• 現代ドラマ
  • ホラー

【先着30名】じっくり読みこんだ本音感想を書く企画【06】〜【10】

質問・返信は以下のノートにお願いします。
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330647889422158

参加作品:
【06】走れメロス!じゃなくて、坂口安吾!/(白狐姫と白狐隊)
https://kakuyomu.jp/works/16816452220264728988
【07】第1話 家康よ、お前もか!本能寺の変における家康の不可解な行動を徹底検証!(白狐姫と白狐隊)
https://kakuyomu.jp/works/16816452220369554184
【08】透明人間になってみた(竹中凡太)
https://kakuyomu.jp/works/16816927861212507609
【09】柊御前(奈々野圭)
https://kakuyomu.jp/works/16816700428054404283
【10】雪月ノ屑(白木犀)
https://kakuyomu.jp/works/16817139557565443762

【01】〜【05】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139558448303881
【11】~【15】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139558827416647
【16】~【20】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139559021075559
【21】~【25】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330647559848000
【26】~【30】+【31】
https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817330647793336857

⬜️企画説明。

参加条件:
・先着30名。一日一感想で九月内に終了(予定)です。
・一万字以内の短編。短い方が熟読できます。
・ジャンル不問。作者の好みの傾向はプロフ参考。
 よく知らないジャンルは、前置きの上で、わからないなりの感想を書きます。
・辛口でも泣かない。
 反論は近況ノートにて受け付けます。誤解があれば訂正します。
 それでも納得できない場合は「所詮一個人の感想」と割り切ってください。
・梶野の趣味や傾向が気になる方は、プロフや作品をご確認ください。
 いわゆるラノベより、やや一般小説よりかと思います。

ご注意:
・正直な感想を書くので、辛口の場合もあります。
 梶野の近況ノートを遡れば、どういう感じかある程度わかるかと思います。
・可能な限り、「自分ならこう書く」を提案するスタイルです。
 作品の改善を求めるというわけではなく、単なる作者の練習です。
 もちろん、提案通りに直していただいても構いません。
・テンプレ的な異世界転生やなろう系は、ほとんど読んでいません。
 それでも読んでもらいたいという野心作なら歓迎です。覚悟してください。
・星やレビューはお約束しません。内容次第です。
・その他、質問などがあれば、以下の近況ノートまで。
・初の企画で何かと不手際がありそうですが、よろしくお願いします。

6件のコメント

  • 【06】走れメロス!じゃなくて、坂口安吾!/(白狐姫と白狐隊)
    https://kakuyomu.jp/works/16816452220264728988

    名作パロディのギャグ……ううーん。
    この手のジャンルは、ハードル以上に高いですけど、大丈夫ですかね?

    まず読み手に相応の知識が求められます。興味ない人はたいていスルーするでしょうから。
    知識のある人はネタ元を知ってるわけですから、ギャグの予想はつきやすい。
    それを超える方向で物語を走らせ、期待以上の面白さを保証しなければならない。
    相当のセンスがないと、まず受けないジャンルだと私は思うんですが。

    ちなみに私は文学系の知識、ほぼゼロです。
    走れメロスや太宰くらいは知ってますが、坂口安吾、誰それ?レベル。
    マニアックなネタが出てもわからないかと思います。

    流石に不味いと思って、坂口安吾のWikiは流し読みしましたが、ううーん。
    そんな面白い人物かなこれ。アレンジも出来ないし、私だとネタ時点で見送りそうな。
    果たしてこれで、面白く書けるのか。

    ともあれ、読ませていただきますか。
    ド素人の私でも、笑わせてくれることを期待して。

    ⬜️読みながら雑感
    今回は割愛します。
    パロディに突っ込んでも仕方がないので。

    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    ドストレートなタイトルですが、いいと思います。
    読む前に内容が知れるので、肩透かしも食わないでしょうし。

    ・文章について
    パロディなのでよくわかりませんが、下手ではないと思います。

    ・内容について
    ギャグの評価はエロに近く、100か0、笑えるか笑えないか、だと思います。
    残念な結果をお伝えすることになりますが、私の評価は「笑えない」でした。
    読み終えた第一声は「はぁ…」」で、次に考えたことは「ネタ知ってる人なら笑えんのかなこれ。知らんけど」でした(梶野は大阪人)。

    まあこれもエロと同じで、ギャグは趣味嗜好で評価がまるで変わるものです。
    誰かには大受けなのに、他にはしらけムードとかありふれた光景ですから、気にしすぎる必要はないと思います。
    いっても私は門外漢で、ネタ元もわからない素人です。文豪クラスタに読ませれば大爆笑なのかもしれません。ただ、この企画は私の本音感想なので、嘘が言えないというだけです。
    あと、出身地の故にお笑いの採点が辛いのも不幸だったと思います。

    ギャグものはむしろ不得手なので、「私ならこうする」も今回は書けません。
    強いて言うなら「私ならこの題材は選ばない」でしょうかね。メロスはともかく。
    オチがああなったのも、坂口安吾にラストを飾るだけの華がなかったからだと、素人ながら思うのですが。

    ⬜️総評
    ・素人を引き込むほどの面白さはない。
    ・ひねれば面白いという発想がまず安易。
    ・読んだ時間返して。

    続けて参加されているんですね。
    今日中にこちらも感想かけそうです。
  • 【07】第1話 家康よ、お前もか!本能寺の変における家康の不可解な行動を徹底検証!(白狐姫と白狐隊)
    https://kakuyomu.jp/works/16816452220369554184

    次は歴史検証コラムですか。
    ジャンル不問の企画だったとはいえ、ここまで多様になるとは思いませんでした。

    梶野は歴史の知識はわずかばかりで、歴史クラスタの友人にいつも呆れられています。
    古武術は大好きで資料漁っていますが、武将とか歴史とか興味が薄くて。
    大河ドラマ見てる人の方が、下手すれば物知りではないかってレベルです。

    時代小説も、バイブルである隆 慶一郎(これだけは読み込んでる)だけで、他はとくに。
    そういや「影武者 徳川家康」で神君伊賀越えあったなー。でも内容忘れたなー。くらい。

    今回、何も調べず、あくまで素人目線で読もうかと思っていたのですが、どうにも納得しかねる部分が目につき、結局そこそこネットで調べたりした結果、更新が今日になってしまいました。
    まあ勉強になりましたし、こういうのも刺激ということで。

    今回、梶野は、「ろくに歴史知らないけど、一応他の検証と見比べてみたよ」的な感想です。
    伊賀越え検証サイトはWiki他、調べたらゴロゴロ出て来たので、両論併記してるものを二つほど流し読みした上で書いています。

    関西在住ですので、多少は距離感わかります。
    素人なので「この説のが正しい」とか言うつもりはありませんが、腑に落ちなければバンバン突っ込む予定です。
    それでは、感想スタート。


    ⬜️読みながら雑感

    >絹の御かたびら…くれない色のすずし…
    >これは夏用の絹の単衣の着物ですが、大変美しく高価なものです…
    >随行家臣ひとりあたり2着を
    コラムの文章は小説以上にフリーダムなので、問題という話ではないですが。
    三点リーダ一つを用いた、この箇所の表現はちょっと違和感。
    ダッシュ(──)かカッコの方が読みやすいかと。
    コラムは、読みやすさが命ですし。

    >天正5年(1577年)から、文禄3年(1594年)まで書いていた日記で、
    西暦併記は素人にはありがたいですね。

    >さて、この家忠日記の天正10年、本能寺の変の近辺の内容を
    なので、こちらも西暦が欲しい。
    この後、日記を追って、日付ごとの動きが書かれるわけですが、
    まず本能寺の変があった日にちをここで書いた方が飲み込みやすいです。
    素人は日にちまで知りません。

    >常識的に考えれば、信長に挨拶してから出かけても良さそうなものです。
    >しかし、なぜか家康は信長と入れ違う様に早朝出発します。
    素人考えですが、非常識にはぜんぜん感じません。
    京都から堺まで船旅だったようですから、出発予定が限られていたのでは?
    それに数日前まで歓待を受けていた相手です。
    出発時刻を変更してまで、挨拶をしにいく必要性は疑問です。
    何より、家康の予定では、堺訪問の後、京都に向かっています。
    信長が京都にいるなら、挨拶はその後、愛知に帰る時だと思ってたんじゃないでしょうか。

    >天正10年5月は旧暦の小の月にあたるので
    こういう前提知識の説明はよいです。
    なるほど、なるほど。

    >京都から船で淀川を下った家康一行は、翌6月1日に堺に到着します。
    ??
    早朝に出て、船で京都から堺まで、淀川を下ったんですよね?
    どう考えても、丸一日かかるとは思えませんが。
    どっかに寄り道でもしたんでしょうか?

    >堺からまっすぐ生駒山中の古道へ向かっています。
    >これは京都へ行く道ではありません…滋賀方面へと進む道です。
    飯盛山までですよね。
    地図を見る限り、京都にも近いので、この時点で否定は無理筋でしょう。
    本能寺の変の報せを、京都から飯盛山まで持ってきたという話も伊賀越えにはありますから、
    少なくとも「京都へいく道ではない」はありえません。

    >しかも山間を抜ける難所です。
    難所の定義にも依りますが、飯盛山は標高300mくらいです。
    現代の山登りの記録見ても「のんびり歩ける」みたいな評価で、難所とは言いづらいかと。
    まあ、昔は山道が整理されていなかったのかもですが、山には飯盛城がありましたし、昔の人の健脚ですからねー。

    >堺から生駒山中の古道を通り、滋賀の多羅尾を経て三重の白子まで、
    >およそ190キロの距離を実質2日弱で移動するには、
    Googlemapで調べてみましたが、そのルートで155kmですね。
    まあルートによって多少変わると思いますが、190は盛りすぎでしょう。

    >当り前ですが、徒歩なんかで行けるスピードではありません。
    「スピード」ではなく「距離」かと。

    ちなみに、190kmを二日で走破がありえないという話は、私は懐疑的です。
    陸上自衛隊は演習で、4~50kmの山道を、一晩で踏破します。
    10kg以上のフル装備を背負った上でです。
    まあこれを二日休みなしは死ねますが、昔の日本人と現代人の体力は桁が違います。

    伝説級の飛脚は、堺から江戸まで500kmを三日で走破した記録があります。
    明治時代の農家の女性が、米俵六つを普通に背負った写真も残っています。
    普通の農家が俵二つ担いで山越えしたり、一日平均40km歩いてたとか、他で読んだこともあります。
    そもそも現代人とは歩き方や体の使い方が違ったというのは有名な話です。

    ここらの話は江戸や明治で、伊賀越えは戦国時代。
    時代が進むほど人間は弱くなるので、当時の日本人はさらに強かったはずです。
    ましてや伊賀越えする34名は、名だたる武将が揃い、命がけなのです。

    仮に190kmだったとしても、私は一概に不可能だとは思えません。
    まあ記録を見る限り、馬は使ってたようですけどw

    >家康一行は30名前後居た様なので、
    >白子からの船も事前準備していたと思われます。
    この推理も根拠に乏しい感じ。
    遠距離の船ならともかく、内湾の渡し船ですから。
    最悪、家康さえ届ければ目的は果たされますし、金は幾らでも積んだでしょう。
    事前準備がなければ不可能だったとは思えません。

    >通説では京都から茶屋四郎次郎が変を知らせたとされていますが、
    >本能寺の変がまさに起きた、6月2日の早朝に家康は堺を出発しているのですから、
    >電話もない当時、これは事実とは思えませんね。
    家康は堺から京都に向かい、茶屋四郎次郎は京都から堺へ、報せに行った。
    主な街道を使うなら、特段おかしな話でもないと思います。
    伝えに行ったのが一人だけというのも考えづらいですし。

    家康が身分を隠してたり、あえて不便な道を使っていたとかなら話がわかるんですが、
    そこら辺の検証はどうなんでしょう?

    >どんなに急いでもその日の午後遅くでないと、距離的に使者の到着は不可能です。
    家康が京都に向かっていた為、二倍の早さで使者に会えたのでは?
    調べたところ、京都の飯盛山で合った説、大阪の枚方説、堺で知った説があるようです。
    堺以外で知った、と考える方が自然な気がします。

    >家康を本能寺で殺すなら、この移動を阻止するはずだからです。、
    そもそも殺す気なら、安土で殺してるでしょう。
    歓待してるんですから。

    >何故家康は西国に出陣する準備を命じているのでしょう?
    この段、まったく内容に関係ないので不要だと思います。

    >あと、これほど急いで帰ってきたにも関わらず、岡崎に着いた家康は、
    >それから2週間も行動を起こさず、ぐずぐずしています。
    >当時の家康の行動記録を一級資料の家忠日記で見る限り、
    >その行動日程は不可解極まりないと言えますよね。
    >だって、本能寺の変が起きたまさにその時、
    >脱兎の如く堺から滋賀方面へ全力疾走しているのですよ?

    二週間行動を起こさなかった理由は謎ですが、何が不可解なのかわかりません。
    伊賀越えをして逃げたのは、明智光秀の追手を避けたからですし。
    一万ウン越えの明智軍を逆襲するにせよ、軍勢を調える時間は必要に思いますが。

    普通ならこうしたはず、という見立てこそ、コラムで知りたいところです。

    >ここからは私の想像ですが、おそらく家康は光秀から本能寺の変の決行を
    >事前に知らされており、それが成功した暁には、光秀に協力する旨の
    >話をしていたのではないでしょうか?

    ???
    なら、何故伊賀越えをする必要が?
    明智を警戒したから、山を越えて愛知まで逃げたんですよね?
    明智と協力してるなら、普通に京都に入ればいいじゃないですか。

    家康が切腹しかけたのを家来に止められたって話も残っていますが、それは?

    >これも胡散臭い話です。なぜなら彼の家系を家康は大変重んじ、
    >歴代徳川家もそれを継承しているからです。
    調べたところ、穴山は甲斐武田の家系なので、それが理由では?
    穴山武田家は1602年に断絶してるので、歴代徳川家はないと思います。

    >そもそもこんな時に少人数で単独行動するなんて自殺行為ですよね…。
    生きるか死ぬかの強行突破に付き合ってられない、
    という判断は、忠義にもとりますが、人間としてはわからんでもないです。
    結果、天罰が下ったようなもんですが。

    >彼は家康にとって何か重要な働きをしたのではないでしょうか?
    いやあ……
    それは牽強付会でしょう。根拠が薄すぎます。

    >【家康よ!お前もか!】
    えっ?
    仮にコラムの内容を全肯定しても、家康何もしてませんよね?

    >※尚、以上の考察を元に本能寺の変の真実を考察したのが、
    >下記の作品になります。
    これがまだ小説なら、
    「歴史考証はザルだが小説は面白い(かもしれない)」とか、
    擁護できる可能性もあったんですが……


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて。
    「家康よ、お前もか!」もそうですが、
    「徹底検証」!は完全に虚偽広告ですね。看板に偽りありです。

    ・文章について
    可もなく不可もなく、というところです。
    コラムとして面白みはないですが、問題は感じませんでした。

    ・内容について
    私は歴史ド素人なので、当初は「よくわからんけど、興味深いお話ですね」ぐらいで感想まとめようと思っていたんですよ。いや、ほんと。

    ところが、素人でも納得のいかない考証や推察がゴロゴロ出てきて、
    疑問ばかり書くのもアレなので、よく知りもしない人物や歴史をググりまくって、
    先達のコラムや考証を見た上で、疑問点を書き出したわけです。

    素人がやれるこの程度のことをせず、声高に一級とのたまう「家忠日記」一本槍で、我田引水のロジックを組み立てるのは、普通にどうかと思います。

    持論の正当性を述べるなら、まず様々な文献にあたり、
    その中で「家忠日記」を根拠にする理由を説明した上で、あらゆる諸説と比較しながら、解説を述べていくのが、徹底検証というものでしょう。今回見たサイトは、皆、そうしてましたよ。
    私が調べた程度だって、徹底とか口が裂けても言えません。

    これがまだ「本能寺の変における家康の謎」について、解説してるならまだいいんです。
    そうですらない。「ちょっと怪しくね?」くらいが結論です。
    作品の体を成していない、というのが素直な感想です。

    辛口二連続とか、私も避けたかったんですが、これでもオブラートに包んでいると思ってください。


    ⬜️総評
    ・看板に偽りあり。
    ・読んだ時間返して。

    あらかじめ言っておきますが、私は歴史素人なので、「ここがこう」とか「その説はウンタラ」とかの反論はご容赦願います。
    そういった素人レベルの疑問を、あらかじめ潰しておくのが、徹底検証したコラムというものですから。

    まともなコラムだったら、時間かからないと思っていたんですよ。
    それがまあ……いやもういいですけど。
  • 【08】透明人間になってみた(竹中凡太)
    https://kakuyomu.jp/works/16816927861212507609

    SFものですが、ジャンルはコメディ寄り。
    主要キャラ二人による、シリーズもののようです。
    ドラえもんとのび太的な作品ですね。
    得意……ではないですが、私も最近、ショートショートばかり書いてるので、その方向でのアドバイスはしやすそう。

    それでは、感想行きます。


    ⬜️読みながら雑感

    二読後の感想を、読みながら書きます。

    >ああ、彼がそんな不遜なことを考えるなどと、いったい誰が想像しただろう。
    プロローグ的な前置きがこの一文から始まりますが、
    全体のボリュームに対して長すぎです。
    物語の伏線的な効果も乏しく、削ってもいいくらいです。
    もし、このプロローグを私が書くなら、これくらいにします。

    >ああ、彼がそんな不遜なことを考えるなどと、いったい誰が想像しただろう。彼は決して人よりも優秀な人間だというわけではなかったが、人並み以上の道徳心は持っていたし、世の中の常識に照らして十分に許容される範囲を超えて、周囲の人を不快にさせるような行動をとったことももちろんなかった。

    >だが、そんな人間でも人生に一度くらいは過ちを犯してしまうことはある。たった一度の過ちすら起こさない人間のほうが稀なのだ。そのたった一度を、彼は、今まさに、犯そうとしていた。そう、ほんとうに魔が差しただけだったのだ。

                  ↓ ↓ ↓

    「ああ、彼がそんな不遜を考えるなどと、誰が想像しただろう。
     彼は決して優秀ではなかったが、人並みの道徳心は持っていた。
     周囲の人を傷つけることなど、なかったはずだ。
     だが、どんな人間でも人生に一度くらいは過ちを犯す。
     そのたった一度が今だった。まさに魔が差したのだ」

    >暑いからか開けっ放しのドアを見れば不在でないことはすぐにわかったが、モノにはお約束ってものがある。そう声をかけながら、開けっ放しのアパートの玄関ドアの内側を軽く2回ノックする。
    私なら、
    「暑いからか開けっ放しのドアを見れば、居るのはすぐにわかる。とはいえマナーは大事だ。オレはドアの内側を軽く2回ノックした。

    ・「開けっ放し」が二度出るので削除。
    ・展開から友人宅を訪ねたとわかるので、玄関も不要。
    ・一文が長いので、適切に短く。

    >「サダか?ちょうどいいところに来た。入れよ。」
    まあこれは個性の範疇かもですが、読点(。)は「」内だと省くケースが小説には多いですね。

    >部屋の奥からそう声が聞こえた。気の置けない間柄だ。勝手知ったる我が家のようにオレは部屋に上がり込んだ。
    文章はよいですが、この後、改行した方が切れが出ます。

    >知り合った当初から変わった奴だったが、部屋の中には変な機械や、薬品が入った瓶が無造作に置かれていておおよそ一般的な大学生の部屋には見えなかった。周りには、変人扱いして毛嫌いする奴も少なくなかったが、オレにとってその一風変わった言動は妙に心惹かれるものがあり、今日こんにちまで腐れ縁が続いている。

    ゴチャゴチャした悪文。
    言いたいことは伝わりますが、読んでいてもやもやします。
    私が直すとすれば、

    「部屋の中には変な機械や、薬品が入った瓶が無造作に置かれている。
     知り合った当初から変わった奴で、毛嫌いする者も少なくないが、オレはその一風変わった言動に惹かれ、今日まで腐れ縁が続いている。」

    >ジョンは部屋の奥のデスクに向かって座っていた。オレはその脇のベッドの端に腰を下ろすとジョンに声をかけた。
    ジョンの描写はよいとして。
    主人公の座る描写やベッドの配置は物語に関係ない情報、つまり削れるものです。

    >さらっとした口調でジョンはそう言った。
    「さらっと」という表現から、どんな口調か想像がつきづらいです。
    「さらりと言った」とかならわかるんですが。

    >オレも何かの意図があって聞いたわけじゃない。話の流れからしてなんとなくそう聞いただけだ。
    特に意味がないので削れる文章。
    書くにせよ「特に意図もなく、オレは訊いた」で十分。

    >「フム。いい質問だ。大学生になったことだし、発明を何か一つ形にしてやろうと思ってな。研究中さ。」
    「大学生になったから発明を形にする」という感覚に、ちょっと違和感。
    まあ高校生が発明してる世界ですし、SFだし、いいっちゃいいのかな……

    >ちょっとからかってやろうという思惑もあってそう言ったのだが、ジョンはオレのそんな誘いには全く乗ってこなかった。
    ここも重いです。

    「ちょっとからかってやるつもりで言ったが、ジョンの返事は大真面目だった」

    くらいでどうでしょう。

    > そう言って、デスクの脇の棚のほうへ視線をちらっと向けた。
    特に文章を凝るのでなければ、視線という単語は使わない方がいいです。
    文章が重く、物々しくなるだけです。ここは「見た」で十分です。

    >「そうだ。動物実験の段階では成功している。完全な透明状態になるので、そこにいることを認識するのは完全に不可能だった。人体に対しても毒になるようなことがないってことまではわかってる。」

    認識には五感すべて含まれるので、ここの表現には不適切。
    「視認することは完全に不可能」がよいかと。

    説明がご都合感ありますが、まあショートだし。

    > あまりにもさらっとジョンが言うので、オレは半信半疑でそう訊いた。いや、訂正しよう。9割9分がたでまかせだと思いながらそう訊いた。
    ここの繰り返し、同じ単語の使用は、強調の意味がギャグ的に作用しているのでアリです。
    「いや、訂正しよう。」は私なら抜くかもですが。
    その方がギャグっぽいですし。

    >ジョンはそう答えながら『試薬13号』と書かれた瓶をデスクへと持ってくると、デスクの引き出しからピペットと小さなバットを取り出した。バットの上に瓶を置き、小さなピペットで薬品を少しだけ吸い取る。そのピペットをバットの上に置くと、今度はデスクの脇においてあったケージを取り出した。中にはちっちゃなハムスターが一匹入っていた。

    説明がひたすら並び、もっさりしています。
    以下、部分解説しながら直します。

    >ジョンはそう答えながら『試薬13号』と書かれた瓶をデスクへと持ってくると、
    瓶である説明はすでにしてあるので、『試薬13号』で十分。
    デスクも後で出るので不要。

    >デスクの引き出しからピペットと小さなバットを取り出した。
    バット、実質使用に意味がないので、私ならまるごと削ります。
    現実的には必要かもですが、短編では不必要ものは贅肉です。

    >バットの上に瓶を置き、小さなピペットで薬品を少しだけ吸い取る。
    バットの上に瓶を置く過程は不要です。
    小さなピペットで吸い取れるのが少しなのは明らか。ここもどちらか削れます。

    >そのピペットをバットの上に置くと、今度はデスクの脇においてあったケージを取り出した。
    置く描写もケージの場所も、読者が脳内補完してくれます。
    イメージが人により違っても、物語的には問題ない部分です。

    >中にはちっちゃなハムスターが一匹入っていた。
    まあこれはよいでしょう。
    以上をもとに文を圧縮すると、

    「ジョンはそう答えながら『試薬13号』を取り、小さなピペットで吸い取った。
     続いて取り出したケージには、ちっちゃなハムスターが一匹入っている。

    変えた文尾は、読んだリズムを調えたものです。
    いかがでしょ。

    >間をつなぐように、さして重要でもない解説をつけながら
    たまたまでしょうが、まさにこの作品を言い表したような一文。
    全体的に文章がこんな感じなんです。

    >果たしてハムスターの体の色が少し薄くなってきた。その体が透けてジョンの手のひらが見えるようになってくる。
    ここら辺の状況説明は、文を費やす価値があると思います。
    読者待望の透明薬の情報ですから。

    >ホントに効果があるとは・・・。
    絶対とは言いませんが、「・・・」より「……」の方がよいかと。

    >ハムスター
    ここら辺の、透明化を確認するくだりの描写は悪くはないです。

    >「どうだ?いるだろう?」
    「?」の後には、一文字空白を入れるとよいです。

    >透明人間になれたら、どうする?
    ここら辺の妄想はもっさりすぎます。

    >オレのアパートの近くにも、銭湯という大規模な入浴施設がオープンしたばかり
    どこの国が舞台か不明ですが、取って付けたような設定です。
    学校の女子クラブの更衣室、とかでいいんじゃないでしょうか。

    >「サダ、バカなことを考えるなよ」
    > ジョンは、そんなオレの考えを見透かすかのようにクギを刺した。
    ここまでわかってて薬を放置するのは、絶対わざとでしょ。

    >「すまんが、ちょいと急用だ。10分ほどで戻ってこられるから、少し待っててくれ。いいか、くれぐれも変な気は起こすなよ。」
    押すなよ!絶t(ry

    ところで、ジョンがハムスターをどうしたのかが書かれていません。
    まあこれも削れる描写ではあるんですが、ちょっと気になるので私なら加えます。
    透明薬の効果時間のヒントにもなりますし。

    >ジョンの部屋の時計に目をやると、ジョンが部屋を出て行ってからまだ数分しかたっていなかった。
    もっさり。

    >そして、オレは変な気を起こした。
    私なら改行した上で、「変な気」に傍点をつけます。
    文章的には悪くないのですが、主人公が妄想しまくった上での宣言なので、ちょっとインパクトが薄い。
    覗きという妄想がなく、銭湯の情報だけからこの一文の方が、効果的ではありました。

    >オレはジョンの部屋から『試薬13号』を持ち出して、自分の部屋に戻ってきていた。
    自室に戻る設定、いらないような気がします。
    ジョンの部屋で薬飲んで向かう展開の方が早い気が。
    まあでも、人の部屋で全裸になりたくない気持ちはわかるかw

    >着ている服まで透明になることがないだろうことは簡単に予想できる。
    ここら辺、案外アホの子ではないのは好感。
    薬の量にも思考が回っていますし。

    >味はしないようだし、不快な感触もなかった。
    感触に違和感。
    確かめるならまず匂い、そして味になるかと。

    >どうやら薬は体の末端から中心部に向かって効果が表れてくるらしい。
    ここら辺の細かな描写と設定は、とてもいいと思います。
    さすがSFタグって感じ。

    >「何が起きた!?」
    透明薬を盗んだ時点で、このオチは読めたんですが、悪いアイデアだとは思いません。
    私も書くなら、このオチを考えるなと思っただけです。

    >完全な暗闇が取り囲み、何も見えなくなった。
    暗くなる?明るくなる?とか考え込みましたが、ここは暗くなるで正解そう。

    >ジョンが来てくれたのは、
    鍵はかけてなかったんですね、とは思いました。まあ不要な説明かな。
    ジョンといい、不用心なペアではある。

    私なら文章同量で、玄関先で名を呼ぶジョンに気付き、手探りでドアを開ける、みたいな書き方にしますかね。

    >ジョンはしれっとそう言った。
    怒らない辺り、確信犯(誤用)でしょうこれw

    >オレの頭はこの状況下で働くことを拒否していた。ジョンがなにを言おうとしているのかよく理解できない。
    この文章はまるごと削れますね。

    >プロジェクタとスクリーンだと思えばいい。
    わかりやすい説明で、よろしいかと。
    ただ、やはり説明が長い。半分くらいに縮めてもらいたいところ。

    >ジョンは短くオレの答えを肯定すると、続けて言った。
    もっさり。
    「ジョンは短く肯定すると、続けて言った。」

    >マルっと24時間はそのまんまだぞ。
    主人公ならともかく、ジョンが「マルっと」は違和感。

    >「あるわけないだろ。」
    科学者にあるまじき台詞。
    「これから研究する予定だ」とか。

    >24時間くらいなら飲まず食わずでも死にはせん。
    この指摘は的外れな気がします。食事に影響ある効果でなし。
    「24時間くらい外に出なくても死にやせん」とかで。

    >これからオレの発明品の最初のテストはお前に任せられそうだ。
    ウソだ!!w

    >今後、ジョンが何か発明したとしても決して好奇心でそれを見に行くことだけはすまい。もう一つ。二度とスケベ心は起こすまい。オレは固く心にそう誓ったのだった。
    オチとしては順当ですかね。
    読者は誰も信じていないと思いますがw


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    ドストレートなタイトル。
    内容もストレートですし、まあ悪くはないんですが、
    物語を読んだ後、クスリとできるようなネタが仕込まれていれば、なおよかったかも。
    私なら、うーん。「透明人間の苦悩」とか?

    ・文章について
    何度も指摘した通り、全体通してもっさりしています。

    同じ内容の文章を繰り返したり、同じ言葉を続けて使用したりが多用されます。
    これらは、特に短編を書く上で最初に直すべき悪癖です。
    長編でも、この書き方では読者がダレてしまい、途中で投げられてしまう確率が高くなります。

    読者の想像に委ねられる描写、物語的に必要でない部分は、
    書き終えた後、削れるかどうかチェックしながら読み返すといいと思います。

    ・内容について
    文章こそもっさりしていますが、筋は悪くないです。
    オチも私は読めましたが、ありきたりという程ではないと思います。

    ただ、悪くもないがよくもない。
    読者的には派手なトラブルが望ましく、準備段階で失敗するというのはイマイチ盛り上がりません。

    とはいえ、このネタを広げるのは、かなり難しい。
    私もいろいろ考えましたが、以下の改善しか思いつきませんでした。

    ・主人公が薬を飲み、視力を失うのを女子更衣室の前にする。
     (銭湯より更衣室の方が好都合)
    ・扉を開け、いざパラダイスというところで、視力を失いパニックになる。
     (中の女性は不思議がるが、風か何かだと思う)
    ・わざわざ扉の前で薬を使ったのは、少しでも長く覗きを愉しむため。
     透明になるまでの時間はもっと縮め、周囲に人がいないことを確認してから投与する。
    ・視力のないまま学内をさまよう主人公。
     絶望しているところに、着替えをもったジョンが現れる。
    ・ジョンは最初から、主人公が薬を飲むと確信していた。
     更衣室の前で主人公の動きを観察し、新薬をテストしていたのだった。

    ん-、これでもまだパンチ足りない気がします。難しい。
    私ならこれくらいでゴーサインで、物足りなければボツにするところです。

    ・オチについて
    視力関係はすでに書いたので割愛。

    ジョンがわざと薬を飲ませた方が、物語的には自然で面白い気がします。
    冒頭のプロローグも「科学の進化に犠牲はつきものなのだ」的に変えるとか。

    主人公が多少くどいですが、キャラは二人とも悪くなかったです。
    連作されてますし、書き慣れている感じがします。
    ジョンについては設定が中途半端なので、はっきりとマッドサイエンティスト的な
    説明を加えて「この人は何作ってもおかしくない」と思わせた方がよいかもしれません。


    ⬜️総評
    ・内容は可もなく不可もなく。
    ・キャラや物語の雰囲気は嫌いじゃない。
    ・もっさりした文章の見直しを。

    文章が洗練されれば、もっと気軽に読めると思います。
    半分くらいの文字数に縮めて、ちょうどいいくらいかと。
    精進に期待します。

  • 【09】柊御前(奈々野圭)
    https://kakuyomu.jp/works/16816700428054404283

    次は和風ホラー。
    時代物でホラー、かつガールズラブですか。
    時代物でガールズラブってあんま聞いたことないですね。
    逆は腐るほどあるんですが……何か理由あるんでしょうか。

    梶野は時代物の造詣なんて皆無なんで、考証とかしかねます、
    小説が面白い、どこが問題なのかは、きっちりと詰めますけどね。

    それでは、感想スタート。

    ⬜️読みながら雑感

    二読後の感想を、読みながら書きます。

    >人気のない山道を一人の若者が辺りを伺いながら走っている。
    人気のない山道を「、」
    で読点が欲しい。

    最初から長文気味なのは読者減らします。
    「辺りを伺いながら」は次の文に回してもいいくらい。
    私なら、

    「人気のない山道を、一人の若者が走っている。
     辺りを伺い、振り返りながら逃げ続けている」

    にしますかね。

    >かつては武家の子であったのだが
    時代的には、室町か江戸時代か。
    まあでも、そこまで考える必要もないですかね。
    雰囲気が日本昔話ぽいですし。

    >道行く旅人に襲いかかって金目のものを奪い取る
    「襲いかかって」より「襲いかかっては」の方が、なりわいにしてる感じが出ます。

    >そんな次郎の乱暴狼藉を見かねた領主は討伐隊を結成し、次郎ら賊を蹴散らしにかかる。
    >というわけで、次郎は現在追われる身となったわけである。

    段落を下げ忘れています。
    あと意味は通じますが、「蹴散らす」「というわけで」など、表現が軽いと時代物の雰囲気が崩れます。

    「そんな次郎の乱暴狼藉を見かねた領主は討伐隊を結成し、次郎ら賊に差し向けた。かくして、次郎は現在追われる身となったわけである」

    >そこには小さな畑と小屋があった。
    段落下げ忘れ。
    ここで「そこには」を使うと、説明っぽくなります。
    「小さな畑と小屋が見える」など。

    > 次郎は物陰に隠れて怪訝そうにその小屋の様子を見ていると、
    登場人物少ないので、ここは主語ない方が自然です。
    「怪訝そう」を書くなら、何故怪訝に思ったか、次郎の思考を先に書いた方がいいかも。
    私なら、物陰に隠れた時点で怪しんでるのが伝わるので、省きますね。
    「物陰に隠れ、小屋の様子を見ていると、」

    >その女も山奥で暮らしてるとは思えないような綺麗な身なりをしており、容貌も美しかった。

    「その女も」の「も」って何?と思いましたが、家の小奇麗さに掛かってるんですね。
    間違ってはいないんですが、さりげなさすぎて気付けないかも。
    あと「女」はすぐ前に出てるので変えたいところ。
    なので、
    「こちらも山奥で暮らしてるとは思えないような綺麗な身なりをしており」
    辺りが妥当かと。

    >小屋にはその女一人しか出てこない。
    「小屋からは」ですね。

    >―こんな辺鄙なところで一人暮らしとは、妙な女だ。
    ダッシュ(──)は二つ繋げて使うのが一般的です。

    >雨風凌げるところで休みたい。
    そういえば、天気や季節の描写がないですね。
    この時点で雨が降っているとかした方が、この思考に納得しやすいかと。
    季節も、多くを語る必要はないですが、春夏秋冬くらいは書いていい気がします。
    私はなんとなく冬のイメージで読んでました。

    >女は姿を現しこっちに向かってくる次郎を見ても別段驚き怪しむことはせず、ただにっこりと笑いかけた。

    「女は」の後に読点が欲しいところ。

    >「おい、女!知らん野郎を目にしても逃げも隠れもせんとは。俺がお前を殺そうとしたらどうするつもりだったんだ」

    第一声がこれでは、次郎が何を考えてるのかわかりません。
    一夜の宿なり食事なりを期待してたんですよね?
    多くを語らず女に頼み込むか、強硬手段に出るかが順当かと思います。

    >「あらあら、怖いわね。でも様子を見ると随分とお疲れのようだけど。あいにくこの辺りに泊まるところはないし、集落も遠いわ。じきにこのあたりも真っ暗になるし……そうだ、私の家に泊まっていかない?」

    会話が成立してません。
    これは怪しすぎる……騙すにしてもへたくそ過ぎる。

    >やはりこの女は山姥かもしれん―次郎はますます訝しんだ。
    まあ、これは当然の思考。

    >「もしかして私のことを山姥だと思って?嫌ねぇ、
    「?」の後は一文字開けます。

    >ただ、私あなたのことが心配になっちゃって……行き倒れて、熊に食われたらそれこそ嫌よ」

    演技下手か。
    熊に食われたら、何が嫌なのかわかりません。
    あともうちょっと、台詞は自然に。

    >次郎の躊躇しているような様を見て、女はこう宣った。
    「しているような様」って、違和感ある表現。
    「次郎の躊躇する様子を見て」でよいかと。

    >真意をわかりかねた
    「計りかねた」の方が適切。

    >女の言うことに従おうと決めた。
    「疲れた」「日も暮れた」では、こんな怪しい女の家に泊る理由には不十分です。
    「この辺りは狼が出るのよ」くらい書いてよかったかも。
    実際出るかはどうでもいいわけですし。

    >でも幾夜も過ごす羽目になってしまった―
    山姥かと疑った相手の家にずっと居続ける以上、まず柊への印象の変化を書き、読者に伝える必要があります。
    最初の夜の待遇や食事、柊との対話。
    そういったものから安心したからこそ、連泊する気になったわけで。
    いくら柊が引き留めても、怪しさマックスだったら強引に旅立つでしょ、普通。

    >だいいち俺は賊なのだ、面倒に巻き込まれる前にとっととお偉いさんに引き渡した方がいいのではないか―

    柊に賊であるとバレてる前提なんですか?
    そこら辺の描写がないので、読者にはわかりません。
    外見から一目瞭然なのか、自ら話したのか。何にせよ説明不足です。

    >「それにあなた、次郎さんじゃないでしょう。だってあの夜、あんなに可愛らしい声を出してたのに」

    えっ、女?
    というか、もうそんな仲に?
    相手を信用もできてないこの段階で、何故ねんごろに?
    ひたすら説明不足で、読者置いてけぼりです。

    あと、何気にここも会話が成立していません。

    >男として生きることに決めたのだ。
    元武家で、武術の心得のある男装の女性で、夜盗の頭──
    まあ、この設定自体はある種のファンタジーとして突っ込みませんが、
    この次郎のメンタリティはどうなってるのか、私にはまるで掴めません。

    内心の説明を見る限り、思考は完全に男性のそれで、
    女性的な部分が一切感じられないんですが、もともと男性的だったんでしょうか?
    普通は「男の格好や態度をしていても、内に乙女の心を秘める」的なパターンですが、
    このキャラはほとんどトランスジェンダーのようです。

    >不本意にも柊と親密になり過ぎてしまったので出るに出られなくなった

    こういうところも、極めて男性的です。
    美女(かどうか知りませんが)と深い仲になり、ずるずる行くのは男ならわかるんですよ。
    でも実は女性って言われると、メンタリティ的に疑問しか湧きません。

    この二人がどんな風に夜を過ごしてるのか、皆目想像がつかないというか。

    >柊は度々荷物を持って麓にある集落に向かうことがある。
    「度々」なら「向かうことがある」と続くのは変です。
    「時々~ことがある」か「度々~向かう」かにすべきかと。

    > それにしても一人で出かけるのは不用心ではないか、おまけに綺麗な女だ、自分のような賊に襲われてもおかしくないだろうに、次郎は柊が家を出る時に、自分が同行しようと申し出たのだが、断られてしまった。

    読点で繋いで長文にすると、読みづらいばかりです。

    「それにしても一人で出かけるのは不用心ではないか。おまけに綺麗な女だ。自分のような賊に襲われてもおかしくないだろうに。次郎は柊が家を出る時に、同行しようと申し出たのだが、断られてしまった。」

    と、読点(、)を句点(。)に変えるべき。

    > 出会ったばかりならいざ知らず、今の次郎には不信感を抱くことさえ難しかった。

    ここら辺も、そうなった経緯が書かれていないので、共感がしづらい部分。

    >麓の集落にたどり着いた次郎は、柊を探すため、まずは住民に聞き込みを始めた。

    えっ、賊設定はどこへ?
    領主に討伐隊を出されてたんじゃ?

    >話を聞いていると、どうやらここでは最近若い女が失踪する事件が相次いでいるらしい。

    柊の話はどこに行ったんでしょう?
    せめて柊の情報を聞いた上で、こんな噂も聞き及んだ挟、とすべきかと。

    >最近若い女が失踪する事件
    どんな風に失踪するのか、わずかでも説明があった方が想像が膨らんでよいと思います。
    例えば山に入った若い女が失踪、とか。

    >次郎は急いで柊の元へ帰ることにした。
    柊を追って集落に来たはずでは?

    >―「ここは開けないでくださいね」
    これはここでなく、懇意になった頃に出しておくべき情報ですね。
    ここでは、それを思い出すくらいがよいかと。

    >『開かずの間』
    昔話の定番ではあります。

    >命がかかっているんだぞ、構うものか
    いや、命はかかってないでしょう。柊がいるなら。
    若い女の命って意味なら、確かにそうかもですが。

    >驚愕の光景が広がっていた。
    いや、予想はしてたはずでしょう。二択で。

    >『開かずの間』のホラー描写
    血の表現ばかりで、バリエーションがないのが気になります。
    スプラッタ方向に寄せるなら、臓物や人体破壊の描写。
    グロを抑えめに書くなら、散乱した女の髪や破れた着物、虚空を見上げる瞳、死体の白蝋のような肌などを、
    私だったら描写すると思います。

    ここは、ホラーとしては一番の見せ場です。
    恐怖シーンをいかに描くかは、作者のオリジナリティを問われるところでもあります。
    ここ一番の情熱を込めて描写しましょう。

    >とすると、今までのあれやこれやは自分を誑かして食らうためではなかったか。

    読者的には誑かしたことより、何故今まで食わなかったかの方が気になります。

    >次郎は持っていた刀を抜くと、次郎を見つめたきり動かない柊に向かって刀を振り下ろした。

    日本昔話ならよくある展開ですが、小説だとちょっと短絡すぎる感。
    「まず事情訊くのでは?」と思ってしまいます。
    ここも行動が男性的すぎて、女性設定の違和感が強く出ています

    >―「ねえ、次郎さん。いつまであなたは次郎さんなの?」
    普通、ダッシュはかっこの内側に使います。
    「──ねえ、次郎さん。」こんな感じ。

    ここの問いかけの意味も、私にはわかりかねます。
    本当の自分に戻れ的な言葉だと思いますが、
    見かけはともかく扱いは女性として、同棲してたんですよね?

    武家の娘に戻れと柊が言う理由も思い当たりませんし、皆目謎です。

    >「もういいだろう。俺はもう次郎なのだ。俺には既に家はない。昔の名などに意味はない」

    次郎の返しも、何が言いたいのかよくわかりません。
    何か二人の間にそういうやりとりがあったのかもしれませんが、書かれてなければ意味がありません。
    わずかに匂わせ、関係を想像させるという手法もありますが、それもできていないと思います。

    >「私は柊っていうけど、実は私、柊が嫌いなの。だって柊って刺々してて嫌なんですもの。親はなんで柊って名前なんかにしたのかしら」

    ここは名前繋がりの話題ですかね。
    内容自体は悪くないのですが、この話題が実は山姥だったというオチを膨らませたり、伏線だったりする様子がないのが残念。
    私なら、この会話を回想にせず本編で書き、ここではそれを思い出させることで、
    柊が山姥である事実を、悲劇的に掘り下げる方向で使用したと思います。
    例えば柊に、
    「鬼から守ってくれる名前……だったのにねえ……」とつぶやかせるとか。

    > 柊と以前にこのようなやり取りをしたことを思い出した次郎は、

    ここまで読んでやっと、前段が回想であると気付きました。
    段落ごと行を開けるスタイルなので、空白行が増えるだけでは気付きづらいです。
    はっきりと場面が違うとわかる描写を一行目に持ってくるか、記号などを挟んで場面転換をわかりやすく示して欲しいところ。

    > 柊と以前にこのようなやり取りをしたことを思い出した次郎は、微笑んだまま動かなくなった柊を目にすると、さっきまで怒り狂っていた心は悲しみでいっぱいになった。

    感情が揺さぶられ、変化する場面も、説明文章では盛り上がりません。
    気持ちを込めて、できれば直接的に書かず、表情や仕草の描写で伝えるよう心がけてください。

    >「柊。どういう経緯でお前が山姥になったのかは知らん。でも、お前一人だけ地獄に行くのは俺が許さん。俺も一緒に行くからそこで待っててくれ」

    野盗やってたんですから、普通に地獄行きな気がしますが。

    > 次郎は柊の身体に齧り付いた。
    齧りついたって、食べようとしたって意味ですかね。
    うーん。次郎の感情描写が凄ければ、こういう行動に出るのも納得できたかもしれませんが。
    ここまで読んだ上での感想は、率直に言って「トチ狂ったのかな」でした。

    地獄に行くための悪行、という意味では理解できるんですが、もともと地獄行くですし。


    ⬜️全体の感想

    ・タイトルについて
    語感はよいのですが、御前という言葉は高貴な対象に使うものです。
    貴族や皇族の娘とかですね。

    そういう過去が語られたならいざ知らず、山姥である柊に用いる言葉ではないと思います。

    ・文章について
    いかにも書き慣れていない感じの文章です。
    民話調をベースに書いている可能性もありますが、それにしては無駄な表現が多い。
    全体通して説明口調なので、男女の機微や感情の動きが、まるで伝わってきません。

    ここら辺は書きまくり読みまくりの要練習という他にありません。
    プロやベテランが、どんな風に見せ場を盛り上げているのか、熟読や模写で勉強してみてはいかがでしょうか。
    やり方はいろいろありますが、まずはコピーがお勧めです。

    ・オチについて
    物語がまっとうであれば、ワンチャンあった展開とは思います。

    ・内容について
    問題点は様々あり、読みながら指摘した通りですが。
    私が思うところの、大元の問題をいくつか書いておきます。

    ・実は女性設定いらない
    後から足したのではないかと思えるほど、作品に生かされていません。
    むしろ違和感が出まくりで、物語のノイズまで言えます。
    この設定がなければ許せた場面は、後半に多々あります。

    せめてプラス面があれば差し引けるのですが、それもない。
    女性同士のこまやかなやり取りや情感の描写も場面も作られていない。
    単に設定としてある、というレベルで、作品の足を引っ張っています。

    これが奈々野さんのこだわりだ、とおっしゃられるなら、それは認めましょう。
    しかし書きたいことにしては、まるで紙幅を割かれていない。思いを込めていない。
    この辺の解説は次に回しましょうか。

    他に指摘しておきたいのは、かなりの確率で会話が成立していないところ。
    二人しか登場しないのに、双方が自分の主張を勝手に述べていて、相手の話を聞いていません。
    仮にも恋仲になる同士なのですから、コミュニケーションを意識してください。

    ・思い入れが感じられない。
    この作品は、時代劇、ホラー、ガールズラブと三つの要素が(一応)柱です。
    どれか一つでも太ければ、他はおまけでいいですし、それが普通。
    二本三本と力を入れていれば、力作傑作というものですが、本作はむしろ逆です。

    どこにも力が入っている感じがしない。
    作者の愛が、どこにも感じられません。
    お題を与えられて仕方なく時間内に仕上げた、学校の課題のように味気ないです。

    一般的に、小説は書きたいように書くので、作者の気持ちが暴走しがちです。
    それを制御し、読者に読みやすく整えるのが理性であり技術なわけですが、
    この作品はそもそも、気持ちが入ってる気配がない。
    説明口調で淡々と進む、何も読者に残さず、淡々と終わってしまう。

    私はこの企画で、口酸っぱく「もっと痩せろ」と繰り返していますが、
    「ちゃんと食べてる?」と心配になった作品はこれが初めてです。
    作者のネグレクト(育児拒否)ではないかと疑っております。

    書くからには、他人に見せるからには、愛情をこめてください。

    いつもなら「私ならこう書く」を始めるところですが、今回は無理です。
    作者が何を書きたいか、という主眼が不明なので、アレンジしようがない。
    どこを生かして伸ばすべきなのか、見当がつかないのです。
    無理に書いても単なる新作になるだけで、意味がないと判断します。

    タイトルの「私だったら」がないのも同じ理由です。
    方向性がわからないので、象徴が決められないのです。


    ⬜️総評

    ・作者の愛が感じられない不憫な作品。
    ・説明口調が多く、情感に乏しい。
    ・短編だからと手を抜かず、全力を込めて欲しい。

    これをプロットと考えて、改めて膨らませ、書き直すくらいでちょうどよいかと思います。
  • 【10】雪月ノ屑(白木犀)
    https://kakuyomu.jp/works/16817139557565443762

    ファンタジーもの。
    ここまで9作読みましたが、意外にファンタジーは初めてですね。
    マルチエンディングとか、久々に読みます。

    ゲーム原作小説の応募作だそうで。
    私も応募しようか考えましたが、持ちネタがどう考えても一万字に収まらなくて断念した奴です。
    ガチでファンタジーで一本書いたら、一万字は普通に無理じゃないかと思います。
    まあ、そのハードルを乗り越えた作品が選ばれるのかもですが。

    梶野も書き出したのはファンタジーからでした。
    ゲームブック(分岐小説)も全盛期でしたっけ。
    当時に流行り始めたTRPGのリプレイを書いたのが執筆のきっかけですし。
    当時はマニアックなジャンルでしたが、こうまで隆盛するとは思いませんでした。
    望み通りの未来だったかは、思うところがなくもないですがw

    あと、私はバトルが本来の専門なので、そこら辺はうるさいです。
    指摘も多少細かくなると思いますが、まあ字数制限もあることです。
    そこら辺は考慮して、短く直せるよう配慮したいと思います。

    それでは、感想スタート。


    ⬜️読みながら雑感

    二読後の感想を、読みながら書きます。

    >【雪月(ゆきづき)】の侵略によって
    あらすじは対象外だったんですが、ちょっと気になったので。
    侵略は、国同士の戦争などに用いられる言葉です。
    意味を広げてとるにせよ、
    「国外からの攻撃」「知性体の攻撃」というイメージが強いので、
    国外にいたわけでもない、いわゆるモンスターである雪月の表現にはそぐわない気がします。
    村に熊が入って暴れたとして、侵略とは言わないでしょ?

    適切なのは、「来襲」「襲来」「強襲」辺りだと思います。

    >からりと木枯らしが吹き付けた。
    木枯らしは季語にもなっている和風の言葉で、異世界ファンタジーに使うと強烈に違和感あります。
    この一行目を見た時、「この世界は元日本みたいな設定かな?」と思ったくらいです。
    「からり」という表現も、それを助長して見えます。
    「寒風」「北風」などで十分だと思います。

    >真っ白な毛並み、『熊』という生物に類似した見た目、爛々と輝く紅の瞳。
    >俺とレヌは森の中で、一体の【雪月ゆきづき】――種族名【オース】と対峙している。

    サイズの描写がないのが気になります。
    本物の熊と同程度なら、シロクマというだけです。
    最初の掴みですので、「色違いの熊」というだけでは弱いです。

    あと、冒頭の一文と、まったく連動していないのも気になります。
    例えば「またも木が揺れた。今度は風ではない。怪物の咆哮だ」と書けば、バトルの始まりに繋がります。

    >俺は【オース】目がけて走り出す。
    呪文詠唱に時間のかかる魔法使いが、自ら距離を詰めに行くのは不可解です。
    敵は獣の速度で迫ってくるのですから、呪文を唱えながら待つのが普通では。

    >俺は槍の魔法を紡いだ。
    地面から槍が突き上げる魔法ですね。
    突っ込んでくる敵に対してなら、こちらを先に使用して、足止めする方が確実です。
    槍で突き刺されてなおもがく【オース】に対して、炎の魔法でとどめ。こっちの方が筋が通るし、絵的にも映えると思います。

    >【雪月ノ屑】を百個集めること、それが俺とレヌに課せられた使命
    よくあるパターンですが、わかりやすいのはいいですね。

    >真っ青な瞳は、白銀の睫毛の下で見え隠れしている。
    妹の描写、ここの見え隠れだけ違和感あります。
    睫毛の下で見え隠れとは一体……すごく長い睫毛という意味なのか。
    私なら、次の台詞に繋がるよう「白銀の睫毛の下で憂いを帯びている」辺り。

    あと、妹の外見描写から、年齢がまったく把握できません。
    ファンタジーなので、幼女でも魔法使えるかもだし。
    兄もそうですが、若者なのか少年なのかだけでも描写が欲しいところ。

    >「……ずっと、考えていたんです。こうやって数多の【雪月】の命を奪って、そうやって生きているわたしたちは、本当に正しいのかって」

    この後、【雪月】の説明が出てくるわけですが、情報はこれくらいですよね。
    ・白い体毛、赤い瞳。不老。
    ・突然、大量発生して人類を絶滅前まで減らした
    ・ガンガン人を襲う。知性はない。
    ・二人の両親も、【雪月】に殺された。

    ……いや、正しいか悩む余地、どこかにあります?
    生き物を殺すことの罪悪感かもですが、ファンタジー設定なら狩猟とか普通ですよね。殺してバラして食べることが日常のはずだと思うので、どこに疑問を感じているかまるでわかりません。【雪月】が人を襲わないならまだしも、人類も親も殺されまくってます。

    百歩譲って妹が甘い理想主義だとしても、現実的な視点を与えるのが兄の役目だと思うのですが、こっちも煮え切らない。共感度が一気に下がります。

    >かつては数えるのが億劫になるほど存在していた人間は、突如として現れた【雪月】の侵略によって大半が滅んだ。

    何匹【雪月】がいるのか不明ですが、ぶっちゃけ色違い程度の野獣が大量発生した程度で人類の大半が滅ぶのは、疑問が先に立ちます。
    まだ若く特別でもない二人(多分)が魔法を習得できる世界です。近代兵器がなくても、それに近い軍事力があったと考えるのが自然で、下手すれば現代より強いくらいのイメージがあります。【雪月】封じの結界が作れる辺り、研究もさかんなようですし。
    ここら辺の説得力の補強は、幾つか方法が思いつきます。後述します。

    メナータさんは長い年月をかけて俺とレヌに魔法を教え
    少なくても若者だろう二人に対する「長い年月」が、どの程度なのか。
    二人の年齢が出ていないこともあって、あやふやです。

    >今日で、九十五個の【雪月ノ屑】が集まった。

    この後、戦闘一回で百個集まりますので、
    この時点で九十九個にしてよいと思います。時間経過が必要な展開でなし。

    >メナータさんは、真っ白の髪を一纏めに結んだ老婦だ。
    一人称としては説明的すぎ。

    >メナータさんの言葉に、俺とレヌは顔を見合わせてから、笑顔になる。幸福だと思った。
    「幸福だと思った」は余計。笑顔で十分です。

    >【雪月ノ命】ができあがれば、人間が喪失に苦しむ機会はぐっと減るだろう。世界のあちこちで、こんな風に家族が笑い合えたら、それはとても尊いことなのだろうと感じた。

    言葉を重ねるほど陳腐になるという典型です。
    私なら、
    「【雪月ノ命】ができあがれば、世界のあちこちでこんな風に家族が笑い合える」
    くらいにまとめます。

    >長い前髪には、レヌとお揃いの藍色のピンが二つ、平行に付けられていた。

    ピンは寝る前に外すものでは。
    私ならここは外す描写にします。

    >「……明日、五体の【雪月】を倒せば、おしまいですね」
    えっ、一日五体倒す計算なんですか?
    なんか【雪月】のイメージが、一気に雑魚化したんですが。
    この後、妹が「本当に長かったです」と言ってますが、一日五体計算だと二十日。
    空振り入れて三倍だとしても六十日の二ヶ月で、全然長くなりません。
    RPGで外うろついたら遭遇する雑魚モンスターな感じですか?
    もしそうならそうでもいいんですが。
    世界の危機を前提に読んでた私からすると、いきなりスケールが萎んだ感あります。

    >彼女の体温は、温かいけれどどこか、冷たさを帯びていた。
    読点の位置がおかしいです。
    「彼女の体温は温かいけれど、どこか冷たさを帯びていた。」

    あと「冷たさを帯びた」の意味がよくわかりません。

    >不満げなレヌの身体を、俺はゆっくりと抱きしめた。
    ここら辺の兄妹イチャイチャシーンも、年齢がわからないので評価しかねます。
    「本当に長かった」のが本当なら、幼女ではないのでしょうが。

    このシーン、本当にただ兄妹がイチャイチャしてるだけで、もったいないです。
    読者には二人の過去も関係も性格も、ほぼ開示されていません。
    最後の戦いの前に二人が話す機会、絶好のチャンスだったはずですが。

    私ならイチャイチャはさせるにせよ、その前の会話で過去の思い出話をさせます。
    例えば、初めて【雪月】を倒した夜、妹は眠れず、兄に添い寝してもらった、とか。

    >俺とレヌは、洞窟の側の拓けた空間にいた。
    空間ではどんな場所か全然伝わりません。
    洞窟も何かの伏線かと思ったら未使用で、無意味な一文です。

    >百体目に出会ったのは、『鹿』に似た【雪月】だった。
    繰り返しますが、サイズが書かれていないと色違いの鹿です。

    >俺は双眸を鋭くして
    言葉として正しいかはわかりませんが、意図は伝わります。
    よい表現だと思います。

    >【シルフィネ】がすぐそこにいる。前脚がゆらりと持ち上がる。
    蹴り飛ばされた直後なので、すぐそこにいるのは違和感ありです。
    私ならここは、
    「【シルフィネ】がオレを追ってくる。勢いよく蹄を振り上げる。」
    ですかね。

    >氷の魔法が上手くいった……俺は立ち上がって、槍の魔法を唱える。
    ここも氷の魔法不要です。槍の魔法だけで十分。槍最強説。

    >鋭利、鮮血、咆哮。
    悪くない表現ですが、鋭利だけ名詞じゃないのが気になる。
    私なら「鋭鋒」か「鋭尖」を使いますかね。

    >――わたしたち、正しいことをしているんでしょうか?
    何度見ても首を傾げたくなるフレーズ。

    >もっと普通の、平坦な世界で――
    流石に誤字だと思いますが。
    「平坦」でなく、「平和」ですよね?

    >メナータさんの瞳が一瞬だけ、揺らいだ気がした。
    これだけでもバレそうなもんですが、

    >金色の目が微かに、暗い感情を孕んだように思った。
    ここまで書くと展開を教えてるも同然なので、削った方がいいかと。

    >「湿潤と乾燥、って感じだな」
    説明的すぎてイマイチな台詞。
    「両極端だな」くらいが適当かと。

    >メナータさんは手を開く。彼女の手には真っ白に光り輝く
    手が被ってます。
    「メナータさんは手を開く。そこには真っ白に光り輝く」

    >メナータさんは満足そうに瞳を細くした。
    これは違和感。瞳が細まるのは猫だけです。
    素直に「目を細めた」で。

    >それから、どこか悲しそうな表情を浮かべる。どうして哀情を香らせたのかがわからなくて、俺は不思議に思う。メナータさんは、ゆっくりと口を開く。

    ここもくどい感じ。
    情感を出す場面で、書きすぎる癖があるようです。
    効果的な一文を選び、表現を絞った方が伝わります。

    >不満そうなレヌに、俺は笑った。大切な人に傷付いてほしくないことに、明快な理由がいるだろうか? 傷付いてほしくない、ただそれだけで、いいような気がした。

    ここも説明しすぎです。

    >「……それは、嘘なのよ」
    まあこれはバレバレとして。

    >「……【雪月】に、なるって、」
    はあーーーっ?
    と思わず声が出ました。
    ここまでの情報で見る限り、【雪月】は不老という以外は、人を襲う魔獣くらいの存在ですよね?
    知恵があるとか、言葉を話せるとか一切なく。
    他に特殊なルールでもあるならいざ知らず、この条件で「【雪月】になりたい」とか考える人、存在します?

    これが例えば、意識は元のままとかならわかるんですよ。
    永遠の命を求めて吸血鬼になる者がいるように。
    でも同じ理屈で、ゾンビになるのを願う人がいるかって話です。
    どう考えても理屈が通っていませんし、老婆ご乱心かな?としか思えません。要説明でしょう。

    >【雪月ノ命】はその強力さから、放っておけば暴発してしまう。
    この後の選択肢に「主人公が【雪月の命】を喰う」というものがあります。
    気でも違ったんじゃないかと私は思いましたが、何度か読み返して、やっと意味がわかりました。

    ここの「暴発」は逃げられない規模で、「放っておけば」はすぐにもなんですね。
    この言葉だけだと、まったく伝わりません。
    私はてっきり手りゅう弾程度のもので、なんで奪って投げ捨てないのかと思っていました。

    暴発設定自体、あまりに強引すぎて褒められたものじゃないですが、
    せめて爆発の規模と制限時間くらいは示唆しておくべきです。
    ここでなくとも、奪った後の台詞で、メナータさんに言わせるとか。
    見た目の変化で歴然とわかるとか、
    「今、処理しなければ、全員死ぬ」と主人公が気付くとか。

    でないと、なんで命がけで兄妹が食べるはめになったのか、
    私のように意味がわからない人が、必ずいると思います。

    情報が限られているので、かなり説明が難しいですが、そもそもの設定が強引なのです。
    このままで行くなら、何とかする他ありません。

    >メナータさんは美しく、口角をつり上げた。
    うーん、美しい要素がどこにも見えない。
    私なら、
    「メナータさんのつり上がった口角は、はやくも人間を辞めたようだった」
    とかにしてしまいますね。

    >もう時間はない。選択をしなくてはならなかった。俺は――
    >選択肢1 レヌの手を取って、この場所から逃げ出した。→四話ノ一へ
    >選択肢2 メナータさんから【雪月ノ命】を奪い、それを食らった。→四話ノ二へ
    >選択肢3 メナータさんの様子を、何もせずに見つめていた。→四話ノ三へ

    ここで選択肢。
    結末を見つつ、感想を書いていきます。

    1.俺はレヌの手を取って、この場所から逃げ出した。

    >代わりに大きな大きな、『百足』のような生き物がいた。
    やっとサイズに言及ありましたね。他もお願いします。

    >あの家の高さよりも長かった。
    あの家と言われましても、家の大きさの描写はなかったはずです。

    >放っておいたら、大勢の人が死んでしまいます!」
    そういや、【雪月】の入れない結界はどうなったんですかね。

    >ずるずると、地面を這うような音が轟いていた。その音が止んで、気付けば【雪月】がすぐそこにいた。

    反応が遅すぎて、主人公何してるの、という印象です。
    ここは「俺は息を呑んだ。」で迷っている間に、大ムカデが長い体を伸ばし、
    二人を囲い込んで退路を断った、とかの方がムカデ感あってよいのでは。

    >攻撃が効いていない――俺は歯を噛みしめた。
    ここも謎です。
    が、まあ最強の【雪月】になるとか言ってましたから、多分そうなんでしょう。
    (投げやり)

    >【ごめんなさい――】
    メナータでしょうが、言動が乖離しすぎて、白けて聞こえます。
    単に自分が【雪月】になりたいだけなら、二人を遠ざけた後に変化することもできたはず。
    結果的には二人を殺す気まんまんだったとしか思えません。

    >その響きが「は」段々と遠ざかっていくのは、
    「は」が余計ですね。

    というか、【雪月】て人を喰わないんですね。
    何となく食うのかと思っていましたが。
    ますます行動原理が不可解です。

    >それから二人で、この寒い世界で手を繋いだまま、ゆっくりと目を閉じた。

    いかにもバッドエンドという感じ。
    展開が理不尽すぎて、二人のやりとりが心に入って来ません。

    2 俺はメナータさんから【雪月ノ命】を奪い、それを食らった。

    >俺は蹲った。
    うずくまった。ここは要ルビかと。

    変化後、一人称が丁寧語に変化するのは微妙です。
    どういう心境の変化でそうなっているのか、さっぱりわかりません。
    なんせ、行動や心境的には凶暴化しているですから。

    私なら、ここは徹底的に距離を置いた三人称に変えて、
    カメラのように冷徹に、状況を描写していくと思います。
    兄の心境を甘ったるく書くより、そちらの方が怪物化した兄の感情の揺れを表現できるかと。

    兄の変身後の行動は、ご都合感はあれど、一番マシです。
    主人公として、共感もできます。
    ただメナータさんは何故ブレーキなかったの?とか、
    、これまで倒した【雪月】は知性がなかったのに?などなど
    疑問は尽きないので、物語内で示唆はあるべきだったと思います。

    3,俺はメナータさんの様子を、何もせずに見つめていた。

    妹が【雪月】に変わるだけで、展開はほぼ2と同じですね。
    どのみちメナータさんは殺すんかい、というところに、多少疑問は覚えます。
    妹の場合は生かしておいてもよかったんじゃないでしょうか。

    兄が一緒という微妙な違いはあれど、展開が似すぎているので、
    私なら2か3は、まったく違うパターンにすると思います。
    今、思いつく感じだと、

    ・二人逃亡ルート:メナータさん変身後、町から逃げる二人。
     数年後、成長した二人は、廃墟と化した町に戻る。
     最強の【雪月】を討つために。

    とかでしょうか。
    他はわりと2か3に近いものでした。
    そういう意味では、兄妹変身エンドはよかったと思います。
    1も、バッドエンドとしてはありですし。
    あとは暴発の説明さえしっかり書かれていれば、大丈夫かなと。


    ⬜️全体の感想

    ・文章について
    読みやすい文章です。わかりづらい箇所は少ないです。
    ただ、指摘した部分のように、
    絶対必要な描写がすっぽり抜け落ちていたり、
    (兄妹の年齢、暴発の説明など)
    気持ちの説明がやたらくどくなったりと、悪癖と思われるところが見受けられます。

    読みやすさはライト小説では重要なので、そこをキープしつつ、
    読者が細部まで納得いくよう配慮し、説明を加えていただければと思います。

    ・内容について
    大筋はいかにもゲームっぽい物語です。

    ストーリーについてはオーソドックスの一言です。
    キャラもよくある感じ。裏切りの展開も想像通り。
    予想外だったのは、理解不能な展開くらいです。
    選択肢も驚きという意味では乏しく、一つくらい意外性が欲しかったかなとは思います。

    ただ、ファンタジーものとしては安定感があり、読みやすさもあるので、筋は悪くない気がします。
    細部に気を配り、適切な説明を心掛け、とんでも展開を避ければ、ずっと面白くなるのではないかと思いました。

    以下、読みながら感じた問題点と私なりの改善案を書いておきます。

    1.【雪月】がまるで強そうでない。

    読みながら感想でも書きましたが、あれでは色違いの動物です。
    二人の魔法で簡単に仕留められるので、まるで強い気がしません。
    人類を滅ぼしかけている迫力が、どこにもなく、強みが不明なのです。

    まあたとえ普通の熊でも、突如、全世界に人間と同数発生したら人類滅亡するでしょうが、
    そういう脅威じゃないですよね、この場合。
    魔法があり、人間が多い=文明が発達しているこの世界が滅びかけるに足る何かを、
    【雪月】には与える必要があります。

    また、二人以外の魔法使いが出て来ないのも、強さを計れない一因。
    この二人が特別に強いのか、この世界では普通なのか、わかりません。
    ここら辺も説明が欲しいところです。

    2.世界設定が甘い

    【雪月】が弱く思われると、滅びかけている世界に疑問がわきます。
    世界に関しての説明が皆無に等しいので、どうしても
    「うちの町の話」を「世界レベル」で語ってるような大仰さを感じます。

    どんな理由で、世界は【雪月】に敗北しつつあるのか。
    世界は現在、どのように対抗しようとしているのか。
    魔法的な対策は存在していないのか。

    などは、読者が最初に気になる情報ではないかと。

    ただし、この物語は一人称で、情報を出し続けるのは難しい側面があります。
    もう一つの解消法は、逆に一人称視点を利用し、世界を狭めることです。

    「世界がどうなっているか」、一人称の主人公に知るすべは限られます。
    【雪月】によって町同士の行き来や通信が途切れれば、町の外の情報は手に入りません。
    そうなれば世界に関しては
    「主人公にもわからないが、多分危機的状況」で十分になります。
    主人公が知らないのは事実ですし、むしろリアリティが出てきます。

    3.【雪月】を倒すことが正しいのか、悩む意味が不明

    感想で語ったので繰り返しませんが、何度も二人が悩むこのテーマ、私は1ミリも理解できませんでした。
    もしこだわりがおありでしたら、相応の理由をこしらえるべきかと思います。私だったら、まるごと削除する要素ですので。

    4.メナータの狂気の説明

    読者的には【雪月】に変貌することは、野獣になることを意味するので、共感がいっさい生まれません。
    【雪月の命】を使用した際は人としての意識が残るなどの、メナータのみ知るであろう知識の開示は必須でした。

    5.上記の改善案

    読みながら、私だったら【雪月】はこう強化するかな、と思った案を書いておきます。
    キャラの説明強化もちょっとあり。

    ・【雪月】の正体は、野生動物に寄生する白い魔法的寄生虫である。
     (これで突然の大量発生、およその数を説明する)

    ・【雪月】は元の動物の数倍の体格になり、即死しなければ怪我は自
      動的に治癒される。
     (不老の原因。ただの動物とは違うのだよアピール)

    ・魔法にも強い抵抗力を有するが、妹の強化魔法によって、兄の魔法
     だけは通用する。
    (ペアの強みの協調。二人が【雪月】に勝てた理由付け)

    ・【雪月】は、そのナワバリを魔法的に「冬」に変える。
     一帯は豪雪地帯となり、植物は枯れ、動物は死に絶える。
    (【雪月】が世界レベルで人類を滅ぼせる理由付け。
     【雪月】の名に相応しい能力の追加。戦場の変化)

    ・テナータさんは元は魔法使いの権威であり、【雪月】に対抗する
     べく、新たな対【雪月】の魔法を作り出し、二人に教えていた。
     町の封印も彼女によるもの。
    (二人が【雪月】を倒せる理由、【雪月の命】を作れた理由の補強)

    ・【雪月の命】を使用し【雪月】になった者は、人間としての意識を 
     維持し、魔法も使える。ただし殺害衝動は消えない。
     その強さは集めた【雪月の屑】の数に比例する。
     (メナータの行動の裏付けと読者への説明。強さの理由)

    ・タイトルについて
    雪月(ゆきづき)というネーミングは雰囲気あって好み。
    ですが、屑(くず)というのは、悪いイメージが先に立つ気がします。

    私なら、片を使い、「雪月の片(ゆきづきのかけら)」をタイトルにします。片は、一片(ひとひら)の雪、という表現にも使われる文字ですし、親和性が高いと思います。

    【雪月の命】もそのまま過ぎるので、私なら【雪月の核】にします。

    ⬜️総評
    ・ゲーム的でオーソドックスなストーリー。
    ・説明不足、メナータさんのトンデモ展開が目立つ。
    ・暴発の説明さえ追加すれば、選択肢は悪くない。

    まだ練り込めそうな作品だと思います。
    色々書きましたが、がんばってください。
  • →【11】~【15】
    https://kakuyomu.jp/users/kamemushi_kazino/news/16817139558827416647

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する