実在性
P(A↑;B↑)+P(B↑;C↑)≧P(A↑;C↑)
と黒板の真ん中にベルの不等式を記して教授が云う。
「この式から明らかなように自然界では因果律と局所性は並立しているが、量子の世界じゃこうはいかん」 教授は窓の外の満月を指差す。
「例えるなら、私たちの見ていないところでも月は変わらず浮かんでいるのか、いやどんな在り方をしてるかすら分らんのだ」とカーテンを閉めた。
教授がまた黒板に向き合い、皆がノートを取り始めた。独り波打つ黒布のすきまから夜を覗いたら、月は二つになっていた。私に気付いた月はすぐ一つに戻ったが、慌てたせいか細い三日月となっていた。
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