうです。禁煙はない時代にせよw

    店を間違えたのかい、との台詞から、ここが大人向け、もしくは水商売方向の店だろうことは読み取れます。
    ただ、なんの店か確定するのはかなり後になっているので、少女の知る最低限の情報は欲しいところ。

    >「道を間違えたみたい。迎えが来るまでここに居させて」
    本来は店長に言うべき台詞ですね。
    私ならマスターが奥からこれを聞きつけ、無言でうなずいた、みたいな展開にします。

    あと迎えって、どうやって連絡を?
    スマホとかないですよね?

    > 城下にひっそりと建つこの店は、いかにも少女には似合わない。
    不穏な店であるのは伝わりますが、城下は広すぎてイメージが絞れません。
    裏通り、下町、歓楽街などの地域そのものの説明が、もう一つあれば親切かと。

    > 年若い姉妹が興味津々で少女に声をかけた。
    雰囲気があって、なかなかいいキャラだと思いますが、描写が少ないのが惜しい。
    胸元が大きく開いた服、趣味の悪いドレスなど、一言で娼婦とわかる方がよい場面。

    >「お城側よ」
    この時点で主人公が王族なんだろうなあ、と読めました。

    >「「春を買うのも銭次第だもの」」
    別に間違ってはいないのですが、銭という言葉にはちょっと違和感。
    私なら素直に「金」にしておきます。なんというか、時代劇めいてくるので。

    > だが、少女はその仕事に興味を持った。
    ここは違和感。
    「少女が興味を持った」ではなく、興味を持ったことがわかるよう描写するのが、この書き方のはず。

    >「強いて言うなら純粋な恋愛ができなくなったことかしら。でもそんなことはどうでもいいのよ」
    この返答は浅いとしか思えず、残念。
    ここの答えの理想解は、「いかにも華やかでありながら、裏の闇を思わせるもの」かと。
    私なら、うーん。

    「この仕事の良いところは、男の人が可愛がってくれるところ」
    「悪いところは?」
    「男の人が可愛がってくるところよ」

    でしょうかね。暴力的な客がいるという意味で。
    セックスワーカーの方が恋愛に真摯になるという話もありますし。

    >白ワインを口に運ぶ、その所作が繊細で美しい。
    ちょっとわかりづらい表現。
    私なら「その所作が堂に入っている」にします。

    >ふと、少女は首元の違和感に気がついた。触れてみると、何も、ない。
    首のネックレスをスるのは、航難易度でしょうねー。
    それはともかく、この場の描写には男の動きの描写がなく、
    さすがに「魔法か!」と突っ込みたくなります。
    私でしたら、この前の男が割り込んだ場面で少女に接近する描写を入れておき、
    改めてここで「すでにスっておいた」とやると思います。

    >「向かいの白髪は嫌がらせが大好きときている」
    >「サディスト……」
    サディストなんですかね、これw
    まあそれは置くにせよ、この悪党面子でサディストだけちょっと場違いですかね。
    サディストは犯罪者でも悪党でもないですし。ただの性癖です。

    >音楽からダンス
    この流れは自然でいいですね。うまい展開。

    >ややあって、どこからか楽器の音がした。
    「音がした」はイマイチ。
    「楽器の調べが流れ始めた」とか。

    >宮廷音楽とは違う、一癖ある俗なメロディ。
    ちょっと楽曲をイメージしづらい。
    私の脳内アルバムは反応しませんでした。
    もうちょっと「きっとこんな曲」という表現が欲しい。

    >「トラフだよ」
    何故、このキャラだけ名前があるのか謎です。
    特に必要不可欠でもないので、人買いで通していいのでは。

    > この店に入って来た時に、壁に背を預けて佇んでいた人買いだ。
    こっちは、何故いきなり人買い呼ばわりされているのか謎です。
    どこにも説明なかったですよね?
    優男が「人買いだ」と教える展開が普通だと思います。

    >「もしかしてお嬢さん……」
    ここの踊りながら、互いに秘密をつつき合う展開、大変よいです。
    よいのですが、惜しい。
    私は「互いに秘密をつつくも、どちらも躍りでごまかす」という展開が至高だと考えます。

    分解すると、

    元:
    「もしかしてお嬢さん……」
    →「──それ以上言ったら、困るのはあなたよ」
    →トラフ、躍りで黙らせる
    →「あなた本当に、人買いなの?」
    →「さあな」

    私案:
    「もしかしてお嬢さん……」
    →少女、躍りで黙らせる
    →「──それ以上言ったら、困るのはあなたよ」
    →「あなたこそ、本当に人買いなの?」
    →トラフ、躍りで黙らせる
    →「さあな」

    >六になったばかりのある日、村は戦場になりました。
    六つ、の方がよいかと。

    >店長の話
    ここは台詞でなく、独白調でまとめて正解です。
    この形式、短く切れがある代わりに、説明にひどく向かないので。
    それもあって、私はだんだん使わなくなったんですが。

    閑話休題。
    店長の話では、王国の過去の経緯が語られており、これが店の始まりと少女の現状の説明に繋がっていくわけですが。
    隣国との戦争についての説明が、何度も出てくる割に曖昧で、状況が把握できません。
    戦争の詳細などこの物語には不要、と作者が考えられている可能性もあります。

    もちろん、私も面倒くさい戦争の説明や設定は不要だと思います。
    ですが、どういう経緯で戦争がはじまり、店長が出兵し、今の関係がどうなのか。
    説明があやふやすぎて、ほとんど読み取れませんでした。
    例を切り出します。

    >村は戦場になりました。
    隣国が侵略したのか、そうではないのか?

    >新しい王の政治手腕は素晴らしかった。
    ここでいう政治手腕が何を意味するかわかりません。
    軍事的な手腕なのか、外交か、内政の話なのか。
    戦争は終わったようですが、勝利したのか休戦したのか。

    >そんな幸せに終止符を打ったのもやはり隣国との争いでした。
    これも、どちらが侵略したのかわかりません。

    >はじめは快進撃を続けた我が王も、
    この快進撃も、侵略側か防衛側かでイメージ変わってきます。

    >長い戦の果てに戻った時、
    この時点で、戦争は終わっているのか継続中か?
    負傷による退役なら、どちらの可能性もあります。

    >「姫様が政に関わられてからは、この国は幾分まともになりつつある。
    この政治とは、内政なのか外交なのか。
    隣国との関係に関わっているのか。

    >しかし隣国との争いを続けるも止めるも、全ては依然として王の意のままです」
    この表現を見る限り、戦争は継続中に思われます。(始めるがないので)
    店の人間を見る限り、戦時の雰囲気はないので、ちょっと違和感。

    隣国との戦争、国の状態、王の意図は女王にも繋がる設定なので、
    しっかり詰めておくか、詰めてあるならこの店長の独白で開示すべきです。

    私ならこうする、な設定を一例。

    店長が六つの時、隣国がこの国に侵略。
    新しい王は軍略に長け、隣国を追い払い、戦争に勝利する。
    平和な時期、姫が生まれ、店長が謁見。
    隣国、二度目の侵略。
    はじめは快進撃を続けていた王も異常をきたし、隣国を逆に侵略。
    戦争は泥沼になる。
    店長、戦場で負傷し退役。店を始める。国内は戦争状態にないが、戦争は継続。
    若き姫が外交にて頭角をあらわし、隣国と和平交渉が成立。休戦状態になる。
    しかし隣国との争いを続けるも止めるも、全ては依然として王の意のまま。

    >「王は殺された」
    ここははっきりと、「王は私が殺した」でよいのでは。

    >「だから私は道を誤った。私のしたことは許されない。でもここへ来て、再び道が開けた気がする」
    まさに見せ場なんですが、残念。
    女王の宣言は、よくわからないものになっています。
    詳細は後述。

    >ナイフをかざす。光る刃に、次の女王の顔が映っていた。
    ここら辺の表現はさすが。

    >王女は林檎酒を飲み干すと、「迎えが来たわ」と立ち上がった。
    ここで迎えが来る理由と、少女がこの店を訪れた理由は必要ですね。
    夕方に王を殺し、夜に一人で城下を歩いている理由は、相当のものが必要です。
    敵対勢力もいるでしょうし、ちょっとお散歩でもないでしょう。
    逆にここを説明することは、少女を理解する一助にもなるかと思います。

    >「……では、あなたの身が朽ちるまで、私はここで待ちましょう」
    > その言葉に女王は振り返り、悪戯な笑顔で彼の餞はなむけに応えた。
    > よろしく頼む。くるしゅうない、と。
    この締め方は最高ですね。
    これで女王の部分の筋が通っていれば、大合格だったんですが……


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    分岐点をもじったタイトルですね。
    面白いですが、中世風の物語にはちょっとそぐわない感じがします。
    現代ものとかハードボイルドならアリなんですが。

    あと、店そのもので分岐が発生していないのも違和感の原因。
    少女が女王になったのは店かというと違いますよね。王殺しが原因ですから。

    ・文章について
    厳密な意味での文章力という意味ではまだ改善の余地があると思いますが、十分に読むに足り、雰囲気も持ち合わせています。
    ただ、前述した通り、この書き方には限界があるのも事実。
    スタイルにこだわりすぎると、舌足らずになるのが弱点なのです。
    ジャンルによっては、がらっと変える必要が出てくることと思います。
    (ギャグ調の作品の方は、すでにそうしておられるかもですが)

    この作風も好きなので、個人的には全然アリなのですが、芸の幅を広げる意味で、色々挑戦されるのもよいかもしれません。
    ひいてはそれが、あさぎさんオリジナルの文体なり作品を生み出すのではないか、などと夢想します。

    ・内容について
    野球に例えるなら、特大ファールという感じ。
    最後に本の少し、角度が狂ってしまいました。
    ホームラン級とはいわずとも、確実に長打コースだったのに、ファール線を越えてしまった。
    私も残念しきりでした。絶賛解説を脳内でまとめかけていたのにw

    狂った角度というのは、具体的には「女王について」です。

    この物語の骨子は、
    「ならず者が平和に飲める店に、謎の少女が現れる。
     少女は姫で、父である愚王を殺した次代の女王だった。
     女王はあらゆる人間が許されるこの店に安堵し、再訪を約束する」
    くらいだと思うのですが。

    この最後のくだり、最大の見せ場には、
    1.少女にとって女王とはどういう存在なのか
    2.少女は店で何を救われたのか
    の二つの説明が不可欠です。

    わくわくしながら最後の場面を読んでいた私の気持ちを、少女台詞に合わせて書いてみます。

    >「話を聞いて分かったわ。なるほど、ならず者達が従うわけね。
    > 彼らはあなたに救われている。善人と悪人にきっぱり分けられるほど、
    > 残念ながら人間は単純じゃないから」
    ここは問題ないですね。

    >「だから私は道を誤った。私のしたことは許されない。
    ???
    許されないというのは、王というか親殺しでしょうね。
    道を誤ったというのは一体?
    国を滅ぼしかねない愚王を弑したのだと解釈していたんですが。
    許されないのはともかく、王族として国を治める者としては誤っていないはずですし、
    もし誤ってたら、女王になるとか絵空事になりません?

    >でもここへ来て、再び道が開けた気がする」
    ふむふむ。どんな道が。

    >「人の道に外れても、私はそうしようと思ったの。
    わかります。
    王の下で政治に参加して国をよくしてましたもんね。

    >あなた達と違って、私はわがままな子供で、妥協なんてできない。
    え??
    どういう意味ですかね?
    わがままとは一体……? 
    妥協というのは、王に妥協って意味ですよね。

    >だって自分の人生よ」
    え!!??
    愚王に代わって国を治めるべく、クーデター起こしたんじゃないんですか?
    ここで出てくる自分の人生って、いったい?
    ちょっと詳しく説明してください! 誰も納得しませんよ!!

    ……こんな感じでした。
    終わり方がなまじかっこいいだけに、馬車に取り残されたような気分です。

    ちなみに、私が思っていたというか自分ならこうするなって解釈は、

    1.少女にとって女王とはどういう存在なのか
    国の最高権力者であり、最高の「ならず者」。
    民はおろか、国さえ殺せる、究極のダーティジョブであり、
    その嵌められた枷から、少女は逃れるすべもない。

    2.少女は店で何を救われたのか
    最高権力はつねに孤高であり、人ではいられない。
    だが、この店ではいかなる「ならず者」も客として許される。
    女王といえど、この店では少女に戻れる。
    その事実に女王は安堵し、再訪を約束する。

    でした。
    あさぎさんの設定もこうなんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょうか?
    少女の台詞が説明不足で、うまく伝わっていないだけじゃないかと思うのですが。

    この展開、個人的にはすっごいツボなのです。
    この通りに書いていただければ100点出すくらいに。
    むしろ自分で書いてしまおうかと思うくらいに。
    それだけ、あさぎさんの舞台設定と雰囲気がよかったということで、それだけに。
    返す返すも、もったいない──本気でそう思いました。

    もう言いたいことは全部書いてしまった感がありますが、書き忘れを思い出したので。

    人買いはせっかく少女と踊ったり、見せ場があったのに、絡みがあれだけというのは惜しいですね。
    そもそも何故人買い?という部分も含めて、少女とのやりとりがもう一幕あってもよかったと思います。
    あるいは、店長と古くの知り合いで、過去話に登場してその過去がわかるとか。

    ⬜️総評
    ・文章力は十分。雰囲気は抜群。後半やや息切れ感。
    ・テーマのズレで大ファール。打ち直せるとも言える。
    ・個人的には一押し。このまま育っていただきたい。

    ファールの原因として、店内の動き以外の設定が甘いのでは、と思います。
    国と隣国。王と姫。戦争の経緯。
    ここら辺を、最低限説明できる程度には決めておいた後、書き始めた方が小説に厚みが出ます。
    もし、実は考えていた!というお話であれば、説明が不十分だったということでしょう。
    文章にさりげなく情報を差し挿んでいくのは、職人的な慣れが必要です。
    この書き方だと多少難度上がるのは事実なんですが、慣れれば大丈夫のはずです。
    センスは太鼓判を押します。
    後は読者を置き去りにしないよう、気をつけてくだされば。
    どんなに飛距離が出ても、ファールでは点は入らないのですから。
  • 【05】好きの言葉は、海水に溶けて(篤永ぎゃ丸)
    https://kakuyomu.jp/works/16816927863362135034

    ガチの恋愛もの。
    ラブコメより真面目なラブストーリーという感じですね。

    梶野は真面目な恋愛ものって書いたことがありません。
    ラブコメですら、最近チャレンジしているレベルです。
    理由は単純で、こっ恥ずかしかったからです。経験も知れてるし。
    得意が少年漫画系だったので、余計に抵抗があったのかも。
    それではいかんなあと、最近になってラブコメ作品読んだりして、ようやく「恋愛前」くらいまで書けるようになりました。
    いずれガチの恋愛ものも挑戦したいと思っています。

    この作品は、恋愛前の状況の二人の物語ですが、コメディ部分もありながら、主軸はガチですね。
    そこら辺、勉強させていただくつもりで読んでいきたいと思います。

    それでは、感想開始。


    ⬜️読みながら雑感
    二読目の感想を即時、書いていきます。

    >サブタイトル
    うーん。結局、この港も物語に汲まれた感はなかったです。
    もちょいいいサブタイトルがありそう。
    私なら「人魚と手話」とかですか。

    >それら全てが見渡せる、海沿いの飲食店の中にいる男子高校生、伏見信弥ふしみしんやが、さざ波の音に思いを馳せながらそう言った。
    つなぎ方がいかにも説明口調で、不自然です。
    私なら、
    「海沿いの店でさざ波の音に思いを馳せながら、伏見信弥はそう言った」
    食事シーンがすぐにあるので、飲食店の説明は削れます。
    名前で男とわかりますし、後に卒業、同級生とあるので高校生なのも伝わるかと。

    >彼は視点を目の前のテーブルに移し、店の開いた窓から潮風をたっぷりふりかけた、食べかけの真っ白なしらす丼を手に持つ。
    上記に同じく。
    「視点を目の前のテーブルに移し」は物々しすぎて、日常の描写には不似合い。
    「潮風をたっぷりふりかけた」は、風をふりかけるという表現が違和感。
    「しらす丼を手に持つ。」は、食べているシーンを書けば想像がつくので、不要。

    >「ごくん……
    表現は自由なので間違いではないですが、この作風で擬音を台詞内に入れたり、多用するのは、作品の質を下げる方向に働くと私は思います。
    私なら、これしかないという場面以外では使用を控えます。

    >運動部で暑い汗を流す事もなく、彼女を作って熱い夏を過ごす事もなく、
    熱い夏の方はまだわかりますが、暑い汗は明らかに誤字かと。

    >この町の伝統か知らねーが、手話が必修科目とかいう妙な重点課題に振り回されて
    後の手話シーンの伏線ですが、唐突かつ不自然。
    過疎化の進んだ学校で必修になるなら、何か理由なり経緯が欲しいところ。
    例えば、聾啞者の移住を推奨している町であるなど。
    私なら、ここで美渚がふざけて手話を使ってからかい、信弥がそれに応じるなどして、
    「手話が第二言語化した田舎町」という雰囲気を作って、読者を納得させます。
    島とか離島なら、なおよかったかも。

    そう考えると、無理を感じた手話の設定も、案外に面白いかもです。

    >床に置かれた学生鞄には、卒業証書が入った筒がはみ出していて、今日は二人が高校の制服を着れる最後の日である。
    つなぎが不自然。一文が長い。
    「床に置かれた学生鞄から卒業証書の入った筒がはみ出している。今日は二人が高校の制服を着る最後の日だ。」

    >三年経ってもいらっしゃいませの一言もなし
    平井さんがしゃべらない理由は謎のままですが、こことかまさに手話を出すシーンですね。
    先述の設定なら、平井さんが移住した聾唖者の一人とかにも出来そう。

    >信弥は不服そうに厨房に消えていく平川を目で追うが、
    読点がないと、「不服そう」なのが信弥か平井さんか読み違えそう。

    >信弥の学生カバンを奪い取るとバタバタと店の外に飛び出し、嫌がらせを込めて開いていた店の引き戸を閉めた。
    嫌がらせは引き戸ではなく、カバンでは。
    ここは扉の描写は不要に思います。読者の意識をカバンに向ける為にも。

    >慌てて信弥が追いかけに向かい、
    向かい、は不要。
    不必要な言葉が積み重なると、文章が冗長になり、読み飽きるのが早くなります。

    >店の入り口であるガラス張りの引き戸
    ここも説明過多。
    引き戸が店の入り口なのは、書かずとも伝わります。

    >「あははは! 返しぃ欲しなら、こぅまで来ぅや!」
    言い忘れていましたが、美渚の方言はとてもいいですね。
    篤永さんの出身地なのか、取材されたのかわかりませんが、大変自然で魅力的です。
    キャラクターの生命感を支える秀逸な表現だと思います。

    >飲食店前に止めた自転車を慌てて動かそうとする信弥の先で、
    「店の前に止めた自転車に慌ててまたがる信弥の先で、」
    動きをしっかり書いた方が見栄えがします。

    >彼女を横切ろうとした白い軽トラックが、ゆっくり急停車した。
    「横切ろうとした」はちょっと不自然に感じますかね。
    「ゆっくり急停止」は矛盾しているでしょうw

    >見た目は漁業をしている男そのものであり、
    「見た目は~そのもの」と書くと、実は違うと続くかなと思ってしまいますね。

    >豪はギロッと信弥を見つめた後、ジロッと美渚を見た。
    ここの擬音は対比になっていて、いい表現。

    >彼女の背には沈み行く太陽、次第に赤から紺へ色を変えていく海。
    ここの体言止めは不自然です。
    体言止めには描写の印象を強める、漫画なら集中線のような効果があります。
    ここでインパクトを出したいならわかりますが、いたって普通の場面なので。

    >美渚の顔を見つめた後、車内の灰皿に置いていたタバコを口に咥えると、そのまま豪はアクセルを踏み、車は走り出した。
    一文が長すぎです。
    私なら
    「豪は美渚の顔を見つめた後、灰皿のタバコを口に咥えた。そのままアクセルを踏み、二人を後にする。」

    >「元々そやもん
    ここの強調点の意味、伏線かと思いましたが何もありませんでしたね。
    誰にでも寡黙、という意味なら「いつもそやもん」の方が適切では。

    >「さーて、ここまで来たなぁ海行こ、信弥!」
    さりげなく。男女間の話題をスルーしてるところが乙女心?
    恋愛に積極的な女性ならここから話を持っていきそうですが、これはキャラ表現としてアリかと。

    >「はーッ! 潮風気持ちええね、信弥」
    >「そうだな……毎日見てるから、今更感あるけど」
    告白前の緊張が感じられなくもない。アリ。

    >キビキビ動く美渚を横目で見ながら、
    砂浜で「キビキビ動く」とは?
    いまいち情景が思い浮かばないので、具体的な動きを書いた方が。

    >美渚ババ臭ェ謡
    ここは美渚とババの間に読点入れましょう!w

    >だから…転校初日
    ここだけ三点リーダーが一つです。

    >思(おもっ)とた」
    ここはルビなしで、「思っとた」でいいのでは。

    >ウチに気ィあるんかなって思おもっとた」
    勝負をしかける気か、美渚ィ!?

    >ないない。美渚みたいな活発系は俺のタイプじゃねぇよ。
    轟沈。

    >選り好みしてぇから、彼女今日まで出来ひんやん
    過疎化した町に、選り好みできるほど生徒いるもんですかね?

    >でもここって今、漁やってなくね?
    さっきの美渚父とか、どう見ても漁やってそうですが。
    こっちも伏線かと思いきや、未回収でした。

    >船もねぇし、港もないしな
    船はともかく、港がないは奇妙に思います。
    漁港が寂れたにせよ、港が消えてなくなるってことはないので。
    埋め立てでもしない限りは。

    >「何で人魚姫って声、魔女に取られたんやろね」
    読点が不自然。
    「何で人魚姫って、声、魔女に取られたんやろね」

    >突如美渚は人魚姫の話題を出した。
    「突如、美渚は」

    >意図が読めない信弥だが、大人しく話に乗っかった。
    私なら削る一文です。

    >「水中で声が一番いらんのんは、分かるんよ……」
    私はわかりません。
    水中でしゃべれないだろうからとか?
    でも水中で魔女と会話して取引してたような?

    >潮の香りを肺に満たした彼女は、
    ロマンティックから遠すぎて、ギャグのようです。
    私なら「胸いっぱいに潮風を吸い込み」とかにします。

    >「ハァアァ 海ィが波打ちゃぁ、胸もぅ打つぅ〜 浪ろうに抱かにゃああぁ〜踊れぇや、ハイソー ハイソー!」
    歌詞をしっかり書くのは、雰囲気出て効果的だと思います。
    「」を外しても、特別感が出てよかったかもしれません。

     ハァアァ 海ィが波打ちゃぁ、胸もぅ打つぅ〜 
     浪ろうに抱かにゃああぁ〜踊れぇや、
     ハイソー ハイソー!

    こんな感じ。

    >しゃくり、こぶし、ビブラート。カラオケ採点機能で目にするテクニック全てを、彼女は一瞬で表現した。
    でも、カラオケ採点的に説明されると興ざめです。

    >信弥はどっしりと響く哀愁漂うその謡に耳を傾ける。
    これだけで十分だと思います。

    >「あっはは、褒めんのぅ下手か! こぅな声張り上げぇ歌姫おったら興醒めや」
    すごくいい台詞。表情まで浮かんできます。

    >鼻濁音が超綺麗だし、マジで美渚なら表現力豊かな歌手になれるって。
    音楽系だし、鼻濁音はいいとして、その後は余計かなあ。
    「マジで美渚ならいい歌手になれるって。」でよいかと。

    >「……そら、遠慮するわ。ウチはここで静かに暮らすん、性に合ってんや」
    ここはもうちょっと揺れて欲しいところ。
    美渚に何かよほど、町を出られない理由があるとかなら別ですが。
    私なら「ほんとに?」「ああ」「……やっぱ無理」みたいな展開にしそう。

    >無理強いは良くないと信弥も分かっているのか、それ以上誘う事をしなかった。次第に辺りが暗くなり、海から赤が殆ど無くなっていく。
    ここは改行必須。

    >「おい美渚、もう暗くなるし帰ろうぜ。このど田舎海辺には、街灯全然ねぇんだからよ」
    ど田舎って表現に、多少悪意を感じてしまうので、私なら使いませんかね。
    都会から来て、また旅立つ人が使うと余計にそう感じられますし。
    ずっと住んでる人間が自虐で言うならわかるんですが。

    >女子高生が夜道に出歩くのが危ないという思考が出ない程、危険の無い地域
    その発想は一番危険だと思いますが、まあ。

    >そんな彼の背にいる美渚は、
    背ってなんぞ、と思いましたが、「うしろ」とも読むんですね。
    多分こっちなんだと思いますが、ルビは振るべきかと。

    >停めていた自転車のストッパーを外し、サドルに腰を落とした。
    ここら辺も説明過多。

    >その声に美渚は振り返る。彼女は離れていく信弥を見て、声を絞り出す。今度は——心から。
    間違ってはいないのですが、彼女という単語は主体から距離を離す言葉だと思います。
    ここは主語を抜いて、

    「その声に美渚は振り返る。
     離れていく信弥を見て、声を絞り出す。
     今度は——心から。」

    の方が、カメラが寄る感じが出て、よりよい表現になるかと。

    >それと同時だった。太陽の明るさを失った白い波が、美渚の足を捕まえると、何かと共にスゥと潮が引いていく。
    ここは説明が舌足らずで、全然伝わってきません。
    あえて推理するなら「波が告白の勇気を奪った」というところでしょうか。
    ずっと波打ち際にいたのだし、特別な波とかでない限り、理由としては謎ですが。

    もしそうなら、この後の説明でそこら辺をフォローすべきでしょう。

    >しかし太陽が沈み、辺りは暗い。夕刻はついさっき終わりを告げた。もう、色と時間は戻せない。
    時刻や明るさと告白の難度の関連性を測りかねます。
    例えば、明るいうちに何度か告白しようとするも失敗している描写があれば、こういった感覚にも共感できるんですが。
    個人的には、暗くなって、お互いの顔がわからないくらいの方が、告白しやすいまである気がします。

    >再び心から言葉出そうと口を開けた。
    「を」が抜けています。

    >しかし、心地よいさざ波の音が勝っていて、
    心地よいくらいの波音が声に勝つのは、矛盾を感じます。

    >美渚はゆっくり口を閉じて、姿が見えなくなった信弥の方を向き、ゆっくり右手を顎に添えた。
    ゆっくりが被っています。

    >手話。
    内容はわかりませんが、まあ「好き」とかその辺りなのだろうなとは。
    これで「クソッタレ」だったらすごいオチですが。

    ううーん、手話については不発としか言いようがありませんね。
    やりようによっては物語のコアになった気がするんですが。
    考察は後述としましょうか。


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて

    好きな言葉は海水に溶けて。
    海水が甘い雰囲気をブチ壊していると思います。
    この感想書くのに使ってるファイル名、「海水」なんですが、ロマン感じます?
    「好きな言葉は海に溶けて」の方が絶対よいかと。

    ・文章について
    AIが書いたのかな?と思うほど、即物的な文章です。
    状況説明が過剰なため、特に前半、文が重く、くどいです。
    過剰なのは、話の流れを追えば読者が想像してくれる部分です。
    やたらと説明口調だったり、回りくどいのが特徴ですね。
    当然、読者には読みづらく、進行が遅くなるので、喜ばれません。

    これを防ぐには、体で覚える他にありません、
    読書量を増やし、参考にしながら書きまくるしか。
    どのジャンルでも、プロの作家はこんな風に書きませんから、何でも読めばいいと思います。

    ただ、どの描写が必要または不要かという判断に、絶対的な正解はありません。
    私の書いた例文も、あくまで私的なものです。
    場面やテーマでも変わりますし、個性やテーマでも変わるでしょう。
    ただ、今回指摘した部分が「いただけない」のは間違いありません。
    要練習だと思います。

    ・内容について
    卒業に伴う別れと失恋、海辺の町、人魚、手話。
    特に人魚と手話のモチーフは、悪くないチョイスだと思います。
    ですが、これが物語の中で、致命的に嚙み合ってません。
    ただ並べてみた、順番に出してみただけ、という印象です。

    告白場面での夕暮れの海の移ろいも、場所選びは間違っていませんが、テーマとして物語の中で繋がっていないので、「いいロケーション」止まりなのです。

    私なら、ここは「遅すぎた告白」のメタファーとして使い、そのために前段で仕込みを入れます。
    例えば、「在学中、幾度となく告白しようとしたが、果たせなかった」ことを、二人の会話に滲ませるとか。
    人魚姫の話題の際、「私には声がある。人魚姫にはならない」的な独り言をつぶやくとか。

    手話については、話題としても唐突かつ急でしたが、最後の使用も信弥に伝わりようのないもので、
    自己満足として使われてしまうため、「結局なんだったのか」と感じてしまいます。
    まだしも「手話の告白が暗さで伝わらず、去り行く信弥の背中に届けと叫んだ」とかの方が、最後の勇気と一縷の望みを、読者に伝えることができるのではないでしょうか。

    以下、私ならこう書くを、あらすじ的にざっくりと。

    「海辺の店で卒業後最後の会話を楽しむ二人。
     話題は人魚姫に移り、美渚は「自分なら声だけは魔女に渡さない」という。
     信弥は美渚の美声故と考えたが、美渚は最後の告白を人魚に重ねていたのだった。
     だが、いざ告白となれば、緊張して声なんて出なくなるのではないか。
     信弥はそう言い、手話での告白を思いつく。(ここで手話の意味の説明)
     学校の授業で覚えた「好き」の手話を美渚に向ける信弥。美渚は真っ赤になりごまかす。

     場面は夕闇が迫る砂浜に移り、美渚は勇気を振り絞り、信弥に告白を試みる。
     その時、一際高い波がくるぶしを叩き、少女のなけなしの勇気を攫ってしまう。
     立ち去ろうとする信弥に、とっさに美渚は手話をもちいて、告白する。
     だが、すでに日は暮れ、信弥の目に手話は届かなかった。
     別れの挨拶を告げ、立ち去る信弥。
     波間に崩れ落ちた美渚は、海の泡になった人魚姫に共感する。」


    これなら、人魚と声と手話、全部つなげて話が成立すると思います。
    ……これでもまだイマイチですね。
    本当に書くなら、もうちょっと練り込んでおきたいところです。


    ⬜️総評

    ・文章は説明過多。要練習。
    ・モチーフは悪くないが、生かしきれていない。
    ・方言女子のヒロインは魅力的。

    書き損ねましたが、美渚のキャラは特筆すべき魅力がありました。
    初心者によくある、ひたすら美辞麗句を重ねまくる美少女アピールをせず、描写は最低限に、方言と台詞でキャラを表現できています。
    まさにこれ。これを状況説明でできれば、大丈夫のはずです。

    篤永さんの執筆歴がどの程度かわからないので、もし違ったら謝りますが、おそらくそう長くはない気がします。

    書き手としての伸びしろは、十分あるのではないでしょうか。
    文章力なんて、書きまくれば絶対伸びるものですから。
    手厳しい感想でしたが、これに折れることなく、バネとして成長されることを願っています。


  • →【06】~【10】
    https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139558641572246
コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する