双月話集

ミヤマ

月を喫んだ話


 ある晩 友人と並木道を歩き乍ら空を見上げると お月さまが二つに見えた 三日月の黄色い光と 影になって見えないはずの真っ暗い領域も銀色の光を射している オヤ! と眺めていると隣を歩いていた友人が云う

「希臘のポシドニウスの話じゃ 月は硝子製らしいぜ 月の向こうの世界が 暗い硝子に透けてぼんやり光ってるんだろうさ」

 そんな馬鹿なことはないと腹が立ち 懐中のピストルでお月さまを撃った パリンと灰色の破片が降ってきた その破片どうしを打ち鳴らすと青い火花がよく散った それで火をつけた煙草は 冷たい薄荷の味がした

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