3月1日ですね。花粉症の友人たちを「ふーん。大変そうだね。春は暖かくていいけどな」と他人事のように見つめてきて数年、いざなってみるとまあツラいものですね、な担当です。くしゃみが止まりません。
 さて、今回は「和風ロマンスファンタジー」ということで、白狐の女の子が主人公に懐いて押しかけ女房しに行く、きゅんきゅんな異類婚姻譚に、妖のいる不思議な街に貧乏育ちの少女が迷い込むファンタジー、生贄の娘と村の神様の静かな恋物語、そして、不遇な少女が幸せを掴み取る王道シンデレラストーリー、とバラエティ豊かな作品が集まりました。
 カクヨムのサービス8周年記念企画として「ヨムマラソン」も実施中ですので、今月はぜひカクヨムで読書に耽っていただければ嬉しいです。

ピックアップ

あやかし白狐のむずきゅん! 一途な恋の和風ファンタジー異類婚姻譚

  • ★★★ Excellent!!!

青い満月の夜に、小さな女の子が
医者の草世を訪ねるところから物語が始まります。
実は白狐だと正体が分かっても態度を変えない人間の草世に
恋をした白狐の真珠ちゃん

白狐一族のあやかし。
世間知らずな真珠ちゃんは空気が読めず、
草世のお嫁さんになることを決める(あやかしだけに唐突ですね。笑)
ぐいぐい押して押しかけ女房になりたいと一緒に暮らし始めます。
その姿が天真爛漫でかわいい(作家史上ピュアな主人公だそうです)

舞台は少し昔の日本でしょうか
都会はあるが、山奥の田舎。少し変化があると
あっという間に噂が広まるような、平和で穏やかだけど閉鎖的な村。

そこに奇怪な事件が起こるのですが……。

今回は何といっても🦊だけに油揚げ! 美味しそうな飯テロ描写。
囲炉裏があって、簡素な料理だけどとってもほっこりほくほく美味しそうです。

わくわくときゅんっとするような恋愛話に
今回も大満足です😋

和風&恋愛&呪術が好きな方にお勧めします!(*^-^*)

世界観とキャラクターが魅力的

  • ★★★ Excellent!!!

没頭から引き込まれます。最大の謎は兄の失踪。
兄の存在感が、物語の軸になって気になります。
主人公は兄を探すため、月城町13丁目に行き、そこで人やあやかしに出会う。
それぞれのキャラクターの思惑。それがまた魅力的。どんどん引き込まれていきます。
狸、狐、悪い奴なのに、嫌いになれない。
狸との対戦は涙しました。
色んなキャラクターに感情移入してしまいます。
なぜに書籍化にならぬ。と、思ってしまう。
花ちゃん(主人公)の力の話には、心が踊りまくり。楽しかったです。
皆に読んで欲しい。

あなたとわたしの境界線を結んで恋と呼ぶのかもしれない

  • ★★★ Excellent!!!

どこから話せばいいでしょう
このとある村の神様とその贄の娘が夫婦になるまでの物語を。

神様は、贄の娘の想い人であり夫となるはずだった人の姿で現れます。
亡き人が戻ってきた――のは「姿」だけで、冒涜のようにも感じられ、贄の娘、明里さんは受け入れられずにいます。でも「贄」であって村の弱い立場でもあり、とても苦しい状況に置かれます。
初めは、人の心の欠如した神様に「えこの人がヒーローであってる……?」までありましたが、でも贄への向き合い方これまでの過去、村で人を知り「明里さん」を知り心を通わせていく過程がとても丁寧に描かれて読み進める内すっかり二人の応援団と化していきました。
昔ながらの閉鎖的な村の在り方が「敵」なのかと思えば、それも光の当て方次第であり、はじめと最後でまるで見方が変わりました。
暗がりの中一面一面光をあてていき、朧な灯りから影が見えそして次第に強い明かりとなって気付けば全て照らされ温かい日の下にいる。確かにここに、これからが在る。そんな幸福な読後感。

「ヒーロー」「ヒロイン」の二人ともが初めから理想像としての型通りではありません。だからこそ、出会いが互いを変え――かたちにし、強く結ばれていく過程に惹きつけられました。
まぼろしの恋のゆくえを、ぜひ追っていただきたいです。

じっくり読める和風シンデレラストーリー!

  • ★★★ Excellent!!!

侯爵位だった両親を事故で失い、後見人を名乗って家にパラサイトしてきた叔父夫婦とその息子に虐げられる少女、朱乃。不吉を運んでくると邪険にされ雨の中で腹を空かせる黒い猫と境遇が重なってしまうほど、その身の上は凄惨です。
そんな朱乃が黒猫を助けた夜に出会った大陸人の青年・璃人によって、どん底にいた彼女の運命が大きく動き出します。

虐げられていた少女が幸せへ転じる王道のシンデレラストーリー。和と洋、そしてどことなく中華も混ざったような複雑な世界観が無理なくまとまっているのは、ひとえに作者様の技量の賜物かと。登場人物の心情とシンクロした情景が浮かぶような繊細な文章に、思わず溜め息をこぼしてしまいました。

お話は第一部のキリの良いところで一旦完結しています。文字の世界へじっくり潜るのに最適な文量だと思いますので、ぜひ今のうちから存分に楽しんでおくのをお勧めします!