「二つの月」を含む小説

稲垣足穂の「一千一秒物語」へのオマージュとして書いてみました。

　画家を志す、将来有望な少女――水上美奈は、自他ともに認める才能の持ち主だ。しかし、その才能ゆえに、彼女は孤立していた。いや、正確には自分から、他人と距離をとるようにしていた。美…

時の彼方のエルメリンダ、醒めることのない夢をどうか僕に与えてくれ──名門男子校に通う高校生の貴村唯人（きむらゆいと）は『男の娘』と呼ばれる女装男子。生粋のノンケであるはずの唯人が…

ただひたすら行きずりの男に抱かれ続けるナオ。空虚な彼女の心はいつまでも満たされることはない。

彼にはひそかな楽しみがあった。 異界への門を抜け、日々の憂いと悩みとを忘れて自由気ままに過ごすことだ。 草原に寝転びながら二つの月を見上げる眼前を、その日飛び越えた者がいた。 …

数年前の満月の日から、空には二つの月が現れるようになった。一つは、淡い光を放つ月、そしてもう一つは、────血のように紅い月だった。

これはおとぎ話。 ひとりの少女の通過儀礼、過去からの旅立ちの物語。 　とある国のとある名門魔法師一族の家で生まれた少女は、１０歳の誕生日を迎えて捨てられた。 　彼女に魔法の才能…